やはり俺が入隊するのはまちがっている。   作:ユンケ

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比企谷八幡はイチャイチャしたり、説教をされたり、またもイチャイチャしたり、終いに頭を痛める

ドサッ……

 

そんな音と同時にベイルアウト用のマットに叩きつけられる。チーム内で1番始めに脱落したのは俺か……

 

そう思いながら起き上がり、一度伸びをしてからオペレーターデスクがある部屋に向かう。

 

「お疲れ様お兄ちゃん」

 

すると三上が天使のような笑みで迎えてくれる。癒されるなぁ……

 

「おう。ちなみに俺の得点は東隊と柿崎隊のどっちなんだ?」

 

俺がベイルアウトした理由はトリオン漏出だ。その場合、俺に最もダメージを与えた者の得点となる。俺の場合左腕を由比ヶ浜に、右腕を東さんに落とされたからどっちが得点したかわからない。

 

「柿崎隊の由比ヶ浜さんの得点だね」

 

となると今の所、ウチが2点で東隊と柿崎隊が1点って事だな。

 

「辻と照屋の状況はどうなってる?」

 

「うーん。さっきまでは2人が奥寺君と小荒井君を追い詰めていたけど、東さんがフリーになって遠くから狙撃をしてる所為で攻めあぐねてるね」

 

「なるほどな……良し。三上、2人に無理な攻めはしないで射撃戦に移って1人ずつ確実に撃破しろと伝えてくれ」

 

ランク戦のルールとしてベイルアウトした俺もオペレーター経由で情報を伝えたり指示を出す事は可能だ。東さんがフリーな以上接近戦は避けた方が賢明だ。

 

『『了解』』

 

するとパソコンから2人の了解の返事が聞こえ、辻が奥寺達から離れて両攻撃ハウンドを放つ。狙いは……小荒井か。

 

同時に照屋も突撃銃からアステロイドを、周囲に浮かばせたキューブからメテオラを小荒井に向けて放つ。

 

向こうもシールドを展開するも……

 

『小荒井君を撃破しました』

 

小荒井のトリオン量が低いのか、辻と照屋の攻撃の圧が凄かったのか知らないが、小荒井のトリオン体は破壊されてそのまま空へ飛んで行った。これでウチの隊は3点。

 

これなら東さんを倒せなくても奥寺を倒せれば4点になるし充分だろう。

 

そこまで考えている時だった。

 

『奥寺君が逃げた。今から追いかける』

 

辻からそう言われたのでレーダーを見ると奥寺は狭い路地に入り、それと同時にバッグワームを使ったのかレーダーに映らなくなった。確かに奥寺は割とダメージを受けてるし、辻の意見も間違っちゃいないが……

 

「いや、追いかけないで辻はハウンド、照屋はメテオラで路地を吹き飛ばせ。狭い路地に攻め込んだら東さんの狙撃から逃げれないし、やられない事を最優先に動け」

 

万が一2人がやられたら生存ボーナスは東隊のものになる。別に生存ボーナスは取れなくても構わないが、他のチームに生存ボーナスを取られるのは何か嫌だ。

 

『『了解』』

 

その言葉と同時に2人が攻撃を仕掛ける。それによって爆発がモニターに映る。さて、どうなったか?

 

暫く待っているがベイルアウトの光はない。そのことから察するに奥寺はまだ生きている。

 

『どうする比企谷。今から奥寺君を探しに行くか?』

 

「……いや、さっき逃げようとした事から向こうは雲隠れしてるだろう。さっき仕留められなかった以上、お前らもバッグワームを使って遮蔽物が多い場所に身を潜めろ」

 

無理に探そうとして東さんに狙撃される必要はない。ここが引き際だろう。

 

『了解』

 

『了解。仕留められなくて済まない』

 

言いながら2人はバッグワームを起動してバラバラになる。照屋は元々の集合場所だった学校に、辻は先程東さんが狙撃していた場所から死角の位置にある民家に入る。これならバレないだろう。

 

チラッと制限時間を見ると後5分位で試合が終了する。

 

「今回はこれで終わりだな」

 

「そうだね。初陣で3点なら上出来じゃない?」

 

「そうだな。由比ヶ浜を倒した時に俺が油断しないで狙撃されなかったら、もっと上出来だったがな」

 

あそこで狙撃を食らわなかったらもっと良かったに決まっている。狙撃が来た方向に行けば東さんの援護を止めれて、辻と照屋は奥寺と小荒井の両方を仕留められていただろう。運が良ければその上、東さんめ倒せたかもしれない。

 

今回反省点を挙げるとすれば俺の油断だろう。

 

「そんな自虐的にならないでよ。お兄ちゃんは油断したかもしれないけど、指揮については良かったと思うよ?」

 

三上はそう言いながら自身の顔を俺の顔に寄せて……

 

ちゅっ

 

そっと頬にキスを落としてきた。

 

「い、いきなり何をするんだよ?!」

 

思わず叫んでしまう。ヤバい、顔に熱が溜まってきた……!姉さんとは違うキス……

 

「頑張ったお兄ちゃんにご褒美をあげたんだよ」

 

「だからっていきなりキスをするな!恥ずかしいだろうが!」

 

「ごめんごめん。でもさお兄ちゃん、さっきに比べて顔の曇りが無くなってるよ」

 

三上に言われてハッとする。三上のキスのインパクトによって、油断した事に対する悔恨の感情が薄くなっているのがわかる。

 

「確かにお兄ちゃんは油断したかもしれない。でも終わった事なんだから覆すのは無理だよ。だからお兄ちゃんがするべき事は、次のランク戦までにそれを改善する事だよ?」

 

「そう、だよな……ありがとな三上」

 

「気にしないで。私はお兄ちゃんの妹であると同時にチームメイトなんだから」

 

ああ、本当に頼りになるなぁ……三上をチームメイトに引き入れたのは正解だ。やっぱりあの事故は起こって良かった。

 

しかし……

 

「だからと言っていきなりキスをするのは止めろ」

 

不意打ちはマジで止めて欲しい。姉さんの場合は1日100回以上するから慣れているが、三上は(俺が寝ている時を除いたら)精々5回位だし慣れてないのだ。

 

「遥ちゃんは良いのに?」

 

「あ、いや、それはだな……」

 

良いというかダメと言っても聞かないので諦めただけだ。

 

「遥ちゃんは良いんだし、私もお兄ちゃんにキスして良いよね……?」

 

三上が上目遣いでこっちを見てくる。破壊力があり過ぎる……

 

「いや、だからってな……勘弁して「私、もっとお兄ちゃんに甘えたいな……」はいどうぞご自由に」

 

「やった……ありがとうねお兄ちゃん」

 

ダメだ。断り切れなかった。姉さん同様にウルウルした目を見せてきたので断れなかった。しかも三上の奴、良い笑顔をしてるから前言撤回出来ねえ……マジでどうしよう?

 

 

 

『八幡先輩、試合が終わったらお話がありますので逃げないでくださいね?』

 

そして照屋が帰ってきた後もどうしようか?

 

内心嘆く中、試合終了のブザーが鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから30分後……

 

「さあ八幡先輩、ランク戦の反省会も終わりましたので試合前の綾辻先輩とのキスについて、そしてランク戦の最中の三上先輩とのキスについてお話しください」

 

現在俺は作戦室の床に正座して、満面の笑み(ただしは目は冷たい)を浮かべている照屋から尋問を受けている。

 

この場ーーー比企谷隊作戦室には俺と照屋の2人きりだ。三上は弁護しようとしたが、中央オペレーターの方から呼び出しがかかり申し訳なさそうに去って行って、辻は反省会が終わると同時に逃げて行った。アレは明らかに面倒事を避ける動きだった。

 

俺も便乗して逃げようとしたが、作戦室を出る前に照屋に肩を砕かれる位強く掴まれ逃げ切れなかった。あの時の照屋は二宮さんより怖かったと思う。

 

閑話休題……

 

そんな訳で俺は今照屋から尋問を受けているが……

 

「いや、2人ともいきなりキスをしたんで、俺から要求したりはしてないからな?」

 

「もちろんそれはわかっています。ですが簡単にキスをするのは良くないことです。簡単にキスをされていてはその内学校とかでも堂々とするようになってしまうでしょう」

 

「はい。仰る通りです」

 

照屋の言うことは完璧に正論だ。マジで返す言葉がない。

 

「いや、でも……あの2人が可愛くおねだりをすると、つい……な?」

 

そこまで言うと照屋の目が冷たくなる。

 

「へぇ……つまり八幡先輩は2人が可愛いから拒否出来ないと?」

 

「えっと、そのだな「何ですか?」はいそうです」

 

ドスの効いた声に嘘を吐けずに正直に答えてしまう。逆らったら命はないだろう。

 

そこまで考えていると照屋がジト目で俺を見てくる。

 

「全く……八幡先輩のバカ」

 

そう言って照屋はそっぽを向く。気の所為か知らないが冷たい表情から面白くないと言った表情に変わっていた。

 

同時に頭の中に1つの考えが浮かんだ。こいつまさか……いや、それはないか?そんな感情を持っているとは思えない。

 

でも照屋が雰囲気や怒る理由から察するに……

 

「妬いているのか?」

 

「ふぇっ?!」

 

しまった。思わず口にしてしまった。はい新たな黒歴史が誕生しました。それも特大レベルの。

 

(てか自分から妬いているのかって質問する時点で俺の馬鹿野郎!)

 

マジで首を吊りたい。内心自分を撲殺したいと強く願っている時だった。

 

「……はい」

 

予想外の返答が来たので思わず顔を上げると顔を真っ赤にした照屋が居た。え?マジで?

 

俺が驚く中、照屋は話し続ける。

 

「その……醜い感情かもしれませんが、先輩に対して三上先輩達のようにもう少し構って欲しいと思っているのは否定しません。私も先輩に甘えたいんです」

 

照屋はさっきとは一転、真っ赤になりながらも不安そうな表情をして俺をチラチラ見てくる。まさか妬いているとは俺も予想外だわ。今まで妬かれるって態度を取られたことがないのでわからなかった。

 

とりあえず……

 

「ま、まあアレだ。お前が甘えたいなら俺は構わないぞ?」

 

照屋の希望を聞いてやるか。三上や姉さんと同じ要求をしてきたらメチャクチャ恥ずかしいが、既に2人を相手にしているんだし今更だ。どうとでもなる。

 

それ以上に……

 

(そんな目をした奴のお願いを断れねぇよ!)

 

照屋の目は不安に満ちていて拒絶したら泣くんじゃね?って位不安そうな目をしていた。アレを断れる男はいないだろう。いるとしたらそいつはホモか血の通ってない人間だろう。

 

「良いんですか?」

 

「別に構わない。好きに甘えろ」

 

俺が照屋の問いに肯定すると照屋は不安そうな表情から一転、顔を綻ばせて喜びを露わにする。ヤバい、その表情を見るだけで幸せになってくる。

 

「………はい」

 

照屋はそう言って俺に抱きついてくるので、俺はゆっくりと抱き返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩。先輩にお願いがあるんですけど」

 

1時間後、ベイルアウト用のマットが置いてある部屋にて俺のマットの上で俺と抱き合いながら寝ている照屋が急にお願いをしてきた。照屋が甘えだしてから暫くすると一緒に寝たいと言い出したので、こうして一緒に寝ている。

 

(しっかし照屋の抱き心地を良いな。姉さんや三上とは違うモノだが2人に対して勝るとも劣らないレベルだ)

 

てか3人の女子と寝るって……客観視したら三股をかけているようにも見えるな……

 

まあ今更手遅れだし諦めよう。それよりも照屋のお願いを聞くことからだ。

 

「何だ?言っとくがお休みのキスはしないからな?」

 

「え?!ち、違います!いきなり何を言っているんですか?!」

 

照屋は途端に真っ赤になって否定をしてくる。

 

「あ、悪い。姉さんはいつも寝る前にお休みのキスをねだってくるから、つい」

 

「あ、そうなんですか。それで八幡先輩、その……綾辻先輩にお休みのキスを、してるんですか?」

 

「してない。毎回断ってる」

 

断ると姉さんはその度に頬を膨らませてキスの雨を降らせてくるんだよなぁ……まあ今日は姉さんの頬にキスをしたけどこれは言わないほうが良いだろう。

 

「てか話を脱線させた俺が言うのもアレだがお願いって何だよ?」

 

このまま行くと何かの拍子に姉さんの頬にキスをした事をカミングアウトしそうなので本題に戻る選択をする。

 

「あ、はい。その……私の事なんですけど……」

 

言いながら照屋は俺の背中に回してある手を俺の首に回し、顔をキスしかねない位まで近づけたかと思えば、俺の耳に口を寄せ……

 

「私の事、文香って……名前で呼んでくれませんか?」

 

「………は?」

 

思わず変な声を出してしまう。完全に予想外のお願いだったので仕方ないだろう。

 

「な、何でだ?」

 

とりあえず理由を尋ねてみると照屋はモジモジし始める。

 

「え、えっと……言わないとダメですか?」

 

「そりゃそうだろう」

 

何か理由があるなら名前呼びしても構わないが、理由が無く呼ぶのは恥ずかしいから嫌だ。

 

すると……

 

「それは……八幡先輩には名前で呼んで欲しいから、です」

 

「っ!」

 

ヤバい、耳元でそんな事を言うなよ!変な気分になってくるわ!しかもこいつ狙ってやっているとは思えないからタチが悪い。無自覚故の破壊力ってヤツだな……!

 

「先輩……お願いします」

 

そんな俺を考えを他所に照屋は重ねておねだりをしてくる。あ、もうダメだ。そんな風に切ない口調で言われたら……

 

「ふ、文香……」

 

思わず名前呼びしてしまう。でも仕方ないだろう。俺が言わない限りこいつはずっと切ない口調でおねだりをしてくるだろうし。

 

俺が観念して名前呼びすると……

 

「はい……!八幡先輩……」

 

言うなりギュッと抱きしめる力を強める。表情は満面の笑みと良いくらい綺麗な笑顔だった。それを見るとこちらも表情を緩めてしまうなぁ……

 

「八幡先輩、もう1回呼んでくれませんか?」

 

「はいよ……文香」

 

「ふふっ……もう1回、良いですか?」

 

「文香」

 

「はいっ……!」

 

文香のおねだりを何度も聞いてしまう。俺が名前を呼ぶ度に可愛らしく返事をしてくる。しかも1回1回反応が違って見ていて楽しい。

 

よって……

 

「文香!」

 

「はい!」

 

「文香?」

 

「はい?」

 

「ふ〜み〜か〜?」

 

「は〜い?」

 

「文香♪」

 

「はい♪」

 

色々な呼び方をしてしまう。

 

結局俺は眠りにつくまで文香の名前を呼び続けていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

それから4時間後……

 

「……何をやってんだ俺は?」

 

目を覚まして目の前に文香がいるのを理解すると同時に眠りにつく前のやり取りを思い出してしまう。

 

思い出すのは文香の名前を呼んで、文香の反応を楽しんでいた事。ヤバい、改めてあのやり取りを思い出すとかなり恥ずかしい。新たな黒歴史の誕生かもしれん。

 

「んっ……はち、まんせんぱい……」

 

一方の文香は俺に抱きつきながら幸せそうな笑みを浮かべている。どんな夢を見ているのかは知らないが俺の名前が出ているのは予想外だった。

 

しかしそろそろ起こさないといけない。時計を見ると夜のB級下位ランク戦が始まるまで5分を切っていた。上位と中位のランク戦は見逃してしまったが、下位の試合ぐらいは見ておきたい。次に当たる可能性があるし。

 

「おい、文香起きろ」

 

言いながら文香の身体を揺すると文香は薄っすらと目を開ける。

 

「んんっ……せん、ぱい?」

 

「ああ。そろそろ起きろ。もう直ぐランク戦が始まる時間だぞ」

 

俺がそう口にすると文香は目をパチクリしてから目を擦る。するとウトウトした雰囲気はなくなり、いつもの文香になる。

 

「おはようございます八幡先輩。私のワガママで一緒に寝ていただきありがとうございます」

 

文香は抱き合いながらはにかんでくる。うん、やっぱり可愛いな……

 

「おはよう。それより起きれるか?」

 

「あ、はい。大丈夫です」

 

言いながら文香は俺から離れて伸びをする。同時に女性特有の膨らみが揺れるのでさり気なく目を逸らす。

 

「ところで八幡先輩。ランク戦は作戦室のモニターで見ますか?それとも観戦室で見ますか?」

 

「それは三上や辻に聞いてから判断してみる……っと、メールが来てるな」

 

起きてから携帯を開くと2人からメールが来ていた。えっと、内容は……

 

「2人とも一緒に観戦するのは無理みたいだ」

 

三上は中央オペレーターの人達と一緒に見るらしく、辻は家の用事があるらしく明日のミーティングまでに記録を見ておくとの事だ。

 

「でしたら作戦室で見ませんか?わざわざ移動しないで済みますし、人が少ない方が落ち着きますから」

 

「別にいいぞ」

 

「では行きましょう」

 

言って文香は起き上がり、俺の手を握ってモニターがある部屋に向かう。それによって俺も引っ張られる形で続く。

 

そして俺がソファーに座ると文香は俺の隣に座って身体をくっつけて俺の肩に頭を乗せてくる。

 

「何ていうか、お前も結構甘えん坊だな」

 

この仕草、三上がよくやるような甘え方だし。

 

「否定はしません。何というか……八幡先輩には甘えたいんですが……ダメですか?」

 

「別にダメじゃねぇよ。好きなだけ甘えろ」

 

この程度の甘えでダメたら、三上と姉さんの甘えは全てがダメになるだろうし。

 

「ありがとうございます……ふふっ」

 

言うなり文香は頭を俺の肩に乗せたまま俺の足に手を当てて優しくさすってくる。それによって思わず顔が熱くなってくる。

 

「っ……!それよりそろそろ試合開始だぞ」

 

話題を変えるかのようにモニターの電源を入れる。すると丁度同じタイミングで隊員がステージに転送されていた。

 

「八幡先輩はどう見ますか?」

 

「二宮隊の圧勝」

 

そうとしか答えられない。夜の部で戦うB級下位は13位の松代隊、14位の間宮隊、16位の二宮隊、17位の吉里隊だが、二宮隊だけは次元が違う。

 

No.1射手の二宮さんにマスターランクの銃手と狙撃手、加えて今期の大型ルーキーがいるんだ。ハッキリ言ってポテンシャルはA級上位。トトカルチョをしても全員が二宮隊に賭けて賭けそのものが行われないだろう。

 

そう思う中、試合を見ると……

 

 

 

 

「圧倒的だな」

 

「圧勝的ですね」

 

開始10分で二宮隊の勝ちが殆ど決まった。

 

二宮さんの膨大なトリオンを駆使した圧倒的な制圧力、鳩原先輩の武器を壊す桁違いの狙撃能力、犬飼先輩の巧みな銃撃、犬飼先輩の援護を大いに利用して大暴れする鶴見の怒涛の攻め。

 

それら全てが他の3チームを容赦なく蹂躙している。

 

今回のランク戦でステージに転送されたのは松代隊3人、間宮隊3人、二宮隊4人、吉里隊3人の計13人だが内7人が落ちた。落ちた7人の内、5人を二宮隊が、松代隊と吉里隊が1人ずつ落としている。

 

残っている6人だが二宮隊は1人もやられておらず、残りは二宮隊4人と、松代隊と間宮隊のメンバーがそれぞれ1人ずつ生きている。

 

しかし松代隊と間宮隊の生き残りはバッグワームを装備して民家の中に引き篭もっている。時間切れを待つ算段だろう。

 

臆病者と罵るつもりはない。俺も向こうの立場なら同じことをしているだろう。

 

「さて、文香。おそらく今日のランク戦の結果で俺達は多分中位に上がるかもしれないし気を引き締めておけよ」

 

既に硬直した試合をぼんやりと眺めながら文香に話しかける。B級下位の中でウチのチームより順位が上の松代隊と間宮隊が1点と無得点なのだ。B級中位の結果にもよるが俺達が中位に上がる可能性も充分にある。それはつまり……

 

「そうですね。私達が中位に上がるなら二宮隊も中位に上がるでしょうし」

 

間違いなく二宮隊も中位する筈だ。下手したら次の試合で二宮隊と戦うかもしれない。

 

(頼む……!マジで二宮隊とは当たるな……!)

 

強く願いながら試合を見ると、試合が終了する。結果時間切れで生存点は無し。二宮隊5点、松代隊と間宮隊が1点、吉里隊が0点と予想通り二宮隊が圧勝した。

 

それと同時に今日の試合が全て終わり順位が更新される。ウチの隊は12位と中位の中では最下位だ。

 

それと同時に土曜日の試合の組み合わせも更新される。モニターに映るのは……

 

 

 

B級中位グループ

6月5日(土) 夜の部

 

008香取隊

010二宮隊

012比企谷隊

 

 

………終わった。頭が痛くなってきた


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