マインドクラッシュは勘弁な!   作:あぱしー

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今回の話は大きく毛色の違う話なので違和感があるかもしれませんが

今後の展開に必要な話なのでどうかご容赦を――読み飛ばしても問題なかったりします



修行回、デュエリストってこんなもん(偏見)

前回のあらすじ
「人の心に淀む闇を照らす光、人は俺を、謎のデュエリストと呼ぶ……」
→「呼びません」

からの凄まじい手札事故

「運命よ僕に微笑みかけろ! ドロー!」

運命さん「ププッ!」


第6話 カードゲーム……だよね?

 

 

 己のドロー力を鍛えるために神崎は身一つで山に籠り修行に明け暮れていた。これからデュエルモンスターズがますます広まっていく世界でデュエル弱者は生き残ることはできない。

 

 それゆえに自身を可能な限り追い込むため何の装備もなく山に籠った神崎であったが彼は「山」からの洗礼を受ける――普通に食べるものがなかった。

 

 

 修行以前の問題であった。

 

 だがそんな極限生活のサバイバルは彼の潜在能力を引出し、着実に「デュエルマッスル」を鍛えていく。

 

 

 

 そんな中いつものようにドローで滝を切る素振りを続けていたある日、自身の身に大きな変化があったことに神崎は驚く――手が濡れなくなっていた。

 

 これを自身のドロー力の開花と考えた神崎はその力を確かめるために用意していた特殊なデッキを手に取る。

 

 

 それはリリースの必要な上級モンスターを6枚入れそのほかのカードは通常召喚できるモンスター、ドローカード、攻撃を防ぐカード、上級モンスターの召喚を助けるカードを入れたデッキである。

 

 

 このデッキを修行前に使用した時は最初のドローを含めた6枚の手札が全て上級モンスターであった――酷いものである。

 

 しかし、今ならモンスターを召喚しつつ、罠カードのセットまで行えるかもしれないと神崎のドローする手に力がこもる――えらくハードルが低い。

 

 

 最初の手札は5枚とも上級モンスターであった――泣いていいと思う。

 

 だが彼の目はまだ敗北を認めてはいなかった。

 

「ドローッ!!」

 

 世界を受け流すように引いたカードは「ドロー!! (召喚できない)モンスターカード!!」であった――ダメだこりゃ。

 

 

 神崎は挫けそうになる心を奮い立たせ修行に戻る。

 

 

 

 修行の中、またしても神崎は自身のドロー力の開花を感じさせる出来事に遭遇する――今度は何であろうか?

 

 その修行内容はデュエリストが用いる「カード手裏剣」である。

 

 「カード手裏剣」とはカードを手裏剣のように投げることであるが、優れたデュエリストが行うそれは鉄板にすら突き刺さる威力を持つ。

 

 それを目指し神崎はカードを投げる――と紛失の恐れがあるので、カードでの岩切を修行として行っていた。

 

 だが今回は岩の切断の際に抵抗なく岩が割れ、その岩の断面は今までのザラザラしたものではなくツルツルとしたものになっていた。

 

 

 これはいけると判断した神崎は再びドローを行う。

 

 大地を断ち切るように引いたカードは「ドロー!! (召喚できない)モンスターカード!!」であった――またしてもダメだった。

 

 

 

 ならばっ! と神崎は転がりくる大岩に立ちふさがり、その大岩をカードで切り裂く修練を続ける。

 

 そして神崎は今度こそ自身のドロー力が開花したと感じさせる現象を引き起こす出来事に遭遇する――だいぶ自信ありげだ。

 

 

 いつものように転がりくる大岩を一刀のもとに切り伏せ、その先の地形まで一本道に切り裂いていたが、今回は大岩を6分割に切り伏せ、地形が三本道に切り裂かれていたのである。

 

 腕の振りが1回なのにも関わらずこの結果――期待できそうだ。

 

 

 これは今度こそいけると判断した神崎は再びドローを行う。

 

 地平線を切り裂くように引いたカードは「ドロー!! (召喚できない)モンスターカード!!」であった――またまたダメだった。

 

 

 思わず神崎は怒りの雄たけびを上げた。

 

 

 

 

 しばらくして落ち込んだ状態から復帰した神崎は再び修行に戻ろうとするが草むらから勢いよく現れた激怒するクマに襲われる――ちなみに《激怒するクマ》というモンスターカードではない。

 

 クマは自身の縄張りで気分よく眠っていたところを雄叫びによって叩き起こされ苛立ち、敵と思われる神崎に襲い掛かった。

 

 

 そして始まる互いの命を懸けた異種格闘技戦(ガチ)。

 

 

 初手はクマの本家本元の「ベアークロウ」、その剛腕を持って振るわれた鋭利な爪を神崎は流れるようなドローをもっていなしクマの体勢を崩す。

 

 ふらつき頭の下がったクマの顔に岩切りの際に自身のドローでの腕の振りで体勢が崩れないようにと鍛えた足腰で蹴りの一撃をお見舞いする。

 

 だがクマは下がった頭を前面に押し出し「とっしん」に移行した。

 

 その「とっしん」を受け止めようと踏ん張りを見せる神崎だが、それはフェイクでありクマのインパクト寸前にバックステップしその身を下げ、流れるようにクマの「とっしん」の威力を殺そうと動く神崎。

 

 だが「ところがぎっちょん」と言わんばかりにクマの目が光り、その「とっしん」の勢いを殺さずに腕を突き出して少し下がった神崎を貫く――そう「とっしん」を囮とした「トライデントタックル」こそがクマの本命の一撃。

 

 

 この技をもってクマは勝利を重ねてきたのだ!

 

 

 勝利を確信したクマだったがその腕を神崎が掴んだことでその意識は驚きに満たされる――心臓を爪により貫かれたものが何故まだ生きているのかと。

 

 その一瞬にも満たない動揺を神崎は見逃さない。

 

 クマの腕を肩に背負うようにしてクマを持ち上げ投げ地面に叩きつける――見事な「一本背負い」をお見舞いした。

 

 

 地面に叩きつけられたクマは薄れゆく意識の中で自身の疑問が解消される。

 

 最後にその目に映るのは折れた爪と男の持つ一枚のカード――クマは理解する。あのカードでクマの「トライデントタックル」を防いだのだと。

 

 

 一方的な死合いだと思われたが今までの修行の中で培われた「一切ドロー力に貢献しないデュエルマッスル」が神崎を勝利に導いた。

 

 決まり手は「『一本背負い』でクマを1頭伏せてターンエンド」である。

 

 

 

 目を覚ましたクマは周囲には誰もおらず、自身が生きていることに疑問を感じ、見逃された事実に辿り着き怒りを覚える。

 

 自然界は弱肉強食、敗者は勝者に食われるが運命(さだめ)であり誇り、それを汚したことを後悔させてやるとクマは再戦に向けて行動を開始した。

 

 

 

 

 

 再び襲撃をかけるクマ、1頭では勝てぬと考えたのか今回は2頭で奇襲をかける。

 

 ドローの修行をしていた神崎は突然の奇襲に驚き対応が遅れた。

 

 だが体に染みついた流れるようなドローで1頭のクマの「とっしん」を避けるもその陰に隠れた2頭目のクマの「スカイアッパー」を受ける。

 

 だが神崎はとっさに自分から跳躍しダメージを軽減させた。

 

 そして着地しようとした神崎だが「空中じゃ身動きが取れないだろっ!」と言わんばかりに2頭のクマが2手に別れ神崎の着地地点に腕を広げ迫る――そうこれこそがリベンジのためにクマたちが厳しい修行を経て完成させた「クロスボンバー」!

 

 

 その威力は大木をも真っ二つにする!!

 

 

 その2つの「ラリアット」に首を挟まれた神崎、さすがにこれを食らって只では済むまいと2頭のクマは思うもその膝は突如として崩れ、その身が地面に倒れ伏す。

 

 「何故だ……」と考える2頭のクマにふらつく神崎の姿とその両腕が目に入る――ノーダメージとはいかなかったらしい。

 

 2頭のクマはすべてを悟る。

 

 「クロスボンバー」が命中する瞬間、よけきれぬと判断した神崎がその両手を2頭のクマの進路上に添えカウンターを狙ったのだと。

 

 結果、2頭のクマは決して壊れぬ鉄棒に首を打ちつけることになってしまったのだ! 

 

 ただの偶然である。

 

 

 

 

 

 再び敗北し見逃されたクマ。次こそはと3頭で三度勝負を仕掛ける。

 

 前回の失敗を踏まえ3頭一列になって神崎に突撃する。先頭のクマがその爪で神崎を切り裂かんと迫り、中央のクマが岩を投げつけ牽制し、最後のクマが丸太を抱えあらゆる事態に備える。この「ジェットストリームアタック」をもって神崎に襲い掛かる。

 

 襲撃にその気配をもって気づいていた神崎は放たれる岩を最小限の動きで避け、先頭のクマの爪を躱しそのクマの肩を踏み跳躍、中央のクマを飛び膝蹴りを喰らわせ大地に沈めた。

 

 

 最後のクマが丸太を振るうもそこに神崎の姿はなく、消えた神崎を探す最後のクマ。

 

 先頭のクマの「丸太の上だっ!」との鳴き声に振りむき目を向けるとその丸太の上を走り最後のクマの顔面目がけ「サッカーボールキック」を蹴りぬく神崎、そこに容赦の2文字はない。

 

 

 残り1頭となったクマだったが2頭が稼いだ時間を使い空中に跳躍、後ろ足の膝を突き立て神崎の首を狙う。

 

 神崎は回避しようと動こうとするも先程顔面を蹴り飛ばされたクマが最後の力をもってその動きを封じる。

 

 そんな仲間の思いを受け取ったクマが神崎に己の全てを賭けた「地獄の断頭台」をその首に叩きこんだ!

 

 「地獄の断頭台」の直撃を受け直立不動のままピクリとも動かない神崎。クマも神崎の首の肉に膝が食い込み動けない。

 

 「勝ったのか……?」と勝利を実感するクマの両後ろ足を突如として動き出した神崎が両腕でホールドし、そのまま地面に叩きつけた。

 

 

 そう! 「パワーボム」が炸裂したのだ!

 

 

 「パワーボム」を喰らったクマの薄れゆく意識にあったのは神崎に対する怒りではなく、その身を挺してチャンスを作ってくれた仲間に対する申し訳なさだった。

 

 

 地に沈んだ3頭のクマを見届け神崎は首のダメージを確認する。

 

 前回首を狙われたがゆえに鍛えておいたのだが、それでなおダメージは大きなものだった。

 

 

 なぜここまでクマに狙われるのかが分からない神崎は襲撃に備えるしかない。

 

 ゆえにもっと鍛えないといけないと神崎は決心する――当初の目的である「ドロー力の強化」はどこへ行ったのであろう。

 

 

 

 

 3度の敗北を重ねたクマたちは新たな1頭を加え敗因を探る。結果コンビネーションに力を入れるあまり「個の力」がおろそかになっていたと結論づける。

 

 そして「個の力」を鍛え上げたクマたちはその答えを示すべく神崎に襲い掛かる。

 

 4頭の掛け声「旋回活殺自在陣!」により4方向に別れ神崎に突撃する――ちなみに当然のことながらクマの言葉は神崎にはわからない。

 

 

 そして四方を囲みそれぞれが磨き上げた拳を連続で振るう。

 最初の1頭は「オラオラオラ(ry」と唸り声を上げ続けながら拳を振るい、

 

 2頭目は「熊斗百列拳!」から「アタタタタ(ry」とこちらも声をあげ続け拳を穿ち、

 

 3頭目は「108(ワンオーエイト)ベアークロー!」と爪を放ち、

 

 4頭目は「ひゃくれつ肉球!」と肉球を向け突っ張りを打つ

 

 

 その四方から放たれる連撃は壁のごとし――クマってなんだっけ?

 

 こんなものをそのまま喰らえばただでは済まない――というか死ぬ。よって神崎に残された道は全てを迎撃するしかない。

 

 その身を回転させながら培い洗練されたドローをもってすべての連撃を叩き落とす。

 

 

 そうして「無駄無駄無駄(ry」と連撃を叩き落としていた神崎だがクマの体力が限界を迎え連撃が止まり、叩き落とすものがなくなった神崎の拳はそのまま4頭のクマの元へ向かい回転も相まって4頭のクマは四方に吹き飛ばされた。

 

 

 クマは最後に「これは伝説の……宗家にのみ伝わる回天(かいてん)だと――バカな人間ごときにその技が……!?」そんな鳴き声と共に力尽きた――何度も言うがクマの言葉は神崎には伝わらない。

 

 

 

 

 

 4度目の敗北を喫したクマたちは思い至る自分たちは一体なんだったのかと!

 

――そうクマである!

 

 クマの1番の武器はなんだ!

 

 それはパワーに他ならない!

 

 今まで小手先の技術ばかり目をやり何をやっていたのか!

 

 「技を超えた純粋な力、それがパワーだ!」と息巻きさらに1頭増え5頭で、先頭から3頭、2頭と「スクラム」を組み神崎に突撃する。

 

 

 

 木々を薙ぎ倒しながら来たクマたちの「スクラム」による突撃に真っ向から突撃する――あまりの光景に呆然とし反応が遅れたゆえだが……。

 

 クマたちの「スクラム」は神崎を押し続け地面に神崎の脚によって線ができる。

 

 これにクマたちは「行ける! 行けるぞ!」と突き進む。

 

 「この人間を倒せる!」と――5頭のクマの力に張り合える存在を人間としてカテゴライズしてよいものか疑問である。

 

 

 だがそのクマの快進撃も終わりを迎える。先頭の中央の神崎に組み付いているクマに神崎は頭突きをかまし勢いを削ぐ。

 

 それにより1頭のクマのパワーのズレが周囲のクマにも広がりクマたちの神崎を押すパワーが弱まり、その隙に神崎は前列の左右のクマの頭に手を置き頭蓋を握りしめながらクマたちを押し返す。

 

 

 急な反撃にあった先頭の3頭のクマの機微に気付かない後ろの2頭のクマは押し負け始めた事実に焦りより前の3頭のクマを力強く押す。

 

 これにより先頭の3頭のクマは後ろの2頭のクマと神崎に押しつぶされ「スクラム」が崩れ、先頭の3頭は意識を手放した。

 

 

 突如として倒れた3頭に、後ろの2頭は前につんのめり倒れ、起き上がった際に目に入ったのは怒りを露わにする神崎の姿だった――山に2頭のクマの絶叫が響き渡った。

 

 

 

 

 

 前回かなり良いとこまで行ったクマたちは作戦の方向性は間違っていなかったと新たに仲間を加え6頭で計画を立てる――テーマは団結。息を合わせるための訓練は苛烈を極めた。

 

 

 神崎はドローの素振りで滝を縦に割りながら下で何やらうごめくクマたちにそろそろ修行も潮時なのかもしれないと溜め息をつく。

 

 クマたちは高所にいる神崎の姿を目に入れ6頭で腕を交差し手を握り合い「掌位」の形をとる。そしてタイミングを合わせ6頭同時に跳躍し突撃!

 

 「掌位」により高められた脚力による跳躍!

 

 そして推進力は6倍以上!

 

 「これが俺たちのパワーだっ!!」と突き進むクマたちによる神崎の返答は圧倒的な「デュエルマッスル」から放たれた一発の拳であった。

 

 

 

 滝壺に6つの水柱が立った。

 

 

 

 

 

 

 神崎はそろそろ時間切れかと山を下り、修行の旅はとりあえずの終わりを見せる。

 

 クマとの勝負のお蔭かどうかは定かではないが、神崎のドロー力は当初のゴミみたいなものから通常のデュエルができるほど成長している。

 

 しかし彼は頭を抱える――負けられない勝負が怖い――と。

 

 精神面はあまり鍛えられなかったようだ。

 

 だが「敗北」が精神的な「死」に直結することもあるため無理からぬことではある。

 

 

 

 そんなことを考えながら1人帰路に就く神崎の船旅はあっけなく終わりを迎える。

 

 「嵐」に見舞われたのである。

 

 

 荒れに荒れた海により神崎の乗った小船はあっけなく沈み、しかたがないので泳いで帰ることになる――この程度で常識を超えた「デュエルマッスル」は止められない。

 

 

 もはや人間を辞め「デュエリスト」という謎生物と化した神崎は海の中、何かを発見する。

 

 ――親方! 海の中に巨影が!

 

 ――あれはなんだ……人魚か! 魚人か! 

 

 そう思い近づいて行った神崎はその正体を知る。

 

 ――いや……漁師だ!

 

 

 恐らく神崎と同じく荒れた海により船が沈んだか投げ出され、海に落ちたのだろうと当たりをつけ、その漁師と思われる男を担ぎ神崎は陸地を目指す。

 

 

 

 

 

 無事陸地にまでたどり着いた神崎はKCへと連絡を取る。

 

「私です。至急送信した座標に医療班を頼みます。応急処置は済ませましたが危険な状態であることに変わりありませんので……」

 

『了解しました』

 

 連絡を受けたギースが了承するのを確認し神崎は嵐に呑まれたことに対し危なかったと安堵する。

 

 

 「デュエルマッスル」がなければ即死だったと。

 

 

 ゆえに神崎は今後も地道にデュエルマッスルを鍛えることを続けていこうと誓う。

 

 

 

 

 

 

 だが神崎は気付かない。

 

 

 それが将来、一大デュエル流派「マッス(リュウ)」として広まっていくなどと――

 

 

 




修行にはクマと戦うのがいいって
バリアン七皇のギラグさんが言ってた気がする!


今回の話は
この嵐に見舞われた漁師を助けるのがメインな修行回

漁師……いったい何者なんだ……


ちなみに
「デュエルマッスル」+「~流」

「マッスル流」

「マッスリュウ」

「マッス流」




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