ギルモア・レポート 黒い幽霊団の実態   作:ヤン・ヒューリック

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ミュートス編は原作と平成版のハイブリットという形にしていますのでご注意ください。


第十六章 その名は「ミュートス」 前編

0013の裏切りによって、ブラウンは完全に失脚した。だが、その後もブラックゴーストはサイボーグ兵士開発計画を継続している。

 

実態は継続どころか、大幅に強化されており、むしろ兵器としてのサイボーグの質は多いに向上している。

 

ブラウンが失脚し、同時に粛清されたのを皮切りに台頭していったのがギリシャ出身の工学者であるミハエル・ガイア博士であった。ブラウンと同じく兵器派の第一人者であり、サイボーグ部門だけではなく、ブラックゴーストの兵器開発部門にして辣腕をふるい、レーザー兵器や加速装置などを始めとする高性能兵器の開発に向けて多くの実績を誇っている。

 

ブラウン失脚後、彼は直ぐにブラウンを手を切り、率先してブラウンの弾劾を行うなど、抜け目なくサイボーグ開発部門における責任者としての地位を確立することに成功した。

 

ブラウン死後、ブラックゴーストのサイボーグ開発計画が停滞しなかったのはこうした理由が背景にある。お世辞にも評判がいい人物ではなかったが、こうした政治的立ち回りという部分において、彼はずば抜けた処世術を有していた。

 

しかし、最高傑作といってもよかった0013の反逆は、ブラックゴースト内部でもかなり深刻な問題として受け止めていた。

009すら上回る加速性能を持ち合わせた彼の反逆と自爆は単なる開発の遅延ではなく、組織を裏切る人間への統率や管理は無論のこと、開発計画そのものへの疑問と、てこ入れが求められた為である。

 

そこでガイアはまず、手っ取り早い手段として00ナンバーサイボーグや、後期型サイボーグよりも高性能なサイボーグ兵士製造計画に着手した。

 

ブラウン時代にあった直接的なサイボーグ兵士製造計画での意図的な人間性喪失による個体だけではなく、ガイアはさらに一歩進めた完璧なサイボーグについてコンセプトを固めていた。

 

「ガイアが当時口にしていたのは、人を越えた存在がサイボーグならば、さらにそれを越えた存在は神にも等しい存在といえるのではないかということだ」

 

そう語ったのはガイアの同僚であったロア・ウラノス博士である。

 

「彼が目指していたのは、人間を越えた存在であることは無論のこと、人を越えたサイボーグの概念を越えた、神にも等しいサイボーグともいうべき存在を作ることであった」

 

ブラウンの失敗を一番近くで見ていたガイアは、人という概念に縛られている限り、サイボーグ兵士製造計画は無論のこと、脱走したが完璧という言葉に一番近いサイボーグである00ナンバーサイボーグに打ち勝つことは不可能であることを理解していた。

 

単なる高性能なサイボーグというコンセプトだけでは00ナンバーサイボーグには勝利できない。より高性能であったはずの0010や0013ですら勝つことは出来なかったという事実をガイアは冷静に受け止めていた。

 

それに、より高性能なサイボーグというだけでは上層部が納得しない。そこで、ガイアは祖国ギリシャにて語り継がれていた、神話をモチーフとした神に等しいサイボーグを製造することを決めたのであった。

 

 

 

 


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