私は365日なのはさんの家政婦のようです   作:蟹ふらん

13 / 15
遅れました…すいません…すいません…!何でもするから許してください!


12 家政婦はヴィヴィオと会うようです

「…」

 

「ヴィヴィオ、ママが居なくて寂しい?」

 

「…うん」

 

…その少女は震えていた。目に涙を貯めて必死に口からでる嗚咽を我慢し途切れながらも言葉を紡ぐ。

 

「…よーし!ならヴィヴィオが寂しくならないように私がヴィヴィオのママになってあげる!」

 

「…へ?」

 

「だから泣かない!ヴィヴィオが安心できるまで私がヴィヴィオを守るから!頑張るよ私!」

 

自分事ながらも無責任な言葉と思った。自身の世話は人にやってもらっているのにも関わらず小さな子供にカッコつけたいのかこんなセリフ…だけど、嘘を本当にしなければならない。泣いてる子を放っておくなんて私には出来ないからだ。

 

「よーし!それじゃ行こうか!」

 

「…うん」

 

幸い家政婦さんは前の一件で家に居ない…後で文句の一つ言われるかもだが…住んでしまえばこっちのものっ!家主は私なんだからぜっったいにガタガタ言わせないの!

 

 

【管理局機動六課 高町なのはの自室】

 

「…あー…」

 

「…あっ、おかえりなさい御主人、そこに脱ぎっぱなしになってた寝間着は洗濯しときましたよ」

 

「…戻ってたの?」

 

「つい先程、良い休暇でした」

 

…この男、間藤恵也は先日の件で休暇がてらにはやてちゃんの所に行ってたのだ。

 

「どうして?はやてちゃんからはまだしばらくいるって聞いたよ?」

 

「…御主人」

 

「何かな?」

 

「ザフィーラさんって…ふわふわで…なだらかな毛並みをしてますよね…あれってとっても素敵だと思うんですよ」

 

「…ん?んん?」

 

…聞き間違いだろうか、今家政婦さんの口から凄い事が聴こえた気がする。何?その見たことないクッソ爽やかな笑顔は?ちょっと怖いよ?子供に見せられない顔してるよ?

 

「ご紹介されたときから思ってはいましたが…こう…何て言うか…彼最高ですよね。ヤバイ、喋れるワンちゃんとか最高。ちょっとよしよしさせてと言って10分くらいやってたらやめろと拒絶されたのはちょっとキツかったですけど」

 

「か、家政婦さん?」

 

「彼ああ見えて結構繊細なんですよ?毛並みは毎回気を使ってるみたいで髪と同様の扱いをしてるんです。凄いでしょう?だから私、触ってる内にヒートアップしていって…ヴィータさんが引きつった顔で見てましたが私は彼を撫で倒すまで続行しました。あぁやっぱ動物って良いものですね最高ですねスバルには絶対に動物飼わないでねなんて言われてましたがこの際私も動物を買って一生奉仕する所存で…」

 

「家政婦さん!ちょっと止めてくれないかな!?怖いの!」

 

「ヴィータさんもシグナムさんもすごい剣幕でそう言ってましたがザフィーラさんは最後の方ではもっと!もっと!なんてねだってちょっと興奮を…」

 

「分かった!分かったから!私お腹すいたナー!スッゴイお腹すいたナー!家政婦さんのご飯食べたイナー!」

 

「あ、なるほど。それじゃあ今から簡単なのを作りますのでお待ちを」

 

恐ろしいマシンガントークから一変、彼はケロッとした顔でキッチンの方へ向かって行った…良かった。ヴィヴィオを部屋の前で待機させといて…本当に良かった。

 

(…それにしてもどうしよう。ヴィヴィオのことをなんて説明しようかな…?)

 

しばらく考え…ふと閃く。

 

「…よし!これなの!」

 

 

「御主人、フレンチトーストをお持ちしました」

 

「…ありがとう!いただくね!」

 

リビングの椅子に座り出されたモノに向かう、トースト上にかかったハチミツの臭いが食欲を掻き立てる。

 

「…ん?御主人、あれは…?」

 

恵也が先程まで無かった物を見る。それは少し大きめの段ボールでテープで厳重な密閉がされていた。

 

「あぁ、あれはフェイトちゃんから頂いたものなの」

 

「へぇ、結構大きめなんですね。言ってくれれば私が運んだのに」

 

「ダメダメ!あれは乙女のデリケートな物が入ってるの!男の子が触っちゃダメなの!」

 

「乙女って…酒食らいが何を冗談を…」

 

「文句ある?」

 

「申し訳ありません」

 

家政婦さんは箱の中身を言及しない…こう言えば向こうが「あっ、詮索しちゃダメなんだな」と気を使って詳しい言及はしないでくれる…伊達に少し長く世話はされてない。と言うことなの!

 

「そうですね、中身がどうあれ大事に至らなければ私は…」

 

ゴトゴト…

 

ん?なんか箱がゴトゴトした?え?何?ヴィヴィオちょっと我慢出来なくなったの?どうしたの?

 

「…動き、ましたね」

 

「き、気のせいなの。やだなー!家政婦さん疲れてるんだよ!あれ単なる雑貨で動いたとしてもそれは中の物が移動した拍子で…」

 

ママー、オシッコー

 

嗚呼ヴィヴィオ、おしっこしたかったの。言ってくれれば行かせてあげたのに。

 

「…御主人?雑貨がおしっこしたい宣言しましたが?あれなんの雑貨なんですか?」

 

「え、えぇと…ファー○ー…だよ?」

 

「へぇ、○ァービー…なーるほど!それなら喋りますね!合点が…いくわけねぇだろうがよぉ!!ファービ○がオシッコしたら漏電してぶっ壊れるだろうが!あの大きさなんだ!?人か!?あぁ!?」

 

「モルスァ!?え、えーと違うよ?あれは管理局が改造したデバイス型ファ○ビーであってね?」

 

「であってもあんなクソでかいファー○ー使いにくいわ!中身なんだ!?」

 

「あっ!待って!」

 

恵也がまっすぐ箱に向かうと厳重に閉ざされたテープを素早く外し中を見る。

 

「…あっ」

 

「…」

 

中には金髪オッドアイの少女…その頭には申し訳程度のネコミミ。その顔は何かを堪えてるが決壊寸前の顔付きであることが容易にわかる、だって内股だもん。

 

「…御主人……」

 

「か、かせーふさん!プレゼントだよ!ネコミミ大好きでしょ!?」

 

「徹底的にやるならば、あるべきところに尻尾もちゃんとつけるべきでしょ…?」

 

「えっ」

 

「!?」

 

なのはは少しドン引きし、ヴィヴィオはその台詞に恐怖してしまう。あるべきところにって…何処に、何処に付ける気なの?お尻なの?変態通り越して犯罪者だよ。家政婦さん変にこだわらないでよ。逮捕するよ?

 

「うーん…」

 

フェイトさんから頂いた→おしっこしたくなるまで放置→出られないよう密閉されたテープ→フェイトさんと御主人で誘拐?

 

「…御主人、天下の局員が誘拐はちょっと…」

 

「えっ!?違うよ!?違うからね!?」

 

「ママァ…おしっこ…」

 

「あぁゴメンね!?トイレだね!?」

 

「御主人、ママ…?彼氏いない御主人がママ…?」

 

「ちょっと失礼だよね?それ失礼すぎない?」

 

「何がプレゼントだよ御主人、お前ぜっったい俺いないの分かって連れ込んだろ」

 

「あー!あー!きーこーえーなーいー!」

 

「子供か!」

 

「ママァ…!」

 

「あ゛ー!分かった!分かったからここで決壊するのは止めて!」

 

「御主人トイレ!トイレに連れていって!」

 

「家政婦さんが…」

 

「女児にそんなことできっかよぉ!!」

 

 

「…」

 

「…と言うわけなんだよ」

 

「…成る程、事件の保護者に…」

 

リビングのテーブルに座り経緯を聞く。レリック…危険な物に関係し、狙われていた事から六課が保護。後に教会で会って交流しなつき、連れてきた…

 

「…成長しましたね御主人。会った当初の酒浸りの貴方ならこんなことしないでしょうに」

 

「…ママ?お酒?」

 

「か、関係無いよヴィヴィオには…い、いやーヤバかったら家政婦にも手伝って貰おうとね?」

 

(…悲しいかな、もう少しすれば俺の手も要らなくなるか…?)

 

―家政婦の当初の六課から出された依頼は高町なのはの矯正とサポート、それが済んだら家政婦間藤恵也は渡された契約日数を過ぎたら此処を去る。今までもそうだったしこれからも多分そうだ。

 

(ヴィヴィオを育てられるまで、そこからは…一人でも平気だな。それまでなら…)

 

「…良いですよ。それじゃあ今日のご飯は御主人がお願いしますね?」

 

「えー!?」

 

「ほら、ヴィヴィオの前ですよ?格好つけましょう?」

 

「うー…」

 

それを言われグゥの音も出ないのか渋々キッチンの方に歩いていった。その間ヴィヴィオと恵也と二人きり、後のためにも交流の良い機会だ。

 

「…やぁ、私はあの人の家政婦の間藤恵也だよ。ヴィヴィオちゃんだっけな。よろしくね」

 

少女は何も返さず、ただこちらを見る。その目は恐れと…少しの興味の目だ。

 

「…しつじさんじゃなくて?」

 

「いや、これは知人から頂いた物だよ。これ着ると身が締まって何でも出来ると思えるんだよ」

 

「おもうだけなの?」

 

「思えばスーパーマンにもなれるんだよ」

 

「…すーぱーまん?」

 

「ヒーローだよヒーロー、知らない?」

 

「…テレビの中だけだとおもってた」

 

「ヒーローを見たことない?じゃあちょうど良いね。ヴィヴィオ?ここに来る前は悪い人に狙われてたんだっけ?」

 

「…うん」

 

「じゃあこれらはそんな奴ら、俺が蹴飛ばしてあげよう。ヴィヴィオが怖がらせるものは、このスーパー家政婦が相手だ」

 

そう言うとヴィヴィオは少し、呆気に取られた顔をした。

 

「…はじめて」

 

「ヒーローが?」

 

「あっけらかんに自分をスーパーとかヒーローとか言う人…」

 

「そこかーい!」

 

「アハハ。うん、そこだよ」

 

遠慮しがちに突っ込みをいれるヴィヴィオに対してわざとらしくリアクションをする、少し大きな事を言った気もするが大丈夫だろう。

 

…ん?なんか焦げ臭い。

 

「かせいふさん…なんか臭い」

 

「まさか…ッ!」

 

リビングを飛び出して直ぐ様キッチンに向かう、そこにはぼうぼうと燃え上がるフライパン片手にあたふた半泣きしていたなのはがいた。

 

「あっ!家政婦さん!助けて!鳥の照り焼きにしようと思ってたら燃えちゃった!」

 

「何が原因で!?」

 

「フランベしようと酒をぶっかけて…」

 

「照り焼きには要らないでしょうがぁーーー!!!」

 

「ま、ママ!火事だよ!?」

 

「ヴ、ヴィヴィオ心配しないで?心配しないで?」

 

「おろおろしながら言っても説得力ゼロ!水!バケツに水ーーー!!」

 

――まだもう少し、此処に居なければならないと苦笑しながらも思う家政婦の間藤恵也であった。

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。