アンジュとヒルダをアルゼナルに連れ帰った今日、マサトは義手をマギーに見せ、ジャスミンにも手伝った。
「人間達のマナを吸いとってしまう?」
「えぇ、確かに見ました。人間の一人を殺した直後、マナの光が義手に吸い尽くされているところを......」
マサトが説明している中、ジャスミンがマサトから外した義手を調べる。
「見たところ、この義手の合金はこの世界には無いものだ........多分それが、マナの光を吸収してしまったんだろう。だか、この義手の合金.......先日のフェスタでローゼンブルム王国の姫さんが持ってきたあの木箱に付いていた金具と同じなんだよ......」
「同じ.....?」
マサトは驚くと、ジャスミンは首を縦に振る。
「しかもこの金具.......他の国にはない物だ。となると、この金具が造れるのは........あの"国家"しかないな......」
「あの国家?.........それって!!」
マサトがその国家に驚く。マギーも思いだし、その国家の名前を言う。
「あぁ、間違いない........"トリスタン連邦"だ」
『トリスタン連邦』........かつてミスルギ皇国、ガリア帝国、ローゼンブルム王国、マーメリア共和国、エンデラント連合、ヴェルダ王朝と並んでいた失われし謎の国家。圧倒的な科学力に満ちており、そこは人間やノーマも関係なく、人々は平等に暮らしていたと、所がその国家は忽然と大陸ごと無くなり、歴史から忘れ去られていった。
「聞いたことがある.....確かトリスタン連邦は...300年前にその高度な科学力で人間やノーマとの差別を無くした......文明社会や国の偉いさんにとって、トリスタン連邦は理想郷で意味嫌われた国家とされていた......だけど、突如トリスタン連邦は霧が出ていたその日に大陸ごと地図から消えた.......」
「そう、詳しいじゃないか」
「アルケミスト学院の図書館で見たんだ。けど、誰も信じてくれなかったよ......その中に奇妙なエネルギー鉱石【レイヴニウム】があって、その鉱石に触れた人間はマナを無くし、逆にノーマにマナを与えるって言う鉱石であったらしいんだ。」
「おい、おい、それって人間をノーマに変えて、ノーマを人間に変えちゃうのかえ!?」
「........多分、そうかもしれない。」
「だが、私はいつもの方が良い♪」
ジャスミンはそう言うと、点検し終えた義手をマサトに返す。そして義手を取り付けられ、動作を確認する。
「だが、そうなるとマズイ事になるなぁ」
「何が?」
「そのレイヴニウムあると言うことが全世界にバレたら、真っ先にお前を殺す人間が増えると思うぞ......」
「それは......何とか対処する」
マサトは思いきった言葉を言い、医療室から立ち去った。
医療室から立ち去ったマサトはレイヴニウムの義手の事を考えていた。
「(とにかく、この義手がエマ監察官に知られたら.......一環の終わりだ.......注意しないと。)そうだ!」
マサトは何かを思い付き、ジャスミンモールにある包帯を買い、義手に巻き付ける。
「動きづらいかもしれないが、これも皆をレイヴニウムに触れさせない為!」
マサトはそう言い、食堂へと向かう。
「ハァ........」
「どうしたの?」
マサトの隣に座っているナオミが声をかける。
「ちょっとね........ナオミは信じられるかな?」
「何を?」
「もし、俺の義手に触れて.......人間になれたら.....」
「いつもの方が良いよ、マナの光がどういう物なのか、知らないから♪」
「そっか........」
「?..........何かあったの?」
「食堂では話せないけど、食べ終わったら、部屋に来てくれ.......」
「え?......うん」
ナオミは頬を赤くし、マサトの言われた通りにする。
「一回.....俺の義手に触れてみろ」
「え?」
「良いから」
「分かった......?」
ナオミは包帯が巻き付けられている義手に触れる。
「...........なるほど、直接肌に触れないといけないのか.......となると、」
マサトは考え付くと、包帯を外す。
「もう一回、触れてみろ」
ナオミは気にせず、義手に触れた。すると義手からマナの光の粒子が溢れ、ナオミに注ぎ込まれる。
「何っ!?これ!?」
「......やっぱりな、直接肌に触れないと......効果が発揮しないんだな.......」
「マサト、これって!?」
ナオミが驚き、マサトは落ち着いた表情で、説明した。
「ノーマを人間に!?」
「声が大きい.....!」
ナオミは慌て、静かにする。
「それって、凄いことだよ!?」
「だけど、これが人間達にバレて見ろ........これを狙って来るものがいると思う。だから、一番信頼できるナオミにも内緒にしてほしんだ....頼む。」
マサトのお願いに、ナオミは賛同した。