……思わず見とれてしまっていた。
それほどまでに魅力的だった。
夏の陽射しに照らされ、風に舞う髪をかき分ける姿は、この前見た彼女よりずっと大人びて見え、息の詰まるような美しさを惜しげもなく晒していた。
そして今度は……
「お、お待たせ……」
「ああ……」
エメラルドグリーンの水着に着替えてきたことりは恥ずかしそうに俯き、腰に巻かれたパレオをいじりながらも、こちらの反応を窺っている。
そのあまりの可愛らしさに言葉を失いかけるが、何とか口を開いた。
「その…………すごく、いい」
「ありがと……やっぱり、男の子の前だと、恥ずかしいね。でも……八幡君が見てくれるなら……嬉しいな」
「そ、そうか……」
「「…………」」
やばい。
水着になっただけなのに、こうまで緊張するとか……やばすぎてやばい。ほら、もう語彙力低下しちゃってるし……。
ひとまず気持ちを落ち着けるべく、レンタルしておいたパラソルの下に二人で座る。もしかしたら、この陽射しのせいかもしれない。
「ね、ねえ、八幡君……」
「どした?」
「日焼け止め、背中に塗ってくれない?自分じゃ塗れなくて……」
「わかった。何買ってくればいい?」
「に、逃げないでよぅ……私だって、お願いするの恥ずかしかったんだから」
突然すぎるお願い。
中学時代に何度も妄想したシチュエーションではあるが、いざ遭遇すると逃げ出そうとするヘタレっぷり。我ながら天晴れである。
それでも、仕方ないことはある。
「いや、さすがに……」
「八幡君……」
ことりは胸の前で両手を合わせ、上目遣いを向けてきた。あ、これは例のやつがくる前触れですね……
「……おねがぁい……!」
「…………」
久しぶりに胸を撃ち抜かれる音を聞いた。
こうかはばつぐんだ!どころではない。
まさに一撃必殺。
抗いようがない。
「……わかった」
俺は手渡された日焼け止めクリームを片手に、顔を赤らめることりの方を向いた。
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「……んっ……あぁ……」
「……塗りづらいんだが」
「あはは……何だか勝手に声が出ちゃって……」
ことりの陶器のように滑らかな白い肌に触れる度に、甘くとろけるような声が耳朶を撫でてきて、落ち着かない。というか変な気持ちになるんですが、これは僕のせいじゃないと思うんですよ。
あとは腰の辺りを塗り終えれば……
「ひゃうっ」
「っ!」
やめて!あまり動かないで!色々と危ないから!
うっかり起き上がっちゃったら、大変なことになるから!
ことりも自分の過剰な反応には自覚があるのか、申し訳なさそうに口を開く。
「ご、ごめんね?」
「……大丈夫だ。も、問題ないから」
「八幡君、その……塗り終わったら、この前の続きやろ?」
「おう……とりあえず、まだ動くなよ」
「うん♪」
白い肌の甘い誘惑と格闘しながら、俺は何とか日焼け止めクリームを塗り終えた。