番外編。旅行1
季節は夏。今日は加古さんから夕飯のお誘いを受け加古隊の部屋で黒江さんを交えご飯を食べている。今日のは大当り。超美味しい。
そんな美味しいご飯をパクついているとふいに加古さんが
「旅行に行くならどこに行きたい?」
どこかに飛ばされるのか俺?
前フリなく出てきた七武海の提案に首を傾げ口をもぐもぐ。なんで急にそんなことを?と思ったが黒江さんが「山に行きたいです」と言うのを聞き自然とそれに同意するように俺も頷く。自分の提案に乗ってくれたのが嬉しかったのか、加古さんはにこにこと笑顔。「いいわね山」と言いながらスマホを取りだしタップ。
二宮君今なにしてる?太刀川君と堤君と飲んでる?なら丁度良かったわ。今度山に行きましょ。え?なんの話しだって?今双葉と田中君と相談してそうなった話しよ。え?勝手に行け?なに、二宮君山怖いの?ならしょうがないわね、怖がる二宮君を連れていくのは可哀想だからやっぱりこの話しは無かった事に、ん?行くの?でも二宮君山行くの怖いんでしょ?だったら無理にとは言わないわ。え?田中君?ええ、居るわよ。…………ん。分かったわ。
「はい」
「え?」
なにが?
いきなり二宮さんに電話したと思ったら、はいの一声でそのスマホを渡してくる加古さんに俺の頭は?で一杯。
「え、あの、状況がよく分からないのですが……」
「二宮君が田中君に代われって」
いや、それもよく分からないんですが………まあいっか。
「もしもし、田中です。お電話代わりました。なにかご用でしょ」
『俺は山を怖いと思った事は一度もない』
知らんがな。
そんなこんなで旅行当日。あの後木虎さんも誘ったところ二つ返事で参加してくれた。メンバーは俺、黒江さん、加古さん、木虎さん、山が怖くない系男子二宮さん、太刀川さん、armyの7人だ。ツッコミ待ちの堤さんには悪いがスルーさせて貰おう。てかそんな厚着して暑くないのかな?一人ボーダーじゃなく陸軍が交ざっていたが予定通り二宮さんが出してくれた車に乗り込み出発。ちなみに黒江さんもジーパンロンT背中にはリュックとarmy程ではないが結構な装備をしていた。
「暑くないんですか?」
車内に乗り込み隣に座る黒江さんに問い掛ける。席順は運転手二宮さん、助手席加古さん、真ん中に太刀川さんと堤さん。後部座席には左から木虎さん黒江さん俺となっている。
「どこの山に行くかは知りませんが、用心に越した事はありません。田中さんこそ、そんな装備で大丈夫なんですか?」
「問題無い」
「そうですか」
心なし滑った感を味わいつつも楽しくお喋りする。
「双葉ちゃん双葉ちゃん。はい、あーん」
「自分で食べれます」
「両手が塞がってるのに?」
「…………なんで二人して私の手を握ってるんですか………」
「「黒江さん」双葉ちゃんシート」
「黙れ」
車内に乗り込みこの席順になった瞬間俺と木虎さんはシートベルトをする前に黒江さんの手を握り、それからシートベルトをした。
「両手が塞がってたら自分で食べられないでしょ?だから、あーん」
「うざい」
木虎さんが死んだ。安心して下さい、貴女の意思は俺が引き継ぎます。
「黒江さん黒江さん。はい、あーん」
「うざい」
俺も死んだ。
「普通にすればいいでしょう?お喋りもお菓子も普通にしてればするし食べますよ。なのにバカにしてるみたいな真似をして」
あ、そういう事か。黒江さんの想いを受け取った俺と木虎さんは瞬時にアイコンタクト。頷く。そして握っていた手を離し二人同時にお菓子を手に取り元気よく
「「はい、あーん!」」
「トリガーオン」
あ、ごめんなさい。謝りますからそれは勘弁して下さい。ほら木虎さんも謝っいやいや!オンしてるのになんでまだお菓子差し出してるんですか!黒江さん怒ってるから謝りましょ、違う違う!お菓子の種類じゃない!それで怒ってるんじゃない!ほらなんか剣出てきた剣!早く謝っていやいやいや!それポッキーじゃないから!あーんしたら死ぬやつだから!口開けてないで早く謝って下さい!
「車に傷つけたら放り出すからな」
「「ごめんなさい」」
「あーん」
この人心臓強いな。
いつの間にか寝てしまったが問題なく目的地に到着。ちょっと危ないポッキー出たけど。二宮さん、運転お疲れ様でした。そして途中で寝てしまってごめんなさい。
ここまで運転してくれた二宮さんに皆でお礼を言い車から降りると、目の前には結構大きなペンションが。
「おおー」
山の中にひっそりと建つペンションに感動しながらトコトコとペンションの周りを歩いてみると、なんとバーベキューセットが設備されているのを発見。凄い、こんなのまでついてるんだ。
「夜はここでバーベキューをするのよ」
「おお、なんかすごく楽しみになってきました!」
「ふふ、そうでしょ?なんなら今から私が腕によりをかけて色々作ってあげ、え?ちょ、なに?どこに連れてくの?」
危険な発言をしそうになった加古さんを二宮さんと太刀川さんが引きずって行く。流石です。
戸惑いの声を上げながらドナドナされてく加古さんを見送り、堤さんと共に車から荷物を取り出しペンションへ運ぶ。ついでにそろそろツッコミを入れようかな?役に入りきっているのか車でもずっと無言だったし。
「あの、堤さん。その格好は」
「大佐と呼べ」
「はい?」
「この旅行中俺は堤ではなく大佐と呼ぶんだ。分かったか田中三等兵」
最近堤さんの壊れっぷりがヤバイな。
「多分そのネタ滑ると思うんで止めた方がいいですよ?」
「…………やっぱり?」
「はい」
「誰もツッコンで来ないから薄々そうかなぁって思ってはいたんどけど……結構暑いの我慢したんだけど?」
「それは見れば一目で分かりますが、多分滑ります」
「大佐じゃなく堤って呼んで貰っていい?」
「はい。堤さん」
元大佐と荷物を運び終えた後再び外へ行くと太刀川さんが大木に手を当て目を瞑っていた。
なにしてるんだろ?
ボーダー最強と呼ばれA級1位の隊長である太刀川さんがああしている姿は凄い様になっており、大木に手を当てたまま目を瞑り動かない太刀川さんに暫くの間目を奪われてしまった。何か声をかけ辛い風囲気を漂わせる太刀川さんをそのまま眺めていたらどこからともなく木虎さんが現れトコトコトと太刀川さんに向かい歩き普通に声をかけた。
「なにしてるんですか?」
「いや、大きいなぁと思って」
さて、黒江さんはどこかなー?
各々が自由に過ごす中、黒江さんが見つからない。探せど探せど見当たらない黒江さんにもしかして遭難でもしたのか?と不安になっていると、近くの茂みがガサガサと揺れた。なんだろ?動物かなでもいるのかな?流石に熊とかじゃないだろ。…………ないよね?…………ないよね?
漫画じゃあるまいし、そんな事ないだろと思いつつも1歩2歩と後退。揺れる茂みから距離をとる。そしてある程度距離をとった所でドキドキしながらよし、逃げようと思ったら
「ぷはぁ!」
「うわぁ!」
何かが飛び出して来た。可愛らしい声を出しながら飛び出して来たものに俺は驚き情けない声を出しながらスッテンコロリン。ん?可愛らしい声?
「んー髪に草が………ん?」
ん?
「ん?」
うん?
「あっはははははははは!」
飛び出して来たのは黒江さんでした。驚き転んだ俺を見て「なにしてるんですか?」と聞かれ正直に答えたら爆笑された。
「うわぁ!だって!うわぁ!あっはははははははは!」
「ぐぬぬぬぬ………」
「熊がこんな所にいる訳ないのにうわぁ!だって!あっはははははははは!」
「ふぬぬぬぬ………」
「あーお腹痛い………もう、笑わせないでよ」
「そっちが勝手に笑った癖に………」
「あ、もしかして不貞腐れてる?」
「別に………」
「おおー、不貞腐れてる田中さん初めて見た……カワイイ……」
「っ!」
もう!もう!なんかもう!
俺は恥ずかしいやら情けないやらでもういっぱいいっぱいになった。ぐぬぬぬぬ、このままでは男としての威厳が…………あれ?俺にそんなもんあったっけ?てか
「……鼻の頭真っ黒……」
「っ!」
俺の言葉に土の付いた鼻をゴシゴシと拭う黒江さんだったが、急いで拭ったせいで土の汚れが広がり鼻が真っ黒になってしまった。ぷっ!
「ぷぷぷ………パンダみたい………」
「!!」
「髪に引っ掛かってる草も笹に見えてきた」
「!!?」
「鼻を隠しながら恥ずかしそうにしてる黒江さん可愛いい」
「~!!うっさい!!」
ぺしぺし叩かれました。
どうやら黒江さんは以前山に居たらしく、旅行で山に来ると分かったら昔の血が騒ぎ色々採取してたらあそこに出たらしい。帰り道ぺしぺし叩きながら教えてくれました。リアル山ガールだった黒江さんは持ってきたリュックに食べられそうな木の実や焚き火に使えそうな枝等を取ってる内に夢中になり、草や土を付けてしまい
「パンダさんになりましたと」
「う、うるさい!」
「パンダ黒江さん可愛い」
「うっさい!そっちだってうわぁ!とかいって転んでた癖に!」
「パンダ黒江さん可愛い」
「うわぁ!田中さんの癖に!」
「パンダ黒江さん可愛い」
「…………うわぁの癖に………」
「パンダ黒江さん可愛」
「分かった!謝る!驚かしてごめんなさい!だからもうそれ言うの止めて!」
「パンダ黒江さん可」
「おい田中」
はい、ごめんなさい。
怒れるパンダさんを連れペンションに戻ると買い出しに行った二宮さんと加古さんが丁度帰って来ていた。加古さんは元気よくペンションに入って行ったが、二宮さんがなんかおかしい。てか二宮さんやつれてね?歩き方がヨロヨロしてんだけど?
どこに買い出しに行ったらそうなるのか、疲労困憊といった様子の二宮さんに駆け寄り肩を貸す。
「どうしたんですか二宮さん。そんなにヨロヨロになっ」
………俺は、二度とあいつと食い物関係の買い出しにいかん………何故バーベキューでイチゴジャムやきな粉を買おうとするんだ?美味しそう?折角来たのに普通のバーベキューじゃつまらない?はっ!今お前が手にしたハーゲンダッツのどこにバーベキューの要素がある!食後か?食後に食べるのか?違うだろ!お前はそんな奴じゃない!タレか!?溶かしてタレの代わりにするのか!?そんなもん俺が入れた黄金のタレで充分だろ!おいまて!その手に持ってる納豆とヨーグルトを今すぐ戻せ!栄養バランス、だと?そんなもんの前に味、おい今度は何を持って………餅か、餅なら、まあ単品でも食えるかおいてめーいい加減にしろよ、雪見大福のどこが餅だ、牛皮使ってるだけで100%アイスだとわからないのか!おい今度は何を……ああ……プリン、か………プリンくらいなら、まあ、肉と合う、かも、な……
涙が、止まらない
「もう、いいんです………二宮さん、あなたは真の男です、もう休んで下さい………」
田中、か……
「はい」
後は、任せる、ぞ………
「はい……!」
B級1位二宮隊隊長二宮匡貴敗れる。
溢れる涙を抑える事無く流しながら気を失った男二宮さんをベットまで運ぼうとしたが、体格差があり上手く運べずもどかしさを感じていると両肩をポンと叩かれる。誰だ?
「「…………」」
涙を流し親指を立てる太刀川さんと大佐だ。二人は無言で俺から二宮さんを引き取り、壊れ物を扱うかのような丁寧さでペンションへと入って行った。
「……二宮隊長に、敬礼……!」
俺は一人ペンションへと消えていく二宮さんに全身全霊で敬礼をし見送った。
「双葉ちゃん、どうして亮平君は敬礼してるの?」
「さあ?なんででしょう?」
「双葉ちゃんにも分からないんだ。さっきは太刀川さんと堤さんが泣きながらペンションに入って行ったし、なにかあったのかしら?」
「どうでしょうね?ところで、なんで私にスマホを向けているんですか?」
「お鼻が真っ黒な双葉ちゃんを永久に残しておきたいと思っああ!なんで取るの!返し(メキメキ)あああ!ごめんなさい!撮りません!撮りませんからメキメキいわせないでぇ!」
「なんてそう田中さんと思考回路が同じなんですか………あの、これ」
「ん?ああそれ。さっき車で寝てた二人を撮った、の………あの、それも消さなきゃだめですか?ふ、二人が幸せそうだったからつい撮っちゃったんだけど、その……出来ればそれは残しておきたいかなー、なんて……」
「……私に」
「え?」
「私にもくれたら………許してあげます……」
「お安いご用よ!それにしても双葉ちゃんは本当に田中君の事が大好きなのね、あ、痛い!叩かないで!ごめん、ごめんなさい!」
「ふーっ!」
本当は終わった後に出そうと少し書こうと思ったんですが、戦闘シーンがあり、あまりふざけられない状態だと本気で書くスピードが遅くなるので代わりの番外編をちょこちょこ出します。付き合った後の話しになり、番外編では付き合っている事は周知の事実ですが本編ではまだ発表はしてない感じです。
混乱させてしまうかもしれませんが、書けないフラストレーションがすごいので番外編として投稿させて下さい。
本編が中途半端なのに投稿したのでややこしくいと感じる人もいると思います。あまりにも不評なようでしたら消しますの遠慮せずに指摘して下さい!
戦闘シーン書ける人達本当に凄いです……いや、まじで