大納言ビンタからほどなくして、大会はなんとか進んで行き……。
ようやく2位、3位、最下位が決まったのだ。
2位――チーム銀ノッブ。
「いやー……助かったー……」
「ゴール折り返しなしに救われた……」
銀時、ノッブは安堵のため息を吐く。
3位――チームプリなの。
「「「…………」」」
なのは、ひかる、ララは喜びや安堵を浮かべず、自分たちの隣にいるチームに同情の眼差しを送っている。
そう、最悪の罰ゲームウ〇コ合☆体をすることになったのは……。
最下位――チーム沖楽。
「「…………」」
沖田さんと神楽は四つん這いになって絶望の表情を浮かべながら意気消沈していた。二人からどんよりした暗黒のオーラが出まくっている。
ようやくすごろく大会が終わり、フェイトが参加者一同へと近寄る。
「それでは大会も無事に終わったので大会の主催者の方々からあいさつがあります」
「「「「「えッ?」」」」」
と驚きの声を漏らす一同。
するとバン!! と白い両扉が勢いよく開く。そして奥から一人の人物が顔を出す。黒いマントで体を覆いサングラスを掛け顎髭を生やしたおじさん――洞爺湖仙人であった。
このおじさんは簡単に説明すると銀時の木刀――洞爺湖に潜む仙人みたいなおっさんである。
「フハハハハッ!! 随分と醜態を晒したものだなーッ!! お前たち!!」
高笑いしながら出てくる洞爺湖仙人を見て銀時たちは彼にジト目向けるが、仙人構わず自身の顔に親指をビシッと突き付け自己紹介。
「何を隠そう!! この洞爺湖仙人こそが今大会の主催者なのだッ!!」
そして洞爺湖仙人は拳を握りしめながら意気揚々と語り始める。
「全ての始まりはこの小説での第一回目の特別回!! 私は仙人として大恥をかき、仙界ではずっと肩身の狭い思いをしてきた!! 私をタマキュアおじさんなど揶揄する者までいる始末!! だからこそ貴様らにも私と同じ、いやあの時以上の屈辱を味合わせることを決意したのだ!!」
聞かれてもいないのにベラベラ語る洞爺湖仙人はクワッと表情を変え、背を逸らしながら天を仰ぎ力強く語る。
「そして今日この日を持って私の復讐は完了する!! もちろんコレは私の復讐であるからして優勝賞品などありはしなァい!! 貴様らを躍らせる為の釣り餌よ!! まーウ〇コはあるがなァッ!! フハハハハハハハハハハッ!!」
天に向かって高笑いする洞爺湖仙人に合わせるように彼の後ろの地面から巨大な機械が浮き出てくる。
出現した機械は、大きなガラスで作られた円柱の二つカプセルの上部に付いた太いチューブでカプセル同士を繋げた大掛かりな巨大装置。ちなみに片方のカプセルの中にはウ〇コが入っている。
洞爺湖仙人は自身の後ろに出てきた巨大な機械を手でビシッと指す。
「さァーッ!! 最後の仕上げ!! この融合装置で最下位の者はウ〇コと合体だァーッ!! どちらが合体するか好きなだけ醜く争い選ぶがいいッ!! ハーハッハッハッハッハッハッ!!」
「「「「「…………」」」」」
銀時たちはしばし無言となった後、平坦な声で洞爺湖仙人を指さしながら告げる。
「「「「「洞爺湖仙人、アウト」」」」」
「へッ?」
そしてすかさず目の色をギロリと変えた神楽と沖田さんが同時に洞爺湖仙人の腹に鉄拳をお見舞いする。
「オ゛ッッ――!!」
口から唾液を吐き出す洞爺湖仙人にすかさず今度は銀時とノッブがモモパーンを炸裂させる。
「ア゛ッッッ!!」
続いてネプテューヌがバットを振りかぶって洞爺湖仙人のケツをぶっ叩く。
「ゴッッッッ!!」
そしてトドメの一撃に新八がバシンッ!! と洞爺湖仙人の頬にビンタを炸裂させた。
「ブッッッッッ!!」
そして倒れ伏す洞爺湖仙人にララとひかるとなのはが冷めた言葉を浴びせる。
「自業自得ルン」
「「うん。ホント」」
そんなこんなで大会参加者一同にお仕置きされ簀巻きにされた洞爺湖仙人。
ボロボロになった洞爺湖仙人にネプテューヌはしゃがみ込んで猫なで声で問う。
「一つ聞きたいんだけど~、なんで銀ちゃんたちはともかく私とかノッブみたいに前回の特別回とは関係ないメンツまで集めたの?」
するとノッブも腕を組みながら便乗して問う。
「おー、そうじゃな。そこ聞きたいのー」
「さっさと答えなさい」
沖田さんは刀を差した鞘で洞爺湖仙人のケツをバシッと叩くと簀巻き仙人は顔を引き攣らせながら答える。
「え、えっとー……ぼ、ぼくー……さ、最近エドチューバーになろうと思ってー……ど、動画映えする人気キャラであるみなさんをお呼びましたー……」
ノップはうんと頷く。
「よく分かった。貴様とウ〇コが合体するシーンを撮ってUPしてやろう」
ノッブの言葉を聞いて沖田さんとネプテューヌも笑顔で相槌を打つ。
「きっとバズって再生数稼げますよ~」
「よかったね~」
「いやあああああああああああああああああああああああッ!!」
悲鳴を上げる仙人。もちろん彼を助ける者など誰もいないと思ったのだが、
「まー待てお前ら」
銀時が手を出して待ったをかける。この男からまさかの言葉を聞いて意外そうな表情を浮かべる一同。
「我がマスターーーーーー!!」
洞爺湖仙人が涙目になりながら嬉しそうに声を上げると銀時は冷静に告げる。
「そいつをウ〇コにすんのは俺らが貰うはずだった高級おせつちとお年玉分の金を預金から引き抜いてからでも遅くはないだろ」
「「「あー、確かに」」」
ノッブ、沖田さん、ネプテューヌは同時に相槌を打ち、
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!」
洞爺湖仙人はこの世の終わりのように悲鳴を上げる。
すると、
「あー、みなさん。ちょっといいですか?」
突如として聞き覚えのない謎の声が聞こえた。
声のする方に全員が一斉に顔を向けるとそこにはねずみ色のローブで全身を覆い、フードを深くかぶって顔を隠した謎の人物が手を上げて立って居た。
もちろんいつの間にか近くに立って居た謎の人物を見て全員が驚きの表情を浮かべる。
「「「「「ッ!?」」」」」
「ッ!? だ、誰ですかあんた!?」
新八が驚きながらいの一番に問うとローブの人物は自己紹介を始める。
「私の名前は皆さんの知っている言語では説明できないのでお教えできませんが、私はいわばそこの簀巻きにされている方と同じ今大会の主催者です」
「ほ~、なるほど」
銀時は目を細めながら木刀に手を掛け、ノッブと沖田さんも武器を構え始める。
だが主催者は殺気と怒気を向けられても慌てず冷静に話しかける。
「あッ、私をボコボコにする前にお話だけでも聞いてくれませんか?」
「おー、良いぞ。世事の句か?」
殺意を全く隠さない銀時。まぁ、殺意隠さないのは銀時だけではないが。
ローブの主催者は冷静に物腰柔らかい声で説明する。
「私の住む星は他の惑星の方々からイベント星と呼ばれ、そこに住む我々住人はイベント星人と呼ばれています。そして我々イベント星人はあらゆる次元を観測並びに干渉することができるのですが、そんな我々が一番好きなのが催しごとなのです。特に特定の時期は催しをするのが
「ふ~ん……だから俺たち呼んで、色々ゲスト呼んで、こんなふざけた大会開いたと」
目を細める銀時の言葉にイベント星人は頷く。
「はい。たまたま知り会った洞爺湖仙人さんにアドバイスをもらうついでに皆さんをご紹介されて今大会を思い付きました」
「あー……なるほど……」
銀時、ノッブ、新八、ネプテューヌ、沖田さんが洞爺湖仙人に鋭い眼差しを向ける。仙人は汗をダラダラ流しながら下手くそな口笛を吹いて露骨に顔を背ける。
イベント星人は申し訳なさそうに説明を続ける。
「少々突貫作業な部分があって人員が思うように確保できずに色々と足りない部分も否めませんでした。とりあえず、ギリギリまで見てる方たちもやる方たちも楽しめるよう色々工夫はしたつもりなんですが……」
「いやそもそも見てる方はともかく、やる方は楽しめんじゃろアレでは」
と腕を組むノッブは冷静に告げてから強く言い放つ。
「最下位はウ〇コにされるんじゃぞ!! わしらに楽しんどる余裕なんぞないわ!! まー笑ってしまっていたがな!!」
「あー、そこら辺は最後にドッキリとして明かすつもりでホントに実行するつもりはなかったんです」
「えッ!? ウ〇コはドッキリだったんですか!?」
と新八が驚きの声を上げ、他の面々も意外な展開に驚きの表情を浮かべ始めている。だが沖田さんが疑いの眼差しを向ける。
「仙人みたくシバかれたくないから口から出まかせ言ってるんじゃないんですか?」
「そこまで疑われてしまうと弁明のしようがないのですが、私としては皆さんを本当にウ〇コにする気はなく……皆さんがゲームを真剣に取り組んでもらう為に利用した方便みたいものでして、はい、すみません。いやー少々やり過ぎてしまったみたいで、申し訳ない」
頭を下げるイベント星人を見ても沖田さんやノッブなども少し怒りの感情を抑え始めている。
イベント星人はある一言を口にする。
「空間に閉じ込めウ〇コにするって脅せば皆さん絶対に大会を最後まで全力疾走してくれるって仙人さんが言ってくれたんですが……やっぱり少々強引だったみたいですね」
「あッ! ちょッ! そのこと今言わないで!!」
簀巻きにされた洞爺湖仙人が慌ててイベント星人の言葉を止めようする。だがそれが逆に証拠となり、
「「「「「あん?」」」」」
銀時、新八、神楽、ノッブ、沖田さん、ネプテューヌが洞爺湖仙人にギロリと鋭い眼差しを向ける。うわやべッ! と言いたげな表情で仙人の顔は真っ青になり汗をダラダラ流す。
イベント星人はマイペースに説明を続ける。
「実は最後まで最下位の方はウ〇コにするかどうかで彼と揉めたんですよね。私はドッキリで済まそうって何回も言ったんですが」
「ちょッ!! 黙って!! もう喋んないで!!」
どんどん自分の立場を危うくするイベント星人に洞爺湖仙人は必死声をかけるが、銀時がドスの利いた声で食い気味に言う。
「いや、もっと喋れ。俺たちも色々知りたいしな」
「ちなみにもろもろの罰ゲームを考えたのもこのクソ仙人ですか?」
と新八が仙人にジト目向けながら聞くとイベント星人は首を横に振る。
「いえ。彼が考えて用意したのはウ〇コ合☆体のとこだけですね」
「そこだけかよ!!」
と新八はツッコミ入れ地面に転がる洞爺湖仙人を冷めた眼差しで見る。
「この人たったそれだけのアイデアしか出してないのに主催者名乗ってたんですか?」
恥ずかしそうに顔を背ける洞爺湖仙人。すると思い出すようにイベント星人はある説明をする。
「あッ、最初辺りの皆さんを焚き付ける為のディスプレイの文字は彼でしたね。それはもうノリノリに――」
「ちょっと黙ってホント!!」
と洞爺湖仙人が慌てて言葉を遮るが、時すでに遅し。
銀時、ノッブ、沖田、ネプテューヌさんが殺意をまったく隠さない視線を洞爺湖仙人向ける。
「あー、なるほどー……」
「どうりで高圧的で腹立つ文だったわけじゃ……」
「あの煽り文はあなたでしたか……」
「なっとく~……」
新八、神楽も無言で煽り仙人に鋭い視線を向ける。
汗を滝のように流す洞爺湖仙人に構わず、イベント星人は説明を続ける。
「後の他もろもろはフェイトさんをお借りする時に交渉したトランスさんと相談して出してもらったアイデアを取り入れました」
「トランスって俺たちの世界のあいつかよッ!! ホントなにやってんだあのバケモン!!」
とツッコミ入れる銀時の頭の中には憎たらしい笑みを浮かべながらブイサインする薄褐色の少女の顔が浮かび上がっていた。
新八も顔に青筋浮かべながら頬をヒクつかせている。
「道理で性格悪そうなキツイヤツがあったと思ったら……」
「あいつの案だったアルか……」
新八同様に神楽も青筋を浮かべている。すると話を聞いていたなのははあることに気付き、イベント星人に話しかける。
「あのー、そう言えばフェイトちゃんの姿がさっきから見えないんですけど?」
「あぁ、彼女ならさきほど仕事が終わった事を告げたらさっさと帰ってしまいましたね」
「そ、そうなんですか……」
残念そうに頭を下げるなのは。
説明を聞いた銀時は腕を組みながらジト目を向ける。
「つうかあの変身娘から聞いたアイデアほとんど採用したのかよ……」
イベント星人は手を軽く合わせながら説明する。
「全部ではないですが、結構参考になりましたね。一部はキツく、他はほどほどの罰ゲームなど。罰ゲーム系はこういう催しで外せないと私は認識しておりますし、さすがにこの内容で罰ゲームなしと言うのは少々味気ないですから」
一通り事情を聞いたノッブはため息を吐く。
「……まー、その意見は分からんでもないが……」
なんとも言えない複雑な表情を浮かべ腕を組むノッブに沖田さんとネプテューヌも相槌を打つ。
「えー……まー……色々納得できない部分もあるにはありますが……」
「こうやってネタバラし受けちゃうと、なんだかんだもう済んだことだなーって思う部分あったりなかったりするよーなー……」
色々説明を聞いたことで毒気が抜かれたような雰囲気になる参加者たち。
すると洞爺湖仙人は声を弾ませる。
「なんだッ! ではやはり私のウ〇コ案も別に問題な――!!」
「「「「「それはない(ルン)」」」」」
参加者全員がキッパリ言い放つ。
一通り説明が終わり、ひかる、ララ、ネプテューヌは一気に脱力したように地面にへたり込む。
「疲れたー……」
「ルン……」
「そして得られる物はなにもなーい……」
嘆くネプテューヌの言葉に反応してイベント星人はふと思い出したようにある言葉を言いだす。
「あッ、優勝者のネプテューヌさんと新八さんには賞品の高級おせちと100万円のおとしだま進呈しますから待っていてくださいね」
「「「「「えッ?」」」」」
驚く一同。そして新八が戸惑いの声をもらしながら聞く。
「えッ? で、でも……さっきクソ仙人が優勝賞品はないって……」
「それは彼の勝手な取り決めで、私は元から賞品はお渡しするつもりでした。安心してください」
「「よっしゃァァァァァァァッ!!」」
ちゃんと賞品がもらえることを聞いて新八とネプテューヌは両腕を上げてガッツポーズ。すると銀時と神楽が左右から新八の肩に腕を回す。
「な~、ぱっつぁ~ん。俺たち万事屋の仲間だろ? 俺社長、お前社員。だから社長命令だ。おとしだま8割寄越せ」
「ふざけんなブラック社長!」
と新八が怒鳴ると神楽も便乗する。
「私専務。お前ヒラ社員。だからお年玉9割、おせち10割寄越せ」
「ざけんな!! お前は専務じゃねェ!! 盗賊だ!!」
怒鳴る新八であったが、やがてため息を吐き柔らかい表情を浮かべる。
「……まー、お年玉はともかくおせちはみんなで食べましょうか? どうせ僕と姉上だけじゃ食べきれる量じゃないんですし」
「ぱっつぁん!! 話しが分かるアル!!」
喜ぶ神楽、そして銀時も満足げな表情を浮かべる。
ひかるが思い付いたように元気よく立ち上がる。
「じゃあみんなで年明けを祝おう!! 折角この大会を一緒に遊んだ仲間なんだし!!」
「それは良いルン!!」
ララも立ち上がりつつ相槌を打ちと銀時がボソッと「まー、ぶっちゃけ年明けにはもうだいぶ遅いけど……」と呟く。
ノッブが笑みを浮かべて告げる。
「よーし、では最後に楽しく年明け祝いする前に……」
ノッブが火縄銃の銃口を洞爺湖仙人の頭に突き付けながら黒いオーラを出す。
「わしらを散々弄んだ報いは代表してコイツに受けさせよう。主催者なんじゃしな」
すると沖田さんとネプテューヌも黒いオーラを出しながら笑みを浮かべて便乗し出す。
「なら彼の案に
「いやいや。その前に私たちが受けた罰ゲーム全部受けさせようよ」
「許して許して堪忍してェェェェェェェッ!!」
洞爺湖仙人は命乞いするがまず間違いなく彼は許されないだろう。
「では、皆さんがお帰りなる前にいま用意できた分のおせちをお渡ししますね」
主催者が振り返り白い両扉に向かおうとする。
これでようやく大変だったすごろく大会が終わりまったりのんびり年明けを祝えると思った一同であったのだが、
「た、大変です!!」
突如としてスケバン刑事から私服姿になっているマシュ・キリエライトが慌てた様子で開いた白い両扉から出てくる。そして走りながらイベント星人に耳打ちする。
事態が急変したことでノッブ、銀時、新八は声を出しつつ反応する。
「ん?」
「なんだ?」
「まだなんか残ってんですか?」
他の面々も少々戸惑っており、マシュから耳打ちを受けたイベント星人は少し驚きの声を出す。
「あー、それは結構マズいですねー……」
「な、なにかあったんですか……?」
代表して新八が戸惑い気味に問いかけるとマシュが焦り顔で困ったように説明し出す。
「じ、実は大納言さんとオイラさんが喧嘩を始めてしまって……」
「えええッ!? あのヤバそうな二人が!?」
驚きの声を上げる新八。話を聞いて他の面々も驚き顔を浮かべている。
イベント星人は冷静にマシュに話を聞く。
「喧嘩の原因は?」
「はい。実は出番が終わったお二人がなんでも待機室でどちらが最強かって話でどんどん揉め始めたようでして――」
とマシュが説明してる間に神楽とネプテューヌがあることに気付く。
「「あッ、あれ……」」
空中の方を指さす神楽とネプテューヌに反応して全員の視線も空中のディスプレイへと向く。するとひび割れていたディスプレイからミシミシという音と共にどんどんヒビが入り、ズガシャーン!! と割れて中から大きな二つの影――ビィ(?)とエル大納言が飛び出す。
「ぎゃあああああああああッ!? どっから出て来てんだあの二人ィィィィ!?」
いの一番に新八が悲鳴を上げる。そしてディスプレイを破壊して地面に降り立つ二人の落下地点には簀巻きにされた洞爺湖仙人が居た。
「えッ?」
ドカァーンッ!! とまるで砲弾のように地面に落下するダブルマッチョ。
「「「「「ぎゅあああああああああああああッ!!」」」」」
「「「うわああああああああああああああああッ!!」」」
洞爺湖仙人の近くにいた大会参加者一同は悲鳴を上げながら咄嗟に飛んで衝撃を受けながらもなんとか被害を逃れる。
爆煙のように上がった土煙が晴れれば、オーラを出して腕を組み相対するオイラと大納言の姿が。そして二人の破壊の跡を物語るように地面は埋没し大きな亀裂が円を描くように広がっていた。
あまりにもぶっ飛んだ光景を見て尻もち付いていた新八は青い顔でへっぴり腰になりながらも必死に立ち上がりイベント星人の元へと駆け寄る。
「しゅ、しゅしゅしゅしゅ主催者さァァァァん!!」
離れて衝撃波の被害から逃れていたイベント星人に新八は必死に問いかける。
「あ、アレって……た、だたのネタですよね!? ただの大会が終わった後に用意したサプライズですよね!?」
睨み合うビィ(?)と大納言を指さしながら問いかける新八にイベント星人は首を横に振りながら答える。
「いえ。ネタでもなんでもなくアレは完全にあの二人が暴走してますね。私では手に負えません」
「えええええええええええええッ!?」
まさかのガチの緊急事態に口をあんぐり開けてビックリする新八。一方、銀時たちもマッチョ共の争いに巻き込まれないように慌ててイベント星人の近くに避難し出す。
オーラを出し、仁王立ちするビィ(?)とエル大納言は言葉を交わし始める。
「へッ、やっぱ最初見た時からピーンと来たぜ。おめェは間違いなく全空の王となるオイラの最大の障害になるってなァ」
「あたしもお前のような強者と相対したのは始めてだ」
やがてビィ(?)とエル大納言はゆっくりと構えを取り始める。
「どちらが最強のネタキャラか……!」
「決めるとしよう……!」
二人の言葉を聞いて銀時はおっかなビックリしながら小さな声でツッコミ入れる。
「ね、ネタキャラの自覚あんだ……」
「最強のネタキャラって、決める意味あるのか……?」
ノッブも戸惑いつつコメントする。
沖田さんはビビりつつ焦り声を出す。
「っていうかあの人たち誰か止められないんですか!? こ、この空間破壊しそうな勢いですよ!?」
そこですかさず新八がネプテューヌに顔を向ける。
「ネプテューヌちゃん!! 君女神でしょ!! 神の力でなんとかして!!」
「無理無理無理無理無理無理無理無理無理ッ!!」
ネプテューヌは首を左右にぶんぶん振って全力拒否する。
「まったく情けない連中アルな~……」
なんとここで、今にも一触即発になりそうな雰囲気のビィ(?)とエル大納言にやれやれといった感じで近づくのは神楽。
「「ちょッ!? 神楽ちゃん!? 危ないッ!!」」
驚き心配の声を出す新八となのはを無視して神楽は呑気な声でマッチョビィとエル大納言をなだめようとする。
「お前ら~、最強決定戦も結構アルがもっと遠くで――」
しかしまったく神楽を意に返さないマッチョ共は拳を振りかぶる。
「ビィィィィイイイイイイイイイッ!!」
「ヌォォォォオオオオオオオオオッ!!」
両者の筋肉質な腕から放たれる拳がぶつかり合い凄まじい衝撃波を生み出す。
「「「「「うわァァァァァッ!!」」」」」
あまりの衝撃波に驚く一同。特にその衝撃をもろに近くで受けた神楽はボールように後ろに吹っ飛ばされる。
「「神楽ちゃァァァァァァァァァァん!!」」
新八となのはが悲鳴にも似た声を上げ、吹っ飛ばされた神楽は洞爺湖仙人が用意した融合装置に一直線に向かう。
そのままドガシャンッ!! と神楽がぶつかったショックで装置は倒れる。
「ちょッッ!?」
「だ、大丈夫!?」
心配した新八となのはがすぐさま助け出そうと近づこうとするのだが、
「な、なんか装置の方からビリビリって変な音が……」
ララが青い顔をして指摘した通り装置から電気がスパークし出し二人の動きが止まる。
「アレ……まずくね?」
と銀時が言った直後、まるで雷が落ちたかのように機械から電気が放電され眩い光を発し始める。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああッ!!」
神楽から悲鳴が上がり、新八が焦り声を出す。
「ちょっとォォォォッ!! 神楽ちゃんヤバイですって!!」
挙句の果ては、凄まじい電気を放電した装置がドカァーン!! と爆発してしまう。
「「神楽ちゃァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアン!!」」
新八となのはが神楽の身を案じて声を張り上げる。
装置の辺りは爆発の黒煙によって何も見えなくなってしまう。
すごろく大会参加メンバーはその光景を見て呆然とし、なのはが声を漏らす。
「か、神楽ちゃん……」
「か、神楽ちゃん……し、死ん……」
と新八が言ってる途中、黒い煙の奥から一つの影が姿を現していた。
一方、ビィ(?)とエル大納言は爆発も気にせずドラゴンボールばりの拳のぶつけ合いを続けている。
だが、
「おう、その戦い、私も混ぜてまらおうか」
「「――ッ」」
突如として聞こえてきた声にビィ(?)とエル大納言は拳をピタリと止め、声がした方へと顔を向ける。
二人から数歩離れた近くには――頭の左右に髪留めを二つ付け、筋肉質な腕と足を持ち、胴体がデッカイとぐろを巻いたウ〇コが腕を組んで仁王立ちしていたのだ。
そのウ〇コの上部分についたパッチリとした瞳が筋肉の怪物共を捉えており、謎の存在を見てビィ(?)は問いかける。
「なんだ、おめェ?」
「私の名は……――」
ウ〇コの下部分に付いた口が動いて言葉を発し、一拍置いて力強く言い放つ。。
「神楽大王ォーッ!! 最強の
「いやなんでだァァァァァァァアアアアアアアアアアアアッ!?」
と新八は渾身のシャウト、すかさずツッコミを入れまくる。
「なんでウ〇コと神楽ちゃんが合体してバケモンが爆誕するんだァァァァァッ!?」
ウ〇コ神楽、もとい神楽大王は筋肉ムキムキな腕で構えを取りながら言い放つ。
「私を差し置いて最強を名乗るなどおこがましい!!」
ビィ(?)とエル大納言も神楽大王を強敵と判断したのか拳を構える。
「おもしれェ……!」
「良いだろう……!」
言葉を発すると同時に最強の両者が襲い掛かるが、神楽大王は負けじとビィ(?)とエル大納言の拳をいなし、防ぎ、更には反撃までして渡り合う。
そんなドラゴンボールや北斗の拳ばりの戦いを披露する神楽大王を見て新八はまたシャウトする。
「マジで超つえェェェェェ!? なんでウ〇コと合体しただけでめっちゃ強くなんのォォォォォォォ!?」
マッチョな少女とマッチョのナマモノとマッチョなウ〇コの拳と拳がぶつかり合い、小さな衝撃波がいくつも現れ、地面にヒビまで入り始める。
「もう手に負えねェェェェェエエエエエエエエエエッ!!」
ヤムチャも裸足で逃げ出す光景を見て新八は涙を流しながら頭を抱えて叫ぶ。
沖田さんはジト目になりながら口を開く。
「……っで、どうするんですか……コレ? さっきより手に負えなくなりましたよ?」
「「「「「…………」」」」」
沖田さんの問いかけに全員が三人の破壊により壊れていくフィールドを見ており、代表して銀時が一言告げる。
「――帰るか」
「「「「「……うん」」」」」
全員が頷き、イベント星人である主催者が白い両扉の片方を開けつつ話す。
「では、みなさん。今回はコレでお開きになります。お帰りはこちらです。次はもっと面白く、そしてバランスの取れた大会になるように頑張りますね」
「次考えてんのかよ……」
白い扉に近づきながら銀時が疲れた声で言い返し、ノッブがグッと腕を上げて背筋を伸ばす。
「あ~……疲れた……」
「ようやく終わった~……」
「ルン……」
ひかるとララは疲れを表すように腕をだらけさせる。
「とりあえず、次があるとしても罰ゲームは色々と見直して欲しいですね……」
となのがが腕を垂れ下げながら言うとイベント星人が言葉を返す。
「もし今度やる時は少なくとも人員を確保して、ケツ叩き用のスタッフは用意しておこうと思います」
「あッ、スタッフいなかったからあんなメンドーなケツ叩きルールにしたんだ……」
と言うネプテューヌの言葉を聞いてイベント星人は手を合わせながら話す。
「今度はあまり禍根が残らないよう、ケツ叩き用のスタッフを見つけてくるつもりです」
「そもそもケツ叩かれたくないんですけど……」
と沖田さんが言う。
「つうかもうやりたくないです……」
そして最後に新八が脱力したように告げた時、主催者は新八におせちの束を渡す。
「コレは今用意できるだけのおせちです。残りはお年玉と大会の内容を編集したDVDと一緒に送りますので」
「あッ、どうも……」
そんなこんなで、ついに終わったすごろく大会。
扉をくぐる前、新八は一人を除いた参加者たちを見渡しながら満足げな表情で告げる。
「じゃーみなさん。最後は遠慮なく笑顔で終りにしましょうか。もうなんの枷もないわけですし」
「まッ、それも良いな……」
相槌を打つ銀時も薄く笑みを浮かべ、他の面々も笑顔や苦笑を浮かべ始めている。戦うマッチョたちを背に笑顔の参加者たちは白い扉を潜り万事屋へと向かうのであった。