ルンガ 戦闘力 1万1000
ナメック星人の若者 戦闘力 3000~4000
ネイル 戦闘力 4万2000
オレは最長老に会う事は極力避けていた。
最長老は心を読む。頭に手を置いて、原作キャラの事情を読み取った特殊能力。オレが原作知識持ちの転生者である事が最長老にばれると、面倒な事になる。
だが、もうどうでもよい話である。フリーザがくれば、オレたちの事情など一顧だにせず終わる。
憔悴したオレを連れて、ネイルと最長老の家に入る。
「お前はルンガか。久しいな」
「…ご無沙汰しています」
おざなりに、返事をする。すでに死刑執行に近い重い足取りで、最長老の前に立つと、最長老は肘掛けから腕を上げ俺の頭に乗せた。
ああ、おわった。なにもかも。
おれはフリーザに殺されるだけだ。秘密も何もない。あるべくして物語は進み。あるべくして終わる。
「ルンガ。お前はやさしい子なのだな」
最長老の言葉に俺は首を横に振る。
「違う。オレはわがままなだけだ」
そう。
オレは原作を知っている。フリーザ一味にナメック星人が虐殺され。最後はフリーザの攻撃でナメック星すら塵と化す。
しかし、だからどうしたというのだ。
虐殺されたナメック星人は、ドラゴンボールで生き返る。
それだけではない、ナメック星によく似た星に移住までされ、そこで復興が約束されている。
そう、オレの努力は全く必要ないのだ。復活が約束された死。痛いのが嫌なら、逃げ回ればいい。ドラゴンボールで爆発するナメック星から生き物は問答無用で地球に転移される。せいぜい、虐殺から逃れる程度の自衛する能力を持てばいいのだ。原作キャラのクリリンや孫御飯程度の能力でしのげる程度の物なのだ。
だが、オレはそれをぶち壊したい。
「お前にも見せてやりたいのだ。緑あふれる豊かなナメック星を」
耳にタコができたと言っているだろう。
何度、そんな無駄な事はやめろと言いたくなった事だろう。消滅する星を耕し、種をまき、質素に暮らす。
何もないナメック星で、死んだ先人たちの志を受け継ぎ、体を汗と泥で汚すナメック星人たち。
有りえない未来をめざし、無駄な苦労する彼らが、無様で、哀れで、そして報われてほしいと思ってしまったのだ。
”よく似た星”ではなく、先祖代々ナメック星人が生まれ死んでいった、それを誇りに思って復活させたいと努力する”ただ一つのナメック星”を壊したくないと思ったのだ。
それがたとえ、原作破壊という危険性をはらんでいたとしても。
だが、それは不可能だ。
オレは、その為の舞台にすら登れない。
それ故に、オレは終わったのだ。
「ルンガ。わたしの12番目の子の名を持つ100番目の子よ」
オレの言葉を静かに聞いていた最長老はゆっくりと口を開いた。
「お前の言う敵が、恐ろしい力を持っているのはよくわかった。その力は、ナメック星人の限界を超えている」
そして、しばらく考え込むと、何かを決めたようにまっすぐにオレを見た。
「だが、お前を望む場に向かわせることくらいは、出来ぬではない。ナメック星人は二つのタイプに分かれる。龍族と戦闘タイプだ。お前を戦闘タイプに作り変える事で、お前の力を、今とは比較にならないほど増す事ができるはずだ」
「最長老様!?」
ネイルが驚きの声を上げる。
「よいのだ。ネイルよ。ルンガ。どうする?」
「なぜ、そこまでしてくれるのですか?」
こんなわがまま、最長老にはなんのメリットはない。もうすぐ死ぬわけだが、それを除外しても。確定した未来が消える危険性しかないのだ。
「それがどのような結果をもたらすか、わたしにもわからない。だが、お前は覚悟を決めた。親として、できる限りのことをしてやりたいのだ」
はっきり言うが、フリーザの戦闘力はでたらめだ。変身によるパワーアップでも最終変身前と後では、戦闘力の桁が二つは違う。ここで、戦闘力を数倍に増したところで、誤差に過ぎない。
不確定な危険は大きく、可能性は限りなく低い。
だが、もしわずかな可能性にかけるなら。
「最善を尽くします」
頭に手を置かれた状態のオレの打算的な思考など、最長老はすべてご存じの事だろう。だが、オレの返事に満足げにうなずくと、ゆっくりと口を開く。
「ポコペンポコペンダーレガツツイタ…」
まるで呪文のようにつぶやく最長老。同時に、手から細い糸のようなものが現れオレを包み込む。その本数はどんどんと増えていき、まるで繭の様に俺をくるんでいく。
徐々に自由が利かなくなる恐怖をおさえ、オレは目を閉じると体中の力を抜いた。
戦闘タイプに生まれ変わらせるというのは、本作のみの設定です。