魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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銀時「メリ~クリスマ~ス」

新八・神楽
「「メリークリスマース……」」

なのは「テンションが低いの……」

アリサ「とてもイヴとは思えないわ」

銀時「しょうがねェだろ。結局最新話の投稿が閑話のお知らせから3週間以上かかったんだからよ」

新八「なんか作者、最新話の準備ができた辺りでクリスマスに近いってことでイヴに合わせたらしいですよ」

神楽「でも本編はクリスマスネタでもなければ、季節は冬でもないけどな」

なのは・アリサ・すずか
「「「あー……」」」



銀時「そう言えば、銀魂の映画やるらしいぞ。原作ラストまでを描いた」

新八「そう言えばって、銀魂の映画がやるって朗報をんなテンション低めで言わないでくださいよ」

なのは「おめでとうございます!」

新八「他作品のなのはちゃんの方がテンション高めで祝ってくれてる……」

桂「そして映画が終わり、『GINTAMA NEXT GENERATIONS』がスタートするのだな!」

新八「どこのBORUTOだ!!」

神楽「そもそも眼鏡と天パに息子が生まれる可能性はほぼなしネ。一生を独身で追える運命ネ」

新八・銀時
「「あん?」」


それでは、どうにかこうにか投稿でできた最新話です。


ジュエルシード回収編
第五十一話:女三人寄ればかしましい


 朝。

 ちゅんちゅん。小鳥の声と窓からかかる日差しでなのはは目を覚ます。

 

「ん……」

 

 目を摩りながらゆっくり目蓋を開けるなのは。

 家に帰る前は、悩み過ぎて全然眠れないと思っていたのが嘘のようにしっかり睡眠が取れていたのか、悪くない目覚め。

 

「……今日から……」

 

 なのはは窓の景色を眺めながら、自分がこれから予測のつかない大変な事件に最後まで関わろうとしている、と自覚する。

 不安だらけで、怖いとさへ思う。だが、一度心に誓った決意が揺らぐことはなく、前よりもハッキリと気持ちと意思が固まったようにすら感じる。

 ある意味、今後が自身の魔導師としての本番なのかもしれない、とすら思っていた。

 

「う~ん……!」

 

 なのはが腕を上げて体を伸ばしていると、

 

《おはようございます。マスター》

 

 自身の愛機が朝の挨拶をする。もちろん、なのはは笑顔であいさつを返す。

 

「おはよう、レイジングハート」

《今日から本番、というワケですね》

「うん」

 

 頷くなのはは布団から出て、ベットから降りる。

 フェイトのことだけではない。もうすぐ、ジュエルシードを巡る事件に決着を付ける時は、迫っているはずだと直感的に感じる。

 

「あッ……」

 

 なのははおもむろに自身の机に置いてある、『あるモノ』に目を向ける。それは、新八がたまたま忘れたであろう『魔法少女リリカルなのは』の劇場版のDVDケースだ。

 なのはがケースを眺めていると、レイジングハートから音声が流れる。

 

《マスターを散々悩ませた物ではありますが、ご友人たちとあなたを巡り合わせたきっかけを作ったモノでもあると考えますと、感慨深いですね》

「そうだね……」

 

 相槌を打つなのはは、DVDケースを手に取り、パッケージに映った自分の姿を見つめる。

 

 フェイトとなのはがお互いのデバイスをぶつけ合う姿を映したモノ――。

 

 目の前の絵を見ると、やはり少し複雑な気持ちになる。

 きっと、この映画のようにこれから純粋で強い気持ちのまま臨むことはできないかもしれない。決して決意が揺らいだワケではないが、未来に不安を感じてないと言えば、嘘になる。

 

「……わたしは……〝いま〟のフェイトちゃんと最後まで向き合えるかな……?」

 

 自問自答、とも違う変な気分だ。別の未来――いや、別の世界の自分に問いかけたような気分になる。

 答えが返ってくるワケでもない。だが、なのははつい心の内を口に出さずにはいられなかった。

 

《マスター……》

 

 点滅する愛機の言葉を聞いて、なのはが赤い宝石に目を向けると、レイジングハートは言葉を続ける。

 

《〝いま〟のあなたなら、より高く飛び、どんな壁も撃ち抜けると信じています》

「……ありがとう、レイジングハート」

 

 薄く笑みを浮かべるなのはの言葉に呼応して、デバイスが赤く光る。

 

《では不躾ではありますが、あらためて聞かせていただいてもよろしいですか? マスターのいまの気持ちを》

 

 頷くなのはは優しい笑みを浮かべて。

 

「うん。わたしは――」

 

 

 バニングス低。

 アリサは自室で、リュックに入れる荷物の整理をしていた。それを見ていたフレイアが声を出す。

 

《アリサさ~ん。本当にこのまま事件に関わるつもりですか?》

「あのバカ共にあんだけ励まされて、黙って引き下がれるワケないでしょ?」

 

 アリサはリュックに荷物を詰め込みながら喋り、更にフレイアは問う。

 

《もう迷いはないと?》

「迷いや不安はあるけど、決意はもうできた。後は、前に進むだけ」

 

 と言いながらアリサは荷物を詰め込み終わる。

 

「よしできた!!」

 

 アリサはリュックを背負い、出発しようとするのだが、

 

「ぬぉ~……!!」

 

 荷物がデカ過ぎてまったく動けない。そりゃそうだ。リュックはパンパンで、アリサの体の三倍以上はデカいのだから。

 

《いきなり前に進めてませんよ!! 最初から前途多難じゃないですか!! 出鼻くじかれてるじゃないですか!!》

 

 フレイアがツッコミをし、アリサは更に力を入れる

 

「ふ、ふん!! こ、これくらいぃ~!!」

 

 だが、リュックはピクリとも動かない。なおも諦めない主にフレイアは、いやいやいや!! と食い下がる。

 

《あなた魔法少女であって、どこぞのチャイナさんみたいな怪力少女じゃないんですから!! 声そっくりですけど!!》

「しょうがない……」

 

 体から力を抜いてアリサは諦める。

 

「こっちを持っていきましょ」

 

 すると小さいというか、普通サイズのリュックを取り出すアリサ。それを見てフレイアはまたツッコム。

 

《用意してたんなら最初からそっちにすれば良かったでしょ! 珍しくボケかましますねアリサさん!! つうか私、ツッコミポジじゃないのに今回ガンガンツッコミされられちゃってるんですけど!》

「自分で言うことじゃないでしょ……」

 

 ジト目向けながらアリサは部屋を出て行くのだった。フレイア置いて。

 

《いや私ィィィッ! 一番の忘れ物してますよォォォォォ!? 私無しであなた何しに行くんですかぁーッ!?》

「いや、飛んでこっち来なさいよ」

 

 アリサはジト目をフレイアに向け、愛機は不満声。

 

《相棒としてちゃんと携帯して欲しいんですぅ~》

 

 備え付けの羽を使っているかのは分からないフレイアが、アリサの元に飛んでいく。

 アリサは飛んできたフレイアを手に取り、薄く笑みを浮かべる

 

「よろしく、相棒。期待してるから」

《ホント、中々いいご性格に成長しましたね~、私の(マスター)は》

 

 そう嬉しそうに言った後、フレイアは軽めの口調で。

 

《では、最後の確認です。そんな逞しい我が(マスター)の決意のほどを》

「しょうがないわね」

 

 そう言いながら、アリサは満更でもない顔で告げる。

 

「あたしは――」

 

 

 

 月村邸、すずかの部屋。

 

「これでいいかな」

 

 あらかたの必需品を入れたリュックをすずかは持ち上げて重さを確認すると彼女の相棒から女性の音声が流れる。

 

《さすがすずか様。ベストなチョイスです。特にお忘れ物もありません》

「ありがとう、ホワイト」

 

 すずかは笑顔で愛機に答える。するとホワイトが質問を投げかける。

 

《ですが、よろしいのですか? これ以上の関与は、すずか様にとって決してプラスになるとは――》

「いいの」

 

 すずかはホワイトの言葉を遮って、カバンを背負う。

 

「だって、わたしは――」

 

 

 

 

「行ってらっしゃい、なのは」

 

 桃子は玄関でリュックを背負うなのはを見送る。

 

「行ってきます」

 

 桃子に迎えられ、なのはも決意の籠った瞳で告げる。

 自分にはやらなければいけないことがあり、これから少々長い期間家を空けることを、既に母には話してある。無論、魔法関係のことは秘密にした上で、できうる限りの説明を。

 

「頑張ってね」

 

 桃子は笑顔で言葉を送る。

 今は、父も兄も姉も朝の日課となっている、朝稽古で道場の方にいる。

 桃子の提案で、なのはが当分の間家を空けることの説明を母が家族に上手く説明してくれるそうだ。

 

「うん。きっと後悔が残らないように頑張って来るから!」

 

 なのはは笑顔でガッツポーズを作る。だがそれを見た桃子の笑顔は薄く曇り、不安そうな表情でなのはを抱きしめる。

 

「ッ……おかあ、さん……」

 

 なのはは自身を抱きしめる母を心配そうに見る。

 

「……ごめんね、なのは。あなたの決意に水を差すような事をして」

 

 まるで離したくないと言わんばかりに、桃子は強く娘を抱きしめ、自分の気持ちを吐露する。

 

「私はなのはのお母さんだから、なのはには怪我をして欲しくないし、無理に辛い思いだってしてほしくない。健やかに育って欲しいっていつも思ってる」

「お母さん……」

 

 母の正直な気持ちを聞いて、なのはもぎゅっと彼女の体を抱きしめる。

 

「でもきっと、これからあなたがしようとしている事は……」

 

 桃子はなのはを抱きしめるの止め、体をゆっくり離す。

 

「あなたが最後まで貫き通したいと思っていることなんでしょ?」

 

 娘の両肩に手を置いて母は笑顔を作る。

 

「だから悔いが残らないように、頑張ってきてね」

「うん!」

 

 満点の笑顔でなのはは答える。

 母を決して不安にさせない為に、なにより自分の未来が明るいモノになるように。

 

 

 

 

 海鳴市の公園。

 そこにはリュックを背負ったアリサとすずかがいた。

 

「あ、なのはちゃん!」

 

 いの一番にすずかがやって来るなのはに気づく。

 

「あッ! アリサちゃん、すずかちゃん!」

 

 なのはは二人の姿を確認して駆け寄り、声をかける。

 

「二人共早いね!」

 

 なのはの言葉を聞いて、すずかは笑みを浮かべながら「ううん」と顔を横に振る。

 

「わたしたちだって、今来たばっかりだもん」

「そうなんだ」

 

 なのはは笑顔で答え、アリサは公園を見渡しながら腕を組む。

 

「しっかし、〝あいつら〟と最初に遭った公園で待ち合わせしようだなんて、なのはも妙なこと考えるもんね」

「ニャハハハ……」

 

 なのはは頬を掻く。

 そう、この海鳴市の公園こそ、なのはたち親友三人が江戸の六人を最初に見つけた場所なのである。

 アリサは呆れ顔で語る。

 

「最初見た時は変な連中で、もしかしたら不審者かも? くらいにしか思わなかったのに、いつの間にか仲間になっちゃってるんだから、ホント妙な縁よね」

 

 言葉の最後辺りには感慨深そうにアリサはあたりを見渡し、すずかもつられるように公園を眺める。

 

「わたしも、こんな風になるなんて思ってもみなかったよ」

 

 なのはも懐かしむように公園を見る。

 

「そっか……ある意味、ここが始まりみたいなものだもんね……」

 

 最初は珍妙な集団としか思わなかった人たちと、いつの間にかお互いを助け合う仲間のような関係にまで発展した。

 本当に奇妙な出会いではあったが、今思えば自分にとってはとても良い出会いであるとなのはは実感している。この事件が終わって別れることなったとしても、彼らとの思い出が色褪せることはきっとないだろう。

 

「だからこそ、ここであたしたちの決意を発表しようってことなんでしょ?」

 

 腕を組んで肩眉を上げながら言うアリサに、なのはは笑顔で答える。

 

「うん。ここで言うからこそ意味があると思うんだ」

 

 なのははなんとなく親友二人の答えも自分と同じような気がしていた。直感だが、きっと二人の答えも自分と同じであると、信じたくなっていた。無論、そうでなくても二人を恨んだり責めたりする気持ちは微塵もない。

 

「じゃあ、順番に言う?」

 

 すずかの提案にアリサが首を横に振る。

 

「やっぱ、こういうのはせーので同時に言うの方が良いと思う。誰かが後とか先なんてのはなし」

「うん」

「わかった」

 

 なのはとすずかも、アリサの提案を笑顔で承諾する。

 アリサとすずかがなのはに顔を向ける。

 

「じゃあ、タイミングはなのはに任せるわ」

「せーのでも、3、2、1でもいいよ」

「じゃあ、せーので!」

 

 なのはは深呼吸をし、ゆっくりと息を吸い込んで口を開く。

 

「せーの――!」

 

 そして三人は一斉に自身の正直な意思と気持ちを伝える。

 

「「「これからもみんなで一緒に事件を解決したい!!」」」

 

 ピッタリ声が揃い、目を瞑って声を張り上げた三人は、目を開けながらきょとんとした顔で互いを見る。

 

「フフ……」

「ニャハハ……」

「ハハ……」

 

 そして三者三様に笑い声を零す。

 どことなく予想をしてはいたが、こうもピッタリ呼吸が合うと、ついおかしくて笑い声を零してしまう。

 

「よーし!」

 

 と、アリサが飛びつくように親友二人の肩に腕を回す。

 

「「わッ!」」

 

 なのはとすずかは驚き、ちょっとバランスを崩す。アリサは二人の顔を交互に見ながら得意顔で言い放つ。

 

「三人いれば怖いモノなしよ!! あたしたちが力を合わせてといて、残念な結末なんかにはさせないんだから!!」

「「うん!」」

 

 力強く頷くなのはとすずか。

 

 なのは確かに感じ、思った。

 この二人と皆がいれば、きっと大丈夫。どんな困難だって打ち砕ける――。

 

 すると、

 

「三人寄り合って、随分仲が良いことって。(かしま)しいってのはこういうこと言うんかねェ」

 

 聞き覚えのある声がなのはの耳に入る。

 声に反応して、三人の視線が公園の外からやって来る人物に向けられる。

 

「沖田さん!」

 

 なのはは嬉しそうにやって来た人物の名を呼ぶ。

 

「あッ、土方さんにユーノくんもいる」

 

 すずかが沖田の後方にいる二名に気づく。

 土方とその隣にユーノがおり、二人もゆっくりとなのはたちの元に寄って来る。

 

「どうやら、答えが出たみてェだな」

 

 土方は煙草を吸いながら言うと、

 

「「はい!」」

「あたしたち三人の力! これからも見せてあげる!」

 

 すずか、なのはは元気に頷き、アリサは自信に満ちた笑みを浮かべる。

 親友三人組の姿を見て、沖田は関心と呆れが混ざったような顔。

 

「ホント仲が良い連中だ……示し合わせたように通信してくることだけはあるぜ」

「「「えッ?」」」

 

 その言葉にアリサ、なのは、すずかはきょとんとした顔をし、お互いの顔を見合わせる。

 アリサが一番に口を開く。

 

「二人共、もしかしてこいつらと昨日、通信したの?」

「えッ? アリサちゃんも……なの?」

 

 となのはが驚きの声を漏らせば、

 

「えッ? 二人共、わたしと同じことしてたんだ……」

 

 すずかも同じように驚きの混ざった声を漏らしている。

 まさかアリサとすずかが昨日の夜、同じようにユーノを介して江戸組の面々に相談をしていたなど、露も知らなったなのは。

 そしてその事実に三人は、

 

「「「プッ……!」」」

 

 思わずまた吹き出してしまう。

 

「「「アハハハハッ!」」」

 

 仲良く笑い合う三人を見て、沖田は呆れたように頭をぼりぼり搔く。そして、ユーノが沖田の横に並んで優し気な声で告げる。

 

「じゃあみんな、アースラに行こう。君たちの決意をリンディ提督たちに伝えないとね」

 

 ユーノ言葉を聞いてアリサは眉間に皺を寄せる。

 

「でも大丈夫なの? リンディさん、映画と違って事件に関わらせる気なんてなさそうよ」

 

 アリサの言う通り、クリミナルなどという危険な犯罪集団が関与してしまったせいで、リンディに『一日考える暇』すら与えてはもらえなかった。

 するとユーノは笑顔で答える。

 

「そこは大丈夫。なのはたちが関わるにしろ、関わらないにしろ、どちらに転んでもいいように交渉は済ませてあるんだ」

「あッ、映画みたいな提案を言ったの?」

 

 すずかの疑問にユーノは頬を掻きながら苦笑を浮かべる。

 

「まぁ、僕と土方さんでアレンジは加えたつもりだから」

 

 

 

 

 アースラ艦内。

 

「……そうですか。なのはさんたちの決意のほどは伝わりました」

 

 リンディが噛みしめるように静かに首を縦に振ると、新八はおずおずと声を出す。

 

「……あの、あなたアースラに客招く時はいつもここを〝コレ〟にするんですか?」

 

 前に見た和風かぶれしまくった艦長室を見て、新八は遠慮がちにツッコミ入れる。

 敷かれた赤い毛氈(もうせん)に正座するなのは、すずか、アリサ、新八、山崎に腰をかける神楽、土方、沖田。

 

「私個人としては心苦しくもあり、納得できないところもあります」

 

 リンディの言葉に土方は腕を組んで片眉を上げる。

 

「でもあんたはこいつらが事件解決に協力するのを認めた。違うか?」

 

 リンディは「ええそうです」と頷く。

 

「私も、今回の事件解決のためになのはさんたち三人だけでなく、次元漂流者であるあなた方の協力も許可することにしました」

「まぁ、もちろん……僕も艦長も思うところはあるけどね」

 

 とクロノが付け足し、リンディは目を瞑り神妙な面持ちで言う。

 

「なのはさんたちはまだ十にも満たない少女……それだけに、大人としてあのような悪質な犯罪者と関わらせる事には抵抗を感じています」

 

 リンディの気持ちは、子供ながらになのはも感じ取れる。

 やはり多感な時期の幼い子供に、あのような形で人の生首を見せつけてくるような恐ろしい連中を、なのはたちに関わらせることによる悪影響を考慮しているのだろう。

 すると「だからこそ」と言ってユーノが口を開く。

 

「なのはたちはフェイトとのジュエルシード争奪だけに専念するという条件付きにしたはずです」

「そして、管理局と俺たち汚れ仕事役があのクソッタレどもを引き受ける」

 

 土方が眼光を鋭くして刀の柄に手を置き、江戸組の面々に目を向ける。

 

 そう、ユーノと土方は自分たちが管理局の利になると説明した。が、それだけはリンディの首を縦に振らせるのは難しいだろうと踏み、最後の一押しとして『フェイト以外との戦闘はなのはたちには基本させない』という条件を取り入れることにしたのだ。

 無論なのはたちはクリミナルたちの暗躍も阻止しようと提案している。だが、ユーノは少女たちの事を考えてか、そこは大人である『江戸組』と『管理局員』に任せることを前提にした方が良い、という意見を推した。

 

 少々残念ではあるが、ユーノの考えを尊重し、なのはたち三人はユーノの出した条件を受け入れたのだ。

 

「おいおい、なんで私のようなプリチーでか弱い乙女が汚れ仕事役になってんだヨ?」

 

 神楽が文句言うが、他の面々は無視。

 

「やれやれ……」

 

 リンディはため息をつく。だがその顔は言葉ほど困っているようには見えない。

 まあリンディ自身もなのは、アリサ、すずかにフェイトとの決着くらいはさせたいと思っていたのだろう。それに、やはり戦力増強はアースラ艦長として少なからず嬉しいという感情もあるのかもしれない。

 

「わかりました。フェイトさんはなのはさんたちに任せます」

 

 リンディの言葉を聞いて嬉しそうに互いの顔を見合わせるなのは、アリサ、すずか。

 「ですが!」と言葉を強調させ、リンディは強く告げる。

 

「もちろん私の指示にきちんと従ってもらいます! そこをお忘れなきように!」

 

 念を押すリンディの視線は江戸組の面々にも向いている。

 どうやらアースラ艦長も一番好き勝手しそうな連中は分かっているようだ。すると、リンディの横に並んぶ神楽。

 

「おうおう。ちゃんと艦長様の言うことは聞くんだぞオメェら?」

 

 ヤンキーの舎弟のような口調のチャイナ娘に、クロノはジト目向ける。

 

「うん。君もちゃんと言うこと聞いてくれよ? つうか君が一番言うこと聞かないよな?」

 

 次に沖田がリンディの横に来る。

 

「盾になれと言われたら盾になれよ? 土方。神風特攻しかけれろと言われたらしろよ? 土方」

「なんで俺限定なの? お前を盾にして神風特攻すんぞおい」

 

 いつもの通り沖田とメンチ切る土方。

 

「ハァ~……」

 

 ため息をつくクロノ。こいつら多分また何かやらかすな、と思っている事だろう。

 苦笑しながらリンディは立ち上がる。

 

「それでは、クルーたちに自己紹介をしてもらいましょう」

 

 そして会議室ではアースラスタッフに、江戸組のユニークでユーモア溢れるツッコミどころ満載の社会常識が欠如したようなあいさつが行われた。

 

 まず神楽が明日にでも実現できそうな抱負を語ったり、近藤が日々愛する女性を影から見守っているというストーキング行為を暴露したり、沖田が土方抹殺宣言をして土方が沖田滅殺宣言したりなど……まぁ、色々であった。

 江戸の面々を知っているなのは、すずか、ユーノは終始苦笑し、アリサは呆れたため息を吐くばかり。

 そしてクロノは、凄く心労が募っていそうだった。

 

 

 

 

 それから少し時間は進み、アースラ食堂。

 テーブルを挟んで、なのは、アリサ、すずか、ユーノ。少年少女たちは、気だるげな眼差しを向けながら頬づえを付く銀時と対面していた。

 

「新八たちの次はお前らか……」

 

 銀時がなぜ若干めんどくさそうな態度なのかといえば、

 

「ホントお前ら、あの天然で不愛想な金髪の何が気になるんだ?」

 

 新八たちにフェイトのことについて散々訊かれたからであろう。そしてなのはたちもまた、これから〝銀時が知っているフェイト〟について、訊こうとしているところなのだ。

 

「たく、何回俺に同じ話させれば気が済むんだよおめェら……」

 

 露骨にウンザリという態度を取る銀時に「す、すみません……」と申し訳なさそうになのは、すずか、ユーノは頭を下げる他なかった。

 

「つうか、フェイトはともかくぱっつぁんや神楽から俺の話なんて散々聞いてるだろ?」

 

 と銀時は訝し気に眉をひそめた後、ハッと何かを察した表情になる。

 

「……もしかして、あいつら俺についてはまったく話してなかったとか?」

「いえ、一応銀時さんの話は聞いてます」

 

 ユーノはそこまで言って「ただ……」と言い辛そうに視線を逸らし、代わりにアリサが言う。

 

「あんたの人間性は、基本的にダメ人間のちゃらんぽらんってことは、十分聞かされたわ」

「あ、そー……」

 

 否定も肯定もせずに返事をする銀時の態度を見て、あ、否定しないんだ……と四人は思った。

 アリサは「でもま……」と言ってニヤリと笑みを浮かべる。

 

「あんたが他人のために、体を張る人間だってことも知ってるわ。アルフのために結構頑張ったそうじゃない」

「あいつら……結局そんな風に言ったのかよ……」

 

 銀時は呆れたようにため息を吐くいた後、ふとあることに気づく。

 

「つうかよー、フェイトのこと聞きたいなら俺じゃなくて、アルフに聞けばいいだろ? 今のあいつなら、ちゃんと話はできると思うぜ」

 

 銀時の言葉を聞いて、すずかは困ったといった顔で言い辛そうに話す。

 

「まだ……アルフさんとはその……ちょっとコミュニケーションが取りづらくて……」

「あ~、なるほど。だけどよ、一応俺もちょっと前まで敵対関係みたいな感じだったけど? 気まずくねェの?」

 

 と言って銀時が自分の顔を指さすと、ユーノが説明する。

 

「銀時さんは距離感を無視すると言うか、図々しい方なので、話すならあなたが良いと僕たちは思ったんです」

「なァ、ユーノくん。それ褒めてんの? なんか言い方キツくない? 今までのチ〇コ発言そんなに気に障った?」

 

 銀時の言葉を受けて、ユーノは無表情で露骨にサッと顔を逸らす。すると、横のなのはが微笑みを浮かべながら告げる。

 

「フェイトちゃんのことが聞きたいのも理由の一つですけど、直接銀時さんとお話したいのも正直な気持ちなんです」

 

 更にすずかとアリサも続く。

 

「私もです」

「まー、私もそれなりにあんたに興味あるし」

 

 そしてなのははニコリと笑顔で告げる。

 

「それに、これからは一緒にジュエルシード集めをする仲間ですから。一度、ちゃんとお話しをしたいんです」

 

 屈託のない笑みを見せるなのは。そんな少女の言葉を聞いて、銀時はめんどくさそうにため息をつく。

 

「……わァ~ったよ」

 

 それから銀時は、自分から見たフェイトの人柄を話したり、なのはたちの質問に答えたり、他愛もない話をしていくのだった。

 

 こうして、魔法少女たちは新たな決意と新たな仲間とともに、ジュエルシード集め、そしてフェイトとの決着に臨むことになったのである――。

 

 

 そして時間はなのはたちがジュエルシードの怪鳥を倒した後、部屋で雑談している現在にまで戻る。

 

(あれからもう半月かぁ……)

 

 なのはは天井を見上げる。

 

 あれだけ悩んでいたのが嘘のように、今はフェイトのことにも、ジュエルシードにも、面と向き合おうという気持ちが前に向いている。

 アルフとも徐々にコミュニケーションも取れ始めているのも良い傾向だ。

 このままできれば、クリミナル逮捕にも尽力したくはあるが、さすがに管理局側も江戸の大人組も、そう簡単には許可してくれそうにない。そこら辺はユーノでさへ、現状も否定的な面を見せている。

 銀時は「別によくね?」なんて軽い口調で、自分たちがクリミナルたちと戦うことを否定しようとはしなかったが、その発言で土方やらクロノやらリンディに睨まれもしていた。

 

 長期的に家を空ける事に関して、なのははともかく、アリサとすずかについてはリンディ自らがわざわざ二人の家まで出向き、嘘と事実を織り交ぜたウマイ誤魔化しで納得させた。

 ちなみに設定として忘れそうになるお嬢様であるアリサとすずかなのだが、さすがに過去の誘拐もあっただけに、二人を長期的に手の届かない場所に送るのは、両親や家族はあまり乗り気ではなかった。が、人格はともかく、ボディーガードとして申し分ないほどの戦闘力を持っている江戸組の面々が付き添う事、そしてなによりアリサとすずかの進言もあって、了承してくれたのである。

 

 雑談の途中で、なのはが過去の出来事をうっすら思い起こしていると、

 

「まぁ、なのはと同じように落ち込んでいたのはあたしたちも同じか……」

 

 アリサは腕を組んで、なのは同様に天井を見上げる。するとすずかが同意を示すように頷く。

 

「うん。やっぱり、フェイトちゃんの事は、本当に衝撃的だったしね」

 

 とアリサは言うが、親友二人がフェイトのことで気後れしたり、戸惑う様子は見られない。最後まで向き合おうと言う、意思の表れすら感じられる

 

「まぁ、一番ショックを受けていた使い魔のアルフが、あんな風に立ち直っちゃー、ねー」

 

 苦笑しながら言うアリサに、なのはは頷く。

 

「うん。アルフさん、復活したと思ったら、突然銀時さんの使い魔になるって言うんだもん。私も最初はホントにビックリしちゃった」

 

 食堂で銀時の鼻にパフェ食わそうとしたり、神楽並みの大食い発揮したり、今でもそのなんとも言えない前向きな姿は記憶に新しい。そんでもって、今は自分たちと同じ事件を解決するための仲間になっている。

 そしてそれらの光景は、銀時が体を張った努力ゆえの結果かもしれない、と新八からこっそり教えられている。まぁ、そこら辺は銀時の人柄を知っている人間としての予想らしい。

 なにせ一方の、銀時に近しい人間である神楽なんか、「駄メンズに惹かれて尻尾ケツ振るバカな女もいるしな」なんて辛辣なコメントを残していたが。

 

「あんなやる気が抜け落ちたような顔してるけど、やる時はやるって感じなのかしら?」

 

 アリサは顎に手を当てて小首を傾げながら、少なからず銀時に興味を示している様子。

 すると、コンコンと部屋の扉がノックされる。

 

「どうぞ~」

 

 すずかがふんわりと愛想よく返事をすれば、扉が横にスライド。ノックの主が、ユーノであることを確認する。

 

「三人共。リンディ提督が紹介したい人がいるから、食堂に来て欲しいそうだよ」

 

 そうユーノが言った後、三人は顔を交互に見合わせる。

 

「それって、誰なの?」

 

 なのはの質問に、ユーノは首を傾げる。

 

「いや、僕も詳しい事は聞いてないんだ。でも、会えばかなり驚くことになるって」

 

 ユーノの言葉を聞いて、アリサはうんざりしたように頭に片手を当てる。

 

「なんか、ジュエルシードや新八たちに関わってから、驚かされる回数が異様に増えているのは、気のせいかしら……? どっちが原因か分からないけど……」

 

 疲れ気味の親友の言葉に、なのはとすずかは苦笑する。

 

「ま、まぁでも、会って話せば君たちは喜ぶだろうって」

 

 ユーノというか、リンディ艦長の含みのある前置きに、ますます三人はワケがわからないと言う顔を見合わせる。

 

 

 

「リンディ提督。なのはたちを連れて来ました」

 

 ユーノが先頭で前を歩き、アースラの食堂へとなのはたちを連れてくる。

 

「ユーノくん、ご苦労さま」

 

 リンディはニコやかな笑みで、やって来たユーノと彼の後ろに付いて歩くなのはたちを迎え入れる。

 そしてなのはは、リンディの膝の上に何かが乗っているのに気づく。よくよく見るとそれは、

 

「にゃ~」

 

 薄茶色の毛色をし、毛並みがふさふさの猫だった。

 

「あッ! 猫さんだ!」

 

 猫好きのすずかはすぐさま反応。自身の屋敷にも猫を大量に飼っている彼女は、すぐさまリンディが膝に乗せている猫に駆け寄り、頭を撫でる。

 

「あらあら」

 

 猫を愛でるすずかをリンディは微笑ましそうに見る。

 

「それでリンディさん。私たちに合わせたい人って? その猫?」

 

 小首を傾げるアリサの問いに、リンディはすぐに笑顔で答える。

 

「ではまずは、〝彼ら〟に自己紹介をしてもらいましょう」

 

 そう言って、リンディが掌を上向きにして横に出して、なのはたちの視線を誘導。

 そしてタイミングを合わせたかのように、ある人物が歩いてくる。

 

 現れた人物を見て、なのはは驚きの表情を浮かべる。

 

「あ、あなたは!!」

 

 

 

 

「――んで? 俺たちに会わせたい奴って、誰よ?」

 

 銀時は怪訝そうな表情で廊下を歩きながら、先頭を歩くクロノに問いかける。

 銀時の他には、江戸組とアルフがクロノの後を付いている。

 

「行けば分かる……」

 

 そう言うクロノの声は、どことなく呆れや疲れを帯びている。

 歩きながら新八は銀時に耳打ちする。

 

「(やっぱり、リンディさんが仕掛け人ですかね?)」

「(だろうな。ユーモア皆無の頭でっかちな執務官殿なら、前置きとかなしにすぐ話すだろうしな)」

 

 と、割と失礼なこと言いながら銀時も耳打ちで言葉を返す。なんだかんだで、クロノとリンディの性格をちゃっかり掴んでいる銀時と新八。

 

 やがて食堂の前まで到着。クロノがドアの前まで歩けば、ドアが横にスライド。

 

「艦長。銀時たちを連れて来ました」

 

 クロノが声を出しながら扉をくぐり、彼に続いてぞろぞろと中に入る侍&天人(あまんと)&使い魔。

 彼らの目に映ったのは、

 

「はい。それじゃもう一度いくぞ」

 

 赤いシャツの上に、青いオーバーオールを着て、Kのイニシャルがついた赤い帽子を被り、髭を生やした攘夷志士――桂小太郎。彼の手にはウォー〇マン。

 そして桂は、体を右に左に揺らしながらリズムに乗って、

 

「やるなら今しかねーZURA、やるなら今しかねーZURA」

 

 などと口ずさみながら、隣の白いペンギンみたいな生物――エリザベスと踊る。

 

「攘夷がJOY、JOYが攘夷」

 

 「はいそこで復唱!」と桂が言うと、エリザベスがプラカードで、

 

『攘夷がJOY』

「違う! もういい加減しゃべれや!! 文字じゃなくて!!」

 

 憤慨する桂はキレながら捲し立てる。

 

「俺ホントはとっくに知ってるんだからな! お前がペラペラペラペラ喋れるの知ってんだかんな俺! 今までずっとツッコまず飲み込んできたんだかんな俺!!」

 

 それを見た江戸組一同は、絶句して立ち尽くす。白い眼をDJ配管工と白いペンギンに向けている。

 

「よし、もっかいいくぞ! はいせーの! 攘夷が――」

「じょォォォォォォォいッ!!」

 

 銀時のキックが桂の顔面に炸裂し、「ブベェッ!!」と声を上げる攘夷ラップバカであった。




※アンケート

Pixivやハーメルンなどでもらった質問(最近はハーメルンでの質問などはなし)などを、Pixiv版では本編の後にコーナーとして掲載しています
ちなみにメッセージで受け取った感想を掲載するコーナーもあります

それで考えたのですが、ハーメルンの方にも質問コーナーを掲載しようかと考えています
たぶんハーメルンの方には質問コーナーを知らない人もいると考えて、どうしようか考えたからです
ここまでくるとハーメルン版とpixiv版と違いは感想の返信コーナーくらいになりますが

ただハーメルン版となりますと、本編に繋げて1話内に入れると無駄に長くなってしまいますので、別個で最新話として投稿
もしくは、質問コーナー用の新規の小説を作って投稿などを考えています

それでアンケートの内容なのですが、ハーメルン版にも質問コーナーを掲載する方が良いかどうかいう感じです

―――――――――――――――――――――――――――

1:ハーメルン版にも質問コーナー投稿、もしくは掲載する

2:ハーメルン版には質問コーナーは投稿、掲載はしない

―――――――――――――――――――――――――――

とりあえず、気軽にお答えしてもらえるとありがたいです。意見や質問なども大丈夫です

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