イチカside
学園襲撃から何日か経ち、俺とマドカは学園長室に呼ばれジェシカ先生と共に向かった。
コンコン「学園長、イチカ・ラムゼイ、マドカ・ミューゼルを連れてきました。」
「どうぞ、入ってください。」
「失礼します。あ、司令官。どうしてここに?」
「え、お母さんがいるの?あ、本当だ。」
「どうしてスコールさんが?」
そう、そこにはスコールさんがソファーに座っていた。
「久しぶりね、みんな。今日ここに来たのは亡国機業の仕事のためよ。」
俺たちは亡国機業の仕事と聞いて雰囲気を変えた。
「亡国機業の仕事ということは奴らのアジトが分かったんですか?スコール司令。」
ジェシカさんが聞くとスコール司令は苦笑い気味で答えた
「まだ断定できたわけじゃないけど、それっぽい所を見つけただけよ。しかも企業を隠れ蓑にしていたから見つけたのは本当に奇跡よ。」
「企業?いったいどこの企業何ですか?」
「デュノア社よ。」
「「「?!」」」
俺は驚きが隠せなかった。だってデュノア社は潰れたはずだ。なのにそれがまだ残っているということか?
「司令、デュノア社は確か、シャルロット・デュノアが流した情報で潰れたはずでは?」
「えぇ、確かに潰れた。けど逃げ延びた連中がいたみたいなの。」
「なるほど。それで逃げ延びた連中は誰か特定できたんですか?」
「逃げた人物は全員で5人。その内3人は分かったわ。1人目が社長のラッセル・デュノア。2人目が夫人のキャシー・デュノア。3人目が技術主任のギリアム・ランベル。どうやらフランス警察が捕まえた社長は影武者の様ね。」
「しぶといですねソイツ。嫁と一緒にどこかの片田舎で暮らしていればいいものを。」
俺がそう言うとみんなも賛同していた。
「それでアジトだと思われるところってどこなんですか?」
「ここよ。」
そう言ってスコール司令がスクリーンに映し出された地図の一か所を指した。
「ベーリング海にある島の一つ、ベーリング島よ。」
「そこってロシア領じゃ?どうしてフランスの企業がここに?」
「調査によるとロシア政府に極寒でも機能できるISの開発のために土地を買い取ったらしいわ。そしてデュノア社が潰れたからロシア政府はその土地の現状を確認しようと島に近付いたら、所属不明のIS部隊に襲われて手が出せないようなの。」
「なるほど。」
オータム司令は姿勢を正し指令を出した。
「マドカ、イチカ、ジェシカ。3名はこれより亡国機業日本支部に出頭し、出撃準備に取り掛かるように。なお今作戦期間中の学業に関しては学園側に許可をもらって成績に響くことはないから安心しろ。」
「「「イエス、マム!」」」
すると学園長が立ち上がった
「私からあなた方にできることは少ないですが、これだけは約束してください。」
そして学園長は姿勢を正しこちらを見た。雰囲気もいつもの朗らかな感じでは無く歴戦の兵士の感じだった。
「ケガなどをして帰ってきた場合は大目に見る。だが死体袋に入って帰ってくることは絶対に許さない。いいか!」
「「「い、イエス、サー!」」」
「ジェシカ先生、二人をお願いします。」
ジェシカさんは学園長に敬礼して答えた。
「はい。必ず生きて連れて帰ります。」
「頼みます。」
そして俺たちは学園長室を後にして寮に戻り出発準備をした。すると扉をノックする音がした。マドカが迎えに来たのか?そして扉を開けると刀奈さん達がいた。そう言えば以前タッグマッチの時に男子寮の入り口のカードキーをスコールさんから貰っていたな。
「どうしてここに?今授業中じゃ?」
4人は俯いたままだった。どうしたんだ?俺はもう一度声を掛けようとしたとき
「・・・・どうして。」
「え?」
「どうして何も言わずに行こうとしたの!」
刀奈さんは泣き叫びながら聞いてきた。
「そうだよ!私たちはイチカの婚約者なんだよ?何も言わずに行こうとしないでよ!」
簪も泣きながら言ってきた。
「そうです!私たちはもうあなたがいなくなってしまうのが嫌なんです!」
「そうだよイッチー!何も言わないで行かないでよ!」
虚さんと本音も泣き叫んでいた。
「言わなかったことは謝ります。けど言えばみんな付いてくるだろ?俺はみんなを危険な場所に連れていきたくないんだ。」
「危険だから連れていきたくない?ふざけないで!私は更識家当主なのよ。そんな危険なところは何度も行ったわ。」
「私もお嬢様と共に何度も危ないところに行きました。だから平気です。」
「私はまだそういったところに行った経験は無いわ。けどイチカだけ危ないところに行かせない。」
「私だってかんちゃんと同じで無いけど、足手まといになるつもりはないからね。」
みんなの意思は固かった。けど俺はこの人たちを連れていきたくなかった。だから
「・・・とにかく中に入ってください。そこで話し合いましょう。」
俺はみんなを中にいれて冷蔵庫に入れているお茶をみんなに出した。
「俺の決定でみんなを連れていくことはできないからスコールさんに聞いてみる。」
俺はそう言って部屋から出た。そしてデバイスに登録してあるアプリの一つを押した。しばらくして中から倒れる音が鳴り中に入ると4人が眠っていた。
[一体何をしたんですか?]
「この机の下に備えてある睡眠ガスを散布したんだ。無色無臭だから気づかれることもない。本来は防犯用に備えておいたんだがな。」
俺はそう言いながら4人をベットに寝かしてそれぞれにキスをしてから、荷物を持って部屋を出た。
[宜しかったのですか?もしかしたら最後の別れになるかもしれないんですよ?]
「あぁ、これでいいんだ。あの4人を連れていきもし誰かが死ねば俺と残った人はずっと悲しむ。俺はそれだけは絶対に嫌だからな。それに俺にはお前がいる。だから死ぬなんて思っていないからな。」
[信じて下さるのはありがたいですが、帰ってきたらあの4人に怒られますよ。]
「死ぬよりそっちの方がまだましだと思えばいいさ。」
俺はそう言いながら校門前まで行くとマドカが待っていた。
「お兄ちゃん、あの・・・。」
マドカは言いにくそうにしていた。おそらく刀奈さん達に教えたのはマドカなんだろうな。
「いいんだマドカ。俺が決めたことなんだ。」
「けど!・・・分かった。けど死んでお義姉さん方を悲しませることだけはしないでね。」
「あぁ、約束だ。」
俺はそう言ってマドカと共に校門で待機していたジェシカさんが乗っているハンヴィーに乗り込み、日本支部に向かった。
~亡国機業・日本支部~
支部に着くともう既に多くの兵士たちが準備に走り回っていた。すると一人の男性隊員が近づいてきた。
「うん?君たちが司令が言っていた隊員か?」
するとジェシカさんが前に出て説明を始めた。
「そうです。私がジェシカ・エリオット、こっちがマドカミューゼルで男性の方はイチカ・ラムゼイです。」
「ほぅ、司令の娘に噂の男性操縦者か。俺はエリック・ランバートだ。男性だけで構成されたIS部隊【ゴースト】の隊長だ。」
「あなたがゴーストの隊長だったのですか。」
ゴースト?初めて聞いた名だな。
「あの、ゴーストってそんなにすごい部隊なんですか?」
「えぇ、元は歩兵で編成された隠密強襲偵察部隊なんだけどISの登場で部隊は解体されたんだけど、スコール司令が部隊丸ごと引き取ったのよ。そしてIS部隊に再編成して同じように隠密強襲を主とした任務に就いているの。過去にはテロが発射しようとした核を止めたこともある部隊なのよ。」
「それはすごいですね。」
「なぁに過去のことさ。さて君たちは遊撃部隊として送られる。猛攻撃を受けるかもしれないから覚悟しておくんだぞ。」
「「「イエス・サー。」」」
「よし、それじゃ作戦を聞きにブリーフィングルームに向かうか。」
俺たちはエリック隊長と一緒に、ブリーフィングルームに向かった。中に入ると多くの部隊が其処にいておりオータムさんも部下の人たちと一緒にいた。
「うん?おぉ、イチカにマドカ、ジェシカも来たか。」
「お久しぶりです、オータムさん。」
「久しぶりオータム。」
「お久しぶりです隊長。」
「元気そうでよかったぜお前ら。世間話でもしようと思ったが時間が無いみたいだからまた今度な。」
「はい、また後で。」
そう言って俺達は空いている席に着いた。しばらくしてスコール司令が入ってきて部屋にいた全員が立ち上がって敬礼をした。スコール司令も敬礼を返して着席するように促され、着席した。
「みんないるわね。それではこれよりブリーフィングを始めるわ。」
そして今回の作戦が説明された。
説明によるとやはり島には未登録のISコアが多く反応しており激戦が予測されるとのことだ。さらに未確認だが織斑千冬、篠ノ之箒がいるかもしれないとのことだった。モップに関してはどうとでもなるが織斑に関しては要警戒だった。理由が世界最強と言われているからだ。実際どうなのかわからないが要注意だな。黒と赤線で塗装された機体もいるとのことだった。どうやらその機体、デュノア社の社長が生きていると分かった亡国が、デュノア社が所持している別荘を捜索していた時に強襲してきた機体にそっくりだということで、恐らく敵が雇った傭兵ではないかと推測された。そしてその機体をモニターに出されたとき俺は驚いた。
「司令、自分この機体の正体を知っています。」
そう言うと一斉に目を向けられた。びっくりした。
「何故知ってるの?」
俺はその機体の説明を始めた。
「その機体は向こうの世界にあったヴァンツァーと似ているからです。その機体に搭乗しているのは恐らくマーカス・セリグマンだと思われます。奴はアポロンの戦車と言う傭兵部隊を率いていたのですが部隊は壊滅。マーカス以外の兵士は死亡し、奴は軍刑務所に入れられました。」
「どうして壊滅したの?」
「俺の父がやったからです。」
「そう。それじゃああの機体の情報は?」
「アリス頼む。」
[かしこまりました。]
そう言ったアリスを俺はデバイスにコネクターを繋ぎデータなどをスクリーンに映し出した。
[マーカスが搭乗している機体には近接用のナックルが装備されています。それと肩にはホーミング能力が高いミサイルとマイクロミサイルを発射する武装が載っています。それとご報告しておきたいことがあります。]
「報告?いったい何?」
[篠ノ之箒が搭乗していた機体なんですが、私に備わっているデータと照合したところ、あるデータと合致しました。]
「それはどんなデータなの?」
[ヴァンパイアズという私設傭兵部隊なんですが、この部隊はすでに壊滅しているとあるのですが、篠ノ之箒が搭乗している機体とあまりにも酷似しているので。]
「そのヴァンパイアズについて説明してくれる?」
[了解しました。ヴァンパイアズとは
「なるほどね。説明ありがとう。」
スコールさんはそう言って立ち上がった。
「今作戦は激戦が予想される。相手は違法技術を使って多くの罪なき人々を実験体にした糞みたいなやつらよ。私からあなた達に与える指令はただ一つ。サーチ&デストロイよ。何も残さず、すべてを破壊するのよ。テロリストに情けは無用よ。いいわね!」
そう問われた俺たちは一斉に立ち上がり敬礼して
「「「「イエス・マム!!」」」」
と叫んだ。
「では各員持ち場について。空母の準備が整い次第出撃。では解散!」
そう言ってスコール司令は部屋から出ていった。俺たちは与えられた指令を全うするための準備に取り掛かった。
数分後準備が整い、空母『エクリプス』に乗り出撃した。
イチカside end
3rdside
一方学園にいる刀奈は目を覚ました。まだぼんやりする頭の中で何があったのか思い出そうとしたとき、イチカのことをいち早く思い出しあたりを見回したが簪達が隣で寝ていた。そして入ったときにはあった荷物がなくなっていることに気づき、私たちを何かしらの方法で眠らして行ってしまったことが容易に分かった。
「イチカ君、どうして行っちゃたの。」
刀奈は涙を流しながら起き上がった。そして机にあった書置きと4つの箱に目が止まり、書置きを読むとそこには
『必ず戻る。戻ったら結婚式を上げよう。(今思えば俺自由国籍だから日本の法律適応されないんだった)イチカより』
と書かれていた。そして箱にはそれぞれの名前が書いてあり刀奈は自分の名前が書かれた箱を開けるとそこにはダイヤモンドの指輪が入っていた。
「綺麗。」
刀奈はその指輪を大事そうに抱きしめた。
「約束破ったら許さないからねイチカ君。」
そう言ってみんなを起こして書置きを見せ、ダイヤの指輪が入った箱を渡しイチカの帰りをみんなで待つことにした。
3rdside end
終盤まで来ました。後2,3話(エピローグ含む)を上げたらこの小説は終わりです。
誤字等あったら報告お願いします。