「八幡君って、小さい頃はどんな感じだったの?」
「滅茶苦茶可愛いぞ。ビビるくらいに」
「ふふっ、じゃあ今度は写真見に行こうかな」
「……お前が来たけりゃ、いつでも……」
「八幡君のお父さん、お母さんにも会ってみたいなぁ」
「……多分、俺がお前みたいな……いのと交流あるって事実に泡吹いて倒れる可能性があるから止めとく」
「え?なんて言ったの?」
「泡吹いて倒れる」
「もうちょっと前かな」
「ミナミンスキー」
「戻りすぎだよ……京都で言ってたよね」
「ニアピンだったな。そういや、京都って……」
「誤魔化さないの。私みたいな……何?」
「…………可愛い」
「う、うん……ありがとう……」
「お前、わかっててやってるだろ……」
「ふふっ、だってちゃんと聞きたかったんだもん♪」
「……いや、別にいいんだけど」
「じゃあ、何回でも聞かせてくれる?」
「……こ、今度な」
「楽しみだなぁ♪」
「……そっか」
「それと、八幡君も可愛いよ?」
「いや、それ全然嬉しくないから」
「そう?さっき顔真っ赤なになった時は……あ」
「……気まずそうにこっちを見るな。色々思い出しちゃうから」
「あはは……」
「…………」
*******
「…………ん?」
目を開くと、部屋の中はうっすらと明るく、朝の気配を感じる。
どうやらいつの間にか眠ってしまっていたらしい。
「すぅ……すぅ……」
「…………」
隣でことりが寝息を立てている。無防備に目を閉じ、小さく開いた薄紅色の唇をこちらに晒しているその姿は、まるで天使のようだ。
……ちょっと待て。状況を整理しよう。いや、する必要もないか。ママライブの突然の御帰宅でHappy lessonが始まりそうだったが、何とか逃げ出して、そのままことりの部屋に入って、色々あって部屋から出ようとして、もう少しだけって話し込んで、寝落ちして……うん、何もしてないよ?
俺達の関係を何と呼べばいいのかはわからないが、清く正しい男女交際をする俺としては、隣でどんな美少女が眠っていようと、やすやすと手を出すような……
「むにゅ……八幡君……いいよ……」
「…………」
何がいいのでしょうか、この子は……。
据え膳ですか、そうですか。これはそういう……
「おかわりなら……沢山あるからね……MAX……ラーメン……」
「……どんな組み合わせだよ」
想像しただけで胃がもたれそうだ。あと単純に不味そう……。
ぼーっと眺めていると、やがて彼女は目を覚ました。
「んん……」
むくりと起き上がり、髪がさらさら揺れた。そこをカーテンの隙間から射し込む光が彩り、カラフルな粒子が弾けるような幻想をそこに見つけた。
そのはっと息を呑むような美しさは、俺の心を鷲掴みにし、これまでにない鮮やかな風景として、焼き付いた。
そして、そんなことに無自覚な彼女はふわふわした笑みを向けてくる。
「おはよ~、八幡くぅん……」