ギルモア・レポート 黒い幽霊団の実態   作:ヤン・ヒューリック

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第十九章 ガモ再び 前編

 

 前章にてガモ・ウイスキーがガイアへの協力したことに若干触れたが、ガイアは00ナンバーサイボーグを越えることを目標としていた中で、彼らがなぜ自分達よりも性能が上のはずの後期型サイボーグに勝利できたのかをずっと疑問に思っていた。

 

スペックではいずれも完成形とも言うべき009よりも協力な武装、より強力な加速装置を搭載しているはずの後期型サイボーグは兵器として優れた反面、同時に欠陥を抱えていたことはすでに解説済みである。

 

また、同時に彼らが個々の戦闘ではなく集団での戦闘を行い、常に相互の連携を行いながら、自分達の死角や弱点を埋め合うことで勝利をもたらしていたことが大きな要因であった。

 

そして後期型サイボーグの欠陥であった人間性の欠如、排除はサイボーグの利点を失う上に、それを取り戻した瞬間裏切りが発生しかねないという問題も抱えていた。

 

それをガイアは「神格化」という形で、彼らを人間ではないより高度的な存在、すなわち「神」に見立てることでその欠陥を埋めることにより解決した。そして、チームワークという面においても彼らは個々の力を保った上での連携も行っていることを見ても、明らかに後期型サイボーグよりもより優れたサイボーグ兵団に編成することに成功していた。

 

かつてギルモア博士と共にサイボーグ研究を行っていたウラノス博士の協力により、拒絶反応を00ナンバー並に低下させることに成功したが、ガイアは更なる助っ人としてガモを呼んだ。

 

まず経緯としてだが、かつてミュータント部門はブラックゴーストにおいて、サイボーグやロボット部門などを追い抜き、圧倒的な発言力と利益を得ていた。

 

以前、ガモがミュータントを産み出す仮定で得た「非合法な人体実験」という研究のアウトソーシングを行い、その技術を医術に応用することで独裁国家、特に医学が衰退していった旧共産圏において法外な最新治療により金銭を得るという手法について述べたが、この副産物はブラックゴーストに多くの医学、並びに生化学、バイオテクノロジーなどを飛躍的に高めることと共に、多くな利益を産み出した。

 

しかしミュータント部門は肝心のミュータント、新兵器となり得る存在を産み出すことが出来ず、未来戦計画に適合しないという事実から大幅な縮小を余儀なくされたが「非合法な科学実験のアウトソーシング」を求める国家や企業、組織は後を立たず、その利益は国を買えるほどの金額であったというのが、我々が極秘裏に入手した取材元からの情報である。

 

問題なのはこの莫大な収入源をブラックゴーストのどの部門が継承したのかということだ。

 

結論から言うと、この商法を受け継いだのはブラウン率いるサイボーグ部門であった。ミュータント部門が人間に超常的な能力を与える研究を行ったのに対して、サイボーグ部門は人体そのものを強化するという至ってシンプルではあるが確実な成果が期待された部門である。

 

どこまで人体を機械に置き換えられるのかという課題は、逆に手足を失った兵士を再び戦えるようにするという狂気じみた発想と皮肉な形でマッチした。

 

その結果、ブラウンは莫大な予算を手に入れることが出来たが、彼は後期型サイボーグ達の失敗により粛清された。しかしこの莫大な収益源をガイアはそのまま引き継いだ上で、紛争地域や発展途上国において実験を行い、その膨大なデータから更なる収益を叩き出すことに成功した。

 

その上でガイアがガモを協力者としたのは、彼が打倒するべき標的、00ナンバーサイボーグ達を打ち破るためガモが新たに計画していた新型エスパーサイボーグ、コードネーム「ヘラ」を実際にこの手で作り上げる為であった。

 

 


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