捻くれた少年と健気な少女   作:ローリング・ビートル

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MOTEL

「本当にいいの?」

「ああ、何なら俺はリビングのソファーでも……」

「それはダメ!」

「……はい」

 そろそろ寝ようと私が言ったら、彼は当たり前のように、毛布を1枚持って、リビングに行こうとしていたので、何とか説得して止めさせた。そして、彼との折衷案で、私がベッドに、彼が床に寝ることになった。

「じゃあ、電気消すぞ」

「うん……」

 八幡君が電気を消すと、部屋を僅かばかりの月明かりがカーテン越しに照らしてきているのがわかった。そして、さっきまでより、二人の呼吸やエアコンの稼働音が強調された。

「ねえ、八幡君」

 私は特に話題も思いつかないまま彼に声をかけた。

「どした?」

 すぐに返事が返ってきて、ほっとする。

 私は頭の中を全力でかき混ぜ、話題を捻り出した。

「ゆ、雪降ってるね」

「ああ、久々にこんだけ積もったの見たよ」

「そうなんだ……」

 うぅ……大した話題が出てこない。本当はもっと聞きたいことがあるはずなのに……。

 私は一旦目を閉じ、彼に聞いてみたい事を思い浮かべる。ある程度の気恥ずかしさは、暗闇が覆ってくれると思った。

「八幡君……」

「どした?」

 私はのっぺりとした天井を見ながら、1番聞きたい事を尋ねた。

「……好きな人……いる?」

「…………」

 雪が降る音さえ聞こえそうな静寂。

 彼の視線がどこを向いているのかが気になった。

 風がまた強く吹き荒れ、窓を小さく叩いていった後、彼は口を開いた。

「今は……特に……」

「そっか……」

「だが……気になる奴はいる」

「……どんな人?」

「ふわふわした謎な奴」

「ふわふわ?謎?」

「ふわふわした甘ったるい声してるのに、なんか部活とか滅茶苦茶頑張ってて、バイトもしてて、あとはしっかり自分の夢がある。そんな謎な奴」

「……そ、そうなんだ……あはは」

 頬が熱くなるのが止められない。

 誰の事なんだろう、と考える事もしなかった。

「……気が合うね。私もいるよ」

「……どんな奴だ?」

「ふふっ。すっごく……捻くれた人」

「どんな風に捻くれているんだ?」

「例えば……今日みたいは雪の日に……あえて一人で雪だるま作ってるような……」

「そんな捻くれ方はしてないと思うんだが」

「例え話だよ。それより……」

「?」

「ううん、何でもないよ」

「そっか」

「おやすみ」

「おやすみ」

 眠りは自分が思うよりすぐに訪れた。

 

「…………んぅ?」

 目が覚め、ぼんやりとした視界が朝が来たことを知らせてくれる。そして、体に温もりを感じた。私は何かにしがみついている。

 何だろう、これ…………………………あ。





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