ポケモン世界で嫁と生きる   作:夢月一郎

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結構な難産でしたが書きたいことは書けたと思います
楽しんでいただけると幸いです


6話 わたしのおもい

 このポケモン世界に生を受けて10年と少しがたった。

 10年、初代ポケモンが発売されてから第4世代が発売されるくらいの期間だ。

 対応ゲーム機ならゲームボーイからDS、据え置き機なら64からWiiになる程度の時間だ。

 …………今の子供64とか知ってるのかな?

 

 さて、ポケモン世界で10才と言えばスーパーマサラ人ことアニメの主人公サトシさん。

 そんなサトシさんと同じ年齢になったのだから超人的肉体が手に入ってないかなと思ったが別にそんなことはなかった。

 まあマサラ人じゃないしな。

 さらに言えばこの世界の旅立ちは12才からなので多分この世界はサトシさんのいる世界とはまた違うポケモン世界なのだろう、ゴリチュウいるらしいし。

 

 ということで旅立ちまではあと2年弱あるので特に劇的な生活の変化はなかった。

 変わったことと言えばきのみの栽培を始めたことと

 

「ぷら~ぷら~」

 

 大会の優勝商品のふしぎなアメを与えたことでふみがヒトモシからランプラーに進化したことくらいだろうか。

 進化すると気性が変化し反抗期に入るポケモンもいるらしいと聞いていたがふみは進化してもヒトモシのころと変わらず甘えん坊のままだったので特に問題はなかった。

 というか好感度は進化前の頃より増しているような気がする。

 そうこう言ってるうちにも体を擦り付けて甘えてきている。

 進化して飛ぶというか浮かべるようになってからは気軽に胸に飛び込んで来るようになった。

 ヒトモシの頃は全力ジャンプして胸に飛び込んで来ていたからジャンプの角度を間違うと股間に…………うん。

 

「ぷら~?」

「いや、何でもない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあユート、ふみちゃん、お留守番よろしくね」

「はーい」

「ぷら~」

 

 マスターのお母様がハチさんを連れて出掛けていく。

 

「今日は留守番だな」

「ぷら~」

 

 わたしの名前はふみ。ランプラーのふみだ。

 この名前はわたしの大好きなマスター、ユート様からいただいた大切な名前。

 

「どうやって過ごそうか、ふみ」

「ぷらぷら~」

 

 名前を呼ばれるだけで胸が暖かくなり幸せな気分になる。

 ああ、マスター。ふみはあなたと一緒にいるだけで幸せです。

 でも触れてもらっているともっと幸せです。

 だから今日は1日中わたしを撫でて過ごしましょう。

 そういうおねだりの意味を込めてマスターに抱きつく。

 

「ふみは今日も甘えん坊さんだなぁ」

「ぷらぁ」

 

 マスターに撫でてもらった!

 なんど撫でられてもやはり嬉しい。

 っと、マスターがテレビの前のソファに座った。

 すかさずわたしはその膝の上に座るとマスターはわたしの頭に手をやるとまた撫で始めてくれた。

 

「ふみは本当に撫でられるのが好きだな、かわいいなぁ」

「ぷぅらぁ」

 

 大好きなマスターに優しく撫でられてしかもかわいいなんて言ってもらえるなんてわたしは世界一幸せなポケモンなのではないだろうかと幸せを噛みしめているとマスターが

 

「そういえばふみは今日母さんとハチが何しに出掛けたか知ってたっけ?」

「ぷら~?」

 

 そういえば知らない。

 わたしが分からないと思ったマスターが続けた。

 

「ハチが嫁さんもらうって話でな。今日はその顔合わせなんだよ」 

「ぷらあ~」

 

 そうなのか、ハチさんはわたしとマスターを引き合わせてくれたいわば恋のキューピットなので幸せになって欲しいところだ。

 

「ふみもお婿さんが欲しいか?」

「ぷらっ! ぷらっ!」

 

 マスター! マスターが欲しいです! わたしをお嫁さんにしてください!

 

「かわいいふみはそう簡単には嫁にはやらんぞ」

「ぷらっぷら」

 

 違う、そうじゃないです。やはり言葉の壁は大きい。

 嫁にはやらないで下さい、あなたに貰って欲しいんです。

 マスターを進化して伸びた腕で指差す。

 

「俺? 俺の好み?」

 

 違う、そうでもないです。

 ああ、でもマスターが好きなのはわたしだから好きだと言ってもらえる回数が増えると思えばそれはそれで

 

「うーん、あ、この子とか結構好みかも」

 

 え?

 

 マスターが指差す先にいるのはわたしではなくテレビに映る人間の女の子。

 

 なんでわたしじゃないの?

 

「こういうふりふりした格好の子が好きかも」

 

 どうして? わたしはあなたのことをこんなにも愛しているのに、恋しているのに。

 

 わたしがポケモンだから?

 

 そうだ、普通は同族の異性にひかれるものだ。

 マスターだって同族のメス。人間の女の子の方がきっと良いのだ。

 わたしのようにポケモンの身で人間に恋する方がおかしいのかも知れない。

 

 人間とポケモンは結ばれない

 

 その結論に至ってしまったわたしは刃物で胸を突き刺されたかのような胸の痛みに襲われわたしの心は深い悲しみに包まれた。

 

「ふみ? どうした? 泣いてるのか?」

 

 気がつくと目元からはポロポロと涙が溢れてきていた。

 泣き止まなきゃ、そう思うも悲しい心と連動するかのように涙はどんどんわたしの目からこぼれ落ちる。

 

「だいじょうぶか? ふみ」

 

 マスターがわたしの顔を覗きこんで心配した表情で声をかけてくれる。

 いつもなら話かけられるだけで嬉しくなるその優しい声も他の、人間の女の子にかけられる時がくるんだと思うと悲しさが増してくる。

 

「ふみ」

 

 わたしは泣き顔を見られることに耐えられなくなり開いていた窓から家を飛び出した。

 

「ふみ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふみ!」

 

 機嫌よく撫でられていたふみが急に泣き出しはては家を飛び出してしまった。

 別にお腹が痛かったとかそんなわけで泣いた訳ではないだろう、そんなんだったら家を飛び出す意味はない。

 だったら何か俺が不味いことを言ってしまったのだろうか? それでふみを泣かせてしまったのだろうか?

 自分の発言とふみの反応について振り返ってみた。

 

「っと、そうだ。追いかけないと」

 

 俺は少し考えてから引き出しにしまっていた箱をポケットにねじ込んでから家を出た。

 

「海の方にいったよな」

 

 ふみが出ていった窓は海側なのでそのまま海の方へ行ったと思われる。

 そう考えると俺は走り出した。

 

 

 

 

 そう時間もかからずに海辺に到着。

 あたりを見渡すがふみの姿はなくあるのは釣り人の姿だけだ。

 釣り人に話しかけて聞いてみる。

 

「あの、ふみ……色違いのランプラー見てないですか?」

「いやぁ海の方ばかり見てたからちょっと分からないねぇ」

「そうですか……」

 

 釣り人に礼を言って移動する。

 少し移動した先にはランプラー、ふみの姿はなかったが他のポケモン、ラプラスの姿があった。

 

「くぅー」

「ああ、みやび」

 

 仲良くしているラプラスのみやびだ。首を擦り付けて挨拶してくる。

 しかし今日は遊びにきた訳ではないのだ。

 

「すまんなみやび。今日はお前に会いに来た訳じゃないんだ。ふみを見かけてないか?」

「くぅーう?」

 

 みやびは少し考えると

 

「くぅー!」

 

 顔で灯台の方を指し示した。

 

「ありがと、またくるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こんなところにいたのか」

 

 教えてもらったとおり灯台の影にふみはいた。

 声をかけられて俺に気がついたふみはうつむいていた顔をゆっくりとこちらへ向けた。

 

「ごめんな、お前のこと泣かしちまったな」

 

 ふみは首を振るがその仕草に力はなく表情も悲しげだった。

 

「不安になっちゃったんだよな? 俺が好みの子の話なんかするから俺が取られちゃうかもって」

 

 少ししてふみは小さくうなずいた。

 

「そっか、でもだいじょうぶだよふみ」

 

 優しく頭を撫でる。

 

「俺はお前のこと置いてどこかにいったりしないから」

 

 目をしっかり合わせ言う。

 

「お前は俺の大切な家族なんだから」

 

 そう言って笑いかけるとふみも先ほどまでの暗い表情を晴らして明るい表情を見せてくれた。

 

「そうだ、ふみに渡したいものがあるんだ」

「ぷら?」

 

 俺はポケットにねじ込んである箱を取り出す。

 

「本当はさ、もうすぐお前と出会って5年だろ? そのお祝いにお前には内緒で用意してたんだ」

 

 箱を開け中から中心部が黒くくすんだ紫色の透き通った石を取り出す。

 

「やみのいし。ランプラーがシャンデラに進化するために必要な道具だよ。これでさ、仲直りの証にしてくれないかな?」

「ぷらっぷら」

 

 ふみはうなずきそっと石に手を伸ばす。

 石に手が触れるとふみの体が光輝き姿も変化しだした。

 

 ヒトモシだったふみもついにシャンデラかと目をつぶり感慨に浸って少し。

 進化は終わったかなと目を開くとそこには

 

「へー、これがシャンデラの体ですか」

 

 黒いゴスロリ服を着てオレンジ色の髪を縦ロールにした中学生くらいの美少女の姿が!!

 

 え?

 

「ふみ!? ふみ!?」

 

 思わずふみを呼ぶ。すると

 

「はいっ! あなたのふみですよ!」

 

 目の前のゴスロリの女の子が返事をする。

 

 え? ん?

 

「もしかして、万が一、あり得ないことだとは思うんだけど…………君、ふみ?」

「? わたしはなんの疑いようもなくマスター、ユート様の手持ちポケモンのふみですよ?」

 

 俺の可愛がっていた手持ちポケモンがかわいい女の子になっていた。

 な、何を言っているか分からないと思うが(ry

 

 俺が混乱しているとふみがむぎゅっと抱き締めてきた。

 

「えへへー、好きですマスター好き好きマスター」

 

 聞こえてくる内容もすごいのだが当たる胸の感触がががががががが控えめだけど確かに感じる膨らみがががががががが

 あとなんかすっごいいいにおいがするんだけどなにこれ!? 女の子!? 女の子のにおい!?

 

 パニックは加速する。その速度こうそくいどう加速テッカニンの如し。

 

 しばらく抱きついていたふみだが満足したのか俺を解放した。

 すこし名残惜しいのは内緒。

 

「マスター。マスターがわたしのことを家族として愛してくれてるのは知ってます。わたしもマスターのこと大好きです」

 

 そこまで言うとふみは俺の近くにより

 

「でもね、マスター。わたしの好きはね」

 

 顔を近づけ

 

「女の子としてのスキ、なんですよ」

 

 唇に柔らかい感触

 

 

 

 

 

「なーんて言ってもマスターにはわたしの言葉は通じな…………あれ?」

 

 ふみは固まり少ししてから俺に尋ねた。

 

「もしかしてわたし、人間の言葉…………」

「喋ってたな」

 

「もしかして今まで喋ってたこと…………」

「理解してたな」

 

「ってことはさっきの……こっ、告白は…………」

「…………全部聞いてたよ」

 

 少し間を開けてすべて理解したふみは顔がどんどん真っ赤になりあわあわしだした。

 

「マママママママママスター、ちっちちちちちちち違うんです! あっマスターが好きなのは違わないですけどその……えっと……違うんです!」

 

 なにが違うのか分からないがそこまで言うなら違うのだろう。

 人が慌ててるのを見ると落ち着くと聞くが本当だな、めっちゃ落ち着いてる。

 

「とりあえず落ち着け」

 

 肩に手をやる。

 

「きゃっ」

 

 驚いたふみがバランスを崩してこける。俺を巻き込みながら。

 

「いてて、だいじょうぶか、ふみ?」

 

 ふみに声をかける

 

「マスターに押し倒されてるマスターに押し倒されてるマスターに押し倒されてるマスターに押し倒されてる」

 

 確かに押し倒したような格好になっている。

 もう一度声をかける。

 

「おい、ふみ」

「きゅぃ!」

 

 …………気絶した…………。

 

「……しょーがねーなー」

 

 気絶したふみを背負い家へ帰ることにする。

 女の子になったふみは中学生くらいの見た目なのでそれを運ぶのは10才児の俺にとってはなかなかの重労働である。まあ、思ったよりかはぜんぜん軽かったんだけど。

 と言うかこの子がふみなのは間違いないと思うがどうなってんだろうな、この世界。

 とりあえず目先の問題は…………

 

「母さんにどう説明しよう…………」

 

 進化の石をあげたら美少女に進化しましたってか?

 いやぁそれ通じるのかな?

 妥当な説明を考えながら女の子を背負い家への帰路へ着く10才のある日であった。




相手が聞こえてないと思って言ったことが聞こえててあわわわわわわわわわわみたいな

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