Fate/Gold pirate   作:悪事

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気まぐれ投稿です。安定の独自設定と独自の世界設定。
今回、アンチヘイト要素がありますが、自分はあのキャラの不屈の精神を尊敬しています。
某レジスタンスの騎兵を好きな方は今回の話を読む事をお勧め致しません。



亜種特異点・蒼海偉業航路カリブ

人理焼却、魔術王ソロモンを名乗る魔神にして人理焼却式ゲーティアの起こした七つの時代を崩壊せしめんという企みはグランドオーダーを託された一人のマスターと、マスターと共に戦い抜いたデミサーヴァント、人理継続保障機関カルデアのサーヴァントを始めとする多くの優秀なスタッフ、そして、未来を夢に浪漫を謳った"ごく普通の青年"(唯の人間)の元に事態は収束を得た。

 

 

しかし、七つもの人理が不安定な特異点へのレイシフトのためにカルデアでは奇妙かつ様々な特異点を観測したり、時間神殿より逃亡した魔神柱たちの亜種特異点の対処、国連へ提出する情報の操作などカルデアの平穏というものは未だ訪れていなかった。そして、此れは第二亜種特異点アガルタの人理修復を完遂した後のある日、マスターの一言から始まる。

 

 

「あれ?そういえば」

 

 

「そういえば?……どうしたんですか、先輩?何か気になるようなことでもあったでしょうか」

 

 

メガネをかけた少女、マシュが頭を(かし)げたマスターの疑問形の声に反応する。スタッフたちやダヴィンチちゃんへの差し入れを持って行く途中の廊下でふと、頭をある考えがよぎった。

 

 

「うん、そういえばというか、今更というか。第三特異点のことね」

 

 

「第三特異点?何か、不審なことでもありましたか?」

 

 

「不審というか、その……ほら、第三特異点って西暦で1500年以降だったよね。それが妙に引っかかったんだ」

 

 

「先輩、第三特異点の発生年代は西暦1573年ですよ。全く、グランドオーダーの情報を人理修復に携わったマスターである先輩が……先輩が……あれ?」

 

 

そう、ここでマシュもようやく、第三特異点の時代背景が奇妙だと感じ取った。そう、あの特異点にはドレイクや黒ひげ、アンとメアリー、ロジャーなど多くの海賊たちがいた。しかし、なんで16世紀に特異点は発生したのか。確かに16世紀多くの人々が航海に出た大海賊時代、この時代の人理が崩れれば貿易などや植民地などの後の時代関与した全てが破綻するだろう。しかし、15世紀末、海賊王ゴールド・ロジャーの死によって大海賊時代は到来した。

 

 

 

つまり、ロジャーは大海賊時代という航海時代の源流である。そう、ロジャーが死んでいれば、それだけで人理定礎は崩壊し、特異点と化していたはず。だというのに、ゲーティアが聖杯を送り込んだ時代は西暦1573年の16世紀後半。そのことが今更ながら違和感として表出した。

 

 

「ふむ、その考察。実に興味深いな」

 

 

二人、並んで話していたところで急にというか、不意にという機会で背後から会話に入り込む声があった。そう、この疑問というか謎に介入したのは、現在カルデアにて情報の調整作業に協力してくれるサーヴァントの一人、世界最高峰かつ唯一の顧問探偵シャーロック・ホームズその人だった。

 

 

「ミ、ミスターホームズ。驚かさないでください。いえ、それより何時から話を聞いていたのですか。確か、この時間は中央管制室で皆さんたちと国連に提出する情報調整を行なっていたはずでは。今から、差し入れをお届けに行く途中だったのですが」

 

 

「おや、それは済まない事をした。しかし、此処で会えて良かった。差し入れは……クッキーか。なるほど、それも此れはエミヤ氏の手作りだね。ありがとう、後でゆっくり頂くとしよう」

 

 

「いや、情報調整の作業はどうしたの?」

 

 

ホームズの差し入れを作った人物の推理をスルーして、マスターは名探偵(サボり犯)にツッコミを入れる。

 

 

「はっはっは。いや、四六時中座り込んで情報の改定というのも退屈でね。ほんの少しだけ気晴らしにと散歩をしていたところなのさ。それより、先ほどの考察だ。なるほど第三の特異点か。私が本格的に特異点に関わり始めたのはロンドンからで、それ以前の特異点に関する情報は文書でしか知らないものでね。当事者から情報を集められるのは良いことだ。人づては良くない、情報に微妙な差異が起きる」

 

 

「……話をそらす気が見え見えだけど、どう説得しても言い包められそうだね」

 

 

「此処は素直に考察の真偽を晴らしてもらいましょう」

 

 

「……さて、意見が纏まったところで私見を提示しよう。第三特異点がなぜ、16世紀に発生したのか。この謎の鍵となるのは、かの海賊王ゴールド・ロジャーだ。彼の偉業は当時、世界中の海軍を相手取った話や隠された財宝などの様々な話があるが、最も重要なのは彼の死によって世界中の人々が海に出た大海賊時代の引き金となった事だ。最も、海賊行為の基本原則、船上での医療行為の手引きなど後の時代の法学、医学に多大な影響を与えた書物"海賊の掟"の著者としての一面も重要だがね」

 

 

此処でホームズがロジャーの記した書物に好意的な面を表した事を二人は意外と感じた。

 

 

「意外です、ミスターホームズ。その……当時の海賊という無法者、つまり犯罪者が書いた書物に其処までの好意的な意見を出すとは」

 

 

「書物において重要なのは著者についてではなく内容だ。とはいえ、海賊の掟を悪印象を以って語る人間など、当時の海軍くらいなものだろうね」

 

 

「「?」」

 

 

「確かに海賊という海の無法者が書いた書物など、普通であれば印刷所も何処も取り扱わないだろう。しかし、"海賊の掟"が大衆に広まり"海の聖書"と呼ばれるまで売れに売れたのには理由がある。その一つに先ほど言った財宝が関係する。海賊王は処刑の瞬間、自分が生涯をかけて手にした財宝を世界各地の海に隠した。その財宝の手掛かりとなるのが、当時の海賊王のクルーたちだが海賊王の死去後で海賊王のクルーであった人々は姿を消した。まるで秘密を守るように」

 

 

ホームズは、其処で一旦、言葉を貯める。マシュとマスターの興味が集中した事を確認するためか、それともサボりについて忘れたかを確認するためか。ホームズの私見という名の推理は、たった数秒ほどの貯めの後に再開された。

 

 

「つまり、財宝の手掛かりとなるのはロジャーの遺した書物、"海賊の掟"だけだったのだ。そのため、財宝を求める人々はこぞって書を求めた。原本については、海賊王のクルーの誰かが持っていたらしいが、最終的に黒ひげがそれを手にし彼の死後、原本は歴史から消えてしまったようだ。いや、私も若い頃は財宝の謎を探求し、海賊の掟を読み(ふけ)ったものだ」

 

 

「ホームズが謎解きをしたの!?じゃあ、ロジャーの財宝を見つけ――」

 

 

「いや、見つけられなかった。……というより見つける事を断念したというべきか。まさか、私の解いた謎の先に黒血の……いや予想だにしない難問が待っていたとは。まぁ、その後で本に書かれていた暗号や謎解きは、粗方解いてみたが、モリアーティのちょっかいが増えたせいで財宝を探す事は最後まで出来なかった」

 

 

「ミスターホームズが断念するほどの難問、一体どんなトラップや仕掛けだったのでしょう」

 

 

マシュは生真面目に、謎解きの先にはアドベンチャー映画によくありそうなトレジャーハンターもののトラップや仕掛けを予想したが、ホームズが最初に解いた謎の先にいたのは、そういった頭脳関係を一切無視する怪物(吸血鬼)であり、ロジャーの"謎を解けば終わりじゃねぇ"という意地の悪さが関門として待ち構えていたのだ。

 

 

最もホームズは持ち前の捻くれ性のためか、本来なら最後の最後に解くべき謎を最初に解いてしまったために、特大の理不尽と相対したので同情は必要ないだろう。

 

 

「うむ、その話は保留とし、次の理由に入ろう。次の理由は単純明快、あまりに有用過ぎたためだ。一海賊の書いた本、財宝という事情を飛ばしてでも本の中の内容は有用過ぎた。当時の時代では考えられなかった、海の上での緊急的な救命医療、壊血病などの詳細な情報、衛生面についての見地、海賊の略奪行為の明確な規定、当時の文化水準から考えれば医学、法学など多角的な面から尋常ではない程に優れた書物だった。時代が流れ19世紀になってから、ようやく"海賊の掟"に書かれている内容の意味が科学的に理解されたのだ。この事の重大さが分かるかい、海賊王ゴールド・ロジャーは人類が3世紀も掛けて理解した内容をいち早く知っていたのだ。無論、科学的に理解していたかは分からない。それでも、彼はそれを後世に伝えたのだ」

 

 

ホームズの言葉を聞いて、ようやくロジャーの凄まじさを理解した。現代の人間からすれば、人工呼吸や壊血病、他にも人の権利などは当然と捉えている。しかし、海賊王はそうした現代の常識、文明を遥かな過去である16世紀に理解していたということになるのだ。

 

 

「"海賊の掟"について理解してもらえたなら、本筋に戻るとしよう。何故、海賊王の時代、つまり15世紀に特異点は生まれなかったのか、これは一つの推理が立てられる。それは、ゴールド・ロジャーが人類に与えた影響が彼の遺した伝説に比べ軽微だったからではないだろうか。当時の西欧諸国では自国の発展は頭打ちになり、外貨や国外での貿易が新たに伸びようとしていた。つまり、海賊が航海に出る大海賊時代が無くとも人々は海へと旅立ったのではないか。無論、"海賊の掟"が書かれなければ海で多くの人命が消えたことだろう。しかし、人類史を崩すほどの影響は無かった。これが私の私見さ」

 

 

「……そうかなぁ、ロジャーの存在が人類史に影響を与えない?うう〜ん?」

 

 

「確かに先輩の混乱もご最もです。直接、会った者の意見からして彼がいない場合、人類はとても大きな間違いを起こしていた、とさえ考えさせるような人でした」

 

 

「海賊王がいなかった場合。ふむ、それもまた興味深い。……そうするともう一つの推理が可能性として浮かび上がってくる……」

 

 

「「それは?」」

 

 

マシュとマスターが口を揃え、再びホームズの推理を聞こうと彼に視線を集めるが……

 

 

「…………いや、確たる証明もない以上、声高に話せないな。この話はここらで解散ということで」

 

 

「せっ、先輩!?落ち着いて!悪気はないはずなんです、ただ真意を明かさないというか、確証なしに推理をしないだけで」

 

 

「マシュ、離して!ホームズ殴れない!!」

 

 

マスターが怒って、マシュが宥め、ホームズが楽しそうに笑う。そんな平和なじゃれ合いをしている中、平穏をブチ破る音が響いた。カルデア各所に設置されたサイレンがけたたましい音と光を放ち、緊急事態であることを告げる。

 

 

「管制室に急ごう!!」

 

 

マスターはマシュ、ホームズたちと共に管制室へ駆ける。管制室の中ではもはや、嫌な意味で有り触れた喧騒が広がっていた。部屋に入り、直ぐにこちらに気づいたのは、万能と名高い芸術家であるカルデアの敏腕スタッフの一人ダヴィンチちゃんだった。

 

 

「やっほー、マシュにマスターくん、其処のサボリ魔を引っ張って来てくれてありがとう。まぁ、それより今、私たちはまたというか、すっかり馴染み深いモノを見つけてしまった」

 

 

「特異点ですね、わかります」

 

 

「うん、話が早くて大変助かる。そう、我々は再び特異点を発見してしまった。このまま特異点を放置するわけにもいかない、至急レイシフトで特異点へ飛んでくれ」

 

 

「了解、それで特異点の所在と年代は?」

 

 

「ああ、年代は西暦1441年。15世紀のカリブ海の全域だ」

 

 

ダヴィンチちゃんの発言に、マシュとホームズにマスターは顔を見合わせ、噂をすれば……という現象を実体験することとなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カルデアの唯一のマスターは、数名のサーヴァントたちとレイシフトした矢先、非常にマズイ事態に陥っていた。そう、これまでのレイシフトでの空中や危険地帯へのレイシフトの経験を生かし、安全な場所を選んでカリブへレイシフトをしたわけだが、確かに其処は安全な場所であった。なんせ、危険どころか何にもない"無人島"にレイシフトしたのだから。

 

 

「マジで?」

 

 

「マジですぞ、マスター。いや、カリブ一の超エリート海賊と名高い拙者でも、無人島でゼロからサバイバルスタートとか色々とありえんわー」

 

 

「いきなり、(おか)から出発たぁ。どうも幸先(さいさき)悪いねぇ」

 

 

「僕たち、ライダーだけど船丸ごと一隻って宝具ないんだよなー」

 

「そうね、わたしたちの逸話で船を所有していた事ないもの」

 

 

マスターに召集されたのは、かつてオケアノスにて戦った海賊の英霊たち。第三特異点で出会った海賊王を除くサーヴァントが集合している。ロジャーに関しては召喚されたものの第三特異点のゴタゴタでカルデアに呼び出せず、残念の限りだ。もし彼がいれば、貴重な男性枠を使えたのに。

 

 

「マスター、考えてる事ダダ漏れでござる。それで拙者たち、ここからどうするんですしおすし」

 

 

「やかましい。それ以上ペラペラ馬鹿話するようなら、その口に風穴空けて風通しをよくすんよ」

 

 

「ぐっどあいであー、それなら僕はカトラスで」

 

「わたしはマスケットで……あら、ドレイク船長と被ってしまいましたわ。どうしましょう」

 

 

「そんな細けぇ事、気にしなくていいさね。大した事じゃねぇし」

 

 

「ものスっごく大した事!?拙者、戦力!命は大事に、ガンガン行っちゃいやーん!!」

 

 

「「「よし殺ろう」」」

 

 

 

黒髭への殺意を隠す事なく、三人が息ぴったりに言葉を合わせる。結局、マスターの何処と無くヤル気の薄い説得の末、なんとか黒髭の命は守られたのだった。しかし、そんなことより大きな問題がある。この特異点の移動手段だ。オケアノスでは黒髭、ドレイクは聖杯を所有していたため、魔力のことは深く考えずに航海出来ていた。しかし、カルデア契約のサーヴァントとなった以上、存在維持の魔力はカルデアの聖杯が負担してくれても、宝具や回復などの余剰分はマスターの負担になってしまう。黒髭とドレイクの船の宝具を展開し続けるのは現実的では無い。

 

 

 

どうするかと、頭を抱えていたところでカルデア一行の中で一際、小柄なメアリーが海上にあるものを見つけた。

 

 

「ねぇ、マスター?あそこに船が見えるよ」

 

 

彼女の指差した先にマスターたちは正しく航海中の船を発見する。どうにか、救助してもらってせめて最寄りの港まで送ってもらえればいいんだが……あの船、最近どこかで見た覚えが。

 

 

 

「ハッハー!!!!」

 

 

 

この如何にも自分を悪党と主張してくる声、そう自分はあの船を知っている。亜種特異点アガルタで戦ったライダーのサーヴァントの操る船、真性の外道にして幸運値がマイナスに振り切っている在る意味もっとも憐れな男……クリストファー・コロンブスが操るサンタマリア号だ。

 

 

「ああ?なんだ。こんな海のど真ん中で珍しい奴と会っちまったなぁ、おい!覚えてるぜぇ、カルデアのマスター!!てめぇはこの前、俺の金儲けの邪魔をしやがったよなぁ〜。てめぇ!!人の努力を邪魔するってのが、人間としてどんだけ最低なことか、分かってんのかァァ!?」

 

 

どうやら、かつてレジスタンスのライダーと呼ばれた彼の記憶は現在まで持ち越されているらしい。そんなブチ切れ中のコロンブスにドレイクは呆れながら、海賊流の悪態をついた。

 

 

「いや、海賊に人間の最低なんぞ語んじゃないよ。私らぁ、皆最低最悪の悪党どもさ、道徳なんてもん生まれる前からすっぽ抜けてんだから、今更くだらねぇこと言って萎えさせんなって」

 

 

「その物言い……全く、海賊ってのは、これだからよぉぉ!!いいぜ、女は船の奴隷として生かし、男は今すぐ殺してやらァァァ」

 

 

「ハッ!拙者を差し置いてこの海賊BBAを奴隷だぁ?上等DEATHぞ、殺し返してやるから、掛かって来やがれぇぇぇぇぇ」

 

 

なんか、ヒートアップした黒髭の後頭部をドレイクはカトラスの持ち手でしばいて、メアリー、アンは勇敢ではあるが格好のつかない黒髭にやれやれと、ため息を吐く。

 

 

「威勢が良いねぇ…………ああ、そんなら今、俺がムカついてる分、ぶっ殺してやっからこのムカつき発散させろやァァァァァァァァァッァ!!!」

 

 

「サーヴァント戦闘、行こう!!!」

 

 

――――――

 

 

 

 

 

「なんだなんだよなんなんですかぁ!!おいおい、てめぇら本気でやってんのかよぉぉ!!」

 

 

事態は劣勢に追い込まれていた。コロンブスの猛攻もあるが、やはり魔力不足による戦況を上手く運べないことが大きい障害になっている。ドレイクと黒髭の宝具を同時に展開して立ち回るのにも限度が出始めてきた。刻一刻と状況が悪くなる中、どうにか逆転の機を付け狙う。

 

「マスター、僕たちが向こうの船に乗り移る。海賊戦法やってやろう」

 

「そうね、わたしたちがあちらを撹乱するので、その隙に反撃を」

 

 

アン、メアリーが敵船へ飛び込もうと意気込み、勇んで武器を振るう。しかし、敵船に飛び込んだら帰還は困難なものとなる。何か、事態を一発で変えるようなそんなイレギュラーはないだろうか。マスターは周囲を見回す、何か逆転の目になりそうなものを。

 

 

 

黒髭、ドレイク、コロンブスの三者三様の操船技術は互いに互角、事態は膠着し魔力に不安のあるこちらが不利な状況、あちらの余裕げな表情から、おそらく聖杯を所有しているに違いない。聖杯を奪取し、この場を離脱するためにはどうすべきなのか……

 

 

そうしていると、サンタマリア号の方が何やら騒がしい。

 

 

「船長、船長、船長!?大変です、大惨事です!!!」

 

 

「あああ!?なんだ、この大事な時に!しょうもねぇことだったら、マストに括り付けるぞ!!」

 

 

「あの金色の盃、盗まれちまいました!」

 

 

「………………えっ?」

 

 

「さっき、船に潜り込んできた"二人組"に盗られたんでさぁ!あいつら、あそこの小舟で逃げて」

 

 

言い切る前にコロンブスは報告してきた船員を甲板から海に落とす。憤怒に顔を壮絶なまでに歪め、醜悪なまでの表情を浮かべコロンブスは絶叫する。

 

 

「殺ぜぇぇぇぇぇぇぇっぇ!!今ずぐ、あのコソ泥の小舟を沈めろぉぉぉおお!!!」

 

 

あちらのトラブルか、こちらの追い風か。何にせよ、こちらの劣勢の打開の好機。

 

 

「はは!何だい、こっちにもツキがまわってきたじゃないか!!」

 

 

「フハハハハ!!やはり、拙者はエリート海賊ですなぁぁ。wwwwwwww」

 

 

そう言って、ドレイク、黒髭はコロンブスが操るサンタマリア号を攻撃する。コロンブスは歯噛みしながらも、ドレイクたちより小舟に向かって砲を放つ事を優先させた。砲弾が小さい漁船クラスの船に命中する。コロンブスは舌打ちしながらも、ある程度は気分を持ち直しドレイクたちとの応戦に本腰を入れようとする。しかし、小舟辺りから飛んできた何かが、コロンブスとカルデア勢の戦場の中に飛んできた。

 

 

 

その飛んできた何かとは、二つの人影だった。飛んできた二人分の人影はドレイクの船の甲板に着地し、聖杯をポロリと甲板上に転がす。

 

 

「いっててて、ふざけた野郎だぜ。普通、ただの小舟に砲弾なんぞぶち込むかよ」

 

 

「はぁ、だから言ったんだ。あからさまな黄金の盃なんぞ盗らず、食料と水で手を打とうと」

 

 

「仕方ねぇだろ、こういうお宝を狙ってこそ海賊だって」

 

 

「お前といると退屈しないよ、本当に……それで、"ロジャー"。どうするんだ、これから?」

 

 

ロジャーという単語が出た瞬間、敵味方の全ての意識がこちらに向けられる。ロジャー、その名前で呼ばれた青年は被っている"麦わら帽子"の位置を整えて拳を握る。

 

 

「決まってんだろ、"レイリー"。派手に行こうぜ!!!」

 

 

 

 

 

ロジャー、レイリーと互いを呼びあった二人の青年、これがどういうことを指すのか、分からないカルデア勢は一時フリーズ状態に陥るが、この場で誰よりも早く動いたのはこの世界ではロジャーとある意味で深く関係する敵サーヴァント、コロンブスだった。彼は大きく息を吸って、こちら側に向かって大声を発する。この大声、先ほどの絶叫と違うのはコロンブスの顔は鼻水と涙でグショグショで、見たこともないくらいに号泣しながら叫んでいることだ。

 

 

「ロォォォジャァァァッァァ!!!!!てんめぇぇぇぇぇぇ、ぼんどぉ何で何時も何時も必死で頑張ってる俺の前に出てぐんだよぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

 

 

こうして、15世紀カリブという海賊神話の始まるであろう舞台で、未来の海賊王と海賊王と戦い続けた航海士の激闘…………らしいものが始まる。これは海賊王と被略奪王と呼ばれた男たちの戦い。この海賊たちが戦う蒼き海を舞台に、異形なる人類悪が眼を覚ます。

 

 

 




ロジャーの存在する世界と存在しない世界の違い

コロンブスの偉業から奴隷商人と略奪者が消え、ロジャーに宝を奪われ続けた被略奪王という逸話がプラスされている。絶対に諦めない商人って海賊にとっては永遠のカモである。

植民地支配の際の犠牲者、大幅減少。コロンブスという前例がない以上、そうなるのもやむなし。

法学、医学の文化水準の早熟。財宝伝説の国家的な取り組み。

他にも細々とした変化はあるが大きなものとして、上記のものがおおよその違い。

















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