イチカside
3部隊ほどのグリプスの隊員たちと最下層に着くとそこにはやっぱりアポロンの戦車がよく使用しているヴァンツァーにそっくりなISがあった。ということはあの機体に搭乗しているのがマーカス・セリグマンか。
「ほぉ、ようやくここまでこれたのか。結構なことだ。」
「まぁな、ところで一つ確認したい。お前はマーカス・セリグマンで間違いないか?」
俺がそう言うと奴はピクッと動いた。どうやらあっているようだな。
「どうして俺の名を知っている?この世界で俺の名を知っているのはあの車いすのじじぃとモーガンの奴だけだぞ。そうか、その機体は確かブリザイアだったな。ということはお前もあの世界の人間だな?」
「いや、こっちの世界の人間さ。向こうの世界に一度行き、またこっちに戻ってきたわけさ。」
「なるほどな。まぁお前がどういう奴かはこの際どうでもいいさ。俺はただ仕事をするだけさ。」
そう言って両手に装備しているナックル同士をぶつけた。
「確かにお互い仕事で此処にきているんだ。やることは一つ。」
俺はそう言って武装をマーカスに向けた。
「「どちらかが死ぬまで戦う、それだけだ!」」
そう叫びながらお互いの武器がぶつかり合った。
イチカside end
3rd side
イチカと共に下りてきたライリー達はISとの戦いをイチカに任せ管制室に立て籠もっている奴らの排除に取り掛かっていた。だが管制室の扉は強固なもので、大量に爆薬を仕掛けて爆破するとここが崩壊する恐れがあるためできなかった。
「たく、いい加減にしろよな!」
そう叫びながら隊員の一人は電気のこぎりで扉を切っていた。だが全く歯が立たず、苛立ちだけが募っていった。
「怒鳴ったって開くわけじゃないんだぞ!兎に角イチカがあいつの相手をしている間に開けるぞ!」
そうライリーが叫びながら電気のこぎりで扉を開けようとしていた。
イチカとマーカスの戦いは壮絶だった。マーカスはミサイルとナックルで攻撃し、イチカはアサルトマシンガンとパイルバンカーで互いに一進一退を繰り返していた。
するとマーカスが急に笑いながら話しかけてきた
「きさまの戦い方を見るとあいつを思い出すぜ。お前、向こうの世界でヴァンツァーの乗り方を教えたのはディラン・ラムゼイだろ?」
「それが何だってんだ!」
「なに、奴には色々借りがあるからな。ふと思い出したんだよ。」
そう喋っているとイチカのアサルトマシンガンの弾が尽き、それを捨ててショットガンを拡張領域から取り出した。
「さてそろそろ行くぞ!」
そうマーカスが言うと体当たりの体勢に入り、ブースターを吹かした。イチカはあれに当るとまずいと思いすぐにその場から避けようとしたが、
「遅い!」
イチカはマーカスの体当たりをモロに受け、そこから思いっきり吹き飛ばされた。吹き飛ばされたイチカはそのまま壁に当り、肺の中の空気が全部吐き出されるような感覚に陥った。
「ゲホッ、ゲホッ。」
「ふっ、まだまだ甘いな。」
イチカは立ち上がりこのまま負けてたまるかとブースターで一気に接近しようとしたがマーカスはマイクロミサイルを発射してきたため、避けながらミサイルを迎撃していると死角からマーカスのナックルが迫ったことに気づき、体を傾けて避けようとしたが間に合わず喰らった。
イチカはまたそのまま後ろに飛ばされこのまま負けるのかと思い始めた。
(クソ、やっぱり強いな。父さんはこいつとこいつの3人の部下たちにたった1人で戦って勝利しているのに。俺にはそれができないのか?)
そう思っているとイチカの頭の中にディランたちの顔が出てきた。
『イチカ、何事も諦めるなよ。』
(父さん。)
『イチカ、貴方は私とディランの息子よ。どんなことにも諦めちゃだめよ。』
(母さん。)
『イチカ、お前は俺たち第45部隊のアサルトなんだ。しっかりやれ。』
(ロイド隊長。)
イチカはいろいろな人たちに教わったことを思い出した。ヴァンツァーの乗り方、近接戦闘術、銃の扱い方など。そして次に出てきたのはイチカにとって大切な人たちだった。
『イチカ君、これから買い物に行かない?』
(刀奈さん。)
『イチカ、帰ってきたら特撮映画一緒に見よ?』
(簪。)
『イチカさん、お菓子作ったんですけど一緒にお茶にしませんか?』
(虚さん。)
『イッチー、日向ぼっこしよ~。』
(本音。)
イチカは自分はまだ死ぬわけにいかない。そう改めて思った。
(そうだ、まだ死ぬわけにはいかない。ちゃんと帰るって約束したんだ。)
そう思いながらイチカは立ち上がった。
「ほぉ、まだ立ち上がるか。やはりあいつの教え子だな。なら今度こそ墜ちてもらうぞ!」
そう言ってマーカスは体当たりの体勢に入った。
「二度も同じ手を喰らうか!」
イチカはE.D.G.E.システムを起動し、攻撃を躱した。
「なに、その機能は!」
「さっきのお礼だ、ありがたく受け取れ!」
そう言いながらイチカはショットガンを撃ちまくった。弾は全弾命中し、SEを大幅に削り取った。
「くっ!いい攻撃だ。だが!」
マーカスはナックルをイチカ目がけて殴ってきたがイチカはギリギリで躱し、ショットガンでもう一度撃ち込もうとしたが弾が切れていたことに気づき、ショットガンを捨てパイルバンカーを撃ち込もうとマーカスめがけて振り下ろした。
「これで終わりだーー!」
マーカスは振り下ろされるパイルバンカーをただ見ているだけだった。
そしてパイルバンカーはマーカスの腹部に命中し、パイルは腹部を貫いた。
イチカは疑問に思ったことを聞いた。
「なんで、避けなかったんだよ。」
マーカスはニヤッと笑いながらしゃべり始めた。
「な、なに簡単なことだ。いい加減戦うのに飽きてきたんだよ。ゴホッ、ゴホッ。」
自分の死がもうそこまで来ていると悟ったマーカスは最後に質問を投げてきた。
「所でお前の名前は何て言うんだ。」
「イチカ、イチカ・ラムゼイだ。お前の部隊を壊滅させたディラン・ラムゼイの息子だ。」
そうイチカに言われるとマーカスは驚いた顔になった後に納得したような顔になった。
「なるほど、あいつの息子なら納得だ。」
そう言うとマーカスは静かに息を引き取った。
イチカは少しばかりの黙とうをして管制室に向かった。そこには扉を必死に開けようとしていたグリプスの隊員たちがいた。そしてライリーがイチカに気づき電気のこぎりを部下に託してイチカに近寄った。
「イチカ大丈夫か?!お前がここに居るってことは?」
イチカは首を縦に振るとライリーはそうかと返し、しばらく休むといいと言って作業に戻っていった。イチカはISを解除し、衛生兵に傷の手当てをしてもらった。
そして数分後、オータムとタバネと合流すると同時に、扉の切断に成功しグリプスの隊員たちは管制室になだれ込んだ。もちろんイチカ達も中に入った。そこにはデュノア夫妻と技術主任と車いすに座っている老人がいた。
デュノア夫妻と技術主任は恐怖で震えあがっていたが、車いすの老人はただ黙ってグリプスの隊員たちを見て喋りかけてきた。
「よくここまで来られたな、亡国の諸君。」
イチカはこの男がマーカスが言っていた車いすのじじぃかと思った。
「で、お前は誰なんだ。」
「私の名前はデーモン。ヴァンパイアズの指揮官だ。」
そう言うとオータムたちはこいつが親玉と驚いていた。
「君たちの目的は私たちの排除なんだろ?」
そうデーモンに聞かれたオータムたちはそうだと肯定した。
「そうか。なら私の計画は失敗ということか。ストーム隊に敗れ、そして今度は君たちにも敗れた。」
そう呟くとデーモンは懐から銃を取り出した。グリプスの隊員たちは一斉に銃を構えるとデーモンは銃を自らの頭に突き付けた。
「私からデータが漏れる心配があるからな。だから。」
そう言って引き金を引いて自殺した。グリプスの隊員がゆっくりと近づき脈を確認した。そして脈がない事が確認でき首を横に振った。そして死んだデーモンから一斉にデュノア夫妻と技術主任に視線が向けられた。
「わ、私たちはそいつに頼まれてやっただけだ。何も悪くない!」
技術主任のギリアムはデュノア夫妻に指を指した。
「な、なにをいうんだ貴様!元はと言えばお前が新しいISを考えられなかったのが悪いんだろうが!」
「そ、そうよ!あんたがちゃんとアイデアを出してさえいればこんなことにはならなかったのよ!」
そしてデュノア夫妻も責任を押し付けたりと、双方で罪の擦り付けをしていた。
「お前ら、罪の擦り付けをしているのはいいが答えはもう決まってるぞ。」
そう、オータムさんが言うと右手を上げた。そしてグリプスの隊員たちは一斉にライフルを構えた。
3人は震えながら命乞いを始めた。
「た、頼む、命だけは!い、いくらでも謝礼は出す。だから頼む!」
「お、お願いします!どうか命だけは!」
「わ、私が死ねばフランスのIS開発は止まってしまうんだぞ!」
3人の命乞いに亡国の隊員たちは一切耳を傾けなかった。そしてオータムは
「殺せ。」
そう言って右手を降ろすとグリプスの隊員たちは一斉に発砲し動かなくなるまで撃ち続けた。そして発砲が止むと3人はピクリとも動かなくなっていた。
そしてイチカ達亡国は施設に爆薬を仕掛け撤収した。こうして亡国機業とデュノア社の残党とヴァンパイアズとの戦いは終わった。
3rd side end
イチカside
あれから数日が経ち、俺とマドカとジェシカさんは学園に戻る日となり日本支部の人たちに挨拶をしてから戻った。
学園の校門に近付くと刀奈さん達がいた。そして4人は俺たちに気づいて一斉に駆け寄ってきた。そして
「みんなただいグホッ!」
俺は盛大なビンタを貰った。その後にキスをされた。
「無事に帰ってきたからこれで許してあげる。」
そう刀奈さんが言うと皆も頷いていた。まぁ俺が悪いから仕方がないんだが。
「それじゃあ、私とマドカは先に行っているからごゆっくり~。」
そう言ってジェシカさんとマドカは学園に入って行った。
「行っちゃったよ。あぁ~みんな。」
俺は気恥ずかしながらみんなに面と向き合い
「ただいま。」
「「「「お帰りなさい!」」」」
そう言ってみんなは抱き着いてきた。改めて俺はここにちゃんと帰ってきたんだなと実感した。
イチカside end
次回エピローグ
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