黒江が好きぃぃぃぃぃ!!   作:ユルい人

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第7話

加古さんの個人トリガーが二つになった日から数日。動きを見てくれると言った二宮さん監修の元、都合があった日は二宮さんと模擬戦をする日々が続いている。あの日から二宮さんがちょっと優しくなり空いた時間で色々指導してくれる。あ、いじめじゃない無い方だよ?親切丁寧に教えてくれる二宮さんはそれはそれは頼もしく

 

「遅い」

 

アボン。

 

「温い」

 

アボン。

 

「どこ見てやがる」

 

アボン。

 

「真面目にやれ」

 

アボン。

 

「いつから俺がそこに居ると錯覚した」

 

!!アボン。

 

指……導?あれ?結局ポイント搾り取られてるだけじゃね?まあそのお陰か知らんが回避と二宮さんの気配を察する能力だけは格段に上がったけど。

 

そんな指導と言う名の瞬殺を繰り返せば当然俺のポイントはアボン寸前。降格の兆しが見え始めたところで、一度二宮さんにポイントを賭けないでやってくれませんかとお願いした事があったんだが

 

「そんな甘ったれた考えで惚れた女守れんのか?」

 

との言葉により俺の中にある男の子の意地が大爆発。されるがままにサンドバッグやってます。まあ、木虎さんに負担かけないようにしようと思ってたところだからありがたいっちゃありがたいんだけど、もう少しこう、ねえ?

 

 

 

 

 

今日も今日とて瞬殺指導で取られたポイントを取り戻すためせっせと模擬戦に勤む。何戦かこなし一息つこうとジュースを買おうとしたとき最初の師匠候補に輝いた空閑さんの姿が。これは調度良い。あの時俺のお願いを聞いてくれなかった恨みここで晴らしてしんぜよう。ふふふっ、木虎さんと二宮さんにしごいて貰ってる今の俺はちょっとばかり手強いぜ!

 

「10対0。空閑遊真の勝利」

 

ごめんなさい。調子に乗りました。本当にごめんなさい。てかなにこの人、変なもん出してピョンピョン跳ねたと思ったらいつの間にかアボンしてたんだけど。こっちが攻撃したらトリプルアクセルするみたいに体回転させて避けた上に膝からスコーピオン出すとか変態でしょ。

 

「ふむ、中々の回避能力だね。結構楽しかったぞホラー少年」

 

またやろうと言い残し口を3にしながら帰って行く空閑さん。前にも思ったがあの口どうやってんだろ?もしかしてあれが空閑さんの強さの秘訣なのかな?

 

「………何やってるの」

 

僅かな可能性にかけて空閑さんのように口を3にしようともがいてたら呆れた顔をした木虎さんに出会った。なんか久しぶりに会った気がするな。

 

「お久し振りです木虎さん。これは空閑さんが強い理由を考えた末思い付いた特訓です。木虎さんもしますか?」

 

「女の子がそんなひょっとこみたいな顔出来る訳ないでしょ。みっともないからやめなさい」

 

ふむ、どうやら木虎さんには不評のご様子。でもこれ意外と難しいから会得したら本当に強くなれるんじゃないのか?今度家で特訓しよ。

 

口を引っ込め改めて木虎さんに向き合う。あれ?口引っ込めたのにまだ渋い顔してる、どうしたんだろ?

 

「木虎さんが模擬戦ブースに来るの珍しいですね。木虎さんもポイント無くなりそうになったから稼ぎに来たんですか?」

 

「A級隊員がそんな理由で来る筈ないでしょ。と言うか木虎さんもって……あなた、今何ポイント持ってるの?」

 

「さっき勝った分合わせて調度1700です」

 

木虎さんがぶっ!って吹き出した。吹き出した拍子に唾も飛ぶ。これは女の子的にはありなのか?と言うか何をそんなに驚いたんだろう?突然吹き出し苦しそうにゴホゴホとむせる木虎さんに駆け寄り背中をぽんぽん叩いてあげる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「大丈夫じゃないわよ!」

 

耳がキーンってなった。あれ?もしかして怒ってる?

 

「あなた最近B級に上がったばかりなのになんでそんなポイント無いのよ!そんなポイント数じゃC級と変わらないじゃない!一体何をしたらそんな事になるのよ!」

 

「二宮さんの瞬殺教室に通ってたらこうなりました」

 

あの人まじで降格寸前までポイント削るから教室が終わった後の一戦目は凄い緊張するんだよなぁ。

 

「二宮さん……?なんでそこで二宮さんの名前が出てくるのよ」

 

「最近二宮さんに指導してもらっているからです」

 

ルビは瞬殺。もしくは爆撃。最長で10分逃げ切った時は自分で自分を褒めてあげた。まあ1回しかないけど。その記録叩き出した後二宮さんの爆撃が絨毯爆撃になったけど。あの人本当に歳上なのかと疑いたくなる程負けず嫌いだよな。ん?木虎さん?

 

二宮さんの瞬殺教室に想いを馳せていたら木虎さんがポカーンとした顔のまま固まっていた。そのまま暫くポカーン顔のまま固まってた木虎さんだったが、ポカーン顔から段々真顔になり困り顔を経て悲しそうな顔になる。え、なんで?

 

「だから、か」

 

寂しそうに呟き俯く木虎さん。目には涙を浮かべプルプルと震えて……え!?泣いてる!?

 

「き、木虎さん?」

 

「………帰る」

 

肩を落としとぼとぼと帰ろうとする木虎さんに慌ててかけより腕を掴む。

 

「ちょ!どうしたんですか急に!何かあったんですか!?」

 

「あった……」

 

「何があったんですか?教えて下さい」

 

「取られた…」

 

「何をですか?」

 

「男の子……」

 

え?そう言う感じ?まじか。てか木虎さん彼氏いたんだ今度紹介して貰お。木虎さんが選んだ人なら大層素晴らしい人に違いな…………取られたばっかでしたね………

 

「えっと、その、あの……飲みにでも行きます?」

 

加古さんのドリンクですけど。

 

「最近仲良くなった人なんですけど、その人が作るドリンクは嫌な事どころかモノよっては全てを忘れられる凄い飲み物なんです。しかも凄くいい人ですし!」

 

エプロンをオンしなければ。

 

「だから木虎さんさえ良かったらそこに」

 

行きませんか?と言う言葉は出てこなかった。何故なら

 

「………ぐすっ」

 

木虎さんまじ泣き警報が発令されたからだ。ぐすぐすと泣き始めた木虎さんに俺の能はホームラン寸前。黒江さん、どうか俺を導いて下さい

 

 

 

 

 

 

 

 

「離して!」

 

「嫌です!」

 

「離してよ!」

 

「嫌です!」

 

「私よりいい人見つけたんでしょ!だったらもう私に構わないで!」

 

「嫌です!」

 

「最近顔を見せないと思って様子を見に来てみれば新しい人見つけたんです!なんて言われた私の気持ちが分かる!?もうほっといてよ!」

 

「嫌です!俺には木虎さんが必要なんです!」

 

「なによ!都合の良い事ばっか言って!私なんかより新しく仲良くなった人の方がいいんでしょ!もう私に飽きたんでしょ!」

 

「俺が木虎さんに飽きる訳ないでしょ!ボーダーで色々な初めてを教えてくれたのは他でもない木虎さんじゃないですか!そんな人をほっとく訳にはいきません!」

 

「なによ!なによ!!最近ずっとご無沙汰だった癖になによ!顔すら見せに来なかったじゃない!」

 

「それは、あまり頻繁に行ったら迷惑だと思って!頼りきりにならないよう頑張ろうって思ったから!」

 

「そんな言葉じゃ誤魔化されないわよ!事実、私の他にもいい人作ってるじゃない!」

 

「危険性が無くいい人は木虎さんだけです!黒江さんは天使なんです!」

 

「私は天使じゃないって言うの!?」

 

「あなた師匠でしょ!?天使な師匠になんてなられたら俺は一体どうすればいいんですか!」

 

「どうにでもなればいいじゃない!」

 

「理不尽だ!?」

 

木虎さんが取られたのは彼氏では無く俺であったらしい。迷惑かけないように嵐山隊の所に行かなかった事が裏目に出たのか。顔を見せない俺に酷くご不満だった木虎さんが二宮さんの指導を受けてる事を知りスパーク。俺と縁を切らんばかりに荒ぶる木虎さんを宥めようと奮闘。現在に至る。

 

「………何、してるんですか」

 

木虎さんと俺で大乱闘スマッシュ俺達を繰り広げていると、先程の祈りが通じたのか大天使の囁きが聴こえてきた。

 

「黒江さん!丁度良かったです!木虎さんを説得するの手伝って下さい!」

 

「双葉ちゃん!亮平君の言う事なんか聞いちゃダメよ!大人しそうな顔して色んな人を掌の上でコロコロするような子なんだから!」

 

「黒江さんの前でなんて事言ってんの!?誤解を招くような事言うの止めて下さい!」

 

「誤解じゃないじゃない!」

 

「どこらへんが!?」

 

「少なくとも私はコロコロされたもん!」

 

「二宮さんならともかく俺がそんな事出来る筈ないでしょ!?何言ってんだあんた!?」

 

「師匠にむかってあんたとはなによ!」

 

「師匠とはいえ言っていいことと悪い事があります!今は悪い事したんでちょっと口調荒く怒ってみました!ごめんなさい!」

 

「二股かけてる癖に弟子ぶらないで!」

 

「今自分で師匠って言ったでしょ!?二股どころか彼女すら居た事ない俺に何言ってんですか!?あ、黒江さんは別枠ですよ?彼氏彼女とかそういう垣根を越えた」

 

「二人共うるさい。静かにして下さい」

 

「「はい」」

 

ですよねー

 

 

 

 

 

 

 

普通に怒られ人のいない場所まで連れて来られた俺達。でも何故か俺だけ正座。黒江さんに問う。理由うるせえ。じゃあ仕方ない。正座しよう。

 

「どういう思考回路してたらああなるんですか?」

 

有無を言わさず正座させられた俺がどうしてああいう情況になったのか事細かに説明した後の黒江さんの第一声がこれ。一分の隙もない的確な疑問だ。俺が逆の立場でもそう思う。どういう思考回路してんだ俺。

 

「しかも木虎先輩まで」

 

「あ、あれは、その……ごめんなさい……」

 

「田中さんに他の知り合いが出来るのがそんなに嫌なんですか?」

 

「そ、そうじゃないの。ただ、田中君みたいに純粋に私を慕ってくれる後輩があまりいないから、その……取られたら、やだなって、思いまして……」

 

「だそうですよ田中さん」

 

「どっか行けって言われてもすがり付くレベルに居る木虎さんから離れる訳がない」

 

「らしいですよ」

 

「う、うん。ありがとう。最近来てくれなかったから嫌われちゃったのかって思ってあんな事を……ごめんね亮平君。双葉ちゃんも」

「私に謝る必要はないですよ」

 

「今日一杯迷惑かけちゃったから」

 

「それは田中さんのせいでもあるんで気にしなくていいですよ」

 

「それでも、私が迷惑かけた事にかわりはないから。本当にごめんなさい」

 

頭を下げ謝る木虎さんに、黒江さんが驚いたように目を丸くする。

 

「………木虎先輩って、簡単に謝ったりしないプライドの塊みたいな人だと思ってました」

 

「以前はそうだったんだけど……」

 

ちらりと俺を見る木虎さん。なんでしょう?今の流れでなんか俺に不備ありました?

 

「亮平君を見てたら意地張るより素直になった方が楽しそうって、そう思ったの。まあ、まだ同年代や年上の人には素直になれなそうなんだけどね」

 

困ったように照れ笑いする木虎さん。そんな木虎さんを見て少しの間目を閉じていた黒江さんが目を開け1歩踏み出す。迷いなく歩を進め木虎さんの正面まで歩み寄った黒江さんは右手を出そうかな?どうしようかな?みたいな感じで何回かヒョコヒョコさせた後もういいや!出しちゃえ!みたいな感じで手を伸ばす。木虎さんは差し出されて手を見て頭に?を浮かべ「どうしたの?手相でも見て欲しいの?」と言い黒江さんの額に青筋を走らす。

 

「懐く後輩が二人になればもうあんな事しないと思ったんですけど、もういいです」

 

手を引っ込め離れて行く黒江さんにポクポクチーンした木虎さんが慌てて駆け寄り手を繋ぐ。

 

「ご、ごめんなさい!双葉ちゃんにそんな事思って貰えるなんて夢にも思ってなくて!あの、まだ、懐いてくれる?くれます?懐いて下さい!」

 

「必死過ぎて怖いんで止めて下さい」

 

木虎さんの顔が絶望に染まる。

 

「こんなに強く握られたら手が痛くなってしまいます。弱めてくれるなら、その、少しだけ懐いてあげます」

 

木虎さんの顔が放送出来ない。花咲くとかのレベルを越えてるぞあれ。何咲いたらあんな顔できるんだろ?まあ、木虎さんが嬉しそうだからなんでもいっか。

ニコニコ笑みを浮かべ黒江さんの手をにぎにぎする木虎さん。今日位は木虎さんに黒江さんを譲ってやるか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いくらなんでも長すぎです!俺にもにぎにぎさせて下さい!」

 

「だめよ!まだ堪能したりないんだから!」

 

「代わりに俺の手貸してあけますから!だから少し黒江さんの手をわけて下さい!」

 

「嫌!絶対嫌!亮平君なんて二宮さんの手でも握ってなさい!」

 

「それ危ない図しか想像出来ないんですけど!?絵的にも俺の命的にも」

「そんなの知らないわよ!双葉ちゃんも私ににぎにぎされた方が嬉しいわよね?ね?」

 

「そんな泣き虫師匠の手より俺のスパイシーな男気溢れる手の方がいいですよね?ね?」

 

「もう帰れ」




黒江さんの誕生日知らなかった……明日絶対お祝いする。

天啓を授けてくれた方に感謝を。あなたにクロエルの加護があらん事を祈ってます


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