ギルモア・レポート 黒い幽霊団の実態   作:ヤン・ヒューリック

13 / 23
第十三章 後期型サイボーグ 前編

前章までブラックゴーストを脱出し、00ナンバーサイボーグを産み出したギルモア博士らについて纏めたが、今回からは00ナンバーサイボーグ以後のサイボーグについて解説させてもらう。

 

ギルモア博士がブラックゴーストを脱出した後、ブラックゴースト内部では一つの課題が残されていた。

 

サイボーグを機能させる上で重要な、拒絶反応の軽減である。当時のブラックゴーストではこの技術に対する抜本的解決を見いだすことが出来ず、様々なサイボーグ兵士が生産されていったが、実際の稼働に至るまで多くの試験体が廃棄物として処分されていった。

 

肉体と機械部分の適合率は無論のこと、精神的な適合率、肉体を機械へと置き換えることによる人間性の喪失を、ブラウン達は解決することが出来なかった。

 

彼らは優れた義手や義足、そして兵器を作成する技術は有していても、それらをインテグレートする能力に欠けていた。ブラウンら、サイボーグ兵士計画に参加していた科学者の大半は、ナチスドイツの負の遺産、レーベンスボルン計画に参加していた人間が大半を占めていた。

 

レーベンスボルン計画とは、純粋なアーリア人を産み出すためにナチスが計画し、彼らはドイツ占領下から子供達を誘拐、あるいは占領地にて性交渉により完全にして純粋なアーリア人を産み出すべく活動していた。

 

現代からみれば忌避するべき忌まわしき記憶と歴史に過ぎないが、彼らはアインザッツグルッペンらと共に東方蛮族たるスラブ人を殲滅するべく様々な人体実験に励んでいた。

 

「彼らのやり方は改造ありきであり、人体を機械化すること、兵器化することにのみ没頭していた。その一方で医学、生化学に精通した人間はブラウンのみで、他のメンバーに関しては人体に関しては素人である工学者や物理学者ばかりだった」

 

ギルモア博士いわく、ブラウン以外の研究者は医学、生物学、そして生化学の素人であったという。個々のパーツともいうべき義手や義足、人工臓器を作ることは出来ても、それらを相互に機能させる方法に関しては全く考えていなかったとされる。

 

実際、彼らの研究は人体と機械をただ組み合わせるだけの安易なサイボーグでしかなく、肉体との適合率や連動性を意識したものではない上に、被験者のことなど気にすることの無い無茶苦茶な改造を施していることが多い。

 

単体での兵器として、カタログスペック的には最高であっても実際の稼働面ではその真価を発揮できない。兵器としては致命的と言える欠陥であるが、その解決策を産み出したギルモア博士は脱走し、彼と共にブラックゴーストを脱出しようとした科学者達のほとんどが組織により処刑されてしまい、ブラックゴーストは完全なるサイボーグ製造法を失った。

 

00ナンバーサイボーグとギルモア博士の脱走は、ブラックゴーストにとって致命的ともいえる損失を与えたが、この件で一番面目を失ったのはブラウンである。

 

脱走後、サイボーグ兵士製造計画は凍結寸前にまで追い込まれたが、ブラウンはギルモア博士とは対局の手段を使うことで自らサイボーグ計画を成功へと導こうとした。

 

その起死回生が、0011、0012、0013ら後期ナンバーサイボーグであり、サイボーグマンであるが、次回において彼らがどのように作られていったのかについてレポートしていくこととする。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。