ギルモア・レポート 黒い幽霊団の実態   作:ヤン・ヒューリック

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第二十二章 黄泉への扉

 ミュートス達は敗れた。

 

 神にも等しい肉体を得たとしても、心までは神にはなれずに彼らは敗北した。

 

 どれほど強力なサイボーグを作り上げたとしても、00ナンバーサイボーグ達には敵わないことをブラックゴーストはようやく理解し始めたのである。

 

 だが、彼らは危険であることには変わりなく、同時に彼らが裏切り者であり、許されざる存在であることも変わらない。

 

 ブラックゴーストは裏切り者には一切の容赦を与えない組織であり、裏切り者は即座に抹殺する。

 

 だが、ミュートス達が敗れた中でブラックゴーストは00ナンバーサイボーグ達に構っていられない状況に陥った。

 

 それは、決して悪い意味ではなくいい意味で、しかも予想外の大収穫を発見したのである。

 

 それが、後に地下帝国ヨミと言われる広大な地下世界であった。

 

 地底空洞説を初め、SF作品などで地球の地下には広大な世界が存在するなどの話が存在するが、実際の地球は地殻、マントル層とコアで構成されている。

 

 だが、地殻は地表から最大70kmもの長さがあるわけだが、ブラックゴーストはこの空間に目を付けており、未来戦計画における地下シェルターの建設を行っていた。

 

 もし、核戦争等で地上の文明全てが消滅しても、自分たちだけは生き残れるためにである。

 

 

 その工事の中で、彼らは広大な地下空間を発見してしまった。さらに、その空間には信じられない量の砂金と奇怪ではあるが、兵器として利用可能な生物と、文明を築いた地底人まで存在した。

 

 特に、砂金の存在はブラックゴーストの財政を大いに潤し、様々な戦闘ロボットや兵器を製造するには十分なほどの資源として貢献した。

 

 そして、この空間を発見したことでブラックゴーストは自らが立案した未来戦計画を行うには十分すぎるほどの拠点であると認識し、本格的な開発に乗り出したのである。

 

 ミュートス達が敗れてから、00ナンバーサイボーグへの粛清を中断したのは、この予想もしていなかった地下帝国を築くことに注力していたからに他ならない。

 

 砂金の収集と、自ら超音波を放つ生物の確保と研究、そして、地底人への対処と、それはブラックゴーストが今まで手掛けてきた中で最大級といってもいいほどの事業となった。

 

 実はこの時期、ブラックゴーストは自らの商売であった武器商売などを一時的に縮小している。

 

 この降ってわいて出たならぬ、足元にあった理想郷に彼らは自らの野望を全て注ぐことを決意したからである。

 

 こうして、ブラックゴーストは自分たちの理想を地下帝国に見出したのであった。

 

 

 


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