インフィニットミッション   作:のんびり日和

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11話

イチカside

今はどうして性別などを偽って入学してきたのか、その理由を問いただそうとしているところだ。

 

「さて、デュノアさん。どうして性別を偽って入学してきたのかしら?大方予想はできるけどあなたの口から聞きたいの。」

 

楯無さんが質問するとデュノアは重い口を開けて答えた。

 

「・・・分かりました。確かに僕は性別と名前を偽って入学してきました。その理由もそちらの予測通りラムゼイ君のデータを取るためです。」

 

「なんでそんなことをする必要があるんだ?デュノア社と言えばISシェアだと世界の上位に食い込んでいる会社だろうが?」

 

「それは会社が出しているラファールでのし上がったものだけど、あれは第2世代型。今はもう第3世代型のISの開発が主流になり始めているけど、デュノア社はそんな開発資金もそんなに残されていないんだ。」

 

「だから男でもISが使えるイチカさんからデータを取り、もう一度世界上位に上り詰めようとしたわけですね。」

 

「その通りです。もし出来たらハニートラップなどを仕掛けてフランスに連れてこいとも言われました。」

 

ハニートラップと聞いた瞬間に生徒会メンバー全員殺気が放たれているよ。てか

 

「なんでそこまで会社に貢献しようとする?嫌と言えばいいじゃないか。」

 

「貢献なんかじゃないよ。僕は愛人の子供だから言うことを聞くしかないんだ。」

 

そう言って自嘲気味な感じでデュノアは言い、なんか頭に来たんだが。

 

「お前、ただの操り人形みたいだな。」

 

俺はそう言うとデュノアは驚いた顔でこっちを見てきた。そして納得したような顔になり

 

「そうだよ。僕は操り人形さ。人が動かした糸に従って動くただの人形さ。」

 

「お前、自分の意思でその糸断ち切ろうとは思わなかったのか?」

 

「無理だよ、さっきも言った通り僕は愛人の子だから自由なんて」

 

「自由になりたいならさせてあげますよ。」

 

そう言ってマドカは拡張領域からグロック17を取り出しデュノアに向けた。

 

「自由になれないのなら私があなたを自由にしてあげますよ。この糞みたいな世界からね。」

 

そう言いながらグロックをデュノアに向けながら近づいて行った。デュノアは後ずさりをしている。

 

「ま・・・・待って。」

 

「いいえ、待ちません。あなたは自由になりたいんでしょ。だったらここではなく天国にいる母親の所に行った方が自由で幸せなんじゃないですか。」

 

そしてデュノアの背が壁に当たり、逃げ場はなくなった。

 

「ご安心ください。私、兄さんに射撃の訓練を見てもらっているので何処を撃てば一発で殺せるのかわかるので。」

 

「・・・・いやだ。」

 

デュノアからか細い声が聞こえてきた。

 

「はい?」

 

「いやだ、僕はまだ死にたくない!僕は自由に生きたいよ!」

 

デュノアは泣きながら叫んだ。ようやく本心が出てきたな。

 

「ようやくあなたの本心が出ましたね。」

 

「そうですね。」

 

「え?ど、どういうことですか?」

 

デュノアは泣きながら聞いてきた。楯無さんはその訳を話し始めた。

 

「さっきのマドカちゃんが銃を向けたのは芝居よ。私たちはあなたの本心が聞きたかったからね。それとこの学園では他国の政府、企業からの干渉は受けることはありません。」

 

そう言われデュノアはマドカを見るとグロックを拡張領域に仕舞い、自分の役(書記補佐)が書かれた札のある席に戻っていた。

 

「さて、デュノアさん。あなたはどうしたいですか。フランスに強制送還されて刑務所に入りますか?それともどこかの国に亡命しますか?」

 

楯無さんにそう言われたデュノアは目から涙を拭い取り、決心したような顔で

 

「僕は自由になれるんだったら亡命でもなんでもやります。」

 

そう言った瞬間に楯無さんは笑顔でそれを了承し、亡命する際に必要な書類等を準備するように虚さんに言い、そしてスパイ行為は未遂だがそう指示したものがないか聞いたところ、携帯デバイスにそういったメールなどが入っているということを聞き、それでフランス政府を黙らせることができるし、デュノア社を潰せると楯無さんは判断したそうだ。

 

そして虚さんはいくつかの書類をデュノアに渡した。

 

「では、デュノアさん。こちらが亡命する際に必要な書類です。書類の記載などが済んだら後日もう一度ここに来てください。あと、デュノア社からのメール等は書類と一緒にデバイスごとこちらに提出してください。」

 

「わかりました。」

 

「それにしてもよかったわね、未遂で済んで。」

 

そう言ってきたのは楯無さんだった。スパイ行為のことか?

 

「え?あ、はい。確かにスパイ未遂で止めてくださってありがとうございます。」

 

「あぁ違うわよ。スパイ行為は確かに悪いけど、私たちが一番よかったのはあなたがイチカ君にハニトラ紛いのことをしなかったことよ。」

 

楯無さんは笑顔で言っているがその目は笑っていなかった。もちろん生徒会メンバー全員が同じ状態だ。

 

「は、はい!止めてくださってありがとうございます!ぼ、僕はこれで失礼します!」

 

デュノアはそう言って生徒会室から出ていった。あ~疲れた。

 

「ふぅ~、何とかなりましたね。」

 

「そうね。けどフランス政府とデュノア社、いい度胸じゃない。私たちの婚約者にハニトラを仕掛けさせようとしていたなんてね。」

 

刀奈さん達全員からまだ黒いオーラが出てるよ。おっかねぇ~。

 

その後、生徒会の仕事を片付けたり、以前約束したプリンを食べたりと、ゆったりとした時間を過ごした後、解散となった。

 

次の日、デュノアは相変わらず男装しながら通っていた。自分が女であることを明かすのは亡命申請が正式に受理された時だと言っていた。

 

そして放課後、いつも通りマドカたちと訓練をしようとアリーナに向かっていたら向こうから相川さんが慌てた様子で走ってきた。

 

「どうしたんだ相川さん?」

 

「た、大変なんだよ!2組の鳳さんとセシリアさんがドイツの転校生とやり合っているんだけど、二人ともボロボロにされているんだ!」

 

ちっ、あの銀髪チビ何考えてんだ。

 

「わかった。相川さんはこのことを教師に伝えに行ってくるんだ。俺たちはあのチビを武力行使で止めに行ってくるから。」

 

「わ、分かった!」

 

そう言って相川さんは走って行き、俺たちはアリーナに急いだ。

アリーナに着くと真っ先に目についたのは鈴たちのボロボロにされている状況だった。あの銀髪チビ国際問題にする気か?

 

そしてアリーナに出るとあの銀髪がこちらに気づいた。

 

「ようやく出てきたか、織斑一夏。」

 

「俺はイチカ・ラムゼイだ。何度も言わせんなこのチビ助が。マドカ、鈴たちをピットに運んでやってくれ。」

 

「分かった。」

 

そう言われたのが気に障ったのかチビはキッと俺の顔を睨んできた。全然怖くないんだが。母さんに睨まれた時の方がよっぽど怖いな。

 

「貴様を倒し、私があの人にそばに立つのがふさわしいことを証明してやる!」

 

「あっそ、どうぞご勝手に。俺とマドカは別にあんな奴、一度も家族だとは思ったことないからな。」

 

俺は本心から言った。

 

「行くぞ!」

 

チビはそう言って俺に突貫してきた。単純というわけではなさそうだな。だが

 

「喰らえ!・・?!」

 

そう言って喰らわそうとしたが狙撃によってその攻撃は中断された。

狙撃したのはもちろん本音だ。

 

「貴様邪魔をするな!」

 

「イッチーは一度も一人で戦うとは言ってないよ。」

 

「そうだよ。」

 

その声と共に大量のミサイルがチビに向かって発射された。

チビはそれを空中で止め、肩のキャノンで破壊していった。あれは?

 

<AICという停止結界です。ドイツの第三世代型の黒い雨(シュヴァルツェア・レーゲン)に搭載されているものですが、本来は全方位で張れるはずですが、相手は部分的にしか張れないようです。>

 

そうアリスに言われた瞬間なるほどそれならと思い、俺はグレネードを手に取りあいつに向かって突貫した。

 

「バカめ!」

 

チビはそう言ってAICで俺を止めたが俺はすきをついてグレネードのピンを抜き、あいつの背後に向かって投げていた。

 

「これでとどめっ?!」

 

タイミングよくグレネードはあいつの背後で爆発し、集中が切れたのか俺は自由の身になった。その瞬間に俺はチビを蹴とばすと同時にピットから戻ってきたマドカがチビに追撃を加えようとしたが

 

「まったく、これだからガキの面倒は大変なんだ。」

 

寸でのところでマドカの攻撃を止めたのは、織斑千冬だった。

 

「教官!」

 

「・・・お前、今出てくるなんて遅すぎるんじゃないですか?」

 

マドカは冷たい声でそう聞いていた。確かに遅すぎる。だって

 

「確かに。織斑先生、貴女今日アリーナの管制室で監視を行っているはずでしたよね。鈴たちがあそこまでやられていたのに今になって出てくるなんて、何を考えているんですか。」

 

俺はそう言うと織斑先生は何も言えず黙っていた。

 

「とにかく俺らはここで失礼します。それと今回のことは生徒会としては見過ごせないので学園長に報告させていただきます。」

 

そう言って俺たちはアリーナを後にしようとした。そのとき

 

「まて、一夏、マドカ!」

 

そう言ってきたのは織斑先生だった。何の用だ?

 

「なぜそこまで私を拒むんだ!私はお前たちの姉でそして私たち3人は家族なんだぞ!」

 

家族?何を言っているんだあいつは?

 

「家族?自分には姉なんていません。いるのは父と母、それと妹のマドカのみです。」

 

「私も姉なんていません。いるのは母と兄だけです。」

 

そう言われた織斑先生は呆然とした面持ちでこちらを見ていた。

 

「ち、違うそいつらは本当の家族じゃ「たとえ血が繋がっていなくても家族の繋がりではなく自分の娘のように親身に接してくれる家族の方が私は本当の家族だと思ってる。だから家族という繋がりしか見ていないお前なんか家族じゃない!」ま、マドカ?」

 

「俺も自分のことをちゃんと見てくれる家族の方が本当の家族だと思っているんで。」

 

俺たちはそう言って今度こそアリーナから出ていった。後ろから待ってくれと叫んでいる織斑先生がいるが無視した。

 

~保健室~

俺たちは学園長室に報告した後に鈴たちが入院している病室に行くと鈴たちはいた。

 

「よう、大丈夫か。」

 

「あら、あんたたち。今日は助けてくれてありがとうね。」

 

「わ、私はあの程度まだだいじょう「ボロボロにされていた癖に。」うっ。」

 

「しかし、なんであのチビと戦ったんだ?」

 

「あぁ、それはね――――」

 

そして鈴からあのチビとの戦った訳を聞いた。最初は鈴とセシリアがアリーナで訓練しようとしたがあのチビが現れて急に挑発してきたらしい。鈴は別に気にも留めなかったがセシリアは挑発に乗ってしまい戦うことになったらしく、鈴はそれに巻き込まれてしまったらしい。

 

「おい、ライミー。お前私の幼馴染を巻き込むなんて覚悟はあるんだろうな?」

 

「マドカ、別にいいわよ。私も今回実力不足だと感じられたし。けど甲龍をボロボロにされたのは腹が立つわね。」

 

「だったら任せてください。あのチビはいつか私か兄さんでぶっ飛ばしますので。」

 

「頼んだわよ。」

 

鈴たちと話していたら急に保健室の扉が開かれた。

 

「「「イチカ君!!」」」

 

「どうしたんだみんな?」

 

そこにいたのはクラスの女子だった。

 

「これ!」

 

そして見せてきたのは学年別トーナメントの紙だった。そこには

 

『今回の学年別トーナメント戦ではタッグトーナメントとする。タッグを決め指定の用紙に書いて職員室に提出するように。』

 

あ~そういえばそんな感じの書類を生徒会で見たな。というか

 

「俺はもうパートナーを決めて提出してるぞ。」

 

「え!それって・・・。」

 

そして全員簪の方を見ていた。

 

「私はマドカと出るから違うよ。」

 

「実は私なのだ~。」

 

袖を上で振っていた本音が言った。

 

「先を越された!」

 

「くぅ~本音がうらやましぃ~!」

 

「デュノア君も専用機が本調子じゃないからトーナメントに出ないらしいし。」

 

そう言ってクラスの女子たちは全員あきらめて出ていった。

 

「さて俺たちはそろそろ帰るわ。」

 

「そう?それじゃ次お見舞いに来るときはフルーツの盛り合わせくらい持ってきなさいよね。」

 

そりゃまた豪勢なものねだってきたな。ちょっと考えといてやるか。

 

イチカside end




タッグマッチのパートナーが本音になりました。


次回はトーナメント戦やって臨海学校の準備やります。

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