魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

57 / 79
2020年明け 4:ゲームのルール

 なんやかんやで地獄のすごろく大会は進んでいき、

 

「「「「最初はグー! じゃんけんぽん!」」」」

 

 それぞれのチームの代表者(銀時、沖田さん、ひかる、ネプテューヌ)が順番決めの為のじゃんけんを始めていた。

 そして順番が決まると空中の巨大なウィンドウに一番手のチーム名が表示される。

 

『一番目、銀時&ノッブ――チーム銀ノッブ』

 

「売れないお笑いコンビみてェな名前だな……」

 

 と銀時がボソッと呟き、ダンボール箱並みに大きなサイコロを両手に持ったフェイトが銀時とノッブの元までやって来る。

 

「それじゃ、このサイコロを振って下さい」

「へいへい」

 

 ぶっきらぼうに返事をしながら銀時はフェイトからサイコロを受け取るとノッブが待ったをかける。

 

「待て銀時。お主は見るからに幸うすそうじゃ。ここワシが投げよう」

「待て待てノッブ」

 

 と銀時は右手を前に出して反論する。

 

「一応こんなふざけたイベントでもだ、やっぱスタートの口火を切るべきは主人公である俺だろ。だから俺がサイコロ振るから」

「いやいや。わしが振る。ゲストであるわしが振ってこそ、特別回にふさわしいじゃろ」

 

 だがノッブは食い下がり銀時が両手で持っているサイコロを掴む。

 中々サイコロ振らない二人を見ている新八は声を掛ける。

 

「あの……どっちでも良いから早く始めてくれません? もう正月大分過ぎてバレンタイン来ちゃってるんですし、とっとと初めてとっとと終わらせましょうよ」

 

 メタイ発言しながら進行をやんわり進言する新八の言葉など二人には耳に届かず口論は続いて行く。

 銀時がまたズイッとサイコロを自分の方へと引っ張る。

 

「いいから、俺がやるって。俺これでも最近パチンコで大当たり引いたから。任せろって」

「いやわし幸運Bくらいあるから。下手したらA-くらいあるから。わしに任せろって」

 

 やがてどんどん二人の腕に力が入り、顔に血管浮き始める。

 

「俺にやらせろ。俺が投げる。他人に自分の運命任せてらんねェんだよ」

「わしやる。わしが投げる。自分の運命は自分で切り開く」

 

 おれ、わし、おれ、わし、おれ! わし! おれッ! わしッ! と言い合いながらお互いにサイコロを引っ張り合う腕に力が入り始め、ついに。

 

「俺がやるっつんだろうがァッ!! いい加減離せやチビ魔王ォーッ!!」

「わしがやると言っておろうがァ!! いい加減譲渡せいこのダメ天パァーッ!!」

「おィィィィ!! 喧嘩してねェでいい加減さっさと始めろ!! この凸凹グダグダコンビ!!」

 

 と新八がツッコミ入れるが頭に血の上った二人の口論はヒートアップする。

 

「つうか信長っていやァ天下一歩手前で本能寺で部下に裏切られた幸うす武将って俺でも知ってんだよ!! そんな奴に任せられるかァ!! 一回自分の半生見直せ!! そしてしくじり先生に出てこい!!」

「本能寺のアレは運とかそう言うのではないんじゃアホォがッ!! むしろわしは桶狭間の無茶ぶり成功させたラッキー武将なんじゃぞ!! 一から日本史勉強し直してこいてこい!! そしてセンター試験受けてこい!!」

「「「「「…………」」」」」

 

 フェイト含め、その場にいる全員がイベントの進行を無意識に遅らせる銀ノッブにジト目を向けていた。

 それから数分、サイコロ引っ張り合いながら一向にどちらがサイコロを振るか決まらないので……。

 

「……では、当初の予定通りつつがなく進行させる為、必ずチーム内の一人がサイコロを振るように順番に回して下さい。順番決めは……メンドーなのでじゃんけんで」

 

 と言うフェイト司会進行の言葉を受けてまた「じゃんけんぽん!」をした銀時とノッブ。それにより、最初に銀時がサイコロを振り、次にサイコロを振るのがノッブと言う感じで銀ノッブのサイコロを振る順番は決まった。

 そんなこんなで、ようやくチーム銀ノッブがサイコロを振ることになる。

 銀時が両手に持ったサイコロを振ろうと構えを取ると後ろのノッブが腕を組みながら声音を低くして告げる。

 

「おい銀時。とにかく1はダメじゃ。せめて1は避けろ」

「お前どんだけ俺に運がねェと思ってんだ」

 

 銀時は頬に青筋を浮かべつつサイコロを振ろうと手を動かす。

 

「それと……」

 

 とフェイトが何か言おうするのだが銀時は「えッ?」と反応はして振り向くものの、サイコロは既に彼の手を離れて地面を転がる。すると軽快な音楽と共に『なにがでるかな?』と言葉が何度も繰り返される。

 

「おィィィ!! ごきげんようかよ!!」

「フッ……」

 

 ツッコム銀時の後ろでノッブが鼻でつい吹いてしまうと、

 

『ノッブ アウト。

銀ノッブ:9ポイント』

 

 と言うアナウンスが流れ、ノッブと銀時は周りを見渡しながら戸惑いの声を出す。

 

「えッ? なんじゃ?」

「えッ? なに? ガキ使?」

 

 チーム銀ノッブと同様に突然のアナウンスに困惑する参加者たちのうち、なのはがあることに気付いて空中の巨大ディスプレイを指さす。

 

「あッ、さっきのアナウンスの通りの文字が大きなテレビにも!」

 

 なのはの言う通り、空中にある巨大なディスプレイにも『ノッブ アウトー。銀ノッブ9ポイント』と言う文字が表示されている。

 全員の視線がディスプレイへと向き、ノッブと銀時は嫌な予感を感じてかいの一番に顔をしかめ始めている。

 突然の展開に困惑する面々をよそに真顔のフェイトがクリップボードを見ながら説明を始める。

 

「えぇ……この大会は笑ってはいけません。もし笑った場合はそのチームのポイントが1引かれます」

 

 説明する司会者に反射的に顔を向ける参加者たち。そして開始早々ルールの餌食となった銀時とノッブは困惑と不満が入り混じった表情を浮かべる。

 

「いやポイントってなんだよ……」

「つうかそう言うのって最初に説明して欲しいんじゃが……」

「さっき説明しようとしたんだけど……」

 

 と言うフェイトの言葉を聞いて銀時は「あー、そう言えばなんか言おうとしてたな……」と思い出し、ノッブは「お主せっかちすぎじゃ」と苦言を呈していた。

 司会進行(フェイト)は更に説明する。

 

「それぞれのチームには持ち点が10ポイント与えられており、笑う度に1ポイント引かれます。5秒以上笑ってしまった場合は更に1ポイント引かれます。しかし……」

 

 フェイトは銀時とノッブに黒い棒を渡す。

 

「5秒以上笑ってから20秒以内に相方のお尻か頭を叩けばポイントは引かれません」

「マジで半分ガキ使じゃねェか!!」

 

 と銀時は黒い棒を手に持ちながら声を上げ、フェイトは構わず次にベルトを渡す。ベルトの横には棒状の物を入れるための輪っかが付いている。

 

「こちらは棒携帯用のベルトです」

 

 ノッブは受け取った黒い棒を指さしながらある指摘をする。

 

「つうか二人共笑ってたらケツだろうが頭だろうがシバけんじゃろ」

「チーム全員が笑った場合は2ポイント差し引かれるだけで済みます。その場合は5秒以上笑っていても大丈夫ですか、笑い終わって再び笑ったらまたポイントが引かれます。あと、もしお尻か頭を叩かれなくても5秒以上笑わなかったらマイナス1ポイントで済みます」

 

 フェイトの説明を聞いて銀時とノッブあからさまに疲れと嫌々が混ざったような表情を浮かべる。

 

「5秒かー……半端に笑ってても結構ギリギリ笑い続けるかしないかのラインだな……」

「たぶん笑うの我慢しとる場合あるから余裕ないと思うが……20秒か……まー、ギリ余裕あるかの?」

 

 少し柔らかい黒い棒を手で弄びながら言葉を漏らす二人。そしてフェイトは他の面々にも黒い棒とベルトを渡して行く中、新八がおずおずと質問する。

 

「それで……フェイトちゃん。もしポイントが0になったら……なにがあるの?」

「罰ゲームが執行されます」

「ウ〇コになるんですか!?」

 

 と沖田さんが声を上げ、新八は呆れた声を出す。

 

「あんたマジでウ〇コって口にすることに抵抗ありませんね」

 

 沖田さんの疑問に答えるようにフェイトは説明を続ける。

 

「そちらは最下位の人が受ける罰ゲームで、ポイントがゼロになった場合はこちらから――」

 

 フェイトの言葉の途中、待機しているチームの近くにはいつの間にか四脚の机が出現しており、その上には八角形の箱に回す為の取っ手が付いた抽選機――ガラガラがあった。

 フェイトはガラガラに目を配りつつ手を向ける。

 

「1回だけこの抽選機を回してもらい、出てきた玉の数字に合わせた軽い罰ゲームが執行されます。罰ゲームを受け終わった後はまた持ち点が10点になります」

「なるほど……下手すると何回も罰ゲーム受ける羽目になるのか……」

 

 と新八は頷き言い、なのはは汗を流しながら聞く。

 

「ちなみにどんな罰ゲームが執行されるかは……」

 

 フェイトは首を横に振る。

 

「振り出しに戻る、以外は発表できません」

「振り出しに戻るとかあんのかよ!?」

 

 と銀時が驚きの声を上げ、ノッブは慌てて右手を顔の前でぶんぶん振りながら食って掛かる。

 

「いやいやいやいやいやッ!! 今のなしじゃろ!! 今のはないじゃろ!! まだルール説明してないのに!!」

「説明しようとしたのに銀時がすぐ投げてゲームを始めるから――」

 

 とフェイトが答える途中で銀時が空中のディスプレイに顔を向けて祈るように両手を握る。

 

「主催者ッ!! ポイント戻して!! お願い!!」

「お願いッ!!」

 

 さらにノッブが両手を握って祈るように頼み込むが、

 

『ダメ』

 

 主催者は許してくれなかった。

 

「「だァァチクショーッ!!」」

 

 チーム銀ノッブは頭を抱えて嘆き、ノッブは涙を流しながら銀時の胸倉を掴む。

 

「銀時ィ!! 貴様なんてことしてくれたんじゃーッ!! いきなり不利になってしまっただろうがァ!! これが原因でウ〇コにされたらわしは貴様を一生恨んでやるぞッ!!」

 

 背の低いノッブに胸倉掴まれ顔を下にグイッと持っていかれた銀時もノッブの胸倉を掴みながら言い返す。

 

「しょうがねェだろ!! これから笑わなきゃいいだけの話だッ!!」

「貴様が笑おうものならわしが貴様のケツぶっ叩いてやるッ!!」

「上等だゴラッ!! もしテメェがちょっとでも吹いたらケツが割れるくらい全力で振りかぶってやるよ!!」

 

 またおれ! わし! おれッ! わしッ! と言い合いを始めるチーム銀ノッブを見て新八はため息を吐く。

 

「あの二人……仲良いんだか悪いんだか……」

「喧嘩するほど仲が良いって言葉はあるけど……あの二人はどうなんだろ?」

 

 顎に手を当てて小首を傾げるひかるの言葉を聞いてララは腕を組んで感心した言葉を漏らす。

 

「ほーほー、地球にはそんな言葉があるルンかー」

「あるルン?」となのは。

「とりあえず、1マス進みます」

 

 と言うフェイトの言葉を聞いて今の今まで喧嘩していた銀時とノッブは「え゛ッ!?」と驚きの言葉を漏らしてさきほど投げたサイコロに目を向ける。確かに銀時とノッブが投げたサイコロは1を表す記号を空に向けていた。

 

「「あああああああああッ!! よりにもよって1だァァァァァァァッ!!」」

 

 初っ端一番運の悪い出目に銀ノッブは息ピッタリに頭を抱えて絶叫するがイベントは進行していく。

 

「……では、コマが1マス進みます」

 

 クリップボードを見ながら告げるフェイトの言葉を聞いて新八、ひかる、なのは、沖田さんは同時に不思議そうに声を出す。

 

「「「「えッ? コマ?」」」」

 

 四人の声と同時にふりだしの丸いマスが光輝き、何かが水面から浮き出るように現れる。

 出てきたモノは銀色のモジャモジャ髪の上に黒い軍帽を被り、こけしのような円柱の胴体には両腕に見立てているのであろう細い木の棒が真っ直ぐ付いており、そしてその顔はなんとも言えない表情が描かれたコマだった。

 気になった新八はコマの前に回り込んで覗き込み、思わず目を細めて冷めた声を出す。

 

「……このコマ、もろジャスタウェイじゃん。しかも銀さんと信長さんの特徴を入れた」

「それぞれのチームがサイコロを振る度にチーム専用のコマが指定のマスまで移動します」

 

 と言うフェイトの説明を聞いてなのはは即座に戸惑いの声を出す。

 

「じ、自分たちでマスに移動していくんじゃないんだ……」

「もろもろ理由があるので、皆さんにはスタート近くで待機してもらいます」とフェイト。

「コレ……わざわざ床一面こんなデッカイすごろくにしてゲームする意味、あります?」

 

 手を前に組む沖田さんが指摘すると神楽は両手を頭の後ろで組みながら冷めた声を出す。

 

「コマ使うんじゃ、コタツですごろくしてんのと大差ないネ」

 

 そう不満を呟いているうちにコマは1マス進んでいく一方で、

 

「なにをやってるんじゃ銀時ィィィ!! 貴様アレほど1出すなって言っただろうにィ!!」

「仕方ねェだろォーッ!! 時の運なんだよバカヤロォーッ!!」

 

 チーム銀ノッブは幸先の悪さに涙流しながら取っ組み合いしていた。

 もう彼らの喧嘩にも慣れたもんなのか少し離れた位置からただただ見守る参加者たち。やがてジャスタウェイコマ(チーム銀ノッブ仕様)が1マス目に止まる。

 すると、

 

『ミッションマス』

 

 と言うアナウンスが流れればディスプレイにも『ミッションマス』と言う文字が表示される。

 

「えッ?」

「なにアルか?」

「なんだろ?」

「なになに?」

 

 新八、神楽、なのは、ひかるが声を出してお互いの顔を見合わせながら声を漏らし、沖田さんとララはディスプレイに目を向けていた

 そして全員の疑問に答えるようにフェイトが説明をする。

 

「マスにはそれぞれ種類があり、今出てきたミッションマスは文字通りそこに出てきたミッション――つまり提示されたお題をクリアすれば更にマスを進むことができます」

「「マジで!?」」

 

 と銀時とノッブは食い付き、クリップボードを見る司会進行の説明は続いて行く。

 

「詳しいミッション内容はミッションが始まってから説明されます。ミッションに挑戦するかしないかは選べますが、挑戦しない場合はペナルティとしてポイント-4、更には3マス戻ってもらいます」

「うわ、結構ペナルティが重い……」

 

 と新八は顔をしかめて汗を流し、銀時やノッブ、それに他の面々もゲームとして大事な場面と判断してフェイトの説明を真剣に聞いている。

 

「ミッションに失敗した場合、ポイント-1にするか2マス戻るか選んでもらいます」

「基本的には積極的にミッションに挑戦した方がいいみたいですね」

 

 と腕を組みつつ沖田さんが今後の方針を口にしている。

 

「ミッション中棄権もできますがその場合、ペナルティはさきほど言った挑戦しないと同じになります」

 

 フェイトの説明を聞いて銀時はノッブに顔を向ける。

 

「ミッション中の棄権って、失敗とどう違うんだ?」

「いやわからん」

 

 ララが顎に手を当てながら分析し始める。

 

「前の人と同じマスに止まるとしても、結局ミッション受けなきゃペナルティが重いから、あまり後が有利で前が不利って場合も少なそうルン」

「せいぜい前の人が人柱になったお陰で危険回避くらい……ですかね?」

 

 と沖田さんがが言うとノッブはジト目で告げる。

 

「つうかマリパじゃろ。コレ絶対マリパが元ネタじゃろ」

 

 各々がルールの内容について分析や考えを口にしている中、フェイトがいったん言葉を止めるいるので銀時が訝し気に問いかける。

 

「なー、フェイト。さっきみたいに残ってる説明とか、ないの?」

「補足としては、一応ミッションの内容に合わせたタイトルが出るって、とこくらい。今のところ他に説明することはないよ」

「わかっ……た。今度は大丈夫そうだな」

 

 銀時はうんうんと頷きながら同じ轍は踏まないようにし、今度は沖田さんが「あのー……」と言いながら右手を軽く上げる。

 

「たぶん、ミッションマスの他にも色んなマスがあるんですよね? 教えてもらったりとかは……」

「できません」

 

 とフェイトはキッパリ首を振りながら告げ、沖田さんは「ですよねー」と相槌を打つ。

 

「ミッション……あー、キツそ……」

 

 新八はこれから待っている試練に対し既に疲れの色を見せ始めてか頭を下げて顔を左右に振っている。

 

「では、ミッションのタイトルが発表されるので空中のディスプレイを見てください」

 

 フェイトの言葉を聞いてゲーム参加メンバーの視線が巨大ディスプレイに向き、ミッションマスの内容がアナウンスと共に表示される。

 

『アイアンマン』

 

「「「「「…………」」」」」

 

 全員がミッションの題名を見て無言になり、銀時はゆっくりと顔をノッブへと向ける。

 

「……中身わかるか? アレ」

「いやー……いくらわしでもアレだけじゃ予測つかん」

「だよな……」

「とりあえず、受けてみる他なかろう。これ以上ポイントを失うのは後々響く」

「だな」

 

 銀ノッブの相談は終わり、銀時がフェイトに声を掛ける。

 

「フェイト、ミッション受ける」

「わかりました」

 

 とフェイトが返事をすると同時に、スタート地点の近くにさきほどの巨大ジャスタウェイコマ同様に白い両扉が地面から浮き出るように出現。更に扉の前の地面からプシュウーッ!! と勢いよく白い煙が噴き出す。

 

「「「「ッ!?」」」」

 

 大きな音と煙に新八、なのは、ひかる、ララはビックリし、更にはアナウンスが流れだす。

 

『その姿はまさにスーパーヒーロー!! 彼の名は――!!』

 

 アナウンスに合わせるように白煙の奥から人型の影が噴出する煙を飛び越えるように前へと躍り出てる。

 現れ、銀時とノッブの前にスーパーヒーロー着地するのは全身を黄土色の装甲で覆った戦士。

 右膝と左拳を地面に付けた戦士が姿を現すと、アナウンスが勢いよく彼の名を告げる。

 

『ダンボォォォォォル戦士!! アイアンマン!!』

「待たせたな」

 

 顔をグイッと上げるサングラスを掛けた長谷川(マダオ)――額には油性ペンで『鉄』と言う文字が描かれていた。

 

「「「「「ブフッ……!」」」」」

 

『銀時、ノッブ、新八、ネプテューヌ、アウト。

銀ノッブ:7点』

 

 ダンボール装甲で全身を覆ったマダオのまさかの登場に吹いてしまう各々。神楽、沖田さん、ひかる、ララ、なのはは口をつぐんで笑うの我慢しているようだ。

 名乗りを終えたダンボール戦士が無言でゆっくりと立ち上がると彼の胸には縦書きである名前が刻まれた。

 汚い文字で『アイアソマソ』と……。

 

「「「「「「アハハハハッ!!」」」」」」

「「「フフフ……ッ!!」」」

 

『神楽、沖田さん、ひかる、なのは、ララ、アウト』

 

 結局全チーム笑ってしまった後、半笑いになりながら銀時、ノッブ、沖田さんがツッコミ始める。

 

「いや、ちょッ、待て……! アイアンマンじゃなくてダンボールマンじゃねェか……!」

「あ、アイアンマン名乗ってる割にクソダサ過ぎる……! ダンボールか鉄なのかどっちなんじゃ……!」

「ど、胴体の文字汚いし間違えてるし……ひ、額のアレなんですか……! アイアンマンアピール必死過ぎでしょ……!」

「で、出てきた時のセリフなんてスネークですよ」

 

 と新八が指摘すると、真顔のダンボールマンはなぜか左右にゆっくりと移動する。だが、彼の真顔だけは銀時たちへと依然として向いていた。

 

「「「ブフォフッ!!」」」

 

 更に吹き出し笑うなのは、ひかる、ララは口元を抑え、新八は笑いながらツッコミ入れる。

 

「ちょッ! 止めろ!! シュール過ぎる!」

「あの動きと顔腹立つなー……」

 

 既に笑いが収まっていた銀時がボソッと呟くと新八が慌てて声を掛ける。

 

「つうか長谷川さん!! あんたなにやってんですか!?」

 

 新八の疑問に対し、長谷川の代わりにフェイトが答える。

 

「今回の大会の為の呼ばれた私と同じ仕掛け人(スタッフ)がいるんですが、彼もその一人です」

 

 説明を聞いて沖田さんは達観したような声で告げる。

 

「これだと……私たちの顔見知りも待機してそうですねー……」

 

 ノッブとネプテューヌは疲れたように声を漏らす。

 

「あー、きっとあいつみたいにわしらを笑わせにくるんじゃろうなー……」

「やだなー……」

 

 ようやく長谷川の動きが止まるとフェイトが告げる。

 

「では、ディスプレイにミッション内容が表示されれます」

 

 全員の視線がディスプレイに移る。

 

『ミッション

成功条件:アイアンマンを倒す

失敗条件:アイアンマンに負ける』

 

「「「「「…………」」」」」

 

 やがて全員の視線がダンボール製アイアンマンに注がれる。

 

『ミッション――開始』

 

 合図と同時にシュタッ! とダンボールマンはウルトラマンのようなファイティングポーズを取る。

 

「「…………」」

 

 銀時とノッブはジト目でお互いの顔を見た後、ダンボールマンに顔を向ける。

 

「ゆくぞッ!!」

 

 気合いの掛け声と共にダンボールマンが銀ノッブに挑む。

 次の瞬間には――銀時とノッブはダンボールマンの左右の腕を覆う装甲(ダンボール)を強引に引っぺがそうとしている。

 

「あッ! ちょッ! やめッ!!」

 

 抵抗する長谷川に構わず銀時は左腕のダンボールを引っ張って剥がし、ノッブは右腕のダンボールを剥ぎ取る。

 そのまま銀時は怯む長谷川の脳天を剥がしたダンボールではたき、

 

「あいてッ!?」

 

 次にノッブが長谷川の横顔をダンボールではたく。

 

「いったッ!!」

 

 悲鳴を上げながら叩かれた勢いでグラサンが取れてしまう長谷川は尻もちを付いて倒れる。

 

「…………」

 

 長谷川は叩かれた横顔を抑えながら容赦のない銀時とノッブを見上げ、目を何度もパチクリさせる。

 

「……フフ……」

 

『新八、アウト』

 

「ちょッ……なんですか、あの訴えかけるような物悲しい顔……」

 

 笑いながら新八がツッコンで横で沖田さんは顔を横に背けてなんとか笑わないように我慢している。

 そして新八は5秒以上笑っていると判断されたようで、

 

「テヤァーッ!!」

 

 ネプテューヌがその尻を叩く。

 

「いったッ!!」

 

 痛みを受けてすぐに笑いを止める新八。

 

『ミッション成功:1マス進む』

 

 と言うアナウンスが流れ、ディスプレイにも文字が表示されている。

 戦いを終えた二人にフェイトが近づきながら言葉を告げる。

 

「ミッション成功なので、アナウンス通り1マス進みます」

「うわッ、うま味すくな」

「まー、簡単だったしの」

 

 と銀時とノッブが吐き捨てながらダンボールを捨てると長谷川は落ちたダンボールを拾い上げて立ち上がり、

 

「ゥゥ……チクショォーッ!!」

 

 すぐさま開いた白い両扉の中に逃げ込み、白い扉はバタン! と閉じてしまう。

 そんな長谷川の逃げる姿を見たララとノッブは呆れた声を漏らす。

 

「……なんてカッコ悪いヒーロールン……」

「頭の天辺から足のつま先まで英雄(ヒーロー)とは程遠い奴だったの……」

 

 そんなこんなで銀ノッブのコマは一つ進み、フェイトが説明する。

 

「このような感じでゲームは進行していきます」

「まー、大体わかったよ」

 

 と新八が相槌を打つと、フェイトは新八たちの少し後ろに手を向ける。

 

「みなさん、立ちっぱなしは疲れると思うので休むための椅子を用意してあります」

 

 フェイトが手を向けた先には小学校の木と鉄パイプで構成された椅子が人数分用意されていた。

 

「うわー、ミスマッチだなー……」

 

 各々は少々戸惑いながら椅子に座ろうとするのだが、

 

「うわッ! 冷たッ!!」

 

 一番に座った新八が思わず声を上げて飛び上がる。

 

『※冬の風物詩、超冷たい学校椅子』

 

「うわー、ビックリしたー……」

「あー、冬あるあるだねー」

 

 プリキュアであり現役中学のひかるがうんうんと相槌を打つと何枚も座布団を持ったフェイトが全員に座布団を手渡していく。

 

「椅子が冷たくなっていると思うのでこの座布団を使って下さい」

「座る前に渡して欲しいんだけど……」

 

 と新八が呆れ声で座布団を受け取り、ノッブと銀時と沖田さんも疲れを帯びた声で座布団を受け取る。

 

「こんなビックリ要素もところかしこに用意されてそうじゃな……」

「マジでガキ使要素てんこ盛りだな……」

「このまま半分バラエティ状態で進んでくんですね……」

 

 座布団を受け取った神楽とネプテューヌは感心したような声を出す。

 

「おー、この座布団中々良さげアル。見てみるネ」

「うんうん。センスいいじゃん」

 

 と二人が座布団の表面を見せれば、『番傘を構えた神楽』と『女神姿で剣を構えたパープルハート姿のネプテューヌ』が描かれていた。

 

『※参加者専用イラスト付き座布団』

 

 どう? カッコよくね? 的な顔で自身のキャラクタークッションを見せつけてくる神楽とネプテューヌを見て銀時は再び渡された座布団を冷めた目で見る。

 

「あー、なるほど……」

 

 続くように銀時が座布団の表面を見せれば、『銀時が木刀を肩に掛けてポーズを決める絵』がプリントされている。

 すると他の面々もお互いの顔を見ながら複雑な表情で座布団を見せていく。

 

 ノッブは火縄銃を両手に持って構えながら不敵な笑みを浮かべる姿、

 沖田さんは剣の突きを構える姿、

 なのははバリアジェケット姿でレイジングハートを構える姿、

 ひかるとララはそれぞれプリキュアに変身した状態で構えを取る姿、

 

 と言った具合にそれぞれの決めポーズが表面に描かれた座布団であった。

 ノッブと沖田さんは改めて自身がプリントされた座布団を見て少々複雑そうな顔を浮かべる。

 

「いやさすがにちょいはずいのー……」

「ホント小ネタ色々仕込んできますね……」

 

 なのは、ララに至っては普通に恥ずかしそうに顔を赤らめており、ひかるはチームメイトの様子を見て苦笑いを浮かべている。

 

「あのー……僕だけおかしいんですけど?」

 

 新八が見せた座布団の表面には〝眼鏡しか〟描かれてなかった。

 

『※新八だけ眼鏡プリント座布団』

 

 それを見た銀時と神楽はお互いの顔を見てから言う。

 

「いや、特に問題なくね?」

「そうアル」

「いやちょっとは疑問持てよ!! あとちょっとは笑えよ!! ネタで弄られてんだから!!」

 

 しかし新八の訴えとは裏腹にこの場で誰も笑う者はいなかった。

 万事屋の毒舌コンビは平然とした顔で告げる。

 

「当たり前のこと笑えって言われてもなー」

「そうそう」

「ネタとしてはパンチが弱いしの」

 

 とFate側のノッブまで便乗する。

 

「おいコラ好き勝手言いやがってテメェら!!」

 

 新八が拳を握りしめているとなのはとララが怒れる青年をなだめようと声を掛ける。

 

「ま、まーまー」

「お、落ち着くルン」

 

 そんなこんなで座布団引いて学校机に座る参加者たち。

 次の組である新八とネプテューヌのチームはサイコロを振る準備に入っている。

 

『二番目、志村新八&ネプテューヌ。チーム名――メガメガ。現在ポイント7』

 

「うわー、しっかり笑った分引かれてるんだ……」

 

 アナウンスを聞いて新八が少し嫌そうな顔をしながら呟き、沖田さんが腕を組みながら分析し出す。

 

「どうやら、名前が発表されると現在のポイントも発表されるみたいですね……」

 

 一方、銀時とノッブは座りながら平坦声でコメントする。

 

「眼鏡と女神……ね」

「まー、オーソドックスじゃな」

 

 後ろからの声に反応して新八は振り向き、待機席の天パ&魔王を見て眉間に皺を寄せる。

 

「あいつらどこのベテラン芸能人だ?」

 

 大会のルールの説明も一通り終わったことにより、ついにすごろく大会が本格的に始まった。

 

 

 

 サイコロを拾ったネプテューヌは両手で強く握りしめながら念じるように呟く。

 

「とりあえず、まずはこの女神たる私がサイコロを振りましょう。運が裸足で逃げだしそうな眼鏡が相方である以上、女神である私が最初に高い数字で歩数を稼いでおかなくては」

「なんで組んだだけこんなにディスられないきゃならないの? 僕」

 

 女神の後ろで新八が不満を呟くとネプテューヌが両手に持ったサイコロを投げる。

 

「よっ……」

 

 軽くサイコロを投げるネプテューヌ。

 サイコロはコロコロと転がり、出た目は……1。

 

「「「「フッ……!」」」」

「「「フフ……!」」」

 

『銀時、なのは、ひかる、ララ、アウト。

銀ノッブ:6ポイント』

 

「ちょっとネプテューヌちゃァーん!!」

 

 とチームの相方である新八がすぐさま文句を言う。

 

「君女神でしょォ!? なんで初っ端から一番出しちゃダメな数字出してんの!! 今さっき人のことボロクソ言っといて!! せめて3くらいは出そうよ!!」

「知りませ~ん! 私は幸運の女神じゃなくてプラネテューヌの女神ですゥ!! サイコロの数字の出目なんて保障できませ~ん!!」

「開き直んじゃねェ!! 腹立つなコノヤローッ!!」

「それに相方が悪運新だったからこんな出の悪い目が出たのかもしれないでしょー!」

「悪運新って誰だコラァ!! ワザとか!! ワザと神を新にしたのか!! そして新ってアレか!? 新八の新から取ったのかおい!!」

「ツッコミがくどい!!」

 

 などと新八とネプテューヌが喧嘩している間にスタートのマスからチームメガメガのコマが出現する。

 頭の髪型と髪飾りはネプテューヌ、そしてなんとも言えない顔には新八と同じ型の眼鏡が掛けられていた。

 新たなコマに出現に一番に反応するのは銀時と沖田さん。

 

「おー、出てきた出てきた」

「やっぱりチームに合わせて特徴作ってるんですね」

 

 兎にも角にも1コマ進み、チームメガメガのコマはチーム銀ノッブのコマの横に並び立つ。

 そしてチーム銀ノッブの時と同じ、ディスプレイに文字が表示される。

 

『ミッションマス――アイアンマン』

 

 ディスプレイに文字が表示されると同時にアナウンスがされ、さきほどと同じように白い両扉の前の地面からプシュウーッ!! と勢いよく白い煙が噴き出す。そしてテンションの高いアナウンスが流れだす。

 

『その姿はまさにスーパーヒーロー!!』

 

「一回やったんだからもういいでしょうに……」

 

 大人しくスーパーヒーローの登場を待っている新八は冷めた声を漏らすが、アナウンスは続く。

 

『彼の名は――!!』

 

 アナウンスに合わせるように白煙の奥から人型の影が吹きだす煙をかき分け飛び出すように前へと躍り出てる。

 現れ、新八とネプテューヌの前にスーパーヒーロー着地するのは全身を黄土色の装甲で覆った戦士。

 右膝と左拳を地面に付けた黄土色の戦士の名をアナウンスが再び勢いよく彼の名を告げる。

 

『ダンボォォォォォル戦士!! アイアンマン!!』

「待たせたな」

 

 顔をグイッと上げるサングラスを掛けた長谷川(マダオ)――額には油性ペンで『鉄』と言う文字が描かれていた。

 

「「「「「…………」」」」」

 

 二度目のダンボールマンの登場を無言で見る一同。ちなみにだが、剥がされた両腕のダンボール装甲は補修されまた腕に取り付けられている。

 長谷川ダンボールマンがゆっくり立ち上がり、その横姿を座って見ていた銀時は笑い声を我慢してか声を震わせながら他の面々に声を掛ける。

 

「は、剥がされた腕の装甲……テープで補強してあんぞ」

 

『※ダンボール戦士の装甲補修はセロハンテープ』

 

「だ、ダンボールなんだからガムテープ使えば良かろうに……」

 

 ノップも笑うの我慢しながらコメントする。

 他の面々も雑にテープで補強したダンボールマンの腕を見て顔を少し逸らしたりとちょっと笑いそうになっている。

 ダンボールマンが二三歩と歩くとボトッ、と両腕のダンボール装甲が地面に落ちる。

 

「あッ……」

 

 と長谷川が声を漏らす。どうやら粘着力が足りなかったらしい。

 

「「「フフフッ……!!」」」

「「「「ハハハッ……!!」」」」

「アハハハハハッ!!」

 

『銀時、ノッブ、沖田さん、なのは、ひかる、ララ、ネプテューヌ、アウト。

銀ノッブ:4ポイント

メガメガ:6ポイント』

 

 銀時とノッブは笑いながらツッコミ入れる。

 

「〝あ〟じゃねェだろ〝あ〟じゃ……!」

「わ、分かるじゃろすぐに落ちるくらい……!」

 

 新八がベルトの差し入れ口から棒を即座に引き抜き相方のケツをシバく。

 

「おりゃァ!!」

「いったァーッ!!」

 

 ネプテューヌが悲鳴を上げている一方で「肛門食いしばれ!」と言って神楽も沖田を椅子から立たせてケツを叩こうとしている。

 

「ちょちょちょッ!! 私5秒以上も笑ってないと思います!! 笑って――!!」

「セイヤァァァァァーッ!!」

「あ゙い゙だッァァァァァァーッ!」

 

 神楽のバカ力で尻を叩かれた沖田さんは悲鳴を上げ、お尻を抑えながらながらぴょんぴょん跳ね回る。

 

「ブフフォッ……!!」

 

『ノッブ、アウト。

銀ノッブ:3ポイント』

 

 沖田さんが痛がる姿を見て吹きだすノッブの脳天に銀時がすかさず棒を叩きつける。

 

「無駄に笑ってんじゃねェーッ!!」

「いったァーッ!!」

 

 尻を叩かれたネプテューヌは涙目になりながら尻を抑えつつ新八に抗議する。

 

「新八ィィ!! プリチーな女神様のお尻をあんな強く叩くことないでしょ!!」

「自分でプリチーとか言うんじゃねェよ!!」と新八。「つうか叩かねェとポイント減るんだからしょうがないでしょ!! 5秒以上笑ってたし!! あと言っとくが僕は君みたいな駄女神にはなんの遠慮もしません!!」

「にゃにをォーッ!!」

 

 とチームメガメガが口論している途中でチーム銀ノッブは慌て出す。

 

「おィィィィ!! どうすんだァァァァ!! いきなり罰ゲームに王手掛かってんじゃねェか!!」

「す、すまん!! いやしかし……沖田のリアクションマジおもろくてな、反射的に吹いてしまった」

 

 その話題の沖田さんは、

 

「いっだいっだッ!!  い゙っだい゙ッ!!」

 

 神楽の一撃が痛かったのかまだ涙目になりながらぴょんぴょん跳ねており、自然と全員の注目がそのオーバーなリアクションをする幕末剣士に向く。ぴょんぴょん跳ねる沖田さんを見て笑いを堪えるように顔を逸らす者もちらほら。

 ようやく跳ねるの止めた沖田さんは尻をさすりながら涙目で神楽に抗議する。

 

「ちょっと神楽!! 強く叩きすぎですよ!! むっちゃ痛かったです!!」

「銀ちゃんと同じ剣士名乗ってんならちょっと痛いぐらい我慢するネ」

 

 相方の神楽は黒い棒を肩にポンポンと当てながら呆れたように告げると沖田さんはすぐさま言葉を返す。

 

「確かに私は剣士を選んだ以上女を捨てたと言えましょう! でもお尻は乙女なんです!!」

「いやお尻は乙女って――!」

 

 即座に新八がツッコもうとするが言葉の途中でフフ……! と吹きだしてしまう。

 

『新八、アウト。

メガメガ:5ポイント』

 

「てーい!!」

 

 すかさずお返しとばかりにネプテューヌが新八の尻を思いっきり叩く。

 

「いったァッ! ちょっとォ!! 変なこと言って笑わせないでくださいよ!!」

 

 新八が文句言うと沖田さんはすかさず言葉を返す。

 

「いやでも、私のお尻は……乙女なんです」

 

 一旦溜を作って真剣な顔で言う沖田さんに対して新八とネプテューヌは、

 

「「……フフ……!」」

 

『新八、ネプテューヌ、アウト。

メガメガ:3ポイント』

 

 間を置いて笑った新八とネプテューヌはすぐに沖田さんに文句をぶつける。

 

「もォー!! だから止めてッ!! いまのキメ顔ワザとでしょ!!」

「この幕末腐れ剣士芸人!! 私たちまで罰ゲームリーチ寸前にしやがってェ!!」

 

 文句を受ける沖田さんは軽く右手を振って食い下がる。

 

「いやいやいや。だから私のお尻は――」

「「しつけェんだよッ!!」」

 

 とチームメガメガが同時に怒鳴り、その様子を眺めてなのはが汗を流す。

 

「始まって早々、足の引っ張り合いが始まってる……」

 

 チーム同士の足の引っ張り合いを眺めていたフェイトはようやく新八とネプテューヌに声を掛ける。

 

「それで、チームメガメガの二人はミッションに挑戦しますか?」

「「……」」

 

 フェイトの言葉を受けてさきほど沖田さんと言い合ってた新八とネプテューヌは反応し、やがて両腕の装甲(ダンボール)を失いながらファイティングポーズを取る長谷川を見る。  

 しばらくしてチームメガメガは無言でお互いの顔を見つめ合った後、

 

「ちょッ!! やめッ!! やめてッ!!」

 

 ダンボールマンの両足の装甲パーツを引っぺがし、その剥がした足の装甲パーツで二人はマダオの左右の頬をバシンッ! バシンッ! とぶっ叩く。

 

「いったッ!! ブッ!!」

 

 痛みと衝撃で尻持ちを付く長谷川は痛そうに頬を抑えて体を前に屈め、新八とネプテューヌは無表情で奪い取った足のダンボール装甲を長谷川の近くに捨てる。

 その光景を見ていたノッブが腕を組んでコメントする。

 

「容赦ないのー。沖田の奴のせいでイライラ溜まっとるな、アレは」

「えッ? 私のせいですか?」

 

 沖田さんは自分の顔を指さしながら不思議そうな表情を浮かべている。

 やがて袖なし丈なし状態の長谷川さんは涙を流しながら捨てられた腕と足のパーツを回収し、哀愁漂う背中を晒しつつトボトボと白い扉の中へと戻っていく。

 

『ミッション成功:1マス進む』

 

 アナウンス通り、チームメガメガのコマが1マス前へと進む。

 

「……それで、次は確かなのはたちのチームだったかの」

 

 もう情けないヒーローにまったく興味示さず、ノッブが小中学生チームに顔を向ければなのはは「あッ、はい」と言いながら立ち上がり、ひかるとララも席から腰を上げる。

 

『三番目、高町なのは&星奈ひかる&ララ。チーム名――プリなの。現在4ポイント』

 

「なんかどっかの少女向けアニメのタイトル略したみたいな名前だな」

 

 と銀時がサラッとコメント入れ、ノッブが「いやちょっと待て」と言葉を掛ける。

 

「プリなののポイント数おかしくはないか? あやつら三人共三回もアウトになったのに何上残り4ポイントなんじゃ? せいぜい残ってても1ポイントくらいじゃろ」

 

 ノッブの指摘を聞いてなのはも「あッ、確かに」と気付き、ひかるやララも不思議そうな表情を浮かべていた。

 ただノッブの言葉を聞いて沖田さんは呆れた表情を浮かべている。

 

「ノッブ……『わしは普段は細かこと気にせんぞー』的なオーラ出しといて随分みみっちいこと指摘するんですね?」

「……神楽、これからはもっと全力で沖田の尻をシバけ。わしが許す」

「うっすッ!!」

 

 と神楽は敬礼し、沖田さんは「ちょちょちょちょッ!!」と青い顔して慌て始めている。

 ノッブの指摘に対し、司会進行であるフェイトがフリップボードを確認しながら答える。

 

「チームプリなののポイントについてなのですが、プリキュアの二人は二人で一人の扱いなので二人共笑ってもマイナス1ポイントになります。ただし、どちらかが笑った場合はポイントが1引かれます」

「あー、なるほど……」

 

 と銀時は納得する。

 フェイトの説明を聞いて特に意義を申し立てる者はいなかった。

 チームの人数が多い方がミッション挑戦時は有利かもしれないが、笑う確率は人数多い方が高いのでチームプリなのが有利か不利か判断しかねているのだろう。

 疑問も解消されたところで、待機席から少し前まで歩きサイコロを持つなのはにひかるとララが応援する。

 

「じゃあ、最初はなのはちゃん。ファイトだよ!」

「ガンバルン!」

「ガンバルン?」

 

 時折ゲストのララが原作で見せたことない不思議な語尾の使い方になのはが少々戸惑いつつ、サイコロを振る。

 そして出た目は……1。

 

「「「ええッ!?」」」

 

 まさかの出目に驚くチームプリなのとは対照的に銀時と新八は、

 

「「フッ……」」

「あッ、笑った」

 

 と沖田さんが指をさして指摘するとアナウンスが流れる。

 

『銀時、新八、アウト。

銀ノッブ:2ポイント

メガメガ:2ポイント』

 

 すかさずノッブとネプテューヌが二人の脳天に向かって棒を振りかぶる。

 

「もうあと2ポイントじゃボケェェェェ!!」

「こっちも2ポイントじゃァァァァァ!!」

「「いっだァァァァァァァァッ!!」」

 

 頭思いっきり叩かれた二人は悲鳴を上げ、銀時はすぐさま文句を言い放つ。

 

「無駄に叩くんじゃねェェェェ!! 俺5秒以上も笑ってねェだろうが!!」

「えええい!! うるさい!! だったら無駄に笑うなッ!!」

 

 ノッブがキレながら言い返す。

 もう追い詰められた二チームに構わず、チームプリなののコマがスタートマスの地面から浮くように出現する。

 新八は頭を摩りながら出てきたコマの後ろ姿を見て眉間に皺を寄せる。

 

「……なんか、なのはちゃんたちのコマ、頭がおかしくありません?」

 

 新八の指摘を受けて、気になったのか沖田さんが席から立ちあがりチームなのプリの動くコマを正面から見ようと回り込む。

 その姿と顔はジャスタウェイ、頭の髪は青と桃と栗色がメッシュのようにアンバランスに混ざり、左右の側頭部にはピンクと栗色のツインテールがそれぞれ生えて左右四本、そして頭部には丸いボールのような先端が付いた触覚が生えていた。

 その頭はまるで足が四本生えた触覚を持つ生き物みたいな感じだった。

 

『※特徴ごった煮ジャスタウェイ』

 

「ブフッ……!」

 

 思わず吹いて口を抑える沖田さん。

 

『沖田さん、アウト』

 

 ヘンテコジャスタウェイを見た沖田さんは半笑いになりつつツッコミ入れる。

 

「フフ……ぜ、全部合体させることないでしょ……!」

 

 するとすさかさず棒を持った神楽が沖田さんに駆け寄りながら振りかぶる。

 

「おりゃーッ!!」

「い゙ッッッだァーッ!! もォ!! だから強いですって!! お尻は乙女なのに!!」

 

 尻を抑えながら背中をエビのように逸らす沖田さんに新八は呆れた視線を向ける。

 

「いやあんたもしつこいですね。もう何回言うんですか」

 

 相棒の神楽は腰に手を当てて不満声を出す。

 

「ソッジーッ!! 一々わざわざ笑いに行くんじゃないネ!! 今んとこ私らのチームはソッジーの失点が大きいアル!!」

「いやだって、正面から見ると結構きますよ、アレ」

「マジでか~?」

 

 気になった神楽は1マス進んで止まっているヘンテコジャスタウェイを正面から覗く。

 

「ブハハハハハハッ!!」

 

『神楽、アウト』

 

「ほーらみなさい!!」

 

 沖田さんがお返しとばかりに神楽の尻を棒で思いっきり叩く。

 

「あいったァーッ!!」

 

 神楽が尻を抑えて摩る中、空中の巨大ディスプレイにミッション内容が表示されアナウンスが聞こえてくる。

 

『アイアンマン』

 

「「「「「…………」」」」」

 

『その姿はまさにスーパーヒーロー!! 彼の名は!! ダンボォォォォォル戦士!! 長谷川!!』

 

「もうアイアンマンて呼ばれなくなったぞ」

 

 と銀時がツッコミ入れる。

 全員の視線が白い扉に向き、扉が開くと同時に地面の数か所から白煙が勢いよく上がる。もう三度目である。

 そして出てくるであろうダンボール戦士、なぜか今度はゆっくり白い煙を下から浴びながら前へとやって来る。

 出てきたダンボールマンの足の装甲はテープでくっ付けており、両腕はダンボール装甲がなくなってノースリーブ状態だった。

 

『※ダンボール戦士、腕の修復間に合わず』

 

「「「「フフッ……!」」」」

 

 銀時、新八、ノッブ、沖田さんが吹き出してしまっている途中、ダンボール戦士の足の装甲をくっ付けていたテープの付け根が外れて両足の装甲が二つとも地面にずり落ちる。

 

「ッッッ……!?」

 

 ダンボールの裾を踏んでバランス崩し、腕と足をバタつかせながら盛大に前へと倒れてしまう長谷川。

 

「「「「「アハハハハハハハハッ!!」」」」」

 

 まさかと言うか予想通りのアクシデントに全員笑ってしまう。

 

『全員、アウト。

銀ノッブ:0ポイント

メガメガ:0ポイント

プリなの:2ポイント

※ポイントゼロになったチームがいますが、ミッションは続行されます』

 

「だ、大丈夫ですか……?」

 

 笑いながらもなんとか長谷川を心配して歩み寄り声を掛けるなのはに続き、はるかとララが声を掛けながら手を出す。

 

「け、怪我してませんか……?」

「へ、平気……ルン?」

「あ、あぁ……」

 

 と顔を上げた長谷川のグラサンにはヒビが入っていた。

 

「「「んん……!」」」

 

 まさかの不意打ちに思わず吹き出そうになった三人はなんとか堪えつつ顔を背ける。

 長谷川は少女たちの助けは借りずに起き上がろうとするが、ダンボールの袖が邪魔で立てずに足をバタつかせる。

 長谷川は必死にダンボールを脱ごうとする。

 

「ふッ! ふッ! ふッ! ふッ! ふんッ!!」

 

 バタバタバタバタバタバタッ!! とダンボールを蹴りまくる長谷川の姿を見て銀時、ノッブ、新八はそれぞれ笑いながらツッコミ入れる。

 

「な、なにやってんだおめェは!」

「ぶ、無様過ぎるじゃろ!」

「ちょッ、もうやめて! 腹痛いッ!!」

 

 チームプリなの以外は我慢できずに笑いまくり、ようやくダンボールが脱げた長谷川はまた袖なし丈なし状態になってしまう。

 

「……少女たち……俺の負けだ。さらば」

 

 長谷川が地面に落ちたダンボールを拾い上げ颯爽と空いた白い両扉の中に逃げ込む。

 

『ミッション成功』

 

「「「…………えッ?」」」

 

 とチームプリなのの三人は呆けた声を漏らし、銀時とノッブは冷静にコメントする。

 

「もう嫌になったんだな……」

「まぁ、あそこまで醜態晒せばのー……」

 

 すると横で新八が生気の薄れた声で告げる。

 

「……それより、銀さん、信長さん。僕ら両チーム共もう0ポイントなんですけど?」

「「あッ!!」」

 

 と驚きの声を上げ、ネプテューヌもヤバッ! といった表情になる。

 タイミングを見計らったように八角形の箱が付いた抽選機――ガラガラを置いた机に近くに立っているフェイトが声を掛ける。

 

「それでは、チーム銀ノッブとメガメガはポイントが0以下になりましたので抽選機を回して下さい」

 

 果たして、両チームを待ち受ける罰ゲームとは?

 




銀時「つうかこのペースだと今回の特別編いつ終わんだよ。もう正月過ぎて二月入ろうとしてんぞ」

ノッブ「来年の正月までには終わるじゃろ」

銀時「ダメだなこりゃ」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。