もう用事もないし投稿出来ます!やったぜ!
えー、リアルの方でとても忙しく、書けない日々が続いていました。
ですがその用事も何とか終わり、投稿ペースを上げたいと思います。
ご迷惑をおかけして、すみませんでした。
では、どうぞ!
「ところで結城。付き合ってから半年の間に、大抵のカップルは初体験を済ませるらしいんだけど――」
ガシッ(桜のガノンドロフが俺のアイクを横Aで掴む音)
ガシッ(俺の脳みそが悲鳴を上げる音)
「キミはどう思う?」
ヒューズドーン! (崖外で掴まれたことによる道連れ、しかもお互いに一機の為俺敗北)
ヒューズドーン! (俺がベッドから墜落する音)
「……ねえ。聞いてるんだけど」
「いや急に何言ってはりますのん!?」
冬。二月の昼下がり、休日のとある日の事だった。昼食も済ませた俺、平均平凡の暁結城と幼馴染の雪柳桜はスマブラをしていた。因みに300%のハンデありでボコボコにされるくらいの実力差だ。桜はガノンドロフかルキナ、俺はアイクかリンクかキャプテンを主に使用。どれだけ俺がゴリラーなのかは見ての通りだ。
「あのね、結城。キミがヘタレなのは百も承知だけどね、流石に毎日来て昼寝したりしてるのにタッチ一つないのはおかしくないかい? それとも何? もう枯れてるの?」
「いやだって勝手に触ったりしたらセクハラじゃん! ダメだろ! あと枯れてません!」
「合法! 冬に薄着って寒いんだから、早くしてよ!」
「厚着して!?」
ベッドの下に居る俺の背中をげしげし蹴りつつ、桜は不機嫌そうに言葉を繋ぐ。しかし、興味はあってもいざ出来ないのが男子高校生だ。怖いもんね。緊張するもん。
「……結城がスカートか、短パンが好きだって言うから履いてるのに……」
「待ってそういえばそれ何時言った!? 俺そんな事を言った覚えは、
「変態とのLINE中の誤爆」
あーそういえばやったなあ……。永大も誤爆してた。ドンマイ。
「今日はスカートか」
「そうだけど。結構寒いんだよ」
今日の桜の服装は、白いスカートにTシャツ、水色のパーカー。黒の少し透けているニーハイを履いており、髪は何時も通り綺麗なロングストレート。なるほど、言われてみればスカートはすーすーしそうである。
「でもなあ……襲えとか言われても、怖いんだよ。男子は」
「何さ。ボクへの愛情は理性に勝らないとでも?」
「愛情じゃないと思うんだよなあ」
「む」
俺の言葉を聞き、我が幼馴染は少し頬を膨らませた。3DSを閉じてベッドの上に置き、彼女はずいっと俺の耳に口元を寄せて、
「……君が耳舐めとかに弱いことしってるんだからね」
「うっひい!?」
恐らく敢えて――熱めの吐息を吹きかけつつ、桜は耳元で囁く。思わず飛び上がった俺を見つめつつ、彼女はぽつりと一言。
「キミを陥落させるのは楽かもしれないね」
「それ、大体男が言う奴じゃない?」
顔を熱くさせつつ言葉を返す。正直耳舐めボイスとか神だよね。うん。
「まあ、何にせよだな。幼馴染という関係上、お前の言動には他の人よりは慣れてるんだよ」
「うん」
「だからその……理性? は割と……えっと……せ、SEIYOKUに勝てる訳なんですよ」
「は?」
「え?」
「男子高校生って猿なんじゃないの?」
「全世界の男子高校生に謝れ」
そう言いつつ、俺も3DSを閉じる。MHW欲しいなあ……いやでも、ベヨネッタも欲しい。あの即死コンボは異常だ。
暖房の効いた部屋の中、俺と桜の間に少しの沈黙が下りた。特に何をするでもなく、どっちもぼーっとしている。窓の外では雲が空を覆い始めており、木原さんの雨予報をふと思い出す。
「桜、洗濯物干してたっけ?」
「干してるけど。ああ、雨が降りそうだね。結城、中に入れてくれるかな?」
「了解。畳むのは?」
「ボクがやろう。キミに任せると、時間が掛かりそうだからね」
「ぐぬぬ」
反論できないのが悔しいところだ。からかうような微笑を浮かべている桜を後に、庭へと向かう。物干し竿に掛かっている洗濯物を緑色のカゴに入れていく単調な作業。本来、何の問題も無く終わるその行動。
駄菓子菓子。そこに一つ、問題が発生した。
「……ッ!?」
俺のTシャツの隣に干してある、水色の下着。それは形状的にも色的にも記憶的にも、俺の物では無かった。そして家に母親は帰ってきていない。葵の服は全て学校の寮に置いてあるハズだ。
ならば、その下着は身内の物にあらず……!
その下着は、他の女性の物であった!!
「いやこれ、桜のか?」
寒空の下、詠唱風の思考を中断させる。流石に手は触れず、その下着を(女性の)じっくりと眺めてみた。
思い出せ。桜の下着にこんな色のはあったか? というか思い出せで思い出せたらダメじゃないか? そう言えば巫女服の時はつるつるだった気がする。巫女服もう一回見たいなあ。
迷走する思考。風に体を震わせつつ、結論を出した。
「……俺は気付かなかった。よし、これで行こう」
そして、カゴに入れるために手を伸ばす。伸ばし、伸ばし――下着の直前で、手が止まった。
さっき桜に散々言われたし言った様に、俺はチキンだ。
チキン野郎が誰のかも分からない女性用下着を触れるか? いや、触れない。
「桜に頼むか……」
カゴをリビングに置いて、とぼとぼと自室へ戻る。幼馴染に頼むこと自体がもう恥ずかしい事ではあるものの、自分で取るよりは遥かにマシだ。
部屋の扉を開けると、ベッドの上では桜が本を読んでいた。最近のマイブーム、りゅうおうのおしごと! である。銀子と天衣ちゃんと山城桜花が可愛いのはご存知の通りだろう。
「なあ桜」
「ん? 終わったのかい?」
「いや、そうじゃなくて。……そのさ、誰のか分からない下着が掛かってるんだけど」
俺がそこまで言ったところで、桜が無言で布団を被り始めた。
「……桜? おーい、さくらー」
「うるさいよ。うるさいよ結城。で? その水色のパンツをキミはどうするつもりなのかな」
「え? いや何で色まで知って――」
少し早口になった桜に問いかけようとしたところで、俺は気づいた。と言うかその可能性が一番高いっちゃ高いのだが、この家で洗う必要が無いから除外してしまっていたのだ。
あの下着は……桜のだッ!!
「ねえ桜」
「……何さ」
「もしかしなくても自爆してない?」
「うるさい。うるさいよばか」
布団の中から罵倒してくる桜の言葉には迫力がない。早口でもあるし、何より少し見えている足がベッドをぼふぼふ叩き続けていた。照れと焦り。いくら俺でも、今二つの感情が桜に存在する事は分かる。
そうか。分かったぜ神様。
これは、いつもからかわれている俺が桜をからかい返す絶好のチャンスという事だな……!
チキンな俺を抜け出せという事だろうという解釈。神様の意思を尊重するという建前をもとに、言葉を発し始めた。
「桜。ふふふ俺には分かるぞ分かってしまうぞ。大方、桜は俺の慌てふためく様子を見たかったのだろうが……」
桜の足のばたばたが加速した。唸り声も聞こえてきた。
「今、下着を見られたら割と恥ずかしい事に気づいたんだろふっはあああああああ!!!!」
「ああああああああああああああ!!!!!」
全力で叫んだ瞬間に、桜が布団を俺に向けて投げつけてきた。視界が塞がった一瞬の隙を付き、腹部に固い何かが……恐らく拳が突き刺さる。
「忘れろ! 記憶から消せ!」
「理不尽ふごおっ!?」
素早い足払い。思わず転倒した俺が頭を地面に強く打ち付けてる間に、痛む腹の上に何かが乗っかった。
「何やってんすか桜さん!」
「うるさい! 軽い脳震盪でも起こせば記憶も飛ぶだろうから、そのまま楽にしてろ!」
「記憶が飛ぶ脳震盪は軽くねえだろ!!」
それは最早致命傷だ。腹の上で暴れようとする桜を抑えるべく、覆い被さっている布団から手だけを出す。そのまま狙いを付けて、俺は思いっきり手を伸ばした。
しかし、手のひらは空を切る。代わりにと言うべきか、重さが腹の下――――股間へ。
「あかん」
いくら相手が昇竜拳イクスティンクション・レイリコイルバーストを使える舞踏家ロクでなし神装機竜でも、傍から見れば女子高生だ。こちとら男子高校生。筋力で言えば、もう全盛期に近い。
「とおおおおお↑う!」
「う、ご、く、な!」
「あうっ」
だから押し切れる! と思ったのも束の間、桜の手が俺の胸を押さえつける。それだけならまだしも、今の攻防によって桜は俺の股間部で沢山動いていた。刺激が来ていた。
やべえよやべえよスカイママ! と出川が脳裏を駆け抜けつつ、俺の俺が動こうとする。
流石に気付かれたら死ぬ。止める手段は、
「オルア!!」
「自傷行為!?」
俺は太ももを全力で殴りつけた。別の部分に刺激を集中させることで、気を紛らわせる作戦。その突然の行為による驚きからか、桜の手に入っていた力が緩む。一石二鳥、とは正にこの事である。
「せいっ!」
「ちょっ、結城……っ」
気合い一声。上体起こしの要領で体を起こした俺は、布団ごと桜を抱きしめた。そのままベッドに布団in桜を投げ込み、大きく息を吸い込む。危機は去った。はずだ。
「むう。何するのさ結城」
「ええ!? 俺が責められる展開なの!?」
布団を跳ね除けつつ、頬を膨らませる桜。真っ赤になっている頬や耳を触りつつ、彼女はゆっくりと立ち上がった。
「ガノンドロフ……力を借りるよ」
「ガード! ガードしてるから効かないもんね!」
「これはっ! 掴み部類だからガードは効かない!!」
ベッドの上で加速した桜の右手は、俺の両腕をするりと掻い潜り首元へと迫る。開かれた右手のひらが首を掴むやいなや、人一人の体重を支えきれずに再度倒れこんだ。
今度は抜け出せないようにだろうか。桜は両腕を広げて、俺の両手首をがっしりと押さえつけている。マウントを取られている関係上、抜けるのは難しそうだった。
「捕まえた……っ」
「ら、乱暴するつもりでしょ! 同人誌みたいに! 同人誌みたいに!」
「そうだけど?」
「えっ?」
桜は当然、と言う風に頷いた。思わず驚きの声を上げる俺に顔を近づけ、彼女は言葉を紡ぎ始める。
「ボクが下着をわざわざ干してたのも結城の理性を壊すためだし薄着だって沢山してたし朝起こす前に耳元で暗示を掛けてみたり……色々してたけど効果ないなら……」
そして、桜は舌で唇を舐めた。
「実力行使しかないよね?」
「えっ、ちょっ、」
彼女の顔が迫る。止められないまま、桜の唇が俺の唇と密着した。彼女の熱と、匂いがダイレクトに脳を刺激するも、そこで桜は終わらない。
「んっ、ふぁ……んうっ……」
「!?!?!?」
吐息を唇と唇の隙間から漏らして、彼女の舌が俺の口腔内に侵入する。そのまま口の中をぬるぬるした物が這いずり回り、舐りつくし、凌辱しつくした。
桜の匂いも味も何もかもが、直接心にも響く。くちゅくちゅと水音を響かせ、組み伏せられた状態から抜け出せない。
ずっと続くのだろうか。それでも良いかもしれない……と思ったその時だった。
倒れたままの俺の視界に、一人、居ないはずと思っていた人間が立っているのが映る。彼女はショートの髪を揺らし、両手で抱えたスーツケースを壁にもたれ掛からせて、スマホで写真を撮っていた。
スマホで写真を撮っていた。
「……っっ!?」
「ん? どうしたの……え、あっ……」
驚いた俺につられて、彼女もその存在に気付く。顔色一つ変えないまま、彼女はスマホのシャッターを押す手を一旦止めた。
「あ、お構いなく」
「お構うわ葵ィ!!」
ドアのところに立っていたのは、寮住まいであるはずの俺の妹、暁葵であった。