Fate/VR   作:ヴィヴィオ

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第14話

 

 

 

 朝食を終えて、訓練をして貰う。士郎とかなで、ジャックとジャンヌちゃんが戦っている。俺は既に戦い終わり、戦力外通告を通告された。というのも、碌に魔術が使えないのだ。筋トレをするぐらいしかない。インストールすれば話は別だろうけどな。因みに弓の技術も全然だめだった。

 縁側に座りながら観戦する。隣には美遊が座っている。彼女はやはり、顔を赤らめながら俺をチラチラと見たりしている。そんな彼女を気付かない振りをして戦っている姿を見る。士郎とかなでは士郎が大量の投影した剣を放つのを、かなでが剣で迎撃している。

 

「動きに無駄がなくなってきているな」

「ん、段々と動きが見えてくる」

 

かなでは段々とまるで思い出すかのように、戦う技術を思い出しているような感じだ。士郎も最初は短剣の二刀流で戦っていたが、今では基本的に遠距離攻撃を仕掛けている。

ジャックとジャンヌちゃんの方はジャンヌちゃんが果敢に攻めている。ジャックは離れようとしているが、ジャンヌちゃんがそれをさせずに突っ込んで槍で突いている。

アサシンであるジャックは奇襲や暗殺などが得意だが、正面からの戦闘は苦手だ。武器の都合から、ジャックが勝つにはジャンヌちゃんに突撃するしかない。だけど、それもジャンヌちゃんの槍によって塞がれている。長物である槍の中に飛び込むには速度を生かすしかないが、加速距離が足りずに対応されてしまう。

 

「むきぃっ! ずるいっ!」

「ずるくありません。堅実な戦い方です!」

「こうなったらっ! もう容赦なく解体しちゃうんだから!」

 

ジャックがそう宣言すると、急に辺りに霧が溢れ出してきた。

 

「ちょっ、それは反則ですよっ!」

「へへ~ん、知らないもんね~」

 

ジャックが使ったのは硫酸の霧を発生させる()()だ。模擬戦で使っていい物じゃない。いや、そんな事よりも問題がある。

 

「霧、ですか?」

「悪い」

「えっ!? なっ、何をっ!?」

 

隣に座って居た美遊を抱き寄せて、お姫様抱っこして逃げる。美遊は顔を真っ赤にしてから、青くなり、直ぐに真っ赤になった。 

 

「かなで、士郎っ! ジャックを止めろ! この霧に触れたら一般人は死ぬぞ!」

「しっ、死ぬっ!?」

「わかった! 美遊を頼むぞ!」

「任せて」

 

直ぐに二人は走っていく。ジャックとジャンヌちゃんは見えなくなっている。

 

 

俺は美遊を抱えて逃げた。しばらく離れて、霧が届かない所まで来た。美遊を降ろしてあげる。

 

「大丈夫か?」

「うっ、うん……ありがとう」

「じゃあ、俺は向こうに戻るが……一人で大丈夫か?」

「だ、大丈夫……」

 

そういうが、俺の服の裾を掴んで離さない。

 

「ご、ごめんなさい」

「いや、いいよ。一緒に居ようか」

「いいんですか?」

「あっちは大丈夫だろう」

「んっ」

 

美遊の頭に手を乗せて撫でてあげる。不安そうな美遊は少し安心したようだ。しばらく撫でていると、向こうからジャックを引きずってくるかなでとジャンヌちゃん達が現れた。

 

「むぅ、納得でき~な~い~」

 

ジタバタと暴れるジャック。

 

「納得も何も、やり過ぎなのですよ!」

「ん、そう」

「全くだ。大丈夫か、美遊」

「う、うん……お兄さんが守ってくれたから……」

「助かったよ」

「こっちの不手際だったし、むしろ悪かった」

 

ジャックに拳骨を落とす。

 

「痛い~~~なんで、なんでっ!?」

「アレは美遊を危険にさらしただろ。サーヴァントや魔術師ならばまだなんとかなっただろうがな……友達を殺すんじゃない」

「あっ……ごめん、なさい……」

 

ジャックは美遊を見て、謝る。俺も一緒に謝る。

 

「いいよ。直に別の場所に連れて行ってもらったから。でも、これからは気を付けてね」

「うぅ~ありがとう~」

「全く。何かお仕置きしてあげてもいいですよ。なんなら、手伝いますから」

「ううん、いいよ。その代り、何かあったら助けてね?」

「もちろんだよ!」

「私も手伝いますよ」

 

確かに、これからの事を考えると……もしかすると美遊と士郎には受難が待っているだろう。このお願いはかなりの助けになるかも知れないな。

 

「やれやれ、それにしてもいきなり宝具を使うとは……模擬戦だったんだがな」

「子供だから仕方ないが……これはしゃれにならん。しっかりと教育しておくんだぞ」

「ああ、わかっている。しかし、やっぱりいざとなれば助ける手段が欲しいな」

「インストールじゃ駄目なのか?」

「魔力に余裕は無いからな。それにインストールを強制解除される場合もあるかも知れないからな」

「やっぱり、戦う手段は多い方がいいか」

「ああ。何か手段は無いか?」

「あるぞ」

「あるのか!?」

 

士郎の言葉に驚く。

 

「教えてくれ」

「それは魔術師とかに弟子入りする事だ。桜坂は接近戦の才能が無いからな。魔術師としての才能はあるんだろうけどな。サーヴァント2体の維持を一人で行うとか有り得ないからな」

「魔術師としての才能はあるんだよな……でも、強化も投影も出来なかった」

「魔術回路にも相性があるからな」

「じゃあ、魔術師の弟子になるのは難しいのか?」

「ああ。だが、基本的には使っているクラスカードなどで影響を受けるらしい。だから、基本的に頼んでみるといいだろう」

「わかった」

 

俺の中で候補は衛宮、遠坂、間桐などこの街に居そうな魔術師だ。だが、この中におらず、ある意味では一番最恐の存在が居る。彼女なら、俺は強くなれるだろう。問題は彼女をどうやって落とすかだ。だが、それにはとっておきの手段がある。

 

「士郎、頼みがある」

「なんだ?」

「用意して貰いたい物がある」

「なるほど……いいぞ。しかし、正気か?」

「正気だとも」

「なら、幸運を祈るよ」

 

まるで死地に送り出されるみたいだが、間違いではないだろう。何せ、彼女なのだから。

 

 

 


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