タイトルから察せる人が居るかもしれないけど、とあるアニメを見ながら書いたらこうなった。
多分逆転したらこうなる。
「おはよー、今日も暑いわねー」
「……」
最近、気になることがある。
「夏休みだと、遅くまで寝ても大丈夫だから寝すぎちゃうよー」
「まったく、つかさったら~」
「……」
夏だからか、最近姉さんたちは髪を上げている。というよりも、ポニーテールだ。
かがみ姉さんはまだ分かる。背中に届くくらいに長いから。運動する時も最近はポニテにしている。
つかさ姉さんは謎だ。姉さんは俺と同じ長さくらいで、しなくてもそこまで変わらないと思う。
いや、どっちも似合っていて可愛いから良いんだけどね?
でもさ……。
「お、お邪魔しますつかささん。かがみさん。キョウさん」
「やふー! 今日もアツアツですなー」
「ゆきちゃん、こなちゃんこんにちはー」
「いらっしゃーい。上がって上がってー」
「……」
なんでこなたさんとみゆきさんもポニテにしているのだろうか?
普段髪を下ろしている彼女たちが、こうして結んでいるのを見るのは目の保養に……じゃなくて。
突然のポニテブームに、俺は少し戸惑っている。流行だろうか? ナイス。いや、ナイスじゃなくて。
思わず談笑している姉さんたちを凝視してしまう。……俺的に一番クリティカルなのはかがみ姉さんかな? じゃなくて。
「どうしたのかな~、キョウくん~?」
「いや、その……皆さん最近髪型が……」
「ん~?」
「女性の中で流行っているんですか?」
「う~ん? というか、私たちの間というか?」
「……なんでですか?」
「だって……キョウくんポニテに萌えているじゃん? だからキョウくんの反応に萌えよう……じゃなくて、キョウくんに萌えてもらおうと思って」
「……」
こなたさんの言葉を聞いて思ったのは「バレていたか……」という羞恥心と「ポニテありがとうございます!」という感謝の思いだった。
赤くなった顔を見られないように、俺は視線をこなたさんから逸らした。
第十四話 女子高生の非日常
「いや~、全滅でしたね~」
ここ最近はかがみん家に入り浸っている私は、先週に行った海のことをふと思い出して言った。
担任の黒井先生と従姉妹のゆい姉さんに車を出してもらって海に行った私たち。そこでお約束としてナンパを試みたんだけど……。
まぁ、こうして女三人で集まっているのが答えだよネ。
「別に私は気にしていないわよ。みゆきやつかさにいたっては声かけていないし。というか、あんたくらいよ。そこまで熱心なのは」
呆れた様子でそう呟くかがみん。
そうなんだよね~。発案者の私以外は遠くから見ているだけで、なんだか罰ゲームを受けているみたいだったよ……。夏の思い出にという粋な私の計らいをなんだと思っているのだろうか……。
でも、正直私もそこまで本気じゃなかったんだよねぇ。
なんというか、キョウくんを知った今じゃ、世の中の普通の男子では満足できないというか……。
キョウくん、恐ろしい子!?
「そう言えば、キョウくんは何処に?」
「友達の家で受験勉強中。なんでも、その友達も陵桜を受けるみたいで、一緒に入学できるように手伝っているんだってさ」
「ふ~ん……」
自分の部屋で勉強していると思ったんだけど……なるほどねぇ。
「なんか、物足りないなぁ」
「こなちゃんもそう思う? 私もそうなんだ~」
う~ん、多分つかさが思っているのと私が思っているのとは違うと思うけど……まっいっか。
それにしても、友達と勉強ねぇ……。
友達って、あの主人公ちゃんのことでしょ?
キョウくんはともかく、その主人公ちゃんは集中できるのだろうか……その娘、キョウくんのこと好きなんだろうし……。
というか、ヒーローと家で勉強とか何処のエロゲーだよ……ちっリア充め。
「むー……あっ、そうだ。ねぇ、つかさ」
「なぁに、こなちゃん?」
「キョウくんってトランクス派? ブリーフ派?」
『!?!?』
私の言葉に二人は驚いて、先に再起動したかがみが掴みかかって来た。
「遺言は聞かないわよ?」
「ちょちょちょちょちょい!? なんか色々と吹っ飛ばしてない!? 怒りゲージとかそういうの!!」
「心配しないで。詳しく聞かないでも、私の拳はアンタを叩きのめせって言っているから……!」
「このブラコン! ちょっとは話を聞いてよ!」
「お、お姉ちゃん落ち着いてよ。オシオキは話の後でも良いでしょ?」
オシオキは確定なんですねつかささん……。
でも、まぁ私も私か。いきなりあんなこと言えば、ああいう反応するのも仕方ないか。
とりあえず私は、何故このようなことを言ったか。その核心とも言える話をする。
「コスプレ?」
「そうそう。丁度キョウくんに似合うヤツを見つけたからね。ああ、安心して。流石にマニアックなのじゃないから。ちょっと派手な服に見えるくらいだから。だからその拳を収めくださいかがみ様」
「でもこなちゃん。その話、私たち聞いていないよ?」
あれ? てっきりキョウくん話していると思ったんだけど……。
う~ん。恥ずかしかったのか、それとも私の身を案じて黙っていたのか……。
「つかさ判定は?」
「ギルティ」
「だから落ち着いて! まったく、これだからブラコンは――あいてッ!?」
「次はデコピンじゃなくて、拳骨だからな」
いやいやいや!? 今凄い音したよ!? バチコンッ! って。まるで漫画みたいな!
「いてて……で、でも二人もオシャレしているキョウくんを見たいでしょ? キョウくん、そういうの無頓着な所があるし……」
「それは……」
「そうだけど……」
ふっふっふ。起爆する原因はキョウくんだけど、沈静するのもキョウくんなんだよね。
この路線で攻めれば、二人は仲間になる。その読みは当たっていたようだ。
「でも、それでアイツのパ、パンツが居るっていうのは意味分かんないわ」
「それはアレだよ。どっちかによってチラリズムのさせ方を考えないと――」
「つかさ、確か倉庫にスコップあったわよね? 埋めるわよ?」
「分かったよお姉ちゃん」
「こわい、こわいよ二人とも!」
なんだかこのままだとガチでやばそうなので、私はあわててポケットから
幸か不幸か、取り出したのは私の婿で、それをビシッと二人に突き出す。
暗黒オーラを纏っていた二人は、私の持っている写真を見ると顔を真っ赤にさせて目を逸らす。しかし、チラチラと写真を盗み見ており、興味津々だということは一目瞭然だ。流石は私の婿。
「な、なんてもん出してんのよアンタは……!」
「アウアウアウ……!」
「ふっふっふ。とか何とか言って、体は正直ですな~お二人とも?」
私が突き出したのは、とある神絵師が描いた『鏡音レンVerギリギリ水着』。
R18ではないとはいえ、それでもエロいものはエロい。ただ
「最終的には、このキャラのコスプレしてもらいます」
「おま!?」
「あ、安心して。流石にこの絵じゃなくてこっちの方ね」
元々この水着姿はかがみんたちを止めるための切り札だったし。
というか流石の私もそこまでの度胸はないよ。キョウくんに嫌われたくないしね。
……一瞬キョウくんなら、してくれそうと思ったけど黙っておこう。
とにかく、私は普段の衣装を着ているレンくんの絵を二人に見せる。
「う……こっちはこっちで露出多くない? 半袖半ズボンだし……」
「まぁ、本人が嫌がったらやらないよ。コスプレは本人が楽しんでこそだから」
「でも、キョウちゃんもよくオッケーしたよね……」
まぁ、本人は仕方なくって感じだったけど……まっいっか!
それに、一応見本のキャラを見せたら「これなら、まぁ……」と納得してたし。
私はそのキャラの写真を二人に見せる。
「まずはこういうのから始める予定だけどね」
「……まぁ、これなら」
その写真を見たかがみは、渋々と言った感じで呟いた。
傍目から見たら何てことない制服で、しかもかがみの読んでいるラノベのキャラだからだろうなー。多分かがみも見たいと思っているはず。
つかさも「さっきのよりは恥ずかしくないかな?」と呟いている。
でも、私的にはこの団長キャラよりも宇宙人っ子の方が似合っていると思うんだけどなー。
……ほら、キョウくんって……し、身長ないし……。
「でもさ、こなた」
「なに?」
「ますます、アンタの最初の発言の意味が分からないんだけど?」
「あ、やっぱり?」
「……」
「……」
この後、滅茶苦茶オシオキされた。
☆
「で、でもさ。正直二人とも知りたくない? 男子のパンツとか、服とか」
「まだ言うのか。アンタは」
頬に感じる痛みに手を当てながら私はそう言った。
かがみは呆れたと言わんばかりにため息を吐く。私のほっぺを引っ張ったからか溜飲が下がっているようだ。
「私、かがみんたちにみたいに兄とか弟が居ないんだよ……お父さんは居るけど。
だからね、そういうことに興味持つのっておかしいことなのかな……?」
「こなちゃん……」
「……いや、そんなシリアス口調で言っても意味ないから。つかさも流されんな」
「ぶーっ」
不満を込めてそう言ってみるも、かがみに「あ゛ぁ゛?」と凄まれたのでいい加減諦めることにした。
ちょっと調子に乗りすぎたし……でもチラリズムのことを考えたら知っておきたいんだよね……レンきゅんのあの恰好的に。
……キョウくんなら、聞いてたら普通に答えそうって思ったけど流石に無いか。……無いよね?
というか、普通の男子だったら私と初めて会った時のあのToLOVEる的な事件で、軽蔑な目線を向けつつ避けるはずなんだよなぁ……。
それに、キョウくんが特別っていうこともあるんだろうけど本当にかがみ達の姉弟仲が良い。
普通この年頃の男子って、姉や妹、母に対して反抗的な態度を取るものだ。服を一緒に洗うなーとか、先に風呂入るなとか、無視したりとか。
クラスの男子たちもそんな感じで、時々そのような会話が聞こえちゃうんだよね。
でも、キョウくんからはそういう感じはしない。
本当、羨ましいなぁ……。
(――もし、キョウくんが弟だったら、どうだろう?)
ふと、考える。少し前の私だったら、三次元の男なんてクソ喰らえとか思っていたに違いない。でも、今は
まず、オタク趣味に寛容なのは絶対だよね。コミケとかにも一緒に来てくれたりして、物凄いコスプレとかもしてくれそう。あと、ゲームとか結構しているから私と対戦ゲームしたり……ボーイゲーをしている私の隣で「これって面白いの?」って少し呆れながら聞いてきたりして……。
あとあと、面倒見が良いから私の部屋を掃除してくれたりして「ちゃんと綺麗にしてよ!」ってちょっと怒るけど、私が「じゃあしなくて良いよ」って言ったら、ぐぬぬって顔をして仕方なさそうに掃除をしてくれる。
それに、料理とかもしているから毎日弁当作ってくれそう。そして毎回栄養バランスを考えていて、良いことがあったら私の好物を入れてくれたり……。
そう言えば、つかさはいつも起こしてもらっているらしいから、もしかしたら私も――。
「――アンタ、何を考えているの?」
「――ハッ!? いかんいかん。危ないところまで行っていた気がする」
「いや、色々と手遅れだと思うけど……涎凄いぞ」
おっとっと。口元を拭いつつ私はキョウくんに戦慄した。
「いや、私にキョウくんみたいな弟が居たらもっとダメになりそうだなーっと」
「……とりあえず、キョウはアンタには渡さないわよ?」
「かがみん、それこの前つかさがもうやった」
「え゛?」
「お姉ちゃん。その反応はちょっと酷くない?」
まったく、流石は双子というかなんというか……。
こりゃあ、キョウくんを婿にする女の子は大変そうだぁ。
……。
「ねぇ、二人とも」
「どうしたの、こなちゃん?」
「いやさ、二人はどういう
『え? う~~~ん…………』
「いや、悩みすぎ」
どんだけ弟を婿に出したくないんだこのブラコンどもは。
「というかこの前キョウくんが認めた相手だったら良い、みたいなこと言ってなかった?」
しかも、それを言ったのはつかさの方だ。
終始ベッタリな彼女がそう言うということは、自然とかがみもそう思っているのかもしれない。
……キョウくんの認める相手と言われて思い出すのは、あの主人公ちゃんだ。遠目から視ても綺麗な子で、キョウくんのことが好きなのが分かるけど……なんでだろう、ちょっと胸のところがチクりとした。虫にでも刺されたのかな。
ともかく、私は二人がどう思っているのか気になった。だから聞いてみたんだけど……。
「うぅ……分かってはいるけど、いざその時が来るとどうなるんだろう……」
「理解はしているけど、納得はできないわね……」
「まぁ、そんなことだろうと思ったよ」
人の家のことだから、あまり踏み込んだことは言えないけど……多分その時が来たら二人はちゃんと送ると思うけどね。だって、二人ともキョウくんのことを好きなのだから。
「で、実際のところどうなの?」
「どうって言われても……」
「本当にあの子が認めた相手なら良いと思っているのよ。変わっているけど、その辺はしっかりしているから」
「じゃあさ。逆にキョウくんはどんな女の子を選ぶと思う?」
世の女の子にとって、キョウくんのような男の子は優良物件も良いところ。優しいし差別しない。その上無防備だから色んな女の子が彼の元に集ってくる。でも私って、キョウくんの好みが分からないんだよねぇ。チャットとかしていて分かったのは、世間の男子とは少し違うということくらいだ。
本人曰く、そういう付き合いをするつもりは今の所は無いと言っていたけど……将来ほぼ確実に結婚する。その時、キョウくんの隣立つ女の子は彼が認めた人なんだろうけど……それがどんな人なのか、気になる。
かがみ達も私と同じ気持ちなのか、腕を組んで想像する。
「う~ん……私は大人しい子かな?」
「つかさ、その心は?」
「えっとね。キョウくんって面倒見が良いところがあるし優しいから……。
お嫁さんをグイグイと引っ張っていくと思うんだ~」
「なるほどなるほど」
私がつかさの意見に納得していると、今度はかがみが言った。
「私は逆に引っ張っていく子かな? あの子受け身なところがあるから、キョウにとってそういうタイプが良いと思うの。それに、いざという時に守ってあげることができる強さが欲しいわね」
「ふむふむ」
まぁ、キョウくんてちょっとトラブル体質だしね~。
確か、痴女に遭ったらしいし。それがきっかけでみゆきさんと知り合ったとか……。
「それにしても……」
私は意見を聞いて思ったことがある。
大人しい子が良いと言ったつかさ。引っ張っていく子が良いと言ったかがみ。
これは、なんというか……無意識なんだろうか? ヨスガるのだけは回避して欲しいところだぁ。
「でも結局なんだかんだ言って、キョウくんはどんな子とも相性良さそうだ」
「まぁ、そうね」
「あとポニテが似合っていたら結構攻略できそう!」
キョウくん、ポニテ萌えだし。
というかポニテキョウくんを見たい件について。
「確かに、あの子ポニテにしていたらソワソワしていたわね」
「可愛かったよねー。あんなキョウちゃん久しぶりだったよー」
でも本人は髪を伸ばすつもりないって言うし……。
あーあー。かがみや私くらいまで伸ばしてくれたら……。
――ん? 待てよ。
「……」
「? どうしたのよ、人の顔を見て」
「いや、かがみってキョウくんと顔立ち似ているよね? キョウくんが中性的というのもあるけど……」
「まぁ、そうね。昔からよく言われるわ」
そこで思い出すのはかがみんのポニテ姿。初めて見た時、私は男みたいで萌えると言った。からかい半分で言っていたけど、実際のところ本気で言っていたりする。
もう少しいじったり、男キャラの服を着せてみたら金取れるんじゃね? と思う。
「そこで私は考えました。キョウくんの服を着たかがみんがポニテにしたら、それはつまりポニテにしたキョウくんを疑似的に再現できるのではないのかと」
「――!?」
「ちょ、アンタ何言っているのよ!? つかさも『その手があったか」みたいな顔をしない!!」
私の言葉に強く否定するかがみん。でもね、口ではなんだかんだ言っても顔までは誤魔化せていないよ? 真っ赤にさせて可愛いなーもう。
つかさも乗り気みたいだし、ここはもうひと押しすればイケるかも?
「でも、かがみんも見てみたくない? ポニテキョウくん!」
「そうだよ、お姉ちゃん!」
「そんなこと言っても……結局私なんだし……それに、いくら弟のとはいえ、男の人の服を着るのは抵抗があるというか……」
「大丈夫大丈夫。一人で恥ずかしいなら、つかさも着てくれるし」
「そうだよ、おねぇ……ええ!?」
「あっつ、なんだったら私も一緒に着ても良いよ? コスプレで散々着てるし」
「いや、でも……うぅうう!!」
私の説得に、かがみんは揺れた。
自分の中に潜む欲望と理性に。
頭を抱えて悩みに悩む彼女に、しかし私は容赦しない。
つかさを巻き込んで言葉巧みに、彼女を攻略せんと攻め続け――。
☆
「……」
「ほうほう……」
目の前には、顔を真っ赤にして羞恥に耐えるかがみの姿が。髪型はポニーテールにし、中学の制服を着ている。オーダー全てをコンプリートしていて、それを見た私とつかさは……とりあえず写真を撮ることにした。
当然、かがみんは怒りだし、私たちはキョウくんの部屋から逃亡。居間に逃げ込む。しかしすぐにかがみんに捕まって、顔を真っ赤にした状態で詰め寄られた。
「アンタたち何してんのよ!?」
「え? だってキョウちゃんを説得するために……」
「だからってマジで撮る奴がいるか!?」
「でも、かがみも同意してこうやって着たんでしょ?」
「うん、そうね。でも、こうしてると分かったことがあるのよ。死ぬほど恥ずかしい」
何を今更。
かがみは携帯を奪い返して写真のデータを消すけど……すでにパソコンに送信済みだから無駄なんだよね~。
そのことを伝えると、かがみは絶望してその場に崩れ落ちた。
「終わった……何もかも……というか、二人とも着替えていないし……」
「だって、恥ずかしかったから……」
「つかさの裏切り者ー!」
う~ん。やっぱりかがみはキョウくん関係になるとポンコツになるよね。
「でも、そこまでおかしくないよ。当初の目標は果たせていないけど」
やっぱり性の違いは超えられないのか、どう見ても男装しているかがみんとしか思えない。だからこそ、つかさが反応していないんだろうけど……。
でも、それとは別に思うことがある。
「焚きつけた私が言うのもなんだけど、意外と似合っているよ。ねぇ、つかさ?」
「え? うーん……言われてみれば確かに……」
「ほら、双子の妹からのお墨付きだよ? 恥ずかしいと思うから恥ずかしいんだよ。堂々としていれば良いんだって」
「……本当に?」
あ、これチョロイわ。
「うん、イケるイケる! 心なしか、男気が出ているように見えるよ」
「ちょ、ちょっと。変におだてるのやめてよね」
「いやいやいや。そういうお店でバイトしている私から見ても、お金取れるレベルだよ! 需要あるよ、これ!」
「そ、そうかな?」
先ほどまで落ち込んでいたのが嘘のように、私の話に耳を傾け、次第に喰いついてくるかがみん。
これは面白い。
ニヤケそうになる頬を抑えながら、私はさらにかがみんを煽る。
「そうだよ、イケるって! ちょっとポーズしてみてよ」
「い、いやだよ……絶対笑うじゃんっ」
「そんなことないよっ。ね、ねぇ、つかさ?」
「え? いや、そのえっと……」
「ほら、かがみんポーズ! ポーズ! ポーズ!」
「も、もうっ! し、仕方ないわねぇ」
頬を赤くさせて照れながらもかがみんはその場でポーズをとる。
グラビア写真集の男優みたいな、ありきたりなポーズ。
結構ノリノリなかがみんに私はテンションを上げた。
「良いよ良いよかがみん! まるで男の子みたいだよ!」
「あ、あの……こなちゃん、もうその辺に……」
「でもね、かがみん。まだ足りないと思うんだよ……」
「聞いてよ~!」
そう、見てくれは完全に男物だけど……肝心の部分はそうではないっ!
己の保身に走ったかがみんは、それを付けることに躊躇している!
「アンタ……まさか!?」
「そう――これだよ!」
そう言って私が取り出したのは、キョウくんのトランクスとサポーターだった。
「いや、ちょっと何してるのこなちゃん!!」
「大丈夫――等価交換してきたから」
「本当に何しているの!? いくらキョウちゃんでも怒る時は怒るんだよ!?」
「なるほど――つまり、真理ね」
「お姉ちゃん頭の中持っていかれていない!?」
「まぁ、流石に持ってきていないよ。通販で買ったヤツ」
ツッコミを放棄したかがみに代わって、つかさがツッコミを入れるけど止まらない!
だって! 女子高生は!
かがみも無意識のうちに同意しているのか、それとも羞恥で舞い上がっているのか私に同意して嬉々として上着とシャツを脱いでブラジャーを取る。そして私の通販で買って来たサポーターを手に取り――。
「ただいまー。土産にアイス買って――きた……けど……」
『……』
そこで障子が開き、キョウくんが入ってきた。いつの間にか帰ってきたのか、手にはアイスが入ったビニール袋があった。先ほどの言葉から察するに、かがみん達のために買ってきたみたいで、姉想いなところが窺える。
しかし、それは今重要ではない。
夏だというのに、現在居間は凍り付いている。私たちは、呆然とこちらを見るキョウくんを見て、キョウくんは彼の服ではしゃいでいる私たちを見ている。
永遠と錯覚しそうなほどの時間、痛い沈黙が場を包み込み、それを解いたのはキョウくんだった。
「――失礼しました」
一言そう言って、障子を閉めてその場を立ち去ろうとして――一陣の風が私の頬を撫でた。
その風――かがみは閉まろうとしていた障子を力強く掴み、必死に自分の弟に向かって弁明しだした。
「キョウ、ちょっと待って。本当に待って」
「大丈夫。大丈夫だよかがみ姉さん。俺、分かっているから。だから、ネ? 何も見ていないから、ネ?」
「待って、待って……待って待って待って!」
「今日は暑いからね。仕方ないよ。ほら、俺って受験生だし。かがみ姉さんはしっかりしているからご飯はしっかりと食べないと」
「お願い聞いて! これはこなたが!!」
普段しっかりとしている人は、予想外なことに遭遇するとパニックに陥りやすいと聞いたことがある。
私の場合は、私以上にパニックになっている人が居るから比較的に冷静に居られる。
でも、安心はしていられない。
だって、今回の騒動は明らかに私が主犯で、落ち着いたらかがみからの制裁が待っているのは明らか。
「……ねぇ、つかさ」
「……なに、こなちゃん?」
「……暑さにやられておかしくなったって言ったら信じてくれるかな?」
「……多分、無理じゃないかなー?」
――ドン引きしているキョウくんの目って、あそこまでダメージがあるんだ……。
調子に乗っていた自分に反省しつつ、かがみの弁明が通るまでその場で正座しておいた。
(さ、さすがに怒るよね……?)
内心、この後のことに怯えながら……。
今回はこなたたちが中心。
タイトルから察せる人が居るかもしれないけど、とあるアニメを見ながら書いたらこうなった。
多分逆転したらこうなる。
キャラ崩壊が酷いけど、まっいっか(思考放棄)
叩かれる前にタグつけしとこ。
追記
こなたがキョウのパンツを持って来た〜というところを削除しました。やり過ぎと指摘されたので修正。