黒江が好きぃぃぃぃぃ!!   作:ユルい人

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第10話

修行内容が爆撃ワイヤー指導から斬撃射撃指導に変わりそうな今日この頃。 ボーダーとはここまでポイントを貯めるのが難しい組織なのかという疑問を抱え今日も今日とてアボン祭。基本しょぼいアステロイドを使い、申し訳程度のスコーピオンしか使えない俺は指導と言う名の元のいじめを受けています。

 

「あの、皆さんそんなに暇なんですか?」

 

「訓練してんだ、暇してないだろ」

 

「いや、これもう訓練じゃなくていじめ……」

 

「ほら。もう一戦するぞ」

 

「あなたは本当に帰って下さい。いや、まじで」

「飲み物まで、飲み物までって……なんでコンナコトニナッチャタノ?」

 

「塩振りましょうか?」

 

俺より格上歳上の人達は訓練に余念が無い方達ばかりだ。俺が胸を張ってB級と言える日はいったいいつ来るのだろうか…………?あ、もう降格しちゃうんでこれ以上は無理です。またポイント貯まる頃に来てください。お疲れ様でした。

 

 

 

 

 

 

 

「また1500ちょいに逆戻りか……流石はボーダー本部。市民の平和を守りネイバーと戦う組織だけあるな。そう簡単に上へ行ける程甘くは出来ないわ。いやでも太刀川さん。あの人はまじでなんなんだ?あの人さいきょーなんだろ?飛ぶ斬撃マスターなんだろ?なんで俺なんかを相手に?加古さんのトリガーはA級1位をも動かす程のものなのか……ん?」

 

ボーダーの厳しさを身を持って味わい廊下を歩いていると、曲がり角から空閑さんと見知らぬ男性の声が。

 

「迅さんのサイドエフェクトはどこまで予知出来るの?」

 

「ん?どこまでと言うか、分岐がある未来が見えるって感じだな」

 

「ほほう、分岐ですか」

 

「そう。例えばあの曲がり角を右に行くか左に行くかで遊真がどうなるか分か……戻るぞ遊真。このままだと面倒臭い事になると俺のサイドエフェクトが言っている」

 

「ん?それはどういう……おや?あれは確か……」

 

俺は駆けた。世の中には霊能力者や占い師と言った人達が居る。だがその人達が本当にそんな力を持っているかは俺には分からない。だってちょっと胡散臭いんだもん。だが、ここボーダーに入ってから俺はある単語を耳にした事がある。

 

サイドエフェクト。

 

これは溢れんばかりのオーラの持ち主が得るだろうと言われる超能力?みたいなものだ。それは千里先で落ちる針の音を聞き分け、あらゆる感情を読み取り、めっちゃ睡眠学習出来ると言われてる。あれ?最後の超能力?まあいっか。

 

「うおおおおおお!!」

 

廊下は走ってはいけません。知ってます。だが、今この瞬間だけはそれを許して欲しい。だってなんか逃げようとしてんだもん。空閑さんの肩に手をかけ後ろ回れをする男性を逃がさん!とばかりに駆け跳躍。いつぞやの犬飼さんの時のように足を滑らせ頭をゴチンッと叩き付けひれ伏す。

 

「占って下さい!」

 

「あー、遅かったか…」

 

「これはこれは、いつぞやのホラー少年じゃないか。その頭大丈夫かね?」

 

それはどっちの意味でしょう?打った事ですか?それとも中味の事ですか?

 

 

 

 

 

 

 

どうやら占い師の方は迅さんと言うらしい。そして驚くなかれ。この人少し前までS級隊員だったそうだ。初めて見るスーパーボーダーマンに会った心境はまじか?やべぇ。記念になにか欲しい。と言う訳で。

 

「サイン下さい」

 

「お、この実力派エリートのサインを欲しがるとは中々見所があるな。よしそれじゃあ好きなとこに書いてるやろう。どこに書いて欲しいんだ?」

 

「全身にお願いします」

 

「……え?」

 

早速とばかりに服を脱ぐ俺。かの耳なし芳一は悪霊から身を守る為全身にお経を書いたと言われている。しかし耳だけお経を書き忘れ食い千切られてしまう。だが俺はそんなミスをしない。全身真っ黒になる位書いて貰う所存だ。S級と言えば限られた人しかなれない超人、もしくは人外だ。さらに溢れんばかりのオーラを持つ人しか得る事の出来ないサイドエフェクトまで習得されてる。そんな人に書いて貰うサインなら魔除けのご利益がビッグバン待ったなし。これ幸いと耳あり田中になるつもりだ。

 

「遊真、今こいつが言ったのは」

 

「嘘じゃないね。むしろかなり本気だよ。」

 

「まじか」

 

どうしたんですか?早く書いて下さ……え?全身は無理?てか服を着ろ?何故です?さっきは好きなとこに書いてくれるって。あ、一ヶ所しか書けないんですか。そうですか。なら仕方ないですね。流石に元とは言えS級のサインは安い物ではないらしく一ヶ所にしか書けないと告げられた。

 

「んー、それならどこに書いて貰えば………あ」

 

書いて貰う場所を思い付いた俺は右手を差し出し前にポイントが書かれたところを指差す。

 

「ここにお願いします」

 

「ん?そこでいいのか?」

 

「はい。ポイントを稼げるようになれる気がするんで」

 

「そっかそっか。今どれくらいなんだ?」

 

「1501です。」

 

「そのポイントじゃまだC級ってところか。それじゃあ早くB級に上がれるように願いを込めて」

 

「俺もうB級ですよ?」

 

迅さんがぶって吹き出した。最近多いなこのパターン。

 

「大丈夫ですか?」

 

「いやいやいや。そっちこそ大丈夫なのか?B級でこのポイントはちょっとまずいだろ」

 

「それは爆撃と斬撃と怨霊に言って下さい」

 

あの人達の指導(笑)を受けてると、木虎さんの指導がいかに優しくまともなのか骨身に染みる。

 

「遅い」

 

「旋空弧月」

 

「なんでこんなことにナッチャタノォォォ?」

 

うん、絶対指導じゃない。だってただ俺をアボンさせまくってるだけで何か教えられた記憶ないもん。俺の説明になに言ってんだこいつみたいな顔をする迅さんだったが、ややあって「ああ」と呟き苦笑いしながら頭をぽんぽん撫でてくる。

 

「どんまい」

 

それどういう意味ですか?

 

 

 

 

意味深な言葉を下さった迅さんが「今日は帰り前にもう一度模擬戦ブースに寄るといいぞ」との言葉を残し空閑さんと共に去っていった。もう一度って言われましても、あのトリガーハッピー共に見つかったら面倒だからあまり行きたくないんだけど………でも占いのサイドエフェクトを持ってる迅さんが言うなら行った方がいいんだよな?よし、行くか。流石にあのハッピー危面組でも後2ポイントでアボンする俺をどうこうしないだろ…………しないよね?

 

びびりつつも流石にそれくらいの常識はあるだろうと思いながら、抜き足差し足大天使。模擬戦ブースでキョロキョロと誰かを探してる黒江さんを発見。誰か探してるのかな?それなら手伝ってあげようと思い声をかける。

 

「黒江さん」

 

背中から声をかけると黒江さんがビクッてなった。なにこれ可愛い。ちょっと小動物っぽい黒江さんに萌えていると、咳払いを一つした黒江さんが振り返りじと目で睨んできた。

 

「驚かさないで下さい」

 

「ごめんなさい」

 

あれ?普通に声かけたつもりたんだけど……まあいっか。ごめんなさい。じと目で睨む黒江さんに謝り「さっきキョロキョロしてましたけど誰か探してるんですか?」と問うとまたビクッてなった。え、ちょ、黒江さん大丈夫?どこか体の調子でも悪いんですか?ビクンビクンする黒江さんがちょっと心配になる。もしかして加古さんのトリガーでも食べたのかな?

 

そんな風にちょっと挙動不振な黒江さんを心配していると、またも咳払いを一つした黒江さんが

 

「ちょっと小耳に挟んだんですけど。田中さん、木虎先輩と二人で買い物に行ったらしいですね」

 

「え?あ、はい。行きました。誰に聞いたんですか?」

 

「さっき木虎先輩と佐鳥先輩が言い争いをしてたので、どうしたんだろうと思い様子を見に行ったら嵐山さんが教えてくれました」

 

ごめんなさい。佐鳥さん本当にごめんなさい。木虎さんもごめんなさい。勝手に佐鳥家に荷物送って本当にごめんなさい。

 

「ごめんなさい」

 

「なんで謝るんですか」

 

「勝手な事をしてごめんなさい」

 

「べ、別に私にそんな事………んんっ。田中さん」

 

「はい」

 

「田中さんは買い物に行く時連れてくと、とても便利だと聞きました。なんでも山のような荷物を軽々持てるとか」

 

「え、いや、流石に軽々とは」

 

「私も女の子なので分かります。沢山の荷物を持つのは大変です。とても大変です。山のような荷物なら尚更です」

 

「いや、ですからあの時は曲芸師になっただけであって軽々と持ってた訳じゃ」

 

「とても大変なので、今度田中さんに買い物に付き合って貰いたいと思っております。どうでしょう、か?」

 

「慎んでその任承りたい所存でございます」

 

「山のような荷物になるかもしれませんよ?」

 

「例え富士山の如く積み上がっても持ち上げて御覧に入れましょう」

 

「でも、もしかしたら何も買わないかもしれませんよ?」

 

「手が空いてるならばその間黒江さんを持ち上げて御覧に入れましょう」

「セクハラやめて」

 

「ごめんなさい」

 

「全く……あの、本当に買い物、付き合ってくれますか?」

 

「例え危面組が襲い掛かってこようと退けお供させて頂きます」

 

「危面組?」

 

「別名トリガーハッピーとも言います」

 

「?新しいトリガーか何かですか?」

 

「約1名を除き一応人間です」

 

「???」

 

なにそれお前何言ってんの頭大丈夫みたいな目で見てくる黒江さんだったが「まあ田中さんの日本語がおかしいのは今に始まった事じゃないのでなんでもいいですが……」と言った後頭に付けた髪飾りを一撫でしおずおずと「あの、本当に私と買い物一緒に行ってくれるんですか?」と先ほどと同じような質問を再び聞いてくる。ふむ、何をそんなに不安がってるのやら。

 

「当然です。むしろこちらからお願いしたい位です。一緒に買い物行かせて下さいお願いします」

 

「あ、頭下げないで下さい!お願いしてるのは私の方なんですから!…………えと、それじゃあ、今度のお休みの日に!一緒に買い物に、行きましょう、か」

 

「御意。あ、それと髪飾り付けてくれてるんですね。ありがとうございます。とっても嬉しいです。自分で送っておいてなんですがとっても似合ってま、あ!待って下さい!なんで行っちゃうんですか!」

 

「う、うるさい!こっち来ないで!」

 

急に顔を背けスタスタと歩いてく黒江さんを慌てて追っかけながら黒江さんとの買い物に夢を馳せる俺だった。

 

迅さん、ありがとうございました。サインして貰った手なるべく洗いません。本当にありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの山のような荷物お前のかよ!なんで俺の家に送るんだよ!全部女物の服だから家の中どえらい事になってんだぞ!」

 

「そんなの知りませんよ!と言うかなんで佐鳥先輩の家に私の服があるんですか!セクハラですか!」

 

「いやいやいや!むしろセクハラされてるのは俺の方だろ!親から真っ先に疑われたんだぞ!あんた……こんな趣味があったの……?って!」

 

「なんですかそれ!私が買った服の趣味が悪いって言うんですか!ツインスナイプ(笑)の癖に!」

 

「なんだと!今なんて言った!」

 

「ツインスナイプ(爆)」

 

「じょぉぉぉぉとぉぉぉぉぉぉだ!今すぐ模擬戦すんぞ!その(爆)の力見せてやんよぉ!このワイヤー(なんかエロい)野郎が!」

 

「はぁぁぁぁ!?何変な想像してるんですか!?ぶっ飛ばしますよ!?上等です!その(爆笑)がどれだけ無駄なのか証明して上げます!」

 

「進化させてんじゃねーよこの野郎!もういい行くぞ!着いて来い!」

 

「偉そうに命令しないで下さい!しかも女の子に野郎とか頭悪すぎです!だいたい佐鳥先輩は…」

 

パタン。

 

「…………木虎、最近壊れてきてない?」

 

「藍ちゃん楽しそうねー。なんか元気良くなってきたっていうか」

 

「変に肩肘張らずに伸び伸びとしてきたな。いい傾向だ」

 

「ですねー」

 

「いや、二人共、あれはそういうレベルの話しじゃ……まあいっか」




やっと佐鳥さん出せた。

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