魔法少女リリカルなのは×銀魂~侍と魔法少女~   作:黒龍

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特別回編:2020年明け&50話達成
2020年明け 1:年末だからってなにか特別なことをしようと思っても中々思い付かない


「年末……なんかネタねェの?」

 

 と万事屋の和室に設置したコタツに下半身を入れる自堕落なやる気のない侍――坂田銀時はアンニュイな声を出しながら視線を和室の端に置かれたクリスマスツリーへと向ける。

 

「クリスマスの用意もしたってのに、結局年越しまで秒読みだしよー……」

「いやちょッ……えッ?」

 

 眼鏡を両耳に飾ったツリーが戸惑いの声を漏らす。

 

「そんなモン思い付くワケないネ……。つうか考えんのメンドーアル……。年越しそば食って終わりネ……」

 

 だが、戸惑いの声を漏らすツリーに構わずに銀時の正面から斜め右の位置に座る神楽は頬杖を付きながら向いたミカンの切れ端を口に放り込む。

 銀時も神楽同様に頬杖を付き、眉間に皺を寄せながらダルそうな声を出す。

 

「まー、それもそうだな……」

 

 すると銀時に対面する形で座る高町なのはは苦笑いを浮かべる。

 

「いやー、そこは肯定しちゃダメですよ。折角また最新話が定期的に投稿され始めるんですから、こういう時こそ何か特別なことをやっとくべきなんじゃなんでしょうか」

「いや……あの……えッ? なにこれ?」

 

 またもパンツ一丁のツリーが戸惑いの声を漏らすが周りの者たちは依然として反応を示さず、銀時は頬を机の上に乗せてアンニュイな眼差しをなのはに向ける。

 

「つってもよー……特別なことつたってパッと思いつかねェよ……。つうか考えんもメンドーだし実行すんのもめんでェよ。あと本編進めんのもメンドイ……このままコタツで一生を過ごしたい……」

 

 あまりにも気力と言う感情が抜け落ちた銀魂主人公を見てリリカルなのはの主人公は何も言えなくなったのか苦笑いを浮かべながら頬を掻く。

 頬杖を付きながらさっきからミカンの切れ端を口にパクパク放り込んでいた神楽は気だるげな眼差しでなのはに語り掛ける。

 

「このグータラが人の形したような主人公に何言っても無駄ネ、なのは。今回の年末&年越し特別回は私たちのコタツ風景をお届けすれば良いアル」

「じゅ、需要あるのかな……それ?」

 

 となのはが戸惑っているとツリーが声を出す。

 

「いやあの……待って……話進めないで……」

 

 片足立ちで両腕を両側に広く伸ばしたツリーが言葉を掛けるが他の面々はまったく反応を示さない。

 頬杖を付いたまま神楽は達観したような表情で告げる。

 

「そもそも年末はガキつか、紅白。年越しは格付け、相棒、スポーツ王……見るもん多すぎて特別回やってる暇なんてこれっぽちもないアル」

「それ神楽ちゃんの事情なんじゃ……」

 

 となのはが言おうとすると銀時が顔を上げ腕を組みながら「そうそう」と相槌を打つ。

 

「大体、年末は特番ばっかでわざわざ俺らがなんか特別なことする必要ねェんだよ。どうせみんなそっちで年末と年越し気分味わって特別感エンジョイしてんだよ。あとぶっちゃけ、年末にも年越しにも結局間に合わなかったしな」

「いやー、そこら辺はあんまり言わない方が……」

 

 となのはがやんわり告げると神楽がバッサリ告げる。

 

「間に合わなかったの事実ネ。それに私たちの小手先の特別感なんて提供したところでどうだって話ネ。こうやって(あった)かくなるまでコタツでゴロゴロしてるのが一番アル」

 

 そう言って神楽が後ろに倒れてゴロンと寝転がる。

 するとなのはの背中側にある和室の襖が横にズレて開き、Fateシリーズのソーシャルゲーム――FGOでお馴染みの二人のサーヴァントが姿を現す。

 

「……まったく、折角の年末だと言うのになんともまー怠惰なことじゃ。こういう時こそパーッと盛り上げるものじゃろうが。パーッと」

 

 やれやれといった感じに告げるのは通称ノッブと魔人アーチャーでお馴染みの織田信長。ノッブは銀時の右斜め前の席に座ってコタツに足を入れる。

 

「ふー、寒い寒い……」

 

 と続くようにノッブの横に座ってコタツに足を入れるのは桜セイバーと沖田さんでお馴染みの沖田総司。

 和室に入ってきたノッブと沖田さんをアンニュイな眼差しで見ながら銀時は気だるげなを声を出す。

 

「つってもなー……俺が思い付くのはジャンプ年末号の発売日くらいだしなー……」

「それは思い付くとは言わん。気を付けると言うんじゃ。しかみゴミ出しの日を忘れない程度のな」

 

 腕を組むノッブはジト目で告げ、横に座る沖田さんは手に持った白いレジ袋から何かを取り出す。

 

「なのはちゃん、はいコレ。お団子買ってきたので一緒に食べましょう」

「あッ、ありがとうございます」

 

 なのははお団子が入った入れ物二つを受け取るとコタツに座る全員が団子を食べられるように机の真ん中――入ってるミカンの量が少ない木皿の横に置き、箱を開ける。

 

「あの……誰もツッコまないの? ホントにこのまま話進めてくの?」

 

 ツリーがなんか言うがその場にいる全員スルー。

 開けた箱から姿を現すみたらし団子や三色団子を見て銀時は少し声を弾ませながら手を伸ばす。

 

「おッ、ちょっと高そうな奴じゃん」

「そりゃー、年末ですしね。ちょ~っと奮発しました」

 

 沖田さんは薄く笑みを浮かべつつ団子の串を手に取ってパクリと一番目のみたらし団子を口に含む。

 するとノッブがレジ袋に手を突っ込みながらオレンジ色の丸い物を取り出す。

 

「あー、あとミカンの追加じゃ」

 

 一個一個ミカンを取り出して、ミカンが少なくなった木皿に新しいミカンを乗せるノッブ。

 銀時は「サンキュ」とお礼を言い、神楽は上半身を上げて右手に団子を取って食べながら左手でミカンを取ってすぐさま皮を剥き始める。

 ノッブは三色団子を一個口に含んで頬を少し膨らせながら銀時に問いかける。

 

「モグモグ……それで、なんか年末か年明けの為のイベントの案は考えついたか? モグモグ」

「モグモグ……ねェよんなもん……モグモグ」

 

 と銀時は団子をもっさもっさ食いながら気だるげな声で話す。

 

「今回の俺ら銀リリF組の正月は、コタツで紅白見ながらミカン食って甘味食って正月特番見ながらおせち食って終わりなんだよ」

 

 銀時は団子をもっさもっさ口に含みながらやる気のない声で告げる。

 

「なんとも心が躍らん年末と年明けで終わりそうじゃな……」

 

 と言ってからノッブはふと後ろに振り向き、和室の隅っこに置かれた新八(クリスマスツリー)を見て再び銀時へと顔を向ける。

 

「おい、なんじゃアレは? いくらなんでもアレはあんまりじゃろ」

 

 ノッブは尖った串の先をツリーへと向けながら眉間に皺を寄せて告げる。

 

「もうクリスマスも過ぎているというのに、なにうえまだツリーがあるんじゃ?」

「あー……」

 

 と銀時は思い出したように声を漏らしつつ説明をする。

 

「片すの忘れてた。つうかメンドーだからそのまんまにしてたな」

 

 ノッブは腕を組んでジト目となる。

 

「本当に風情も何もないのー……。おぬしらこのまま年越すつもりか? わし、あんまりクリスマスには詳しくないから分からんが、あんなみすぼらしいツリー年明けまで置いておいたら縁起が悪くならんか?」

「まー、赤いサンタじゃなくて黒いサンタが寄ってきそうな価値ゼロ円のクソツリーだけどよ、飾らんよりはマシだろ」

 

 すると団子を口に咥えた沖田さんがツリーを見れば、ツリーの顔面には青筋が浮かび上がっており、沖田さんは口に団子を入れながらサラッと告げる。

 

「あのツリーだと別のメリーが寄ってきそうで――」

「ちょっと待てやコラァァァァァァァァァ!!」

 

 我慢の限界を迎えたかのようにパンツ一丁で両耳に眼鏡を垂らした新八(ツリー)がコタツの机に両手をバンッ!! と叩きつけながら張り裂けんばかりに叫び、声を荒げる。

 

「黙って聞ィてりゃァ勝手なことばっか言いやがってコノヤローッ!! いい加減誰かツッコめこの状況!! どこもかしこもツッコミどころ満載なのになんで誰も言及しねェんだバカヤローッ!! なんで僕はクリスマスツリーになってんだ!! なんでFateのキャラが出てくんだッ!! そもそもなんで僕ら万事屋にいるんだァァァ!! 海鳴市もリリカルなのはもどこ行ったァァァァァァァァ!! あともう正月も過ぎちまったぞコノヤロォォォォォオオオオオオオオオ!!」

 

 するとノッブは「ほほォ?」と興味深そうに怒鳴り散らすツリーをまじまじと見ながら告げる。

 

「ただの貧乏くさいツリーかと思いきや動く上に喋るツリーとは中々に奇怪で面白いではないか。カルデアでも動く雪だるまは見たが、かように気色の悪いツリーは初めてじゃ」

「へー、そうなの?」と銀時。「うちのツリーに興味沸いたなら片付けるついでにおたくんとこに引き取ってくんね」

「いやじゃ」

 

 ノッブはバッサリ断ると、

 

「いい加減人様をクリスマスツリー扱いすんの止めろコラァァァァァァ!!」

 

 ツリーは張り裂けんばかりの声でシャウトし、マシンガンのようにツッコミ始める。

 

「僕はクリスマスツリーじゃねェ!! 志村新八だァ!! つうかパンイチで耳に眼鏡飾ったツリーがどこの世界のクリスマスにあるんだボケェ!!」

 

 そこまで捲し立ててツリー、もとい新八はグイッと顔をなのはに向ける。

 

「つうかなのはちゃん!! なんで一番の常識キャラの君が開口一番にツッコミしないの!? この空間ツッコミ要素満載でしょうが!! 僕が話の始まり早々ツリーにされてることにツッコミ入れてよ!!」

「い、いやー……そのー……」

 

 なのはは気まずそうに視線を逸らして汗を流しつつ答える。

 

「……神楽ちゃんと銀時さんがツリーがないから新八さんが身を張ってツリー役を買って出たって……」

「そのクソッタレ共の言う事は8割信じちゃダメ!! 僕はなんか知らねェうちにツリーにされたんだよ!! つうかアレのどこがツリーなんだよチクショーッ!! あともう正月終わってんだよコンチクショーッ!!」

 

 嘆く新八に銀時は腕を組みつつ冷静に告げる。

 

「しょうがねェだろ。年末は話用意しようにもクリスマスから年越しまでスパン短過ぎんだよ。メンドーだし満足に話作れなかったからせめてものクリスマスネタだよ。あと悲しいかな正月も間に合わなかった」

「ぶっちゃけ過ぎだろッ!! あとだからって人をパンイチ眼鏡ツリーにすることありません!?」

 

 銀時と新八のやり取りを聞いてノッブと沖田さんは肩透かしを食らったかのような声を出す。

 

「なんじゃー、ただの気持ち悪い眼鏡じゃったか。てっきり人型の気持ちの悪いツリーかとかと思った」

「なんだー、ただの変態でしたか。FGO(こっち)基準で動くツリーと思い込んでしまいました」

「ちょっとあんたら!! いちいち人のことディスるの止めてくれません!? 割と傷つくんですけど!!」

 

 と新八が悲し気な声でツッコミ、並んで座るFateグダグダコンビに指をビシッと突き付ける。

 

「つうかなんであんたらFateのキャラが万事屋(ここ)いんのッ!? なんでさも元からいました感醸し出しながら馴染んでんの!?」

 

 そして新八は混乱する頭をわしゃわしゃかき乱しながらありったけの声で疑問を巻き散らす。

 

「そもそもなんで僕らどころなのはちゃんまで万事屋いんの!? 海鳴市はッ!? ジュエルシードはァ!? フェイトちゃんはァッ!? リリカルなのははァーッ!? 『魔法少女リリカルなのは×銀魂』の本編はどこ行ったァァァァァァァッ!?」

 

 もうワケが分からず嘆く新八に銀時は腕を組んで目を閉じながら冷静な声で語り掛ける。

 

「まー、混乱するお前の気持ちもよく分かる。だが安心しろ。今の状況は一言で説明できる」

「えッ!?」

 

 と新八はありえないと言わんばかりの表情で驚きの声を漏らし、銀時は目をクワっと開いて強く言い放つ。

 

「今回は特別回だからです!!」

「だからなにッ!?」

 

 と新八は食い気味に言葉を返す。

 

「だからなんなのッ!? なんで年末特別回だからってリリカルでも銀魂でもないキャラが出てくんの!? おかしくない!?」

 

 新八の疑問に対して、心底メンドクサそうな表情で銀時は説明を始める。

 

「おまえさー、考えてみろよ。年末もしくは年越しの特別回だからこそ、こうやって有名なゲストキャラ呼んだんだろうが」

「むしろ年末年越しの特別回だからこそリリ銀本編に沿ってクリスマスネタだったり正月ネタするべきなのでは!?」

「いや出来るワケねェじゃんお前。本編がいまどんな状況か忘れたの? フェイトは悪の組織の手先にされ、なのははショックのあまり鬱病に片足突っ込んでんだぞ」

「えッ!? そうでしたっけ!?」となのは。

「本編の内容を微妙に捏造すんのやめろッ!!」

 

 と新八がツッコミ入れると沖田さんはなのはに向かって「大丈夫です!」と親指をグッと上げて笑顔で告げる。

 

「わたしなんて常に死の病によって血反吐を吐きながら暮らしています! それに比べたら鬱病なんて大したことありません!」

「そ、そうなんですか……大変ですね……」

 

 となのはは戸惑いつつ答え、新八は声を上げる。

 

「ちょっとォォ!! いきなり別作品の人に変な誤解与えてんじゃん!! あと比べるレベルがおかしいでしょそれ!! あとなのはちゃんに鬱病になってませんから!!」

「パンイチでうるさい変態眼鏡じゃな……」

 

 ミカンを口に入れながらノッブは新八にジト目を向ける。

 

「そこは言及しないでください信長さん!! 今はこの状況にツッコミ入れながらボケにまでツッコミ入れてるだけでいっぱいいっぱいなんですよ!!」

「ぱっつぁん、抗うな。受け入れろ。さすれば楽になる」

 

 と銀時が諭すように告げると新八は怒鳴り返す。

 

「うっせェ黙れ!! あんたどんなキャラだよ!!」

 

 我慢できないと言わんばかりに新八はありったけの声を腹から出す。

 

「あといい加減ボケを止めろォォォォォ!! 話が進まないんじゃボケェェェェェェ!!」

 

 パンイチで両耳に眼鏡を垂らした青年のボケェェェェェェェ!! が年明け早々、万事屋を震わせるのだった。

 

 

「……まー、とりあえずなんとなく状況は掴めました……」

 

 ようやくパンイチ眼鏡ツリー姿からいつもの白と青を基調とした和服姿に戻った新八は銀時の隣に座りつつ、現在の状況を口に出しながら整理する。

 

「つまり……本編でクリスマスネタも年越しネタも正月ネタもできない状況だから僕はツリーにされた挙句この特殊空間で特別回をやろうと……」

 

 そこまで言って新八は銀時に顔を向ける。

 

「それなら本編投稿して話を進めた方がよくありません?」

「それを言っちゃーおしめェだろ、ぱっつぁんよ」

 

 と銀時が言い、神楽は団子をはむはむ口に含みながら告げる。

 

「特別な行事は出来る時にやっといてナンボアル」

 

 するとノッブと沖田さんも続く。

 

「まー、イベントはやれる時にやっとくもんじゃしな」

「まー、そうは言ってもFGO(うち)はイベントのバーゲンセールですけどね」

 

 ぐだぐだ組の言い分を聞いて新八は腕を組みながら前へと向き直りうんうんと頷く。

 

「まー、僕も行事と季節関係の特別回をやるのは良いと思いますよ。今までバレンタインネタも夏ネタも見送り続けたワケですし、年末くらいはとは思いますよ」

 

 そこまで言って新八は「ですけど」と言って再び銀時に顔を向ける。

 

「わざわざ、このわけ分からん異界用意する意味あります? つうかこの空間なんなんですか?」

「特別回用の特別万事屋空間だよ」と銀時。

「いや特別万事屋空間てなんだよ」

「ほら、銀魂アニメでよくやるじゃん。本編始まる前とかに万事屋の全体像映し出しながら原作銀さんたちが駄べって制作秘話暴露するアレ。アレみたいな感じの空間。ようはなんでもありな感じのあの空間」

「いや、制作秘話暴露とかぶっちゃけんの止めてください。聞いてて悲しくなります。……まー、一応は理解できました。つまり番外回用の特殊空間ですね。……前回の年明け特別回みたいに夢空間にできなかったんですか?」

 

 顔を向けながら言う新八の疑問に銀時はメンドクサそうに答える。

 

「特別回特有の夢落ち天丼も考えたが、仙人ネタはやりきちまったし諸々の事情で止めたんだとよ」

「まー、そこは作者の都合ってことで飲み込みますけど……。じゃあ、最後に一ついいですか?」

「なに?」

 

 と銀時が聞くと新八は斜め左のノッブと沖田さんに指を突き付ける。

 

「なんでFateって言うかFGOで有名なこのお二人が万事屋にいるんですか?」

「なんか他作品のゲスト呼んだら特別っぽいだろ?」

「理由うっす!?」

 

 と新八は思わずツッコミ入れ、ミカンを皮を剥きながら神楽が語る。

 

「年末年始くらい作者のやりたいようにやらせれば良いアル」

 

 そこまで言って神楽は剥いたみかんを丸々一個口に放り入れ、新八は目を瞬かせる。

 

「じゅあなに!? 年末年始は毎度毎度どっかの作品からゲスト呼ぶことになんの!? 本編進んでも今後の年末年始はこういう感じなの!?」

「知らねェよ。一々細けェこと気にする奴だな」

 

 銀時は心底めんどうそうに吐き捨てる。

 

「俺は今後の特別回どうなるかなんて興味ねェし、考えのもめんどくせェの。グダグダ言ってねェで特別回は特別なモンとして受け入れろ」

 

 銀時は腕を組みながらノッブと沖田さんに顔と人差し指を向ける。

 

「それにだ、この二人はあのドラえもんを押しのけて大晦日にスペシャル回をやるFateのキャラなんだぞ。特別ゲストとしては申し分ねェだろ」

 

 銀時の言葉を聞いてノッブと沖田さんは不満そうな声を出す。

 

「なんじゃ、まるでFateが原因でドラえもんが大晦日にやらなくなったみたいな言い草は」

「そうですよ。ドラえもんが大晦日に枠取れなくなったのは単純に人気が落ちて――」

「ちょっとォォォォォォ!! 沖田さん止めて!! そう言う不用意な発言しないで!!」

 

 新八は顔を青くしながら沖田さんの言葉を止めるが神楽まで話に乗っかりだす。

 

「でもドラえもんが大晦日にやらなくなって物足りないアル。大晦日はドラえもん見てガキ使見るのが私の定番だったのに」

 

 神楽の言葉を聞いて沖田さんは腕を組みながら残念そうに告げる。

 

「二時間が一時間と時間帯が短くなって薄々感じていましたがやっぱり――」

「だからそう言うデリケートな部分に言及するの止めてッ!!」

 

 新八は必死に話を遮り、強引に話を本題に戻す。

 

「ま、まーとりあえず分かりました……。有名なFate……じゃなくてFGOでしったけ? とにかく特別なゲスト呼んで特別っちゃ特別な感じは出てきましたしね……」

 

 新八は諦めたように自信を少し強引に納得させ、「それで……」と言って銀時に尋ねる。

 

「ゲストも来たことですし、今回の年末年始はなにするんですか?」

「まずは……録画と番組チェックだな」

「いやなんでだよ!!」

 

 と新八がツッコミ入れるが銀時は新聞紙を机の上に開いて覗きながら気だるげに告げる。

 

「さっきも言ったろ? 年末年始はガキ使、紅白、格付け、スポーツ王、相棒などなどの特番目白押しだって」

「だからって僕らがこのまま特番見る事ないでしょ!! どんだけ消極的なんですかあんた!! 特別回見に来た読者に申し訳ないとは思わんのか!!」

 

 と新八がツッコミ入れながら説教するとノッブが両手を握りしめ二本の親指を立てる。

 

「ならば年末特番を見ながらわしらはコメントすれば万事オーケーじゃ!!」

「ここは実況掲示板じゃねェんだよ!!」

 

 と新八がツッコミ入れるがどんどん話は進んでいく。

 

「とりあえず、まずなに見ます?」

 

 と沖田さんが言うとノッブが腕を組みつつ告げる。

 

「やはりここは駅伝であろう。正月と言えば駅伝じゃ」

「いや駅伝なんてつまんねェよ。やっぱ格付けだろ。次に相棒かスポーツ王だ」

 

 と銀時が返すと神楽がビシッと手を上げる。

 

「私は録画したガキ使かドラえもんを押します!! あとFate特番の前にグレンラガンの映画やってました!!」

「あッ、私はドラえもんがいいかな」

 

 となのはも便乗し、

 

「それならやっぱりここはゲストである私たちを考慮してFate特番では?」

 

 沖田さんが告げる。

 

「なんの為の年末年始特別回だと思ってんだお前らはァァァァァァァァ!!」

 

 我慢できずに新八が天井に向かってシャウト。

 するとノッブがやれやれと言った表情で告げる。

 

「まったく……仕方ないのー……。折角の特別回であり正月じゃ。正月らしい特別なことをするとしようではないか」

「信長さん……」

 

 ようやくわかってくれたか、と思って新八は嬉しそうな声を出し、ノッブはみかんが入ってあったレジ袋から何かを取り出す。

 

「正月らしく……」

 

 ノッブがレジ袋から取り出した物を机いっぱいに広げる。

 

「――すごろくをやろうではないか!」

 

 ノッブが用意したのは折り畳み式すごろくシートだった。

 

 ――うわー、地味だー。

 

 笑顔の新八は内心、実直にそう思った。ただ信長さんに悪かったので口には出さないが。

 

「地味だなおい」

 

 だがこの失礼な銀魂主人公はハッキリ口にし、沖田さんはさらりと告げる。

 

「まー、いいんじゃないですか? ありきたりな正月ネタですが、多少は見栄えもよくなりますよ」

「お前ら用意したわしに対する配慮とかないのか?」

 

 とノッブが不満そうに声を出すと新八はすかさずフォローする。

 

「い、いいじゃないですかすごろく!! ゲストキャラとすごろくを楽しく遊ぶって良いですよね!! きっと盛り上がりますよ!!」

「とりあえず、サイコロと駒が必要ですね」

 

 となのはが立ち上がろうとした瞬間だった。

 なんと、突如として広げたすごろくシートがピカッと光り出したのだ。

 

「な、なんじゃーッ!?」

「ノッブ!! あなたなに持ってきたんですか!!」

 

 と沖田さんが声を上げ、神楽があまりの眩しさに目を抑える。

 

「目が、目がァァァァァァ!!」

「神楽ちゃんそれ言いたいだけでしょ!!」

 

 そしてなんの前触れもなく起こった突如の異変にリリカルと銀魂の主人公ズも慌て出す。

 

「前の年明け回みたいに嫌な予感がするのォォォォォ!!」

「俺もだァァァァァ!!」

 

 

「……ん……んん……」

 

 うつ伏せに倒れる新八は呻き声を漏らす。

 徐々に意識を覚醒させながら眩しさのあまり目を閉じ、いつの間にか自身が意識を失っていたことに気付く新八は、いったいなにが? と思いながら体を起こし始める。

 眼鏡を上にズラしてぼやける目を摩ってから新八が周りを見渡せば自身と同じように白い床で倒れ伏していたであろう他五名の姿を確認する。

 

「…………ん?」

 

 えッ? 白い……床? 

 五人が倒れ伏していた床が白い真っ平なよく分からないモノで出来たことに気付く。なにせ和室に敷いてある畳とはまったく違う材質の床に、更には一瞬で目に入った万事屋の狭っ苦しい和室とは雲泥の差のだだっ広い床。それらを見て一気に状況が一変していることに気付く。

 

「…………」

 

 地平線が見えそうなほど広く白い床だか地面だか分からない光景に新八はもう一度眼鏡をズラして目を摩ってから呻き声を漏らし始めている銀時たちを尻目に振り返り、

 

「ッッッ……!?」

 

 〝ありえないモノ〟を見て驚きの表情を浮かべ、自分の一番近くでうつ伏せ状態の銀時に慌てて声を掛ける。

 

「ぎ、ぎぎぎぎぎ銀さん!!」

「……んん……」

 

 新八に体を揺らされて目を覚ましゆっくり起きる銀時は頭を抑えて左右に軽く振りながら体を起こし始め気だるげな声を漏らす。

 

「ッ……ぁー……ノッブたちと酒飲み過ぎて……寝落ちしちまったか……?」

「いやいやいや!! たぶん酒じゃありません!! もっとヤバイ感じです!!」

「あん? なんだよ、ぱっつぁん……年末年始くらいたっぷり寝かせてくれよなァ……」

 

 銀時は慌てる新八になど構わず欠伸をする。

 

「と、とにかくアレ!! アレ見て!! アレェーッ!!」

 

 だが新八は銀時の反応などに構わず目の前に建って居るモノに必死で指を突き付ける。

 

「なんだよ、アレアレって……」

 

 新八に訝し気な視線を送る銀時はゆっくりと新八の指が示す方に顔を向ける。そして、巨大なアーチ型の門――それこそ運動会で見るような奴の二倍か三倍くらいデッカイ門が目の間に建てられていた。

 

「…………」

 

 目の前の門を見て銀時は視線を細め、ゆっくりと首を上にあげれば門の二本の鉄柱を繋ぐように設置されたアーチ状のパネルが目に付く。

 デカデカと書かれた文字をゆっくりと銀時は口にする。

 

「50話達成……&……年明け……すごろく大会……2020……」

 




ノッブ「なー、気になってたんじゃがなんで地の文のわしの名前が常にノッブなんじゃ?」

沖田さん「私は沖田さんですしね。いや、沖田さんは沖田さんですから別に構いませんが」

銀時「いや、うちは沖田もいるし銀魂原作じゃ信長も出てるしな。混乱しないようにする為の配慮だそうだ」

ノッブ「信長ってあのナマズ顔ブリーフじゃろ!! アレ気にしてわしはノッブ表記なのか!?」

沖田さん「私には桜セイバーって立派な異名が公式にあるんですからそちらを採用してもよくないですか?」

ノッブ「そうじゃそうじゃ!! わしにも魔人アーチャーと言うイカした異名があるんじゃぞ!!」

銀時「今のお前らの名前の方が労力少ないからな」

ノッブ「理由ひどッ!!」

沖田さん「沖田さんと桜セイバーってそんなに書く労力違いありませんよね!?」

銀時「まー、今回は年明け特別回って言うゆる~い場だしな。いいんじゃね?」

ノッブ「なんかすんごい不完全燃焼感が否めないんじゃが。じゃが」

沖田さん「やっぱり、ここはゲストとして来るのは間違いだったのでは?」

ノッブ「催し物は好きじゃが、今回は嫌な予感するしのー……」

沖田「まーまー、せいぜい汚れて帰ってくだせェ」

ノッブ「おッ、沖田。お前いつの間に性転換したんじゃ?」

沖田さん「ノッブ、あなた頭どころか目までイカれましたか……」

ノッブ「それ、お前元からわしの頭はイカれたと思っとったのか!! 相変わらず腹立つこと言いおってからに!!」

沖田さん「最初にふざけたこと言ったあなたが悪いでしょうが!」

銀時「つうわけで、おけおめー」

なのは「わー、グダグダだー……」

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