捻くれた少年と健気な少女   作:ローリング・ビートル

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太陽のkomachi angel

 二人共ずぶ濡れになったので、歩いて俺の家まで帰ることになった。少し距離はあるが、今日あった出来事について話していたら、いつの間にか家の前に到着していて、濡れた足跡はどこかで途切れていた。

 門の前で、ことりが感慨深そうな顔をする。

 

「ここに来るの久しぶりだなぁ」

「あー……確か、二月に来て以来だっけ?」

「うん、あの時はまさかお泊まりになるなんて思ってなかったなぁ」

「……そうだな。じゃ、入るぞ」

 

 ドアを開けると、ほぼ同時にぱたぱたと駆け寄ってくる音が聞こえてきた。

 

「お兄ちゃん、おかえ……り……」

 

 出迎えに来たのは勿論、麗しのマイシスター小町だが、あれ?様子がおかしい……進化すんのか?大天使になっちゃうのか?

 

「お、お、お兄ちゃん……その人は……」

 

 小町が目をぱっちりと見開き、ことりを凝視している。

 ことりの方は小町の表情に戸惑いながらも、ぺこりと頭を下げた。

 

「こ、こんにちは……」

「コンニチハ……」

「…………」

 

 ことりが恐る恐る挨拶すると、何故かカタコトで返す我が妹。よく見れば、体全体が小刻みに震えていた。

 ……いや、まあ気持ちはわかる。

 とはいえ、ここで長話をするわけにもいかないので、とりあえず話を進めよう。

 

「小町、後で話すから。とりあえずシャワー使うわ。ことり」

「え?あ、お邪魔します」

「わ、私が案内するから!こっちです!え~と、ことりさん!」

「うん、ありがとう。小町ちゃん」

 

 浴室へと向かう二人を見送りながら、俺は式台に腰を下ろした。

 一息つくと、二人と入れ替わるように、カマクラがとことこ歩いてきた。

 

 *******

 

 この前と同じように、俺のシャツとジャージを着て出てきたことりと入れ替わり、シャワーを浴びてからリビングに行くと、二人は早くも意気投合したのか、談笑していた。コミュ力高いね、君達。

 俺に気づいた二人は笑顔を向けてきた。

 

「あ、お兄ちゃん来た!」

「八幡君。小町ちゃんってこんなに可愛かったんだね!八幡君が可愛がる理由もわかるなぁ♪」

「そ、そうか……」

「いえいえ、そんな……でもお兄ちゃん。奇跡って起こるんだね……」

「何がだ?」

「お兄ちゃんがこんなに美人で可愛くて、スタイル抜群なお義姉ちゃん候補を連れてくるなんて……」

「「…………」」

 

 そこに関しては、二人して苦笑いでやり過ごした。まだ周りに説明する言葉が見つからなかった。

 そこで小町は、少し大人びた微笑みを見せた。

 

「うん……なんか、ほっとした」

「そっか」

 

 小町は小町で奉仕部を辞めた俺を心配してくれていたのだろう。二人とも繋がりのある小町には、奉仕部の仲が険悪になったのではなく、疎遠になっただけだと話しておいたが、何というか……不出来な兄ですまん。

 心中で謝りながら、小町の頭を撫でる。

 

「な、何いきなり……もう、そういうのは二人っきりの時にしてよ……」

「別にいいだろ。たまには」

「…………」

 

 隣から視線を感じる気がするが、というか視界に徐々にことりが入ってきている気が……

 

「ほら、お兄ちゃん」

 

 小町は俺の手をことりの頭へと移動させる。ことりの濡れた髪の感触が、やけに艶めかしく肌に貼りつき、体温が心をくすぐった。

 

「あはは……」

 

 ことりは照れくさそうに目を細め、俺の手に自分の手を重ねた。

 

「ご飯できたら呼ぶから、いちゃついてていいよ。でもキスとかは自分の部屋でしてね」

「っ!?」

「キ、キ、キス……」

 

 小町の発言に、俺は自分の顔が熱くなるのを感じ、ことりはわたわたと手を振り回し、顔を真っ赤にした。

 

「あ、ごめん。その反応だとまだみたいだね。じゃ、じゃあ、ごゆっくり~♪」

 

 最後にとんでもない爆弾が投下され、急に緊張が高まる。意識しすぎと言ってしまえばそれだけかもしれないが、今二人の間に流れる空気が、それを許してはくれなかった。

 ことりは一度俯き、ゆっくりと顔を上げた。

 

「あ、あの……」

「おう……」

「は、八幡君の部屋……行かない?」


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