ポケモン世界で嫁と生きる   作:夢月一郎

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1話 ごさいってなに?ドサイドンの仲間?     

 俺がこの世界に生まれ落ちてはや5年。

 そう、生まれたのだ。いわゆる転生というやつらしい。

 転生といえばあれだ。トラックに轢かれてなんやかんやとか。神様が出てきて間違って殺したからうんぬんかんぬんとかそういうやつだ。

 …………まあ、どっちも覚えがないんですけどね。

 

 さて、転生といったら異世界。異世界といったら転生といった具合に転生と異世界は切っても切り離せない存在である。

 俺のいるこの世界もまあ異世界である。もとの世界とこの世界の差異ももうわかっている。

 

「ワンッ! ワンッ!」

「おう、ハチ。今日も元気だな」

 

 この橙色をした犬? 犬…………だよな、犬である。

 もとの世界の犬と何が違うかというといえばこいつは火を吹きます。あと太陽光集めてビームとか打ちます。

 

 ガーディ

 

 この世界でももとの世界でもそう呼ばれているポケモンである。

 

 ポケモン。そうポケモンである。この世界はポケモンの世界なのである。

 やったぜ。

 

 しかし、ポケモンかどうかもあやしい存在も確認している。

 2年ほど前のニュースである。

 

『カントー地方にて新種のポケモンが発見されたようです。ピカチュウの頭にゴーリキーの体を持つこのポケモンは発見者の現地のトレーナーにより<ゴリチュウ>と名付けられました。このゴリチュウは今までピカチュウにしか効果のなかったとされるでんきだまを使えることからゴーリキーではなくピカチュウの変種なのではと研究が進められています』

 

 …………ゴリチュウがいるんだよ! この世界!

 しかもこの世界の人は普通に受け入れてるみたいだし。

 どういうことだってばよ。

 

 まあいいや、このニュースで俺が注目したのはゴリチュウがいるということじたいよりもゴリチュウと名付けた人間がいるという部分である。

 

 こいつ転生者じゃね? と俺はそうにらんでいる。

 ぶっちゃけだからどうしたという話なのだか。

 

「ユート、ポチのお墓参りにいくわよ」

「はーい母さん」

 

 母親に呼ばれ俺も出かける準備をする。ユートというのは俺の今生の名前だ。

 ちなみにポチというのは家で飼っているガーディのハチの父親で俺が3歳の時に寿命を迎えたウインディのことだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おくりびやま

 

 ホウエン地方のヒマワキシティとミナモシティの間にある慰霊スポットでありポケットモンスターシリーズではカントーシオンタウンのポケモンタワーに次ぐゴーストタイプのポケモンの住みかである。

 

 俺はミナモシティに住んでいるのでわりと近所である。

 

 さて、ポチの墓参りも何事もなく無事にすみ後片付けをしているところで俺は尿意を催した。

 

「ちょっとトイレ行ってくる」

「1人で行ける? お母さんついて行こっか?」

「だいじょうぶだよ、1人で行けるよ」

「うーん、じゃあハチについて行ってもらいなさい」

「あー、うん、わかった。いくぞ、ハチ」

「ワンッ!」

 

 まあ5才の子供を野生のポケモンがいるところで1人で歩かせるというのも心配なのかもしれないな。

 ハチはそこそこレベルも高いようだしこの辺の野生ポケモン相手ならそうそう遅れはとらないだろう。

 

「…………ふぅ。よし、戻るぞハチ」

「ワンッ」

 

 用を済ませた俺は元いた場所に戻るためハチに声をかけ歩き出した。

 しっかし前々から思ってた事だがポケモンって賢いよなぁ。

 ポケモンセンターにも行ったことがあるのだがそこで働いていたラッキーは普通に人間並みの働きをしていた。

 ここにいるハチだっていくぞの一言で俺についてきたし、戻るぞの一言で元来たルートを先導までしている。

 ポケモンってみんな知能レベル人間並みなのかなぁ。

 などと考えていると急にハチが立ち止まった。

 

「ん? どうした、ハチ」

「ワンッ! ワンッ!」

 

 ハチは何かを訴えかけるかのようにこちらを見て吠えると俺の服を噛んで帰りのルートとは違う方へ引っ張り出した。

 

「おい、ハチ。そっちは違うぞ」

「ワフゥ! ワフゥ!」 

 

 引っ張る力が強くなった。

 

「ワフゥッ! ワフゥッ!!」

「わかった! そっち行くから放してくれ!」

 

 そういうとハチはくわえていた俺の服を放し俺の追い付ける程度の速さで走り出したので俺もハチについて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく走っていると急にハチが俺が追い付けないほどの速度まで加速し曲がり角の方へ消えていった。

 

「おい、まてよ! ハチッ!」

 

 少ししてハチが消えた曲がり角まで行くとそこには2匹のポケモンがいた。

 

 1匹はガーディ。こいつはいい。うちのハチだ。

 もう1匹のポケモンはそこに横たわっていた。

 

 30センチほどのロウソクのような白いボディに顔がついているこのポケモン。

 知っている。

 このポケモンは俺が前世で最後に育成しようとしたポケモンだ。

 

「ヒトモシ…………」

 

 しかしなぜこんな通路の真ん中で寝ているのだろうなどとのんきなことを考えてヒトモシを改めてみるとあることに気づいた。

 

「こいつ怪我してんのか。よく見つけた、ハチ! よくやった!」

「ワンッ!」

 

 とりあえずポケモンセンターに連れていけばだいじょうぶかな。こいつを連れて元いた場所にもどるか。

 

「先導よろしく、ハチ!」 

「ワンッ!」


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