捻くれた少年と健気な少女   作:ローリング・ビートル

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Blue Sunshine

 

 今日は三ヶ月ぶりぐらいに八幡君と会える日です。

 お互いに忙しくて、中々会える日が作れなかったけど、今はそのことを忘れさせるくらいに胸が高鳴り、ここ最近の勉強疲れも吹き飛んでいた。

 夏真っ盛りの午前中。私は千葉駅の改札を通り抜け、彼の姿を探した。

 少し時間がかかるかも……なんて思っていたら、すぐにその姿は見つかった。

 彼は柱の近くに立ち、携帯を扱っていた。

 私は彼を驚かせたくなり、いつもより大きな声で名前を呼んでみた。

 

「八幡君!」

「……おう」

 

 彼はこの前と変わらない仕草で、でもどこか大人びた表情でこちらに軽く手を挙げた。少しくらい驚いてくれてもいいのになぁ。

 

「どした?」

「ううん、別に。ただ……八幡君だなぁ~って」

「……よくわからんが、わかった」

 

 そう言って立ち止まり、しばらく見つめ合うと、どちらからともなく笑いが溢れる。

 夏の暑さがほんの一瞬遠ざかった気がした。

 

「……久しぶり、だね」

「まあ、あれだ。毎日声聞いてたから、あまりそんな気はしないけど……」

「もう、そういうこと言わないの。雰囲気こわれちゃうでしょう?」

「あ、ああ、すまん……」

 

 彼は頬をかきながら、私に手を差し出した。

 

「……行くか」

「はい♪」

 

 私は彼の手を握りしめた。

 彼は繋いだ手を見た後、俯きがちに呟いた。

 

「……その、今日の服、いい感じだ」

「あ、ありがとう……」

 

 来ると思っていなかった褒め言葉に胸が高鳴り、口元が緩んでしまう。

 ふ、不意打ちなんてずるいよぅ……。

 

 *******

 

 私達は電車に揺られ、ある場所に向かっています。

 休日ということもあり、少し混んでいるけれど、この人の多さが休日の雰囲気を盛り上げてくれます。

 彼と二人で外の景色が変わっていくのを見ながら、知っているはずの彼の近況についての話題をふってみた。

 

「最近、本当に忙しそうだね」

「お前ほどじゃねえよ。こっちは周りとやってること変わらんからな。そっちは結構喋れるようになったんだろ?」

「うん。でも、まだ日常会話で精一杯だから、覚えることは沢山あるよ」

「それでも十分凄いんだが……こっちは日本語でも噛むくらいだからな」

「あはは……それは八幡君があまり人と話さないからじゃないかな?」

「あ、見えてきたよ!」

 

 窓の外に目を向けると目的地が見え、既に沢山の人が行き交っていた。

 

 *******

 

「やっぱり、この前来た時より多いね」

「そりゃあ、本来この時期に来る場所だからな」

 

 私達は人で溢れかえる砂浜を見て、目を丸くしていた。多分、普段の私達ならあまり行かない場所だと思う。

 人の多い場所を選んだのは、別れを意識しなくていいから。

 そんな気がしていた……。

 寄せては返す波を見ていると、ふわりと潮風に髪が舞い、そっとかき分ける。

 すると、八幡君がこっちをじぃっと見ていた。

 

「どうかしたの?」

「い、いや……何でもない」

 

 彼はぷいっとそっぽを向いてしまった。

 その頬は紅く染まって見えて、そのことが心のどこかで嬉しかった。


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