仮面ライダー幽汽   作:蓮司丸
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ジ・エンドじゃない!?

とある日の夜
イマジンの魂が宿った光の球体が月下を彷徨(さまよ)っていた。
『特異点?』
夜の空を飛び回るイマジンは2体。その内の1体が特殊な意味が込められた単語を吐く。
『あぁ、最近新たに出たらしい。厄介な事になった。ただでさえゼロノスが俺達の邪魔をしているというのに……』
『ほう…特異点か…』
2体目のイマジンが忌々しそうな口調で呟く隣で先程のイマジンは既に思考に至っていた。
特異点。つまり、電王やゼロノスに次ぐ新たなライダーの出現。
"こんなの期待しないわけが無い"。
『面白い。先に俺が様子見に行ってやるよ』
『なに?正気か』
『当たり前だ。俺様の力で(ひね)(つぶ)してやる』
言うが否や1体目のイマジンは地上へ降りてしまう。
取り残されたイマジンは、1人誰にいうでも無く呟く。
『……いい機会だ、俺も見物させてもらおう。新しい電王をな』
そう言い残してそのイマジンも後を追って地上へと降りて行った。

**

「気味悪っ!!」
幽霊列車の車内。
ついさっきウルフイマジンを倒した獅郎は第一声にそう叫んだ。
「それくらい我慢しろ。なにせ《幽霊列車》だからな」
「なにその言い訳、初めて聞く」
ゴーストイマジンの行く後について行く獅郎。
仕方なしに幽霊列車に乗ったが、その中は鬼火は飛んでるわ・蜘蛛の巣がそこら中に練付(ねりつ)いてるわ・掃除が行き届いてないのか埃が充満してるわで最悪だった。
「よくこんな汚い所に居れるな」
「文句があるならあの女に言え」
「あの女?」
ゴーストイマジンが顎をしゃくる方。
丁度車両中央部の四人座席がある方へと獅郎が目を向けると、確かにそこには1人の女性が座っていた。
「あれは……」
獅郎はその女性を見たことがある。
幽気に変身した時、いやそれよりも前。変身ベルトを貰った時だ。
獅郎の持つ仮面ライダー幽汽になる為の変身ベルトはその女性に貰ったものだった。
「なるほど、あの人がここの主か」
獅郎はまだ彼女のいる車内の入口に立っている。
車内から車内へと通ってくる扉の前。それに背を向けている。
四人座席へは少し遠い。
「行け」
「あ?」
「事情は知らんがあいつはお前に会いたいそうだ」
「俺に?」
獅郎の記憶が正しければ、女性と獅郎は今日が初対面の筈。
あの女性が獅郎と会いたがる理由が獅郎には理解出来なかった。
だが、まあベルトを貰って助けて貰った訳でもあるので相手の要望を無視することはできない。
「……」
だから、獅郎はゆっくりと車内中央部にある四人座席へと向かって歩み始めた。
「……」
ギシギシと年季を感じさせながら歩く度に揺れる車内。
しばらく近付いて獅郎は気が付いたことがあった。
「……歌?」
──────────。
歌が。女性に近付くにつれて歌が獅郎の耳に心地よく入ってくる。
「…………。」
その歌は何処か気持ちよくて美しい。
妙に安らぎを感じた。
そして、やっとの事で女性の身体が全て目に写った時。
歌は突然終わる。
「……誰?」
獅郎に気付いた女性は獅郎を顔を見て問う。
だが、すぐに誰か分かったようだ。
「貴方は…」
「こ、こんにちはー…」
とりあえず挨拶する獅郎。
だが、それは音速で無視される。
「ゴーストは?」
「おーう、ここにいるぜソラ」
女性──ソラの声にゴーストイマジンは車内端の四人座席に腰掛けながら適当に返事を返し、ソラはそれを確認した後ゆっくりと獅郎へと視線を戻した。
そして、やっと獅郎と対話を開始してくれる。
「貴方が《シロウ》?」
「え?あ、はい」
急な質問に獅郎は戸惑いながらも応じる。
「私は…ソラ。ソラと呼んで…お願い」
「そ、ソラ…」
「うん」
初対面の女性を呼び捨てで呼ぶのに抵抗があるので声が少々震える。
それでもソラは満足するように小さく頷いた。その頬は少し(ほころ)びて見えた気がする。
「貴方はまだ混乱してるかもしれない…。幽汽の事も…イマジンの事も…幽霊列車の事も…特異点の事も貴方は知らない」
「は、はい。そうですね」
ソラの言う通り。
獅郎は未だに混乱している。
突然イマジンに襲われ、幽汽に変身した。混乱しない方がおかしいというものだ。
「今から貴方に全て話してあげる…。座って」
「了解です」
言われるがままにソラの向かいに座る獅郎。
ジッとソラの話に耳を傾ける。
「この列車は幽霊列車…その名の通り死者の世界を走る列車」
「死者の世界…」
ソラの声が小さいせいか、獅郎が喉をごくりと鳴らしたのが聞こえてくる。
「私とゴーストはある《使命(しめい)》を持ってるの。その為に幽霊列車に乗ってる…」
「《使命》?どんな使命なんですか?」
「今は貴方に教えることはできない。ごめんなさい…。でも、教えられることはまだ沢山あるから…」
「まぁ…誰にでも言えないことはあるので気にしませんが、他に教えてくれることとは?」
「……それは貴方が特異点で仮面ライダーだということ」
特異点。どんな時間の干渉にも影響を受けない特別な存在。
仮面ライダー。特異点だけが変身できる時の戦士。
普通どちらも初めて聞く単語だが────。
「特異点…か」
獅郎は片方しか悩んでない様子だった。
「特異点はどんな時間の干渉の影響を受けない特別な存在のこと。そして────
「そいつは《電王》になれる」
「……なるほど」
突然割り込んできたゴーストイマジンの一言に納得する獅郎。
一方ゴーストイマジンは《電王》の存在を知ってそうな口振りの獅郎に疑問を持った。
「《電王》を知ってるのか?」
「あぁ…まあ一応。昔助けてもらったことがあるからな」
────昔、獅郎がイマジンに襲われた時だった。
別に契約者という訳でも契約者に恨まれた訳でもなく、ただ遭遇してしまったが為の因果(いんが)
だが、イマジンが刃を下ろすより先に《電王》が現れた。
そして、その時《電王》だった《青年》は戦いが終わった後に獅郎の所に来てこう言った。
『僕は仮面ライダー電王。イマジンは君を狙ってた訳じゃないけど君が無事で良かった。オーナーが言ってたけど君は大事な存在だから』
そう言い残して《青年》は何処かの扉を開いて《デンライナー》に乗って去ってしまった。
その時、仮面ライダーとイマジンを知って《電王》を知った。
「ほう…連中はこいつが特異点だと知っていた?」
「……可能性はあるわ」
獅郎の話を聞いたソラとゴーストイマジンは互いに顔を見合わせる訳でもなく、小さく獅郎に聞こえないように《デンライナー》に疑惑を持ち始めた。
そんなことを(つゆ)知らず、今度は獅郎が問う。
「それで?いつ帰れるんだ俺」
「あ?」
特異点のことでもなく、仮面ライダーのことでもなく、幽霊列車のことでもなく、帰宅時間のことを。
「……今日からここがあなたの家…汚いけど」
「あ、汚いって(キコエテタノカー)。なるほど、帰れないのか」
色々な事を知った獅郎を帰す訳にはいかないのだろう。
まあ両親などとうの昔に他界して家には1人住まいだから問題はあまりない。
「ふむ…ここで暮らすのか」
掃除しよ。ここに決めた獅郎であった。

**

夜空で浮遊していた2体のイマジン。
その内の1体─地上に降りた方は既に実体を持って人々を襲っていた。
「来い!来い!《電王》!」
バッドイマジンはその羽を持って飛行し、建物を壊し、降りては人を殺す。
そんな非情的な行動をとっていた。
そんな彼の元に1人の男だけが自ら彼に近付いた。
「《電王》か!?」
「悪いが野上じゃないな」
「……《ゼロノス》か」
バッドイマジンは扱く残念そうに、しかし、目の前に現れた青年を警戒して羽を広げる。
「……ッ、待て!逃げる気か!」
「勿論だ!目的はお前ではない!」
言い残すとバッドイマジンはそそくさと飛び去ってしまった。
モールイマジンを3体残して────。
「まったく…!こんな所で1枚使わされるとかほんと迷惑!」
青年はベルトを腰に巻き、モールイマジン達と対峙(たいじ)して戦闘の意思を見せる。
そして、チケットを1枚取り出してそれを手に(つま)み呟く。
「変身!」

**

掃除。
それは場所と心を清らかにする行為。
埃がいくら舞おうとも、蜘蛛の巣がいくら根を張ろうともそれを全て掃除する。
(鬼火は…どうしようもないな。まぁ可愛いからいいか)
車内を掃除しながら獅郎は飛び交う鬼火を見る。
一瞬、何かの規則性で動いてるようにも見えるが実は気ままに動いているだけ。
動物みたいなものだ。
まぁ、こんな薄暗い気味の悪いところで騒がしくしてくれるならありがたい。
いい具合に静かでもあるし最高。
(あれ、鬼火優秀?)
1人で鬼火に感動していた獅郎の元にゴーストイマジンがやってきた。
「どうした?」
基本戦うか(くつろ)いでるだけというゴーストイマジンの修正に1日で気付いた獅郎はわざわざ自分の所に来るということは何かあったらしいと推測する。
そして、それは的中した。
「イマジンだ。お前の生きて"た"時で暴れてやがる」
「それで?」
「潰す。もしくは殺す」
「同じじゃん」
思わずつっこむ獅郎。
だが、ゴーストイマジンは無視する。
「それが俺達の《使命》だ」
「なるほど…正直まだ分からないことだらけだし、仮面ライダーになって戦わなきゃいけないってのはまだ実感が湧かない。多分その《使命》ってのが余程重要なんだろうな。この戦い終わったら言って欲しいな。じゃないと俺はこの力を利用して人間を滅ぼ────」
「待った、望みだろそれ。言うな」
「は?なんで?お前あんなに求めてたじゃねえか」
「お前が特異点と分かったなら必要ない。俺は戦いたいだけだからな」
「……お前イマジンの風上にも置けないな」
そう言って互いに不敵に笑いを零す。
そして、獅郎は雑巾をバケツへ捨てて、ゴーストイマジンは唾を吐き捨てて
「っておい。せっかく掃除したのに…」
「知るか」
1人と1体が戦士として出動した。

**

「違う…!これじゃない!」
街中のビル屋上で、1人の男は叫ぶ。
「なに!?これでもないのか!!」
男の叫びに驚愕するのはバッドイマジン。
男はバッドイマジンの契約者だ。
(ふざけるな!見つからねえじゃねえか!一体なんだったらいいんだよ!)
バッドイマジンの契約者の望みは《亡くしたキーホルダーを見つけること》。
だが、広い世界の中で一つのキーホルダーを見つけるのはバッドイマジンでも困難だった。
だから、契約は未だに成立せずバッドイマジンは過去へ行けない。
「これか!?」
「違う」
バッドイマジンが持ってきたキーホルダーを順番に見せるも男は首を振る。
当然だ、男はキーホルダーを"落とした"。だが、バッドイマジンが持ってきたキーホルダーは人を襲って"奪ってきた"ものだ。一緒の筈がない。
「クソ!また全部外れか!」
持ってきたキーホルダーは全て外れ、投げ捨てて怒るバッドイマジン。
そして、諦めずにもう一度探しに行こうとしたその時。
汽車の汽笛をバッドイマジンの耳に微かに捉えた。
「ん?」
微かに聞こえたであろう先を振り返るバッドイマジン、そこには時の穴が空いていて。
その穴から宙に列車が走って現れた。
「なに!?《デンライ…いや違う!"あれが"新し────」
バッドイマジンが言葉を言い終わる前に《幽霊列車》は彼を呑み込む。
しばらく経っただろうか、まるで通過列車が来たかのような感覚を終えたバッドイマジンは背後に気配を感じた。
「ハッ!!誰だ!」
「キーホルダー集めは無茶過ぎるだろ」
バッドイマジンの背後に居たのはもちろん幽汽。
漆黒の鎧に純白の牙、赤いマフラーと額部分の赤のレール。
仮面ライダー幽汽 ハイジャックフォームだ。
「お前が新しい《電王》か!」
「違う、幽汽」
バッドイマジンの誤った認識を改めさせる幽汽は、その時既に幽汽専用剣《サヴェジガッシャー》を組み終えていた。
「さぁ、どの」

『スカルフォーム』

は?っと獅郎の情けない声は音声に掻き消され、幽汽はフォームチェンジする。
マフラーの色は銀になり、額には髑髏が現れ剣はゴーストイマジン愛用の剣に変わる。
『は?ちょっと意味分からない。何、どうなってんの俺』
「悪いが戦いは俺がやる」
『あ、てめぇ。ふざけんな。早く出ろ!』
「はっ、やだね」
脳内に響く獅郎の声を笑い飛ばして幽汽がゴーストイマジンの意思で動く。
そして、ゴーストイマジン愛用の剣を手にバッドイマジンに斬り掛かった。
「ハァ!」
「ぐっ…、面白い!行くぞ!」

幽汽とバッドイマジンの戦闘が始まる中、バッドイマジンの契約者はそれを見て正気に戻る。
「ひっ、なんだあれ!?」
望みに囚われていた彼はすぐにその場を去ろうとするが幽汽とバッドイマジンが屋上の出入口を塞いでいた。
「あ…ぁぁぁ…終わりだ…」
絶望した男はその場に腰を抜かしてへたりこんだまま動けなくなってしまった。

「ハァッ!フッ!」
「うぐっ…!ぐわぁ!」
戦況は一方的だった。
バッドイマジンが反撃できたのは初回だけでそこからは幽汽の連撃。
斬って、斬って、斬って、斬りまくる。
「ぐぅっ…っ!」
身体から煙を上げ、膝をつくバッドイマジンを目にした幽汽はその隙に《ライダーパス》を《ユウキベルト》の前に落とす。
すると、ベルトを通った時に

『フルチャージ』

必殺の音声が鳴り、幽汽の剣にエネルギーが蓄積された。
「ハァァァァァァァ…ハァ!!」
「ぐああああああああああ!!!!」
蓄積されたエネルギーはそのまま下から上へバッドイマジンの身体に斬り込まれ、吹き飛んだバッドイマジンは空中で爆散してしまう。
そして、勝利した幽汽は片手で親指を立てそれを逆さにし、その場で振り返って呟く。
「ジ・エンドだ。じゃあな」

終わった。
バッドイマジンを倒し、幽汽の今回の戦いは無事終了した。
そして、前回同様似たような会話を繰り返す。
『おい、なんで勝手に戦ってんだよ。早く俺から離れろ』
「へいへい、分かってるよ。だが、これだけは言わせろ。俺は戦うことだけが生き甲斐だ。俺からそれを奪うなよ」
そう言い残し、幽汽は変身解除してゴーストイマジンは獅郎の身体を解放する。
「生き甲斐奪うなって言われてもな…それこそ俺の身体奪うなって話だろ」
解放された獅郎はそうぼやきながら、ベルトを外す。
そして、それと同時に幽霊列車が何処からか現れて獅郎の居る方へと向かってきた。
「さ、帰るか」
幽霊列車へと戻ろうとした獅郎。
だが、背後でとんでもない事が起きた。

『ォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!』

「!?」
急な空気の轟に獅郎は思わず勢い余って振り返った。
そこには信じられない光景が広がってることを知らずに。
「なんだ…あれ」
こんなもの見たことない。見たことある訳がない。
あまりに、あまりに"巨大過ぎる"。
これが、イマジンだというのか。
「おいおい、嘘だろ…」

『ォォォォォォォォォォォォ!!』

「あ、やば」
目をつけられた。
巨体がこちらへ向く。
「えぇ…どうしろと…」
とにかく変身ベルトを巻き直す獅郎だが間に合わない。

『ォォォォォォォォォォ!』

「ッ!」
来る、と思って獅郎が顔を伏せる。
だが、いつまでも破壊はこなかった。
うっすらと目を開けるとそこには巨体に突っ込む電車が1台。
「あれは…」
緑の車体、《ゼロライナー》。
電車はそのまま巨体を押したまま何処へ消えてしまった。
おそらく巨体と共に時間移動をしたのだろう。
「た、助かった…」
『俺達も追うぞ』
「は?なんで?無理だろ、あれは。任せようぜ」
『黙れ、出遅れるなノロマが』
「お前後で覚えておけよ」
ゴーストイマジンに急かされて獅郎はバッドイマジンの契約者へ近付く。
もし、あの巨体がバッドイマジンの暴走形態か何かなら移動した先は契約者の思い入れある時間だと考えたからだ。
「さてと…」
「……ッ」
契約者の男は既に失神寸前で獅郎が近付いても何も反応しない。
獅郎は"覚えた手つき"でパスを取り出して、パスからチケットを出すと男にかざした。
こうすることで男の思い入れある時間がチケットに浮かぶ。
……筈だった。
あっれー、何も表示されないぞー。
「え、なんで?」
不思議に思ったことを
そのまま漏らす獅郎。
それに脳内のゴーストイマジンの声からは驚きの答えが返ってきた。
『あ、それ古過ぎて使えないぞ多分』
「ふぁっ」

新しい幽汽の物語に波乱は多そうだ。






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