ギルモア・レポート 黒い幽霊団の実態   作:ヤン・ヒューリック

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第二十三章 支配者との戦い

 

 地底世界は東西問わず、様々な神話で死の世界として描かれていることが多い。

 

 例えばギリシャ神話では冥府は地底世界として扱われており、冥府の神であるハデスは冥府の支配者であり豊穣の角が象徴とされている。

 

 また、インド神話に登場する死者の主ヤマも地下世界の支配者であり、後に仏教に導入され、ヤマは閻魔として地獄の支配者として取り入れられている。

 

 そして、黄泉という言葉は漢語で「地下の泉」という意味であり、死者の世界という意味も付与されている。

 

 ブラックゴーストは地下世界を発見したが、その名前をヨミと名付けた理由については今のところ判明しない。

 

 だが、地下という世界を支配することで、今後の世界の生殺与奪を握る。または、地上が地獄と化しても自分たちは地上とは切り離された黄泉の国にて安寧に過ごすという意味が込められているのかもしれない。

 

 長々と話したが、前回はブラックゴーストが広大な地底空間、というよりも、まさに地下世界を発見したことを述べた。

 

 その発見はブラックゴーストの主力であった武器取引を休止させても問題ないほど、莫大な利益を生み出すことに成功した。

 

 砂金と超音波怪獣という財産もそうだが、彼らが発見したのは必ずしも資源だけではない。

 

 この地下世界の支配者とその奴隷とも出会うことになったのである。

 

 

 ブラックゴーストが見つけた地下世界にはすでに支配者が存在した。

 

 その名はザッタンという。

 

 ザッタンは見た目は二足歩行できる爬虫類のような生命体であり、飛行可能な翼を有している。

 

 爬虫人類の一種として現在では認定されているが、生き残りはほとんど存在しないために研究と検証が全く進んでいない。

 

 一応、彼らは会話する能力を持ち、一つの文明を作り上げるだけの知性と知能、そして家畜を使役し、品種改良するだけの技術を有していた。

 

 だがザッタンの真骨頂はやはり、強力な催眠能力にあった。

 

 ザッタンは目を合わせるだけで催眠術をかけることが可能であり、相手を意のままに操ることが出来る。

 

 その力を利用することで、地下世界を支配していた。

 

 特に口から兵器となり得る超音波を放つ怪獣たちを使役し、彼らの家畜であり奴隷であるプワ・ワーク人を支配していた。

 

 プワ・ワーク人は我々人間と同じく人であり、ザッタン達の奴隷であり家畜として扱われ、食料にもされるために五つ子等で数多く生まれるように品種改良されていた。

 

 こうした形で、ザッタンは地下世界を支配し、王者として君臨していた。

 

 しかし、ブラックゴーストが地下世界により彼らの支配は根底から覆されてしまう。

 

 ブラックゴーストは当初、ザッタンとの接触を行った。

 

 支配者である彼らに様々な道具等を渡し、取引を行うことで懐柔を図ったのであるが、ザッタンの危険性に気づいた彼らは即座にザッタンの懐柔ではなく、根絶を行うことを決意した。

 

 それは、前述したが彼らの強力な催眠術にある。

 

 この催眠術によりザッタンは地下世界に生きる生命体全てを支配していた。同時にこの力は当然ながら地上の生命体、人類にも効果があった。

 

 ザッタンとの交流の中でブラックゴーストはザッタンに支配されたスタッフを発見し、彼らの傀儡になってしまったことからザッタンとの共存は不可能であり、存在することが脅威であることを痛感した。

 

 元々、地下世界はブラックゴーストにとって悲願である未来戦計画の砦であり、未来のエデンといってもいい拠点である。

 

 その重要拠点にザッタンが存在するだけで、全てが瓦解してしまうことを考えれば、ブラックゴーストほどの組織が彼らを処分するのはある意味当然の帰結であったと言える。

 

 ブラックゴーストは多数のロボット兵器を投入し、ザッタン殲滅作戦を実行した。

 

 この時、実行役になったのがこの地下世界の発見者でもあり、後に地下帝国ヨミ計画の最高責任者になったのが、バン・ボグートであった。

 

 ボグートは自ら作戦を立案し、指揮を執り、ザッタンを駆逐して地下世界の支配権を奪うことに成功した。

 

 そして、この成功によりブラックゴーストは更なる野望を実行に移すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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