人の印象って、些細なことで変わるものだ。
例えば俺。中学の頃は、男女の価値観がイマイチ理解できず、結果清楚ビッチなんて呼ばれ続けていた。しかし高校では過去の失敗を反省して気を付けて行動しているからか、俺のことをビッチ呼ばわりする人は少なくなっている。
(岩崎さんもそうだよなー……クールに見えて熱いところがあるし)
そしてちょっと面白いところがある。チェリーちゃん関係だとそれが顕著だ。
あと、小早川さんは結構頑固……というか意志が固かったりする。見た目は大人しそうな子なのにね。
いずみさんは学級委員長をしていて『出来る人』って周りから思われているけど、実際はちょっとだらしないところや落ち込みやすかったりする。はたしてそのことを知っているのは何人居るのやら。
……で、ここ最近仲良くなった人で抱く印象が凄く変わった人が居る。
俺はその人物……田村さんを見る。
「……」
彼女は自分の席でボーっとしていた。机の上にはノートが広げられており、何かの作業中に考え事をしているのだろうか。交流を持った当初はそう思っていた。
しかし、今は違う。
俺はため息を一つ吐いて立ち上がると、田村さんの席に近づいて彼女のノートを覗き込む。本来ならプライバシーの侵害で褒められた行為ではない。ないのだが……。
『む、村田くん……! だ、だめだよ……此処は教室で……』
『そう言うなよ木冬。今なら誰も居ないぜ……』
放課後の教室に居る二人の男同士の一コマ。
真顔でそれを見た俺は視線を作者に向けて、ポンポンッと彼女の肩を叩く。
すると、今まで自分の世界に行っていた田村さんは現実世界に戻って来て、俺を認識すると……。
「あ、木冬くん……」
「誰が木冬だ」
「アイタ!?」
トチ狂ったことを宣う田村さんの脳天にチョップを叩き込む。
しかし田村さんは全然堪えた様子を見せず、それどころか小さく『我々の業界ではご褒美です』なんて言っている。
見て分かるように、実は田村さんはこなたさんと同じ人種の人間だった。確かに人を思いやる優しい心の持ち主だが、ちょっと……少し……かなり自分に正直な人だ。
俺はもう一度彼女のノートを見て、田村さんに尋ねた。
「……またネタ切れ?」
「う゛……はい、そうです……」
田村さんは漫画を描いている。漫画研究会や同人サークルにも所属しており、こなたさんが需要側の人間なら田村さんは供給側の人間だ。
「これ、あの時のことだよね……どんだけ切羽詰まっているの?」
「好きなキャラがラスボスだったくらい」
「うーん。微妙に分からないなー」
田村さんが漫画を描いていることを知ったのは、例の事件が起きた翌日のことだった。
何とか小早川さんに事情を説明し、交流を深めようと岩崎さんを含んで休憩中に談話していた時に、彼女自身がそうカミングアウトしたのだ。実際、その時に見せて貰った絵は上手で、素直に賛辞の言葉を送ると照れていた。
『本当に上手だね、田村さん』
『いやいや。そう言われると嬉しいね~』
『確か、漫画を描いているんだよね? どんな内容?』
『……えっと、好きなゲームキャラ同士の日常とか?』
小早川さんの質問に田村さんは酷く動揺し、絞り出した答えは何処か建前のように聞こえた。
最初は恥ずかしいのかな? と思っていたんだけど……。
「また小早川さんや岩崎さんをネタにしていないよね?」
「……」
「田村さん。こっち見てよ」
まぁ、交流を持った結果見えてしまったというか……。
田村さん、小早川さんと岩崎さんが会話をしているのを見るとおもむろにノートを取り出して絵を描き出すんだよね。そして気になった俺はイタズラのつもりで背後から近づいて中身を見てしまい……。
「男の俺には分からない世界だけど……これ需要あるの?」
「ある」
「断言しないでよ……」
田村さんのために明言はしないが……つまり彼女は
その一面を知った俺は、ちょっと田村さんに対する見方が変わった。いや、良い人っていうのは分かるんだけど、ちょっと自分の欲望に弱すぎじゃありませんかね?
「俺は度が過ぎない程度ならうるさく言わないけど、あの二人は無許可でしょ? 自重はしてよ?」
「さ、流石に本として出す時はキャラ絵は変えるよ。これは自分が楽しむためというか……」
「でもネタは使うんでしょ?」
「う……」
「まったく……」
こなたさんのように開き直っているわけでもなく、あの子のように隠しているわけでもなく。
オープンにしつつも核心は隠そうとする田村さんは……今までに出会ったことにない人だった。
取り敢えず、バレたくないなら教室で描くのは止めようよ。
え? 無意識? あ、そうですか……。
第二十三話 鐘の声
――キーンコーンカーンコーン。
「――はい、じゃあ今日はここまで。今の所テストに出るから、しっかりと復習するように」
授業終了のチャイムが鳴り響き、それまで一心不乱に黒板に書かれていることをノートに写していた学生たちは肩の力を抜いた。キリが良かったのか、教卓に立っている教師は重要な箇所をチョークで強調しつつ復習を促す。それを聞いた学生たちは各々マーカーペンで線を引き、教師は以上だというと早々に教室を出た。
キョウもまとめ終わったのか、教科書やノートを机の中に片付けると鞄から弁当箱を
「あ、柊くん。今日はどうするの?」
ゆたかが自分の弁当箱を持ってキョウのもとに訪れる。後ろにはみなみとひよりも居り、どうやら昼食にキョウを誘いに来たらしい。
キョウは日によって昼食を共にする人間が違う。
基本はいずみと一緒に食べるが、日によってはゆたかたちと共にする時がある。
そして今日は……。
「あ、ごめん。先に食べてて。ちょっと行くところがあるから」
「行くところ?」
「これ」
そう言って見せたのは、いつもキョウが持ってきている弁当箱の色違い。
「つかさ姉さんが朝持って行くの忘れたみたいでさ。だから届けに」
「あー。そう言えば柊くんってお姉さん居るんだっけ」
「うん。そういう訳だから。
もしかしたら向こうで食べるかもしれないし」
「うん、分かった。じゃあそうするね」
そう言うとゆたかたちは席を寄せ合って三人で食べ始め、キョウは教室を後にした。
ちなみにいずみにはメール済みである。
階段を昇り三年生たちの教室がある三階にやって来たキョウ。
下級生だからか、それとも彼と同じ出身中学が多いからか、キョウはいくつもの視線を感じていた。
しかし彼はそれに気づかないフリをしてつかさが居る教室を廊下から中を見て探す。こなたやみゆきと同じクラスになったとは聞いているが、何組だったかは知らない。
そうして地道に彼が端から順番に見ていると……。
「あら? キョウじゃない」
「ん? あ、かがみ姉さん」
弁当箱を持ったかがみと偶然鉢合わせになった。
かがみは何故キョウが此処に居るのかと訝しげに見ていたが、視線がキョウの持っている弁当箱に行くと納得の表情を浮かべる。どうやらつかさから弁当箱を忘れたと聞いていたらしい。
「わざわざご苦労様。その様子だと教室分からないんでしょ? 案内するわ。私もそこで食べるし」
「うん、ありがとう」
「ついでだし、アンタもどう? どうせつかさに捕まるだろうし」
「そうだと思って、自分の分も持って来た」
姉弟だからか、考えることは一緒らしい。もしくはつかさがどう認識されているか……。
かがみはフフッと笑うとつかさの教室へと歩き出す。キョウもそれに従って彼女に付いていく。
かがみと並んで歩いているからか、周りのキョウへの視線が減った。というよりもかがみに移ったと言った方が正しいだろうか。キョウのことを知らないかがみの同級生が、彼女に向かって揶揄いの言葉を投げかける。
「おい、柊~。下級生連れてナニする気なんだ~?」
「別にそんなんじゃないわよ。それに、この子は弟よ」
「……へ?」
「あ、どうも」
しかし、かがみは特に動じずに返して、キョウは会釈して先に進んだ。
先ほどの彼女の言葉が周りの女子生徒たちの間に浸透し、ひそひそとあらぬことを考えていた者たちは納得の表情を浮かべて、抜け駆けしたのかと怨嗟の声を出していた者たちは表情を和らげた。
反対に、キョウのことを知っていた者たちは、相変わらずガードが固いと不満を抱き――次の瞬間謎の悪寒に襲われ視線をかがみたちから逸らした。誰とは言わないが、器用なことをする者も居たものだ。
そうこうしているうちに、かがみたちはつかさの教室に辿り着いた。
何度も来ているのか慣れた様子でかがみは、つかさの席に向かう。
「あう~。今日弁当忘れちゃってたよ~」
「それは……大変ですね。私の弁当のおかず分けましょうか?」
「購買で何か買ったら良くない?」
丁度つかさが弁当を忘れたことに気づいたようで、彼女はションボリをしていた。
予想通りの反応にかがみは苦笑しつつ、三人に声をかける。
「おーっす。来たよー」
「おっす、かがみ……ってキョウくん?」
「え? キョウちゃん? あ、本当だ~。でも何で此処に?」
真っ先にキョウの存在に気づいたこなたが彼の名を呼び、それに釣られてつかさとみゆきもそちらへと視線を向ける。先ほどまで落ち込んでいたつかさは、はにゃっと破顔させて嬉しそうな声を出す。しかしすぐに何故キョウが此処に居るのかと首を傾げ、そんな自分の姉に呆れつつキョウは彼女の弁当箱を手渡した。
「はいこれ。忘れていたから持って来たよ」
「わぁ……! ありがとうキョウちゃん!」
「まったく……次からは気を付けてね?」
「えへへ……ごめんね~」
そんな姉弟のやり取りを見つつ、こなたは呟いた。
「こうして見ていると、キョウくんの方がお兄ちゃんっぽいよね」
「つかさには言うなよー。何気に気にしているから」
「あ、キョウちゃん。良かったら一緒に食べない? というか食べようよ!」
「はいはい、分かりましたよーっと」
「……気に……して……?」
「何も言うな……」
まるで妹が大好きな兄に甘えるかのような光景に、こなたはかがみを見るが視線を逸らされる。
もう逆転すれば良くね? と思いつつも、それ以上言わないこなたであった。
空いている机を一つ追加し、キョウはつかさとかがみの間に座る。
気になるのか、周りの上級生たちが彼の方をチラチラと見る。その視線に気づいたこなたは、彼女たちの方を見て思わず笑みを浮かべる。どうやら優越感を感じているらしい。
「いや~。食事に華があると違うね~」
「そうですか?」
「そうだよー。いつもは女四人寂しくご飯食べているからね~」
何気にゆーちゃんたちが羨ましかったり。そう言ってこなたはチョココロネをぱくりと一口食べる。
そんな彼女の発言に、他の三人は否定せず苦笑していた。どうやら、色々と思うところはあるが概ね同じようなことを考えているらしい。男子が少ないから仕方のないことだが。
「そうだよ、キョウちゃん。何で今まで遊びに来なかったの?」
「そう言われてもねー……」
「でも、上級生の教室に行くのは勇気のいることだと思いますよ? 男性の方なら尚更……」
「確かにねー」
むくれるつかさに対して、キョウのフォローをするみゆきとこなた。
分かってはいたのか、つかさは「むー……」と唸りつつも納得した。
「でも、自分と違う学年の階に行くと注目浴びている感じはするわよね。実際はそうでもないんだろうけど」
「そうですね。私も委員会の仕事で下級生の教室に向かいますが、時折視線を感じることがあります」
「私は無いなー。……ちっこいから年上に見られていないから」
『あぁ……』
こなたの言葉に、思わず押し黙る四人。
彼女の身長は、平均をはるかに下回っている。初見で彼女を年上だと判断するのは難しいのではないだろうか。これでも17歳である。
……いや、もうすぐ18になるのか。
「え? こなたさん誕生日近いんですか? 何日?」
「28。いやはや。なかなか待ち遠しいよ」
「意外ですね。そういうのには無頓着だと思っていました」
「いやだってこれでエロゲとかできるじゃん」
何というか、理由がこなただった。
彼女の発言を聞いて、キョウとかがみはそう思った。
「ちょ、確かに年齢的にはそうかもしれませんが、堂々と言う事ですか!?」
「というか、アンタ今までも普通にしてただろ!」
男子の前でエロゲ宣言をするのはこなたくらいだろう。相手がキョウだというのもあるが。
普通の女子から見れば、彼女の行為は勇者のそれであり、周りの女子生徒たちはこなたに畏敬の感情を抱いていた。
「それにしても……偶然って凄いですね」
「何がですか?」
ふとキョウはそう言い、首を傾げつつみゆきは尋ねた。
彼女の問いにキョウは答える。
「実は、うちのクラスに田村さんっていう友達が居て、5月24日が誕生日なんですけど……」
「その人、もしかして魔砲少年!?」
「違います」
目を輝かせて詰め寄るこなたをばっさりと切り捨てるキョウ。
段々彼女への対応が、姉のかがみに似て来た気がする。
そんなことを思いつつも、キョウは話を進めた。
「んで、俺の誕生日が今月の26日なので……」
「なるほど、三人それぞれで二日違いなのですね」
「そうなんですよ。だから何だ? って話なんですけど」
「ふむ。いっそのこと誕生日パーティを纏めてするとか? どうせお父さんが準備しているし」
毎年派手にサプライズパーティをするため、毎年この時期が来ると微妙な気分になるこなた。
パーティが終わった次の日の冷蔵庫の中は、当日食べきれなかったケーキや料理がぎっしりと。その処理が何気に疲れたりする。その解消という訳ではないが、参加人数を増やそうとするこなたであった。
さて、誘われたキョウはというと、意外にも乗り気だった。
「楽しそうですね! 後で田村さんにも聞いてみます!」
「おっけー。何ならみなみちゃんや主人公ちゃんも呼んだら?」
「はい、そうさせていただきます」
「はぁ……二人で話を進めないでよ」
「ん? かがみんは反対?」
「いや、そういう訳じゃないけど……」
「じゃあ、都合の良い日はまた今度連絡するよ」
「はい、お願いします」
こなた、キョウ、ひより混合の誕生日パーティが開かれることとなり、今から楽しみになってきたキョウ。
参加人数も多く、何かが起きるのは確定的に明らかであった……。
その話は、また今度。
◇
「そのまま終点まで行ってしまい……」
「うわ、それはまた大変でしたね」
「ゆきちゃん、そういうこと多いよねー。集中力が凄いというか」
「それを集中力と言って良いのか……?」
ワイワイと会話に弾む四人を見ながら、何か気づいたことがあるのか、こなたは全員の顔を見ながら口を開く。
「こなただから、こなちゃん。みゆきだから、ゆきちゃん……。
ねぇねぇつかさ。かがみとキョウちゃんに私たちみたいな呼び方するとしたら、どんな感じ?」
「え? うーんと……」
突如振られた話に、つかさは少し考え込む。
かがみとキョウも気になるのか、つかさに視線を送る。
つかさはかがみを見て、キョウを見て、考え終わったのか口を開く。
「お姉ちゃんは……けいちゃんかな? 鏡の読み方を変えて、みたいな……」
「おー、けいちゃん。なんか口先の魔術師って呼ばれそう」
「誰が口先だ誰が」
「でも付き合う相手全員ヤンデレになりそう」
「いや、もう何言ってんのか分かんねーよ」
暴走するこなたに四人は苦笑し、つかさは今度はキョウのあだ名を考える。
「いつもキョウちゃんって言っているんだけど……あえて付けるとしたらキーちゃんかな?」
「おお、良い感じだね。鍵っ子って言いたくなる」
「それ、絶対別の意味ありますよね?」
「面白いですね。
では、つかささん自身だったらどのような呼び方を?」
「え? 私? うーんと……」
自分の事となると、なかなか思いつかないのか少し悩むつかさ。
「ひーちゃんかな? 名前だと付けづらいし」
「おお。良いねそれ。つかさいつもヒーヒー言っているイメージあるし」
「そ、そういう意味で付けた訳じゃないんだけど……」
「ふふふ……しかし可愛らしいと思いますよ? 今度から「ひーちゃん」と呼ぶのも良いのかもしれませんね」
「じ、自分で付けたのはちょっと……」
みゆきの提案に、苦笑しながらつかさはそう言った。
みゆきは「そうですか?」と言いつつも少し残念そうだった。
「けいちゃんとキーちゃんはどう思う?」
「紛らわしいからいいわよ」
「右に同じく」
「ブーブー。それじゃあつまんないよー。他に良い呼び方あるの?」
「う~ん……じゃあ『かがみ様』で」
『……』
まさかの様呼びに、絶句する他の四人。冗談だと思うが、本人の性格もあって結構本気で言っているのでは……? と邪推してしまう。
予想外の反応に戸惑うかがみ。しかし彼女の最大の失敗は、それは泉こなたと言う少女に言ったこと。
「畏まりました、かがみ様!」
「え?」
「ふふふ……分かりましたかがみ様」
「ちょ」
「え? え? ……かがみ様?」
「んな?」
こなたが揶揄い、それに珍しくみゆきが乗っかり、つかさが流される。三回連続で様呼びされて狼狽するかがみに、こなたはさらなる追撃を加えるべくキョウに耳打ちする。
どちらかと言うとノリの良い方であるキョウは、あくどい笑みを浮かべて頷いた。多分こういう部分がビッチと呼ばれる原因だと思われる。
椅子から降りて膝を突き、かがみを下から見上げる……つまり上目遣いで彼女を見てたっぷりと感情を乗せて一言。
「――か・が・み・様」
「ごはぁ!?」
――クリティカルヒット!
弟に何てことをさせているんだ。良い物見れた。お前ふざけんな。良い仕事をしたetc……。
相反する感情が胸中で渦巻き、声がでないかがみはこなたの肩を強く掴むことしかできなかった。ちなみに、何人か流れ弾にやられた者が居た模様。
しばらくして。
「やっぱりキョウくんって演技力あるよね。キャラに感情乗せるのとか上手」
「確かに、先ほどのアレは衝撃が凄まじかったですね。演劇部に所属したら即戦力になるのでは?」
もう一人の姉に「私にも!」と強く訴えられたキョウは、断固拒否してこなたとみゆきの言葉に首を傾げる。
「そうですか? 何となくでやったんですけど……」
本人にしてみれば、そこまで称賛されるレベルのものではないと思っている。先ほどのアレはかがみだから効いただけ、と。
「うーむ……今までは服とかウィッグ被せるだけだったけど……」
「おーい。何不吉なことを口走っているんですかー?」
「……ねぇ、キョウくん。お金稼いでみない?」
「なんか怪しくないですか!?」
身の危険を感じて思いっきり引くキョウ。そんな彼を守るべく、こなたに強い視線を送る姉二人。セコム、強い。
流石に弁護できないのか、みゆきも苦笑するだけだった。
「真面目な話、お金には困ってないですよ。大方、こなたさんのバイト先でコスプレさせようって魂胆なんでしょうけど」
「ありゃ、バレてたか」
「そりゃあもう……どうせなら、こなたさんがコスプレしている所見てやりましょうか」
「お、良いねそれ。私も乗ったわキョウ」
ニシシ、と似たような笑みを浮かべるキョウとかがみに、こなたはあっけらかんと言う。
「どうぞどうぞ。というか今日来る? 丁度バイトだし」
「って、良いのかよ!」
「だって半分見られるのが仕事だし」
「コスプレ喫茶って言うんだよね?」
「うん。あ、一応来る前に連絡頂戴。混んでいる時あるから」
「そうするわ」
こうして、キョウたちはこなたのバイト先に遊びに行くこととなった。
「――おーいお前ら。下級生捕まえてナニしてんねやー。もう授業始まるでー」
『あっ!』
……その前に、急いで教室に帰らないといけないが。
二十四話に続く