この辺から物語がそれなりに動きそうですね
「しっかし卑猥だよな、ビッチ先生の授業は。
下ネタ多いし……アレ中学生が見るドラマじゃねーだろ」
梅雨の時期ではあるけど、流石に毎日雨続きという事はない。たまには晴れる日だってある。
そんな珍しく一日通して傘を持たなくても良い日の帰り道、たまたま教室を出るタイミングが同じだった三村君がそんな事を言った。内容は、ビッチ先生の授業に関するものだ。
この教室に赴任したてのビッチ先生は、暗殺にだけ拘って授業なんてしてくれなかったけど、最近は宣言した通りに、自分の経験に基づく英会話の授業を行ってくれている。
三村君が言ったように、確かに中学生に対して見せる様なものでは無いんだと思う。けど海外ドラマは教材としては優れているって聞いた事もあるし、実際に最近は英語を聞き取る能力というのが発達してきたように思う。
それに潜入暗殺を専門としているだけあって話術や距離の詰め方が凄いし、合間合間に挟まれる経験談も(妙に生々しいのは聞いてて困るけど)面白くて飽きない。
僕がそう言うと、三村君と杉野もまぁ確かにと同意してくれた。不正解でも正解でも結局ディープキスされるのは困ると続けると、痴女だから仕方ないと返って来た。ちょっと納得してしまったのが申し訳ないやら、それを正当化しようとする自分がいるやら……。
「ただまぁ……」
「杉野?」
「いや……そのディープキスが原因で、って考えると、な」
杉野のいう事に二人頷いた。そうして三人揃って後ろに目を向ける。
少し遠くなってしまった下駄箱には、クラスの女子の約半分ほどが密集している。ついでとばかりに殺せんせーもそこにいた。
「どっどどどどどどういう事ででですかかかききき岸波ささささん!!!???」
「殺せんせーうっさい!」
「でもホントどーゆー事よ岸波さん!?」
「そ、そうよ! 駄目よそんなの!?」
「白野ちゃーん!?」
「詳しく説明して下さい、岸波さん……!」
「だから、違うって……! 誤解だから……!」
文字通りの意味であの騒動の中心にいるのは、岸波さんだ。以前から何かと変わった行動が目立った彼女だけど、今回の騒動は正直に言ってそれら全てを塗り潰すくらいの衝撃があった。
「騒ぎになり過ぎだよね」
「まぁ当然だろ。あの手の話題は何時だって人の関心を集めるんだ。この前の前原の一件でもそれは証明されてるからな。
自分に一切関係無い芸能界のやつでも盛り上がれるんだ。それが身近な奴なら尚更だろーよ」
テレビっ子らしい三村君の評価に、苦笑いを浮かべながら杉野と頷いた。
そうこうしている内に、集団の中から靴を履き替えた岸波さんが飛び出した。多分話しても無駄だって思ったんだろうな。
「待って下さい岸波さん! ちゃんと説明するまで先生逃がしませんよ!?」
「だから! 説明するような事は何も無いって……!
あぁもう触手を絡ませるなエロダコ! 淫行で烏間先生に訴えるぞ!?」
アッサリ殺せんせーに捕獲された。まぁそうなるよね。マッハ20からは逃げられない。
……とはいえ、同年代の女子がヌルヌルの触手に絡まれてる光景は、色々と宜しくない。直視するのは困難で、三人揃って目を背けた。背けた先で岡島君が直立不動でガン見してた。凄い。
「放してくれ殺せんせー! この変態! わいせつ教師! 幸運E!」
「な、何ですかその嫌な予感しかしないステータスは!? とにかく、事の次第を明らかにするまで帰しませんよ!」
「岸波さーん!」
あぁ、置いて行かれてた他の女子が集まって来た。これはもう逃げられないだろう。いち早く到着した中村さんが口を開く。
「それで岸波さん! 彼氏いるって本当なの!?」
「ッ……だから、いないってばぁああーーーー!!!」
岸波さんの涙交じりの悲鳴が、快晴の下に響き渡った。
◆
―――どうしてこうなった。
殺せんせーの触手に拘束されて、周囲をクラスメイトに囲まれて。コードキャストを使用しない私の素の身体能力ではこの状況を脱出できない。まぁコードキャストを使用できたとしても、皆を八極拳で殴り飛ばしていくわけにもいかないし。結局速度強化くらいに留めて、また殺せんせーに捕まるのがオチだろう。
そう考えると、逃げるのも馬鹿らしい。それに逃げても何の解決にもならない。ならば多少時間が掛かっても、この誤解を解いておくべきだろう。
そう、私が彼氏持ちだという勘違いを―――!
そもそも事の始まりは、今日の英語の授業まで遡る。
今日の英語はイリーナ先生の授業だ。イリーナ先生の授業は、授業内容を板書してテストに備えるというよりは、生の英語に触れて理解を深めるという意味合いが強い。
今日も海外の深夜にやっているようなドラマを教材に、発音の違いについて勉強していた。
「正解よチバ。じゃあ前に来なさい……」
しかし、イリーナ先生の授業には普通の英会話の授業とは明らかに異なる部分がある。それがこの正解のご褒美であるディープキスだ。ちなみに、不正解のペナルティーも同様なので、結局キスしたいだけの痴女じゃねーかというのが男子の総評である。
「ハクノ、発音が正しくないわ。前に」
「はぁい」
まぁ、最初こそ面食らったが、慣れればどうという事も無い。むしろ今からキスすると告げてくるだけ、いきなり五停心観のインストールのために不意打ち接吻かましてきたキアラに比べれば常識的である。有無を言わさず魔力を寄越せと詰め寄り、蹂躙するとはこういう事だと言わんばかりにごっそり持っていくギルガメッシュに比べれば良心的である。
それにイリーナ先生は美人だ。このレベルの美女とキスしようと思ったら、それこそしかるべき場所で何人もの諭吉さんを財布から送り出さなきゃ叶わない。いや、叶うかどうかも怪しいというものだ。
ならば役得と割り切って楽しませてもらうくらいで丁度いい。そんな考え方もあって、私はこのキス魔B-による行いを受け入れていた。
「んぅ……」
くちゅり、にちゃ、ちゅぷ。
文字にするとそんな感じだろうか。
粘つく水音を響かせた後、解放される。舌が這いずり回っていた口内に侵入してくる空気が心地いい。
後は席に戻って授業再開。それが何時もの授業風景だったのだが、この日は違った。
「ハクノ」
席に戻る私に掛けられた声に振り向く。アドバイスか何かだろうかと耳を傾けて―――
「アンタ男いるでしょ」
……そのまま、固まった。
全身が硬直したのが自分でもわかる。固まるのは無言の肯定に等しいと理解していたが、聞かれた内容があまりに予想外過ぎて、それでも止まってしまった。
イリーナ先生はじっと私を見つめている。ぺろりと舐められた唇が艶めかしく光っていた。あぁさっきまでアレに良い様にされてたんだよなぁなんて余計な考えを脇に追いやりつつ、サーヴァント戦に匹敵するレベルで頭脳を回転させて言葉を紡ぐ。
「―――いや、いませんけど」
「嘘ね」
バッサリ否定された!?
「アンタね、キスに慣れるのが早すぎるのよ。
自分のスタイルが既にあって、それを相手の攻め方に合わせてる。流されるままそうなってるんじゃなくて、余裕すら感じる受け入れ方。数回のキスじゃ身に付かないわ。
そんなのもう、日常的にキスしてますって言ってんのと同じじゃない。そしてそこまでやる相手は恋人くらいでしょ。他の奴は誤魔化せても、キスで私が騙される訳無いわ」
な、何て分析力……! これはキス魔スキルの見直しが必要だろうか。
しかし、説明を聞くとそんな事を思われても仕方ないと思う。実際私がイリーナ先生とのキスに対してやっているのは正に言われた通りの事だし、ハニートラップが本業の彼女をその分野で欺けるほどに経験豊富だという自負も無い。
だからといって恋人がいる、しかも毎日の様にねちっこいキスしてるとか、そんなさっきまで見ていた海外ドラマみたいな爛れた関係を邪推される事については異議を申し立てたい。というか私は毎日王様とキスなんてしていない。こっちの世界に来てからは一度だってしていないのだ。この肉体に限って言うのであれば、経験人数はイリーナ先生一人である。なのにこの評価は心外だ。
「え……」
「マジかぁ」
「岸波さん……」
立ち止まったのが教室のほぼ真ん中だったので、必然的にみんなの中心にいる事になる。つまり全方位から視線を向けられるという事である。
あぁ、やめてくれ。そんなエロいものを見る目で私を見ないでくれ。そして前原君は鼻血を拭いてくれ。
「あ、あば、あばばばばばばばばばばばばばっばばばば」
ドアの影から覗いていた殺せんせーもガタガタ震えてこっちを見ている。今なら殺れるんじゃと思ったが、撃った弾はすんなり躱された。おのれ。
「それでもう一回聞くけど、彼氏いるんでしょ? キリキリ吐きなさい」
「いや、だから彼氏なんていませんってば」
「……成る程、彼女か」
「彼女もいません!」
何が成る程だ、何が! どんな目で私を見てるんだ!
まぁ同性でも年齢差があっても、何ならAIやサーヴァントが相手でも気持ちが通じ合っていてお互いを尊重できれば何も問題無いんじゃないかなとは思うけど、それはそれ!
「まったく……」
もうこの話はおしまいだという意思を表示して、イリーナ先生の追究を無視して席へ戻る。
―――しかしまぁ、面倒な事になった。
この状況は本気でマズイ。何が不味いって、授業もそっちのけで全員の関心が私の交際事情に向けられている事だ。この授業が終わったらあとは放課後なので、ほぼ間違いなく質問攻めがあるだろう。
私に彼氏なんていないのに、周りはいると判断して説明を求めてくる。これを納得させて話題を終息させなければいけない。こういうの、悪魔の証明って言うんだっけ。
教室は授業中にも拘わらず、休み時間であるかのように騒がしい。本来それを諌めるべき立場の教師が率先して騒いでいるんだから、沈静化はほぼ不可能だろう。
あと十分ほどで授業も終わる。それまでにどうにか周囲を納得させる言い訳の四つや五つ考えておくとしよう。
「あっ……! あぁあああっ!!! 思い出した、そうだアレ岸波さんだ!」
ざわついていた教室を、茅野さんの絶叫に近い言葉が駆け抜けた。突然の事にクラスメイトは勿論、イリーナ先生も殺せんせーもその動きが止まる。
そんな教室の状況なんて知るかとばかりに、茅野さんは再度叫ぶ。
「この前男の人と喫茶店に居たの見た!」
静寂。
さっきまでの喧騒が嘘であるかのように、教室内が一瞬で静まり返った。
そんな中で、ガタリと音が響いた。普段なら響く筈も無いような音だが、静かな中では普段よりもはっきりと耳に残る。それが思わず自分が立ち上がった時の椅子の音だと、今更ながらに気付いた。
そしてそれが、その反応が―――茅野さんの言葉に対する肯定そのものに等しい事にも。
「「「――――――ッ!!!」」」
直後、音の爆発。
私以外のほぼ全員から発せられた驚愕の声は、折り重なってボロボロの校舎を振動させた。
「ホラ! やっぱり男いるじゃないの! カエデ、詳しく!」
「えっと、前原君の一件で動いてた時の事なんだけど―――」
そこから語られるのは、私が王様と外出していた時に、E組有志で繰り広げられたとある作戦の内容だった。話を聞くに、あの日騒いでいた本校舎の生徒はその標的だったらしい。あの時トイレが使えなかったのも、変装した茅野さんが中に入っていたからだという。
そして店内のトイレを使用する以上は店の中に入る必要がある訳で、店の中にいた全身強烈な柄で揃えた派手な人物に視線が行くのも当然で、更にその横にいた人物にも目が行くのは自然な流れだ。
それがどうも見覚えのある気がしていたが、作戦遂行を優先してその違和感を無視。しかし今日の私に彼氏がいる疑惑を切っ掛けに記憶が結び付き、ついでとばかりに既視感の正体にも辿り着き、思わず叫んでしまったという事らしい。
「あ……でも服が……」
急にトーンダウンした茅野さんの揺れまくっている視線が私に向いた。
変装してたって事は、言ったらダメだったよね!? ゴメン!! そんな声にならない謝罪が聞こえてきた気がして、私としてはもう笑うしかない。頬の引き攣った笑みとも呼べない表情を浮かべるしか出来なかった。
―――み……見られてたぁ……ッ!!?
これはマズイ。本気でマズイ。どれぐらいマズイかと言えば、割と本気で不機嫌な王様が解消相手に私を選んで絡んできた時くらいマズイ。
彼氏がいないという事実だけで押し通そうとしていた所に、男と会っていたという誤魔化せない事実が放り込まれた。それが彼氏だと思われるのも困るし、もしそれを回避できたとしても、ならあの男は何者なんだという疑問が着いて回る。
端的に言って、逃げ場が無い。
「「「…………」」」
ふと気づくと、周囲の騒ぎは再び収まり、しかしその騒がしさは貫く様な視線へと変貌して私に襲い掛かって来る。居心地の悪い視線の檻が私を囲んでいた。
殺せんせーまでそんな目を向けてくるのは何故なんだろう。生徒の恋バナがそんなに気になるか。
「……あぁ、授業終わっちゃったわね」
唐突に流れたチャイムの音に、ほぼ全員がビクリと反応する。今が授業中という事さえ忘れていたらしい。
本来ならやっと授業が終わったと思う解放の音だが、この場合はステージの開始を告げるゴングでしかない。
「さて、本来ならLHRの時間ですが……今日はもういいでしょう。それよりも重要な話題がありますからね」
自分の担当時間になった殺せんせーが教卓へとやって来る。しかし、見逃してくれるという訳ではなさそうだ。
「それで岸波さんは……かっかかかかれれれれ彼氏がががいいいいるんででですかねぇ!?
毎日の様にキスしてる!? 不純異性交遊ですよ! 中学生にはまだ早いです!」
最初こそ落ち着いていた殺せんせーだが、次第に再びガタガタ震え出した。何で生徒に恋人がいるかもしれないってだけでここまで動揺してるんだろうか、この先生。
「……いませんってば。あれはただの知人ですよ」
最低限持って帰らなくてはならない荷物だけをカバンに詰めながら返答する。もうこの一点で押し切るしかない。純然たる事実によるごり押し一辺倒。それしか乗り切る手段は無いだろう。いざという時に力技しかないとか、もう財宝撃ちまくってる王様を悪く言えない。
そしてチャイムが鳴ったら大至急離脱する。クラスメイトに囲まれたらもう逃げられない。一晩経てば落ち着くだろう。こういった話題は一過性の物だ。とはいえ殺せんせーなら必ず追いついてくるだろうから、妨害のために対先生弾を握り込んでおく。撃つのではなくばら撒く事で面制圧に使おう。
この後の脱出ルートを頭の中で組み立てながら、殺せんせーの追究に否定を返し続けた。
……そして、今に至る。
校舎から逃げ出したまでは良かったんだけどなぁ。案の定、アッサリ拘束されてしまった。
「おのれぇ……」
クラスメイトも追いついて騒がしくなりだした周囲に、思わず悪態が漏れる。
これも全て、私服センス/Zeroで紀元前ファッションモンスターなあの王様が悪い。彼が最初に着ていた普通の服装だったなら、茅野さんの視線が向けられる事も無かった筈なのだ。
帰ったら文句の一つでも言ってやろうと決意を決め、私はただ否定するだけの作業を開始した。
◆
「ふ―――――――――――はははははははははははははははははははははははは!!!!!
い、いかん、腹が! 腹が捩れ、ヒィッ……っ!
き、きさ……白野キサマ、我を、おっ我を笑い殺す気……ッ!!!
か、彼氏。恋人……? 貴様と、王たるこの我が……?
……ングゥっ、無理だ耐えられるかこんなものぁハハハハハハハハハハ!!!」
否定に次ぐ否定で帰宅が随分と遅くなり、その原因についてギルガメッシュに説明した。
「私と王様が恋人なんじゃないかって疑われた」
今日遅くなった原因は、要約するとこれに尽きる。最初こそソファーにふんぞり返って聞いていた王様だったが、要約を聞くと目を丸くし、更に詳細を聞くにつれて口角がピクピクと笑いを堪える動きになり、全て聞き終えるともう堪らぬとばかりに爆発した。
今は服が汚れるのも構わずに、床に這いつくばって笑いに抗っている。それでも抑えきれないのか、バシバシと床を叩く音がリビングに響く。程々にしてくれ王様、筋力Aの床ドンは色々と拙い。
「ハッ……あぁ―――笑った。ここまで笑ったのは久方ぶりだ……。
生前であれば叙事詩に加えたかもしれん出来事であった……」
「私も久しぶりに見たよ、王様の大爆笑」
「うむ―――いかんな、まだ余韻が……クッ」
ぶり返してきた王様を尻目に台所へ向かう。もう疲れたから今日はさっさとご飯食べてお風呂入って寝たい。夕飯は王様への嫌がらせも兼ねて麻婆だ。
「しかし貴様、何故そこで話に乗っておらんのだ。懇切丁寧に頼むのであれば、恋人役くらい引き受けてやったものを……」
調理に取り掛かった私に向けて、王様の声が飛ぶ。冷蔵庫から取り出した材料を見て、さっきまでとは別の感情で顔が引きつっていた。ふふん。
「いやー、元々そう見られないための認識阻害だったし。王様にそんな事させられないよ」
「我は構わんぞ?」
「……成る程。在る事無い事皆に吹き込んで、それに狼狽える私で愉悦するのが目的だな!? 尚の事却下だ!」
申し出は全力でお断りしておく。善意からならまだしも、単純に私を困らせて遊びたいだけだ。私の予想は正しかったらしく、良く分かっているではないかと愉しいと不機嫌が半々くらいの返事が返って来た。
ちょっと暇にさせ過ぎたかもしれない。また今度、前回よりも変装をしっかりとした上で別の場所に出かけようと思う。そう決意して、仕上げのラー油をいつもより多く注いだ。
そうして完成した麻婆をやけ食いの様に掻っ込む。喉を焼く熱さと舌を焦がす辛さが疲れ切った体に心地いい。汗を流しながら堪能する私の事を、まるで未開の地で発見された珍獣を見るかのような目でギルガメッシュが見つめるのは何時もの事だ。
「あー、今日の騒動全部無かった事にしたい」
ご馳走様と食器を片付けていた途中、ふとそんな事を呟いていた。そんな事は無理だと分かってはいるが、今後の精神的疲労と面倒さを思うと、言わずにはいられなかった。
「
「
まぁ、人の噂も七十五日って言うし。その内収まる事を期待しよう」
E組には殺せんせーの暗殺という大きな目的がある。それに邁進していけば、やがて一生徒の恋愛事情なんてものは忘れられるだろう。それまで否定し続けて待てばいい。忘れた頃に掘り返されるかもしれないが、その時は……うん、その時に考えよう。
そう思って登校した次の日。私の恋人騒動よりも別の所にクラスの関心が移っていた。かくいう私も、それに自然と目が向かってしまう。
「……あの、烏間先生」
「気にするな。続けてくれ」
「あっはい」
……なんか、狙ってる。
イリーナ先生と見知らぬおじさんが、烏間先生を狙っている。
実は結構要所で活躍してる人、ロヴロさん登場。
とはいえこの段階ではあんまり関わって来ない予定です。
ギルと一緒にいるのがバレましたが、認識阻害は効いていたのでギルの顔が知られた訳ではありません。私服センスが残念すぎる男性程度の認識です。
次回、師匠の登場です。
・
ジャックのコマンドカードに何をつけるか悩む……