やはり俺が入隊するのはまちがっている。   作:ユンケ

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比企谷八幡は義姉の家に泊まる③

風呂から出た俺はリビングにて水を大量に飲んでいる。

 

理由は簡単、さっき全裸で姉さんに抱きつかれた挙句、姉さんの胸をモロに揉んだ事によって顔に生まれた熱を無くす為である。

 

アレはマジでヤバかった。思わず姉さんに手を出してしまいそうだったし。しかし姉さんの胸……本当に柔らかかったなぁ……って!

 

(アホか?!折角頭を冷やしていたのに再度思い出して再熱してどうすんだよ?!)

 

と、とにかく!姉さんが上がってきたら誠心誠意を込めて謝ろう。原因として姉さんが俺が入浴中に乱入したり抱きついたりしてきたのもあるが、手を出した時点で悪いのは俺だ。許して貰うまで謝って警察だけは勘弁して貰わないとな……

 

そんな事を考えていると後ろからガチャリとドアが開く音が聞こえてきたので、姉さんが風呂から上がったのだろう。そう判断して振り向くと絶句してしまった。そこには……

 

「あ……弟君」

 

そこには色っぽい姿の姉さんが居た。着ているのは真っ白のネグリジェだったが色がメチャクチャ薄く、その下に着ている水色のブラジャーとショーツが割と繊細に見える。

 

その上、姉さん本人のルックスのレベルも高い事もあり、メチャクチャ美しく、神々しくもあった。

 

俺はゴクリと喉が鳴って見惚れてしまうも、本来の目的を思い出して頭を下げる。

 

「姉さん……その、風呂場では済まなかった」

 

許して貰えるかはわからないが、俺が反省していることについては理解して欲しい。

 

「あ、ううん……弟君は悪くないよ。元々私が弟君が入っているのに一緒に入りたくて入ったのが悪いんだし」

 

頭の上から姉さんの声が聞こえてくる。姉さんの声音から嘘を吐いているとは思えない。本当に気にしていないのだろう。

 

「いや、でもだな……「そ、それに……」それに?」

 

「わ、私は弟君になら……い、嫌じゃないし……」

 

「…………」

 

ダメだ。今日はフリーズする事が多いな。全部姉さんの所為だけど。とんでもない事を言ってくるな姉さんは。

 

俺が絶句している中、姉さんは俺の横に座って太腿を優しく撫でてくる。すると俺は再起動して物凄い勢いで顔に熱が溜まる。今日はフリーズしたり熱を溜めたりと、俺の顔は忙しいな。

 

「だから弟君は気にしなくて良いんだよ……謝らなくても良いんだよ……」

 

「あ、ああ」

 

なんとかそう返すも身を寄せてくる姉さんばかり見ていて空返事だった。

 

姉さんの白魚のような手は俺の太腿を撫でて、姉さんの美術品のように美しい身体は俺の身体に寄せられて、姉さんの可愛らしさと美しさを兼ね備えた顔は俺の肩に乗せられる。

 

姉さんの全てが俺の理性を刺激してくる。姉さんの身体の柔らかさや匂いのフルコースは世界で最も魅力的で蠱惑的と断言出来る。

 

「弟君……」

 

「な、何だ?」

 

「弟君の顔、整ってるなぁって……」

 

「目の腐りが台無しにしてるけどな」

 

客観的に俺の顔は整っているらしい。眼鏡をかけた俺を見た奴の大半が「目の腐りが無ければイケメン」と口を揃えて言ってくる位だし。

 

「ううん。確かに弟君の目は澱んでるよ。でも目の奥には強い優しさが見える。私、眼鏡をかけた弟君のファンだけど、眼鏡をかけてない弟君の顔も好きだよ」

 

「ね、姉さん?!」

 

言いながら姉さんは俺の太腿を撫でていた手を太腿から離して、俺の手を握ってきて指を絡めてくる。俗に言う恋人繋ぎってヤツだ。まさか(義理の)姉とそんな事をするとは思わなかった。

 

思わず姉さんを見るとトロンとした瞳を俺に向けてくる。その瞳は人を魅了する魔力でもあるのか不思議と目を逸らすことが出来なかった。

 

俺が顔を動かさずに姉さんの瞳を見つめていると、姉さんは顔を近付けてくる。

 

(まだいつものように頬にキスを……っ!違う!)

 

姉さんの唇の軌道を見る限り、姉さんの唇の終着点は恐らく俺の頬ではなく……

 

(唇……なのか?)

 

姉さんの顔は横にズレることなく、ただただ真っ直ぐに近寄ってくる。

 

(ヤバいヤバいヤバいヤバい……!これ以上は……!)

 

慌てて顔を逸らそうとした時だった。

 

 

pipipi……

 

「……っ!」

 

突如テーブルの上にある姉さんの携帯が鳴り出し、同時に姉さんは真っ赤になって跳ぶように俺から離れる。危なかった……姉さんの携帯が鳴らなかったら唇を奪われていたかもしれん。

 

(いや、まあ姉さんとキスをするのは嫌って訳じゃないんだが、義理とはいえ姉弟間でキスをするのは問題だからな……)

 

姉さんは携帯を開いて操作し始める。その事から電話ではなくとメールだろう。とりあえず姉さんがメールを打ち終えたら寝る事を提案しよう。さっきの続きを要求される可能性もあるし。

 

そんな事を考えていると姉さんが携帯を閉じるのが目に入る。テーブルに携帯を置くと真っ赤な表情をしなから俺を見てくる。

 

「お、弟君……さっきは変な気分になっちゃって……ごめんね」

 

「別に構わない。それより夜も遅いし寝ようぜ」

 

またキスをするような空気になったらどうにかなっちまいそうだし、眠りに逃げるのは間違ってないだろう。

 

「う、うん……じゃあ……一緒に寝よ?」

 

……うん、予想はしていたが本当に要求してきたよ。一緒にお風呂に入って、全裸で抱きつかれて、胸を揉んで、キスをしようとして、最後に色っぽい格好をした姉さんと一緒に寝る流れ……

 

(完全に姉さんのフルコースじゃねぇか。このフルコース100万円以上の価値があるぞ……)

 

しかし姉さんの誘いに乗ると、ヤバそうな気がする。かと言って姉さんを出し抜くのは至難の技だし……

 

方針に悩んでいると……

 

「弟君……行こ?」

 

姉さんは俺が結論を出す前に自身の指を俺の指に絡めてから、手をギュッと握って歩き出す。

 

俺は姉さんの行動の早さに抵抗することすら出来なかった。

 

 

 

 

 

 

寝室ーーー姉さんの部屋に案内された俺は姉さんに優しく押されてベッドに倒れ込む。慌てて起き上がろうとするも、その前に姉さんは電気を消して、窓から注がれる月の光を頼りベッドに上がって……

 

「弟君……」

 

俺に抱きついてくる。逃さない為か俺の首に両手を絡めてきて、それによって姉さんの胸が俺の胸板に当たり柔らかな感触を感じる。

 

「ね、姉さん……今日は妙にスキンシップが激しくね?」

 

姉さんが俺に抱きついたり頬にチュッチュッしてくるのは日常茶飯事だが、一緒にお風呂に入って抱きついてきたり唇にキスをしようとするように激しいスキンシップは完全に予想外だった。何かあったのかと気になってしまう。

 

「だって……寂しいから」

 

「寂しい?」

 

「……うん。夏休みだから学校が無いし、互いの防衛任務、嵐山隊の広報活動とかがあって弟君に会える時間が格段に減って……久しぶりに弟君に会えて……思い切り甘えたくなっちゃったの……」

 

姉さんは暗闇でもわかるくらい顔を赤くしながら理由を説明してくる。姉さんって甘えん坊だな……

 

「だからね……今日弟君が泊まってくれて凄く嬉しいの。ありがとね」

 

ちゅっ……

 

言いながら姉さんはいつものように頬にキスを落としてくる。ダメだ、そんな風に言われてキスをされたら離れてくれなんて言えない。

 

(仕方ない……今日は抵抗しないで姉さんに甘えられるか)

 

「どういたしまして。姉さんが甘えたいなら好きに甘えてくれ。今日はもう抵抗しないから」

 

「うん……ありがとう弟君……ちゅっ……ちゅっ……」

 

姉さんはそう言ってから頬にキスをするのを再開する。朝になったら洗い落としておこう。明日は防衛任務があるし文香や歌歩に見られたら説教は確実だし。

 

そんな事を考えていると眠気が襲ってくる。もう12時前だから仕方ないだろう。

 

しかしそれ以上に俺に抱きついている姉さんの温もりがとても気持ちが良く眠気を誘ってきているからだ。

 

「(ヤバ……もうダメだ。寝よう。おやすみ、姉さん)」

 

俺は未だにキスを続けている姉さんに心の中でおやすみの挨拶をする。その言葉を最後に瞼の重みが限界になったのでゆっくりと目を閉じた。

 

最後に感じた姉さんの温もりと匂いに幸せを感じながら。

 

 

 

 

 

 

「んっ……ちゅっ……弟君?」

 

「すぅ……ぐぅ……」

 

それからどれ位経過したのか、義弟の八幡の頬にキスをしていた遥はふとした瞬間、八幡が寝ている事に気がついた。

 

「ふふっ……寝ている弟君も可愛いなぁ……」

 

遥は楽しい気持ちになりながら八幡の顔を見る。すると……

 

「あっ……」

 

遥は八幡の唇を目に入れてしまう。少し前に奪おうとした唇を。

 

(弟君の唇……)

 

それを認識した遥は少しずつ自分の顔を八幡の顔に近付け、終いには互いの顔の距離を5センチ未満ーーー少し顔を前にやればキス出来る位まで縮めた。

 

「弟君……」

 

遥は更に距離を詰めようとするが、動きを止める。同時に最愛の義弟や義弟のチームメイトの女子2人の顔が頭によぎる。

 

(やっぱり弟君が寝ている時に抜け駆けは良くないのかな……でも).

 

我慢出来ない。

 

言葉に出さず、心の中でそう呟いた遥は自身の顔を前に出して……

 

 

 

ちゅっ……

 

一瞬だけ自分の唇を八幡の唇に重ねる。

 

触れるだけのキス。1秒もしていないにもかかわらず、遥の顔には熱が溜まる。しかし遥はこの熱を不思議と気に入っていた。

 

「寝ている時にごめんね。でも我慢が出来なくて……弟君……大好きだよ。本当に大好き。歌歩ちゃんや文香ちゃんは負けたくない。いつか絶対に私の気持ちを気付いて貰うから、ね?」

 

ちゅっ……

 

遥は再度八幡の唇にキスを落とす。本音を言うと今直ぐ義弟を起こして自分の想いを伝えたいが、今の遥には面と向かって話す事は恥ずかしくて出来なかった。

 

遥は八幡の唇から離れてから両腕を八幡の首に絡めて、頰ずりをし始める。

 

「んっ……んんっ……」

 

「弟君……本当に可愛いなぁ……おやすみ、弟君」

 

遥はそう言って幸せな気分のままゆっくりと瞼を閉じた。頭に浮かぶのはさっきした唇同士の接触。

 

遥は何度も何度もあの感触を思い出し、眠りにつくまでずっと幸せな気分であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日……

 

「んっ……んんっ……」

 

暗闇の中、光を感じて思わず目を開けると窓から朝の光が入ってくるのが見える。

 

(知らない天井……いや、そういや俺は昨日から姉さんの家に泊まって………んんっ?!)

 

そこまで考えていると俺はとんでもない事に気がついた。それは……

 

 

「んっ……んんっ……すぅ……」

 

姉さんが俺に抱きついて寝ているのだ。しかも俺の首には姉さんの両腕が絡められていて逃げれない。

 

や、ヤバい……朝っぱらから姉さんのフルコースを体験するのか?それは阻止しないといけない。でないと理性が危ないからな。

 

そう判断した俺は姉さんを起こそうとするが……

 

「んっ……お、弟君……」

 

姉さんが俺の名前を呼んでくる。しかし寝息が聞こえてくるので俺が出てくる夢を見ているのだろう。

 

こいつどんな夢を見ているんだ?疑問に思った俺は姉さんを起こさずにいると……

 

「んっ……ちゅっ…ちゅっ……んんっ……弟君、キスが上手いね……」

 

は?

 

今なんて言った?俺のキスが上手いだと?

 

呆気に取られている間にも姉さんの寝言は続く。

 

「やあっ……弟君、いきなり胸とお尻を、触るなんて……すぅ……本当にエッチなんだから……」

 

待てコラ。こいつマジでどんな夢を見てんだ?いや、内容から察するに姉さんの夢では俺が姉さんの胸と尻を触っているんだろうが、変な夢を見るな。確かに俺は転んだ際に何度か姉さんの胸や尻を触った事はあるが、アレは事故であって自発的に触った訳ではないからな。

 

そんな事を考えていると……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んっ……ちゅっ……じゃあ、弟君……私を抱いて……」

 

「アウトだこらぁぁぁぁぁっ!」

 

「んんっ!え?ここは……?」

 

姉さんの爆弾発言に俺は思わず姉さんを揺らす。すると姉さんは漸く目を覚ましてぼんやりとした表情で俺を見てくる。

 

「あ、アレ……弟君?何で服を着てるの?」

 

どうやら本当に姉さんはアレな夢を見ていたようだ。いかん、考えるだけで恥ずかしくなってきた。

 

「……何でも何も俺は裸で寝る趣味はない」

 

俺がそう返すと姉さんはポカンとした表情をしながらパチクリをするも……

 

 

「〜〜〜〜っ?!」

 

かつてない程真っ赤になって俯き出す。漸く現実を認識したようだな。

 

「お、弟君……私が寝ている時に変な事を言ってた?」

 

はいバリバリ言っていましたよ。

 

しかし馬鹿正直に言うと俺自身も恥ずかしくなるので言わない事にした。言ったら絶対に気まずくなる自信がある。

 

 

「……いや、特に変な事は聞いてないが」

 

「……そ、そっか。なら良かった」

 

俺の返事を聞いた姉さんはあからさまにホッとした表情を浮かべて安堵の息を吐く。こりゃ絶対にバレる訳にはいかないな……

 

そう思いながら俺は姉さんが落ち着くまでずっと、姉さんの抱擁を受けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

それから数時間後……

 

「じゃあ弟君。今回はありがとね」

 

「気にすんな。大したことはしてないから」

 

俺は朝食を済ませて姉さんと一緒にボーダー基地にいた。俺はこれから防衛任務、姉さんは広報活動の打ち合わせがあり、俺達は互いの作戦室に向かう為に別れの挨拶をしていた。

 

「ううん。私からしたら凄く楽しかったよ。じゃあまたね」

 

姉さんはそう言って俺に近寄り……

 

ちゅっ……ちゅっ……

 

いつものように両頬にキスをして走り去って行った。俺は姉さんが見えなくなるまで見送ってからため息を吐いて自身の作戦室に向かって歩き出す。

 

「まあ姉さんが楽しかったら良いが……刺激的な泊まり会だったぜ」

 

「そうなんだ。それでお兄ちゃん、どんなお泊まり会だったの?」

 

「問題に正解したらキスのご褒美が付いてくる勉強会をしたり、一緒にお風呂に入って全裸で抱きつかれたり、エロいネグリジェを着た姉さんと抱き合って寝たりだな」

 

「へぇ……綾辻先輩は綺麗でしたか、八幡先輩?」

 

「ああ。凄くエロくて理性が危な……かっ……た?」

 

後ろから問われた質問に答えると寒気がするので恐る恐る振り向くと……

 

「まさかお兄ちゃんがそんなにエッチだったとは思わなかったよ」

 

「随分とお楽しみでしたね」

 

満面の笑み(ただし瞳は絶対零度)の歌歩と文香がいた。

 

何でこのタイミングでいるんだ……って今はそれどころじゃない。早く逃げないと……!

 

そう判断した俺は踵を返して逃げようとするも……

 

「「逃さないよ(ですよ)」」

 

その前に2人に捕まり、肩を破壊される勢いで握られる。反応が早過ぎる……

 

「まだ防衛任務まで時間はあるし、お泊まり会についてしっかり聞かせてくださいね?」

 

「じゃあ作戦室に行こうか?」

 

こうして俺は2人に作戦室に連行されて防衛任務が始まるまで正座で説教をくらいました。しかし「何で2人が怒っているんだ」と聞いたら「デリカシーが無さ過ぎる」と2人に言われたのが解せなかった。

 

こうして俺と姉さんのお泊まり会は、長時間による正座から生まれた足の痺れによって幕が下りた。




これで綾辻編は終了です。

次は三上編ですが、その前に何話か入れたいと思います。

予定としては……

綾辻編

部隊強化&勧誘編

三上編

同年代との絡み編

照屋編

???

二学期

って感じですね。あくまで予定なので変わるかもしれませんが悪しからず

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