捻くれた少年と健気な少女   作:ローリング・ビートル

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UBU

 ……思わず見とれてしまっていた。

 それほどまでに魅力的だった。

 夏の陽射しに照らされ、風に舞う髪をかき分ける姿は、この前見た彼女よりずっと大人びて見え、息の詰まるような美しさを惜しげもなく晒していた。

 そして今度は……

 

「お、お待たせ……」

「ああ……」

 

 エメラルドグリーンの水着に着替えてきたことりは恥ずかしそうに俯き、腰に巻かれたパレオをいじりながらも、こちらの反応を窺っている。

 そのあまりの可愛らしさに言葉を失いかけるが、何とか口を開いた。

 

「その…………すごく、いい」

「ありがと……やっぱり、男の子の前だと、恥ずかしいね。でも……八幡君が見てくれるなら……嬉しいな」

「そ、そうか……」

「「…………」」

 

 やばい。

 水着になっただけなのに、こうまで緊張するとか……やばすぎてやばい。ほら、もう語彙力低下しちゃってるし……。

 ひとまず気持ちを落ち着けるべく、レンタルしておいたパラソルの下に二人で座る。もしかしたら、この陽射しのせいかもしれない。

 

「ね、ねえ、八幡君……」

「どした?」

「日焼け止め、背中に塗ってくれない?自分じゃ塗れなくて……」

「わかった。何買ってくればいい?」

「に、逃げないでよぅ……私だって、お願いするの恥ずかしかったんだから」

 

 突然すぎるお願い。

 中学時代に何度も妄想したシチュエーションではあるが、いざ遭遇すると逃げ出そうとするヘタレっぷり。我ながら天晴れである。

 それでも、仕方ないことはある。

 

「いや、さすがに……」

「八幡君……」

 

 ことりは胸の前で両手を合わせ、上目遣いを向けてきた。あ、これは例のやつがくる前触れですね……

 

「……おねがぁい……!」

「…………」

 

 久しぶりに胸を撃ち抜かれる音を聞いた。

 こうかはばつぐんだ!どころではない。

 まさに一撃必殺。

 抗いようがない。

 

「……わかった」

 

 俺は手渡された日焼け止めクリームを片手に、顔を赤らめることりの方を向いた。

 

 *******

 

「……んっ……あぁ……」

「……塗りづらいんだが」

「あはは……何だか勝手に声が出ちゃって……」

 

 ことりの陶器のように滑らかな白い肌に触れる度に、甘くとろけるような声が耳朶を撫でてきて、落ち着かない。というか変な気持ちになるんですが、これは僕のせいじゃないと思うんですよ。

 あとは腰の辺りを塗り終えれば……

 

「ひゃうっ」

「っ!」

 

 やめて!あまり動かないで!色々と危ないから!

 うっかり起き上がっちゃったら、大変なことになるから!

 ことりも自分の過剰な反応には自覚があるのか、申し訳なさそうに口を開く。

 

「ご、ごめんね?」

「……大丈夫だ。も、問題ないから」

「八幡君、その……塗り終わったら、この前の続きやろ?」

「おう……とりあえず、まだ動くなよ」

「うん♪」

 

 白い肌の甘い誘惑と格闘しながら、俺は何とか日焼け止めクリームを塗り終えた。

 


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