捻くれた少年と健気な少女   作:ローリング・ビートル

45 / 71
OFF THE LOCK

 

 彼の手を繋ぎ、人目も気にせず街を駆け抜けていると、二人して目印みたいな『ある物』を見つけ、そこを目指した。何だか、探検をしているような気分になって、心は幼く弾んでいた。

 

「次はここでいいか?」

「うん!」

 

 色んな人の声や、ジェットコースターがレールを疾走する、あの独特の音。胸に沸き上がる高揚感。

 私達は遊園地に到着した。

 

 *******

 

「わぁ、やっぱり混んでるね」

「まあ、あれだ。このぐらい混んでた方が、知り合いに会わずにすむんじゃねえの?」

「あはは、そうだね。そういえば、さっきの人って八幡君とはどんな関係なの?」

「ん?ああ、前に所属してた部活の顧問だ。今は転勤して別の学校に行ったけどな」

「そっか……声、かけなくてよかったの?」

「今声かけたら、絶対にからかわれる。あと、たまに電話してくるから、別に今話さなくてもいい」

「ふふっ、仲良いんだね」

「そんなんじゃねえよ。ほら、あれだ。馬鹿な子ほど……ってやつだろ」

「じ、自分で言っちゃうんだね……でも、八幡君に構いたくなる気持ちはわかるかも」

「そっか」

「そうだよ」

「……そろそろ腹減ってきたから、飯もここですますか。どっか空いてる場所もあるかもしれんし」

「そだねー」

 

 照れくさそうにそっぽを向く彼が可愛らしく思えて、私はついその腕にしがみついた。

 すると、その腕がビクンと跳ねた。こういうところ、かなぁ……構いたくなるのは。

 

「ど、どした?」

「ご飯もいいけど、まずは遊んでから!ねっ?」

 

 私達はそのまま幸せに満ちた賑わいの中に混じっていきました。

 

 *******

 

「メリーゴーランドは……」

「い、いや、それはさすがに……」

「ふふっ、言うと思った。じゃあ……ジェットコースターにチャレンジしてみよっか?」

「……俺はいいけど、そっちは大丈夫なのか?」

「ちょっと怖いかな。でも……乗ってみたい、かな」

「わかった。じゃあ、並ぶか」

「うん♪」

 

 ジェットコースターには、カップルや同年代のグループが、そこそこ長い行列を作っていた。

 そういえば……遊園地もμ'sの皆と行った時以来だなぁ。

 

「ゆのっち、早く早く~!」

「みやちゃん、待ってよ~!」

「そ、そうだよ!別に、ジェットコースターは逃げないし!何なら後回しでも……」

「あら、紗英ったら、怖いの?」

「ち、違う違う!そんなんじゃ……」

 

 私達の後ろにも女の子のグループが並び、期待や不安の入り交じった表情を見せる。多分、私も同じような表情をしてるのかなぁ……。

 彼はレールを駆け抜けていくコースターをじっと見ながら、時折私に目を向けてきた。

 

「もしかして、八幡君も怖いのかな?」

「いや、違う。何つーか、その……」

「?」

 

 彼は頬を紅くしながら、ぼそぼそ呟く。

 

「……少し、照れくさいと言いますか……はい」

「え?……あ」

 

 多分、彼は私が腕にしがみついていることを言っていると思う。

 私も口に出して言われると、改めて恥ずかしくなり、そっと腕を解放した。

 

「…………」

 

 彼はそっぽを向いたまま、手を握ってきた。

 

「……こっちなら……少しは慣れた」

「……うん!」

 

 お互いの温もりや感触になれていくのを嬉しく思いながら、私は彼の横顔を、自分達の順番が来るまで眺めていた。

 

「こ、高校生でデート?え、何?それ、どこの世界?」

「「…………」」

「紗英?」


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。