「折本──」さて、この後に続く言葉は── 作:時間の無駄使い
ただし津久井さんは出て来ません。
本編との違いは、折本と比企谷は、【過去に付き合っていた】と言う設定でやって行きます。それと、津久井さんの告白はまだ、と言う事で。
03からの分岐です。
01
十二月某日。
「そこはロジカルシンキングで論理的思考の元に考え出した結論を皆で出し合って、それをカスタマーサイドに立ってお客さん目線で見た時に──」
何やら呪文を唱えている玉縄と、以下数名の海浜総合勢。
それに対して総武高校側は特に何もしていない。それはそれで問題ではあるが。
「…すいません、そろそろ時間なんですけど……」
「!…あ、はい!…じゃ、じゃあ残り時間も無いので今日はここまでにしましょう」
そのタイミングでセンターの職員が声を掛けて来て、これを逃さんとばかりに一色が声を出す。
「……そうだね。…じゃあ、この続きは次回にしようか」
中断された事が気に食わないのが明らかに顔に出ている玉縄は、それでもしばらくすると、やり切ったと言いたそうな顔をしていた。
──多分、本人の中では、自分の言い分が周りに共有され、納得を得られているとでも解釈されているのだろう。
それもそのはずだ。──この会議には、否定が無いのだから。
──だから、このままではダメだ。
どこかで、誰かが流れを変えなければ──
こうして、俺が初参加したクリスマスイベントの会議はわけも分からぬままに終了した。
* * *
「せんぱ~い!」
「…何だ、一色か」
「むー……。何だとは何ですかね」
帰りの荷物を纏め、ささっと帰宅しようと思ったら、一色に捕まった。
こいつに捕まるとしばらく愚痴を聴かされ続けるから今は捕まりたくはなかったんだが…。
「…ところで先輩」
「…何だよ」
「
「…知り合い?…いや、居ないと思うが」
「……ほら、あの人ですよ」
一色が指差した先には、──確かに、知り合いがいた。
──折本かおり。
中学時代、俺が告白した相手であり、そして高校一年まで付き合っていた奴でもある。
その後、ちょっとしたいざこざがあり、現在は“親友”である。…と言っても、今はしばらく会ってないから話してないが。
因みに、他の人達で俺と折本の関係を表すと【涼宮ハルヒの憂鬱】に出て来たキョンと佐々木みたいな感じだ。まぁ、俺はキョンではないし、折本と佐々木は性別以外全く被ってるところがないが。
「……………」
まぁ、向こうも気付いてないみたいだし、とっとと帰るとするか。
「じゃあな、いっし──」
「あれ?比企谷?」
帰ろうとしたら、折本に捕まった。
「おう、折本か」
「比企谷も来てたんだ。全然気づかなかった…」
「まぁ、今回が初めてだけどな」
「…ちょっと背伸びた?」
「お前は縮んだか?」
「…比企谷が大っきくなったんだよ」
「つまり折本は伸びてないのか」
「まあでも女子はこんなもんでしょ」
「知らねーよ。…んな比較出来るほど女子なんて見てねぇし」
──と、久しぶりに折本との会話に熱中していると、横から声がかかった。
「…あ、あの、先輩?…誰ですか?この人」
一色は、折本を指差しつつ俺に訊いてくる。
「指差すなよ…。こいつは──」
「私?私は折本かおり。…えっと、比企谷の親友」
「…………えっ!!?」
「おい待て一色。今の間とその後驚いた理由を説明しろ」
「…だ、だって、あれ程友達居ないって豪語してた先輩が……」
「嘘は言ってないだろ…」
そう。嘘は言ってない。居ないのは友達であって、親友じゃない。
「…むー。納得いきません!…先輩、それから折本さん?もこの後時間ありますか?」
「俺はこの後…」
「私はあるよ?」
「それじゃ、行きましょう!」
俺の意見は無視ですか…。それ訊いた意味無いよね?しかもどこへ行くかすら言われてないんだが…。
* * *
一色に引っ張り出され、歩きだと言う折本と一色に合わせ、俺は自分の自転車を押しつつ向かった先は、サイゼだった。
中に入り、微妙に暖房の効いた空気を浴びながら案内された席に着く。
一色が座り、その次に俺がその向かいへ座る。すると、当然のように折本が横に来る。
「……………」
「…なんだよ」
「…今先輩、物凄くスムーズに折本さんの分の席を開けてましたよね。折本さんがそっちに行くとは限らないのに」
「いや、限るだろ」
「うん。限るよね」
何故か不機嫌な一色からの質問に、俺と折本がサラッと応えると、一色から出る黒いオーラの量が増えた。
「な、ん、で、限るんですかね」
「なんでって…いつも通りだよね?比企谷」
「まぁ、いつも通りっつってもしばらく前の事だけどな」
俺と折本が疎遠になる前、よく二人でこうしてファミレスに来たりなんかはした。
その時、殆んどの場合で折本は俺の隣に座っていた。
最初は疑問に思ったし違和感もあったが、慣れてくると特に何の問題も無く感じる様になり、結局そのまま変えずに、隣り合って座り続けている。
だから、一色が違和感を覚えるのも分かるは分かるんだが…。
「ってか、今回は別に普通だろ。俺の向かいに一色が居るんだから、折本がどっちに座っても問題無い──」
「ありますよ!」
「…え?」
「問題ありますよ!…でも、私が言ってるのはそう言う事じゃなくて──」
「──どうしてそんな肩が触れ合う様な位置で座ってるんですか!って事を言ったんです!」
そう言う一色の声は、それなりに大きな声だった。
だんだん一色がヒートアップして、声が大きくなって来たところで、取り敢えず一回宥めるかと思っていたら、横から折本が、
「一色ちゃん、一回落ち着こう?ここファミレスだから」
どうやら折本も同じ事を考えていたらしい。…この状況だったら誰しもが考える事ではあるだろうが。
「…もういいです。…はぁ。…取り敢えず何か頼みましょう」
「一色は決まったのか?」
「一色ちゃんは決まってる?」
「…は?」
何か頼もうと言った一色に、今度は同時に同じ事を訊いてしまう。
「…メニュー見ないんですか?」
「俺は頼むもの決まってるしな」
「私もね」
「……………。…因みに、何を頼むんですか?」
「「ミラノ風ドリア」」
「…私もそれでいいです」
一色は、そう言いながら諦め混じりの溜め息を付きつつ、呼び出しボタンを押した。
──ドリアが届いて、それぞれ食べ始める。
ここ最近はサイゼに行けて居なかったので、久しぶりに食べる事になったドリアの味は、相変わらずの美味さだった。
これと対極を為すのは、恐らく由比ヶ浜の手料理くらいだろう。
──まぁ、それはいいんだが。
「なぁ、一色。そろそろやめてくれないか」
さっきからずっと、こいつは俺のスネを定期的に蹴り続けていた。
「……………」
俺が一色に言っている間も、一色はもくもくと食べながら蹴り続けていた。
仕方なく、俺も(さっきからやってるけど、)避ける為に左右に足を動かしつつ食べていると、折本が──
「比企谷、口にドリア付いてるよ」
とか言いながら俺の顔へ手を延ばし、ヒョイっと取ってそのまま食べた。
「…サンキューな、折もっ!?」
「ひっ、比企谷!?」
折本に礼を言おうとしたら、最大の攻撃が俺のスネを襲った。
「………ふん!」
「……一色…この…やろう」
痛みで泣くのを我慢しつつドリアを食べ終え、その日は結局一色が何をしたかったのか分からぬままに、解散した。
──そして明日、俺は人生最大の転機を迎える事になるのだが、この時の俺はまだ知る由も無い。
久しぶりに書いたら何やってるか分からないものが出来上がってしまった…。
それと、また風邪を引きました。
取り敢えず一話投稿しましたが、全然その先が決まってないので、しばらくは更新遅いかもです。
今まで通り、火曜日メイン・土曜日サブで更新して行く予定です。