彼の手を繋ぎ、人目も気にせず街を駆け抜けていると、二人して目印みたいな『ある物』を見つけ、そこを目指した。何だか、探検をしているような気分になって、心は幼く弾んでいた。
「次はここでいいか?」
「うん!」
色んな人の声や、ジェットコースターがレールを疾走する、あの独特の音。胸に沸き上がる高揚感。
私達は遊園地に到着した。
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「わぁ、やっぱり混んでるね」
「まあ、あれだ。このぐらい混んでた方が、知り合いに会わずにすむんじゃねえの?」
「あはは、そうだね。そういえば、さっきの人って八幡君とはどんな関係なの?」
「ん?ああ、前に所属してた部活の顧問だ。今は転勤して別の学校に行ったけどな」
「そっか……声、かけなくてよかったの?」
「今声かけたら、絶対にからかわれる。あと、たまに電話してくるから、別に今話さなくてもいい」
「ふふっ、仲良いんだね」
「そんなんじゃねえよ。ほら、あれだ。馬鹿な子ほど……ってやつだろ」
「じ、自分で言っちゃうんだね……でも、八幡君に構いたくなる気持ちはわかるかも」
「そっか」
「そうだよ」
「……そろそろ腹減ってきたから、飯もここですますか。どっか空いてる場所もあるかもしれんし」
「そだねー」
照れくさそうにそっぽを向く彼が可愛らしく思えて、私はついその腕にしがみついた。
すると、その腕がビクンと跳ねた。こういうところ、かなぁ……構いたくなるのは。
「ど、どした?」
「ご飯もいいけど、まずは遊んでから!ねっ?」
私達はそのまま幸せに満ちた賑わいの中に混じっていきました。
*******
「メリーゴーランドは……」
「い、いや、それはさすがに……」
「ふふっ、言うと思った。じゃあ……ジェットコースターにチャレンジしてみよっか?」
「……俺はいいけど、そっちは大丈夫なのか?」
「ちょっと怖いかな。でも……乗ってみたい、かな」
「わかった。じゃあ、並ぶか」
「うん♪」
ジェットコースターには、カップルや同年代のグループが、そこそこ長い行列を作っていた。
そういえば……遊園地もμ'sの皆と行った時以来だなぁ。
「ゆのっち、早く早く~!」
「みやちゃん、待ってよ~!」
「そ、そうだよ!別に、ジェットコースターは逃げないし!何なら後回しでも……」
「あら、紗英ったら、怖いの?」
「ち、違う違う!そんなんじゃ……」
私達の後ろにも女の子のグループが並び、期待や不安の入り交じった表情を見せる。多分、私も同じような表情をしてるのかなぁ……。
彼はレールを駆け抜けていくコースターをじっと見ながら、時折私に目を向けてきた。
「もしかして、八幡君も怖いのかな?」
「いや、違う。何つーか、その……」
「?」
彼は頬を紅くしながら、ぼそぼそ呟く。
「……少し、照れくさいと言いますか……はい」
「え?……あ」
多分、彼は私が腕にしがみついていることを言っていると思う。
私も口に出して言われると、改めて恥ずかしくなり、そっと腕を解放した。
「…………」
彼はそっぽを向いたまま、手を握ってきた。
「……こっちなら……少しは慣れた」
「……うん!」
お互いの温もりや感触になれていくのを嬉しく思いながら、私は彼の横顔を、自分達の順番が来るまで眺めていた。
「こ、高校生でデート?え、何?それ、どこの世界?」
「「…………」」
「紗英?」