「ちびっこバトル大会優勝はミナモシティのユートくん8才です!」
わーわーパチパチパチパチ
歓声と拍手が会場内に響き渡る。
なんでいきなり優勝してるんだと思うかも知れないが他でもない俺自身もなんで優勝出来てるんだと困惑している。
まさか進化前ポケモンのヒトモシで優勝出来るとは思わなかった。
足元のふみに視線を合わすと
「もしぃ…………!」
なんかどや顔をしていた。かわいいので撫でておこう。
さて、そもそも優勝以前になぜこの大会に出ることになったのかそれは少し前にさかのぼる。
「ちびっこバトル大会?」
いつも通りふみと散歩がてら近所の子供とバトルをして家に帰ってくると母さんが1枚のチラシを俺に見せた。
「最近ユートポケモンバトルに夢中でしょ? だからふみちゃんと一緒に出てみたらどうかなと思ったんだけど」
大会かぁ、うーんいずれポケモントレーナーで生計をたてていくつもりだからいつかは大会にも出る予定だが今は時期尚早なのではないだろうか?
ちびっこバトル大会と言っても大会は大会。それなりのレベルが予想される。
俺の手持ちはヒトモシのふみ1体。到底勝ち抜けるとは思わない。
「ルールは1vs1だからふみちゃんだけで大丈夫よ」
でもなー、今のところは近所の子供とバトルするだけで満足なんだよなぁ。
「優勝商品も豪華だしどうかな」
ああ、商品は見てなかったな。チラシの商品のところを見てみる。
ふしぎなアメ20個
これは凄い、スポンサーなかなかやるじゃないか。
きのみ67種詰め合わせ
これも凄い、67種っていったらきのみ全種だ。
ラムのみやオボンのみはもちろんチイラのみなどの能力アップきのみや各種抜群半減実、そしてなにより努力値減少実があるのがでかい。
ふみも努力値のことを考えず適当にレベルを上げていたのでそれが振り直しができるというならぜひ欲しいところだ。
タウリンなど栄養ドリンクセット
努力値減少実で減らした努力値をすぐに振り直せるのはいいな、買うと高いし。
その他ハネ等
よっしゃでるか。
とハネが決め手になる形であれよあれよという間に出場手続きを済ませ、現在選手控え室にいる訳だが冷静に考えて他の優勝商品はともかくハネって1枚ずつとかそんなんじゃないのかということに気づいてしまった俺はモチベーションを失いかけていた。
そうだよなあ、努力値一気に降り直せるとかそんなうまい話はないよなあ。
そんなふてくされている俺とは裏腹にふみはウォーミングアップのつもりかシャドーボクシングの真似事をするほどやる気に満ち溢れているらしい。
シャドーボクシングをするのはいいが多分それ意味無いぞ、お前特殊型だし。
まあふみがやる気ならふみが満足するくらいまではやってみるか。
「ユートくん、次の試合ですよ」
係員の人に呼ばれた。
「いくか、ふみ」
「もっし!」
ということで1回戦。
そういえばちゃんとしたバトルフィールドでバトルするのは初めてだなと思いながらふみの入ったボールを構える。
「それでは1回戦を開始します、始めッ!」
「行ってこい! ふみ!」
「行けッ! きんにく!」
それぞれ投げられたモンスターボールからポケモンが飛び出す。
1匹は見慣れた俺のポケモン、ヒトモシのふみ。
もう1匹は人間の子供のような体格のポケモン。しかしその体格に不釣り合いの肉体を持っている。
「ワンリキー…………」
これは少し不味いか?
ワンリキーの持つ特性ノーガードは技の命中率、敵の回避率に関係なく技が必中になる特性だ。
ワンリキーの進化系カイリキーはその特性ノーガードで命中率は低いが当てた相手を確実に混乱にする優秀な技ばくれつパンチを得意戦術とするポケモンだ。
進化前のワンリキーにも同じことが言える。
必中、つまり俺たちの得意戦術であるちいさくなるが意味をなさないと言うことだ。
しかしゴーストタイプのヒトモシにワンリキーのタイプ一致技の格闘タイプの技は当たらない。なのでまだ勝負は分からない。
「きんにく、みやぶるだ!」
「かえんほうしゃ! …………なっ!」
かえんほうしゃがワンリキーにヒットしワンリキーはダメージを受けるがそれを耐えみやぶるを発動させた。
みやぶるの効果は2つ。
1つは相手の回避率に関係なく攻撃が当たる効果。
この効果もちいさくなる使いとしては無視はできない効果だが今重要なのはもうひとつの効果。
ゴーストタイプのポケモンにノーマル、格闘技が当たるようになるという効果だ。
つまりは…………格闘技がくる!
だがその前にワンリキーを落とせば良いだけの話だ。
「落とせ! かえんほうしゃ!」
「もしッ!」
俺の指示を受けたふみはかえんほうしゃを放つ。
命中したかえんほうしゃだったがしかしワンリキーを倒しきるには至らなかった。
「あっ!」
「きんにく! ばくれつパンチぃ!」
そして放たれた必殺のばくれつパンチが…………
スカッ
大振りなモーションで空をきった。
「…………え?」
え? 必中は? え? え?
「か、かえんほうしゃ」
3発目のかえんほうしゃを耐えることが出来なかったワンリキーはフィールドに倒れた。
あのワンリキーはこんじょうだったようだ。
なぜばくれつパンチを採用していたのかは謎である。
2回戦以降は問題なく勝ち進んだ。
危惧していた進化系ポケモンによる種族値の暴力もなく戦った進化系ポケモンはアゲハントとエネコロロくらいであった。
アゲハントはタイプ相性にしたがいかえんほうしゃで沈み、エネコロロはそもそもノーマルスキンによってノーマルタイプと化した技ではゴーストタイプのヒトモシに当たらず完封してしまった。
そして優勝台に立ってようやくトレーナーになる前の子供がそんなたいした戦術を持っている訳がないということに気がついた。
気づくのが遅すぎである。
まあ商品が豪華な大会で優勝出来たのだから素直に喜ぼう。
「優勝者のユートくんには優勝商品のふしぎなアメ20個。きのみ詰め合わせセット。栄養ドリンクセットが送られます」
「ありがとうございます」
スポンサー有能だなぁ。
「そして副賞のえーと、各種ハネ1000枚セットですが……欲しい? これ?」
「よっしゃあ! ありがとうございます!」
なんだこのスポンサー! 有能過ぎんだろぉ! 思わずガッツポーズ!
「ええー、あー、優勝者のユートくんでした」
こうして俺達の初めての大会、まあちびっこ大会とかいうレベルの低めの大会だったがそれでも優勝という結果に終わったことを喜ばしく思おう。
次回ふみちゃん進化します…………やっとだよ