あべ☆こべ   作:カンさん

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らきすたを知らない、アニメのみの方がいらっしゃるようなのでここで言及させてもらいます。
すでに登場している若瀬いずみは原作キャラです。出身中学はねつ造していますが……。
もし知らない方は原作コミック7,8巻以降を買うか画像検索をしてくだされば容姿を知ることができます。説明不足ですみません。
それと今回若瀬さんの出番はありません。

若瀬「Σ(´・ω・`)!?」


第二部・中学三年生編
第十話 春風とともに


「……う~ん」

「どうしたの、つかさ姉さん」

 

 こなたさんから借りた漫画を読んでいたつかさ姉さんが、ふと長い息を吐いた。ため息とはまた別のものだと思うけど……どうしたんだろう?

 パタンッと閉じられた漫画の表紙には見覚えがあり、確か日常物だった気がする。読んでいて共感することはあれど、泣いたり怒ったりするものではない。

 だから気になって聞いてみた。

 

「えっとね、こういう漫画って季節ネタとか色々とゴチャゴチャしているでしょ?」

「そうだね。まぁ、ある程度のストーリー性はあると思うけど」

 

 たいていこういうのってサザエさん方式みたいに同じ時間をグルグル回ったりするけど……。

 

「でも、その辺を無視して進めたら続き書けないか終わると思うんだよねぇ」

「う、うん。それは分かるんだけど……」

 

 どうやら俺の予想したこととは別のことが気になるらしい。

 ほんわかと柔らかい笑みを浮かべながらつかさ姉さんは言った。

 

「時々ね、一気に時間が飛んでいる時があるなーって。その間のイベントを無視して。ハロウィンとか節分とか。それを見て何でだろうー? って……」

「あー……」

 

 まぁ、色々と理由はあると思う。雑誌に載せる時には過ぎていたりとか、編集者に頼まれて書いた結果飛び飛びだったり。

 でも俺が一番思うのは――。

 

「ほら、あれじゃない? やりたいことを先々にやっていたらネタが尽きるとか」

「そ、そうかもしれないね」

「もしくは身近なイベントだけに書きづらいとか。だからそれを誤魔化すために飛ばしたり――と」

「ま、漫画家って結構大変なんだね」

 

 俺の理論につかさ姉さんは苦笑するしかなかった。

 柊キョウ、中学三年生。最初は戸惑っていたこの世界の作品の見方が変わってきました。

 

 

第十話 春風とともに

 

 

「ただいまー!」

「お帰りなさい。今日は早いねー」

「うん。委員会の仕事は昨日のうちに終わらせたから」

 

 帰宅して父さんにただいまと言いつつ、俺は洗面所で念入りに手洗いとうがいをする。そしてすぐに途中コンビニで買ったバニラ味のアイスを冷凍庫に入れると二階へと上がる。そして自室に鞄を置くとすぐに隣の部屋――かがみ姉さんの部屋へと向かう。

 

「失礼しまーす……」

 

 なるべく音を立てないように部屋に入り、姉さんのベッドに近寄って覗き見る。

 本来なら此処の部屋の主は今頃学校に行っているはずだが、目の前にはその主であるかがみ姉さんが眠っている。しかし頬は赤く染め上がり、額には冷えピタが張り付けてある。心なしか苦しそうで、今朝からあまり変わっていないことに俺の胸中に『心配』の二文字が浮かび上がる。

 そう、かがみ姉さんは風邪を引いている。最近流行りのインフルエンザでは無いようだがやはり心配だ。だからこうやってなるべく早く帰ってきたのだが……。

 

「かがみ姉さんだからちゃんとご飯も薬も摂っていると思うけど……」

 

 心配だ。

 とりあえず温くなっている冷えピタを新しいのに入れ替える。そっと姉さんの額に触れて慎重に剥がそうとするも……。

 

「……きょう?」

「あ、起こしちゃった?」

 

 剥がされる時の感覚で目が覚めたのか、かがみ姉さんは薄っすらと目を開いて俺の存在に気が付いた。

 起こしたことを謝りつつも俺はそのまま冷えピタを剥がして新しいのに入れ替える。気持ちいいのか目を閉じて穏やかな表情を浮かべるかがみ姉さんだが、何処となく不満な空気が漂ってくる。

 

「うつったら大変だから看病は良いっていつも言っているでしょ……」

「だったら俺も毎回こう言うよ。邪魔にならない程度には看病するから」

 

 それに、俺のほうが父さんよりも体が強いし。もしうつるなら俺のほうが良い。どうせ風邪ひいてもすぐに治る。

 俺はアイスと一緒に買ってきた某スポーツ飲料を取り出す。

 

「結構汗掻いてたし、これ飲みなよ」

「あ、ありがとう……」

「アイスも買ってきたから、夕飯の後に食べてね」

「……食欲無いからアイスだけが良い」

「ダメだよ。ちゃんと食べなきゃ」

「……むー」

 

 風邪を引いているからか、珍しく姉さんが我儘を言う。普段から『しっかり者の姉』というのに拘っているから、それが取り払われたらだいたいこうなる。まだ小さい頃は喧嘩して泣いたらこんな感じになっていたっけ。チビリチビリとスポーツ飲料を飲む姉さんを見ながら昔を懐かしんでいると、俺はあることに気が付いた。

 

「姉さん寒くない? パジャマが汗でぐっしょりだけど……」

 

 まだ顔が赤いから体が熱いんだろう。そりゃあ汗も掻くよなー。

 汗を掻いたほうが治るのが早いから良い傾向なんだろうけど。このままじゃあ体が冷えてさらに具合が悪くなる。

 

「水とタオル持ってくるね。それで体拭いて」

「……だるい。きょうがやって」

「ははは、それは流石に……」

「……ダメ?」

 

 苦笑しながら俺が断ると、かがみ姉さんの声に不安と不満の声が宿る。

 頬を赤くした状態でこちらを見上げた姉さんは自然と上目遣いになり、切れ目の瞳が感情で濡れる。

 

「さっき何でもするって言ったじゃない……」

「いや、何でもとは言っていないし……」

「つかさだったらやってあげる癖に……」

「しないしない」

「そうやって誤魔化して。いっつもつかさを甘やかして私には……」

 

 熱で浮かされているとはいえ、かなり甘えん坊になりましたねー。

 完治した後に悶えて後悔するのは自分なのに。そして毎回俺に「絶対に誰にも言わないでよ!?」って顔真っ赤にして言ってくるんだから……。

 それでも止めないってことは、つかさ姉さんを羨ましがっているってことかな……。

 

 しかしどうしよう。今のかがみ姉さんを想って言う通りにするか、後の姉さんを想って拒否するか……。

 

「……」

「……」

 

 ――甘いなぁ、俺。

 

 

「あっ、キョウちゃん帰ってたんだ」

「あ、お帰りなさい。つかさ姉さん」

 

 先ほどよりも穏やかな表情で寝ているかがみ姉さんを見ていると、扉が開いてつかさ姉さんが入ってきた。「調子はどう?」と聞いてきたので「今寝たところ」と答えて再びかがみ姉さんの方を見る。俺の隣まで来たつかさ姉さんも覗き込んで確認すると、ホッと一息吐いた。

 やっぱり双子だからか、つかさ姉さんにとってかがみ姉さんは他の家族よりも特別なんだろうな。今朝も大分心配していて学校休むって言っていたし。もちろんいのり姉さんやまつり姉さんが風邪引いても心配するだろうけど。おかげで今日は遅刻ギリギリで家を出たし。

 

「今日ね、こなちゃん来ているんだ」

「そうなんだ。でも今寝たからなー」

「タイミング悪かったね」

「とりあえず、俺も下に行こうかな」

 

 そう言うと俺の手を握り締めていたかがみ姉さんの手をほどき部屋を後にする。

 十五分以上握られていたからか、未だに感触が残っている。

 

「風邪を引いている時のお姉ちゃんって甘えん坊さんだね」

「つかさ姉さんみたいに?」

「あ、なまいき~」

 

 寝ているかがみ姉さんを起こさない程度の声で話し、俺たちは居間へと行く。

 そこには父さんに出されたのか、オレンジジュースを飲んで寛いでいるこなたさんが居た。

 

「こんにちは、こなたさん。お見舞いに来て下さってありがとうございます」

「いやいや~。でもその様子だとかがみ寝ているの?」

「つい先ほど」

 

 俺たちもテーブルに着く。

 学校からそのまま来たのかこなたさんは陵桜の制服のままだ。

 

「かがみ姉さんには起きたら伝えておきますね。何か伝言とかあります?」

「う~ん。いや、特にないよ。お大事にって言っておいて」

「はい、分かりました」

(宿題云々はもう少し元気になってから言うか)

 

 せっかく来てもらったので、少しの間談笑することになった。

 みゆきさんは委員会の仕事でどうしても来れなく、申し訳なさそうにしていたそうだ。明日改めて伺うとのこと。

 

「そう言えばさ、キョウくんはチョココロネの頭ってどっちだと思う? 太い方? 細い方?」

「唐突ですね。……うーん、細い方ですかね?」

「あ、私と同じだ」

「へー。でもなんで?」

 

 うーん。何でって言われてもなぁ。

 そう聞かれてどっちかな? って考えたら自然と細い方だと思っただけで深い理由は無いし……そう考えると何でそう思ったんだろう?

 うーん……。

 

「あれですかね、人間の頭って胴体よりも小さいから、みたいな……それと口に入れやすいですし」

「なるほど~。そう考えると細い方かな? って思えるね」

 

 ちなみにこなたさんは太い方が頭だと思っていたらしい。理由は芋虫みたい……だと。昼食中に言うのはどうかと思うけど。

 

「つかさ姉さんは?」

「私も細い方だよ。だって貝みたいだし」

「あー、なるほど」

 

 そっちの方がイメージ良いね。

 でもさ……。

 

「その理論でいくと、太い方が頭になる気がするけど……」

「え? ……あー」

 

 まぁ、人それぞれってことで。

 

「というか、こなたさんって昼は菓子パンなんですか? 料理できるからてっきり弁当作っているのかと」

「うん。高校は入り初めの頃は作っていたよ。でもさ……」

 

 そっと視線を俺たちから外し、こなたさんは頬を掻きながら言った。

 

「徹夜でゲームとかしてたらさ、朝起きてご飯作る時間無くて……」

「こなちゃん時々遅刻すれすれで来るもんね」

 

 こなたさんらしい理由に俺とつかさ姉さんは苦笑してしまった。

 確か、かがみ姉さんも言っていたっけ。あいつは時間を守らない、と。

 うちに来て遊ぶ時はそうでもないのに。

 自分でも思うところがあるのか、こなたさんは話題の矛先を俺へと向けた。

 

「キョウくんは弁当作っているんだっけ?」

「はい。つかさ姉さんと交代しながらですけど」

「キョウちゃんのお弁当、私好きだよー。気持ちが込めてあるっていうか、一生懸命さが凄く伝わってきて」

 

 ……そりゃあ、毎回弁当美味しかったよって満面の笑顔で言われたら、ね。

 テキトーな物を出せなくなったというか。栄養バランスを考えてしまうというか。

 

「へぇ……つかさとかがみは羨ましいねぇ。こんな可愛い弟が弁当作ってくれるなんて」

「えへへ……」

「良いなー。私もキョウくんみたいな弟が欲しかったなー」

「流石のこなちゃんでもダメだよ。キョウくんは私たちの弟だもん」

「あの、つかささん……微笑みから冷笑に一瞬で変えるのはやめてくれませんか?」

 

 うん、あれは怖いよね。

 つかさ姉さん昔から大人しい性格で、他の子に強く出られないからよくからかわれたりしていたけど、標的が俺になった瞬間に覚醒していじめっ子を撃退していたからなー。おかげでイジメられていた俺が仲裁するという良く分からない状態に……。

 とりあえず助け舟出すか。

 

「ははは……そうなったら想像できませんけど、俺はつかさ姉さんの弟で良かったって思っていますよ?」

「キ、キョウちゃん……!」

 

 俺の言葉を聞いたつかさ姉さんは感激して瞳を潤ませる。さっきの冷たい空気は霧散し、幸せオーラが場を包み込む。

 機嫌が直ってホッとしていると、こなたさんは俺たちを凝視する。

 何かを考えているようだが……表情からは読めない。

 

「いやー、あれだね。キョウくんはさ」

 

 そう前置きをして、にんまりと笑みを浮かべると。

 

「なんだかんだでシスコンだよね!」

「……あー、否定できませんね」

「ありゃ? そこは顔を真っ赤にさせて否定するところじゃないの?」

 

 そう言われてもなー。ぶっちゃけ俺でも自覚していることだし、今さら言われても……みたいな。前世で兄弟が居なかったというのもあるけど、姉さんたちが『良い人』だから頼まれ事を断れないんだよな。身内贔屓抜いても可愛いし。

 もしこれがものぐさな姉とかだったら、俺もここまで付きっ切りにならなかっただろう。

 つまり……。

 

「俺も姉さんたちのこと好きですから」

「おおう……ここまで真っすぐだとこっちが照れるね。ツンデレ派の私が揺らぐほどの破壊力……。

 ――ねえ、つかさ。一日だけ交代してくれない? チョココロネあげるから」

「ダメ」

 

 

 

 

「みたいなことがあったよ」

「あいつらしいわね」

 

 目を覚ましたかがみ姉さんは大分楽になったのか、開口一番に「お腹すいた」と夕飯を強請ってきた。

 俺はさっさと消化の良いおかゆを作って食べさせている。良くなったとは言えまだ熱があるしね。

 で、食べさせながらこなたさんが来た事を伝え、さっきの事を話した。それを聞いたかがみ姉さんは呆れながらも何処か嬉しそうだ。なんだかんだお見舞いに来てくれた事を喜んでいるのだろう。 

 

「ふーふー……はい、あーん」

「あー、む。……んぐっ」

「美味しい? 一応味付けは姉さん好みにしておいたけど」

「うん……でもさ」

 

 病人向けに作ったから味が薄いかな? と思っていたけど丁度良かったようだ。良かった良かった。

 そう思っていたら、ふとかがみ姉さんが呟いた。

 神妙な顔つきでジッと虚空を見つめている。気になった俺は次の姉さんの言葉に耳を傾ける。

 

「正直、キョウとここまで仲良くなれるってあの時には思えなかったわ」

「……」

「だって、私は……つかさと私は――」

「……その事はもう良いでしょ」

 

 風邪を引いているからか、今の姉さんは気が弱くなっている。

 昔を……()()()()()を思い出しているようだった。

 

「でも……」

「今こうして仲良くしているんだから、それで良いじゃない。それに姉さんが言ったじゃないか『アンタは私たちの弟で、私たちはアンタのお姉ちゃんだ!』って……」

「……」

「……今日はもう寝なよ」

 

 いつの間にか、おかゆは全部無くなっていた。

 これだけ食欲があれば明日には熱も引いているだろう。

 

「じゃあ、俺はこれ片づけてくる――」

 

 だから薬飲んで寝ていて。そう言って小鍋を持って立ち上がろうとするも、動けなかった。

 何時ぞやのときみたいに袖を摘ままれていたからだ。

 

「……寝るまで此処に居て。じゃないと、あの時の夢を見るかもしれないから……」

「……分かった」

 

 俺は小鍋を脇に置くと椅子に座り、夕方にやったようにかがみ姉さんの手を握り締めた。彼女が心やすらかに眠れるまで……。

 

 

 

 

「うん、熱は引いたみたいだね。この調子なら月曜日には学校に行けるよ」

「……」

「そう言えば、昨日つかさ姉さんたちから聞いたんだけど、今日みゆきさんがお見舞いに来るってさ」

「……」

「さっきメールで様子を伺ってきてたけど、どうする?」

「……」

「あのさ、姉さん」

「なにもいうな~!!」

 

 昨夜のシリアスシーンは何処に行ったのか、かがみ姉さんは(おそらく)顔を真っ赤にさせて亀と化していた。布団を頭から被り丸まって「あー」だとか「うー」だとか言葉にならないうめき声を上げている。

 俺もさ、気まずいよ? もしこれが漫画やアニメだったら続きがどんな展開だろうと一回区切る場面だったさ。でもそれは所詮アニメとかの話であって……。

 当然姉弟だから家で顔を合わせるし、看病しているから様子を見に来るさ。

 それが分かっているのに、なんで姉さんは毎回ああして甘えるのかねぇ。悶絶するくらいなら止めればいいのに。

 

「だって仕方ないじゃない……熱があったんだし」

「そりゃあそうだろうけどさ……」

「う~……ぜ、絶対に他の人に言うなよ? 特にこなたには!?」

「それでも止めさせろって言わない辺り、かがみ姉さんもつかさ姉さんのこと言えないよね」

「う、うるさい!」

 

 まぁ、これなら大丈夫だろ。

 俺はメールでみゆきさんに【大丈夫です】と送った。

 

 

 

 

「昨日はすみません。都合がつかなくて……」

「いいよいいよ。来てもらっただけでも有り難いし」

 

 色々な意味で落ち着いたかがみ姉さんの元に、みゆきさんがお見舞いにやって来た。

 持って来た鞄には委員会の資料があり、相変わらず気遣いのできる人だと思う。

 さらにお土産に幾つかの果物も持ってきており、かがみ姉さんも素直に喜びを表していた。

 

「それにしても、姉さんたちって友達に恵まれているね。昨日のこなたさん然り、みゆきさん然り」

「まぁ、そうね。一緒に居て楽しいし」

「そ、そんな……でも私もかがみさん達とお友達になれて嬉しいです」

 

 褒められて頬を染めながらも、こちらのフォローを忘れないのは流石というべきか。というか聖人君子? かがみ姉さんも似たようなことを考えている顔をしている。

 

「みゆきさんって欠点とか苦手な事無いですよね。凄い今さらですけど」

「いえ、私はただ要領良くしているだけで……。それに、私にもそういう所はありますよ?」

「そうなんですか?」

「ええ。私、よく考え事をするので注意力散漫になりがちで……バスを乗り過ごしたり、自分で自分の足を引っかけて転んでしまったり……」

 

 先日泉さんたちにも話したのですが、とみゆきさんは恥ずかしそうにそう言った。

 しかし、みゆきさんにもそういう面があるのか。意外といえば意外だけど、言われてみれば納得もできるというか。こう、イメージ的に。

 というか、こなたさんだったら『萌え要素』って言いそうだな。いや、でも男女逆転しているからどうなんだ?

 で、実際に聞いてみたところ……。

 

『男だったらキョウくん以上の色物だね!』

 

 と言っていたらしい。……ってそれって俺のことも暗に色物扱いしていないか?

 

「しかし、そういうキョウさんも欠点が無さそうですが……」

「いやいや、みゆき。こいつには致命的な欠点があるわよ?」

 

 フォローなのか素で言っているのか、どちらか分からないけどみゆきさんが嬉しいことを言ってくれた

 しかし、調子を取り戻したのかすかさずかがみ姉さんがみゆきさんの言葉を否定する。

 

「こいつは男としての自覚が決定的に欠如しているのよ? みゆきと初めて会ったのも電車でのあの件についてじゃない?」

「あ……」

 

 ……流石に擁護できないのか、みゆきさんは言葉を詰まらせた。

 そうだよねー。俺って男としての自覚が無いよねー……。

 否定できない自分が嫌だ。

 

「し、しかしキョウさんはそれを補って余りあるほどの魅力が……」

「……」

「……ごめんなさい、キョウさん。こればかりはかがみさんに同意します」

「みゆきさん!?」

 

 死んだ! 神は死んだ! というか神が裏切った!

 

「ほらね。みゆきも同じ気持ちよ」

「あの、その。ただ私は自分を大切にして欲しいと思っているだけで、特に強制するつもりは……」

「うぐ……これでも気を付けてはいるんですよ? なるべく薄着にならないようにしてますし」

「そんなの常識よ常識!」

 

 抗議するも当たり前のことだと切って捨てられる。

 そう言われてもー。暑いときに長袖着るのって結構辛いんだよね。だからと言ってエアコン付けると電気勿体ないし。

 そうだよ。俺は地球に対して優しくしているんだよ。だから悪いのは地球温暖化のせいだ!

 と言ってみたら『なわけあるか』と一刀両断された。解せぬ。

 

「しかし、まだ春先なのに暖かいですよね」

「確かにそうね。先週はまだ肌寒かったのに」

 

 だから風邪引いたんだけど、と姉さんは言う。

 そう言えば暖かいで思い出したけど……。

 

「つかさ姉さん起こすの忘れてた……」

「え? てっきり出かけているとばかり……」

「休日のあの子は病人以上にのんびりしてるわよ」

 

 暖かいから余計に睡眠が深いんだろうなー。このまま放っておいたら夜に起きそうだ。

 とりあえず俺はつかさ姉さんを起こすために席を立った。

 

「あ、ついでにみゆきが持って来た果物切っといてくれない? 良いわよね、みゆき?」

「ええ、構いませんが……手伝いましょうか?」

「いや、大丈夫ですよ。ゆっくりしていてください」

 

 ちゃっかりしているなぁ、と思いつつ俺はみゆきさんが持って来た果物かごを持って部屋を出た。

 

 

 

 

 土曜、日曜としっかり休んだおかげか、かがみ姉さんはすっかり元気になった。

 今朝も病み上がりだというのにランニングをして、つかさ姉さん曰く朝ごはんもしっかりと食べていたようだ。

 うん。やっぱりかがみ姉さんには元気な姿が一番だ。

 

 でも……。

 

「ケホッ……ケホッ……」

「まったく……付きっ切りで看病するからこうなるのよ」

「ごめんなさい……」

 

 代わりに俺が風邪を引きました。いのり姉さんが呆れた視線を向けてくるが、こればかりは何にも言えない。

 ちなみに先ほどまでうつしてしまったことを気にしていたかがみ姉さんは、つかさ姉さんに引き摺られて学校に行った。こういう時つかさ姉さんは頼りになる。

 

「ほら、さっさと寝なさい。早く治さないと次はつかさ辺りが風邪引くわよ?」

「……そうだね」

 

 ――なお、後にいのり姉さんの言った通りになったのであった。

 




もしアニメ化したら、若瀬さんのCVはどうなるんだろう。
それだけを知りたいのでらきすた二期早く来ませんかね?

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