※ただし、これがスタート段階
「ナメック星人の誇りを見せてくれるっ!!!」
「お前なんかボクが倒してやる!」
「サイヤ人は戦闘民族だ」
「そうだ、さらに左手だけで戦ってあげましょう」
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夢は見なかった。
目が覚めると、真っ暗な中にうずくまっていた。腕を上げると、手ごたえもなく腕が突き抜けた。
体を持ち上げて起き上がると、土の中だった。それほど深くなかったので、すぐに地上に出る。
見れば、すぐ横に最長老の家のある高く突き出た高台がある。おそらく、巻き込まないように、ここに埋められていたのだろう。
コキッ、コキッ
起き上がってすぐに、自分の体の変化を感じる。
キレがいい。体の中に今までの自分の気を感じるが、前の時の様に体からあふれるような気ではなく、体の底にたまっているだけのような。まだまだ、余裕がある感じだ。
同時に、自分にではなく周囲に違和感があった。
ナメック星が静かなのだ。いつもは、なにか温かさのようなものを感じるのだが…
違う。
そうか、これが気を感じないというものか。
人のいる、あの温かい感覚がなくなっている。
その理由は一つしかない。
「どこまで原作が進んでいるんだ?」
とりあえず、上に登って最長老様に会いに行く。
頂上の最長老の家は、二階の一部が破壊され大きな穴が開いていた。
飛び上がってそこから中に入る。
「最長老様」
椅子に座る最長老。肌の色はますます悪くなっている。だが、深くゆっくり息をしていた。
「…ルンガか」
かすれるような声が、最長老の口から洩れる。
「はい。最長老様」
最長老の右手が肘掛けから持ち上がる。その手は、ふらふらと力なく震えてしていた。
今にも落ちそうな力のない手を、駆け寄って掴む。
「ルンガ。もう時間がない。新たなお前の潜在能力を引き出してやろう。だが、お前の体がそれに耐えられる保証はない」
一言一言が辛そうだ。だが、オレの決断は決まっていた。
「はい」
まるで手探りの様に、オレの体を触り、最後に頭に手を置くと、最長老様は大きく息を吸い、そして吐いた。
「わたしの子よ。生きよ」
オレの体から力があふれる。
そして…
ビキッ
体の中で、きしむ音がした。同時に、全身を激痛が走る。
「グッ…」
痛みに体を動かすと、更なる痛みが襲う。
さらにその痛みが更なる痛みを…その衝撃はあっさりと、オレの耐えられる限界を超えた。
「ぐああああああ!!!」
潜在力を引き出す。言うのは簡単だが、それがどのような意味を持つのか。達人なら、限界まで鍛えた者なら、潜在力を引き出しても耐えられるだろう。
だが、体を作りかえられたオレはまだ赤ん坊のようなものだ。その可能性を一気に引き出されたらどうなるか。
「がああああああ!!!」
まるで体を内から突き破られるような激痛に、悲鳴を上げた。
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「ぜったいにゆるさんぞ虫ケラども!!じわじわとなぶり殺しにしてくれる!!」
「人が好意ですばらしいプレゼントを、やろうというのに…」
「このオレを半殺しにしろ!!」
「オラは地球育ちのサイヤ人だ」
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倒れていた体を持ち上げる。
体の痛みは消えている。それよりも、溢れ出すパワーが尋常ではない。抑えていてなおこれなら、全力を出したらどうなるのか。恐ろしくなるほどだ。
立ち上がって、椅子を見る。
その主はすでに息をしていなかった。
ひざを折ると、深々と首を垂れる。
「申し訳ありません。最長老様。最後の願いは、聞くことはできないかもしれません…」