「お、感想きてるし、少しずつお気に入りに入れてくれてる……ま、普通ににわかってこと書いてあるからこんなものだろ。でもこれで興味を持ってくれて、東方あべこべ増えるかな?」
今日
「……ランキングに場違いなやつがいるんだけど……ええ……お気に入りが十倍以上に膨れ上がってるんだけど……わけわかんない……」
何度も言いますが、作者は初期段階に東方ファンです。ですが、現在はそれも離れて長い状態、なのでもはやにわかといっても間違いはないでしょう。
なのでキャラ選択はすごく限られているし、小説も見切り発車なのです。
つまり、ある程度の設定を考えれば誰でも書けるのです。
さぁ新規小説作成をクリックしましょう!ランキングを埋め尽くすのです!
今回はすごく真面目な回です。恐らくこの小説では1、2を争うくらい。
「巧さん、疲れているしとりあえず今日はここで泊っていきなさい」
夕焼けの気配がする時間に、霊夢は言った。
やはり異を唱える人物は現れる。
「まって霊夢、私の家に泊めましょう」
「いやいや私の家に――」
「じゃあ巧さんが決めてくれるかしら、盛っている女二名がいる家と、森奥深くに家があるたまに変なことになる魔法使いの家、そして私の神社、どれがいいかしら」
選択肢なんてなかったと思う、なんか怖いし、特に狐の人。
この部屋にて二度目となる目覚めと、天井を見て、静かにため息をつく。
横では霊夢の寝息が聞こえ、彼女はどうしてこうも無防備なのだろうとさらにため息をつく。
幻想郷。自分の世界とは美醜の価値観が逆転した世界。
(まずは今持つ情報の真偽の判断と――帰り道)
昨日何度か神社からの離脱を試みた、――が思惑通りにはいくことはなかった。逃げるような動きを見せると、霊夢は確実に巧の動きを察知して、声をかけてくる。
(一応イケメンと思われていると思い込んで、耳にイヤホンがないかと直接調べさせてもらったけど、なかったし――監視カメラを確認できる機械も見当たらなかった)
となると、本当に霊力みたいな能力がありそうだ。
ここまで状況証拠がそろい始めたが、それでも巧は半信半疑だった。
ゲームのような世界。
異世界。
それを一日で信じろというのが、無理なのかもしれない。
まぁ情報は多くてダメなことはないのだから、できるだけやっていこう――。
「よう霊夢!久しぶりぃ!」
「うおぉ!?」
縁側へと続く襖が勢いよく開け放たれた。そして、現れたのは奇妙な幼女である。
大きなリボンとフリルのついたシャツ、さらにフリルのついたスカート。
それは普通の恰好ではあるが、奇妙なのが二つある。
「つ、角?」
「……あれ、アンタだれ?……って男?」
さらには、まるで奴隷につけられているような鉄球が手首につけられている。
「お、男?顔面ゲロ製造機な霊夢に男?しかも美形……」
「……なによ」
霊夢の声が響き渡る。巧が振り向くと寝起きで不機嫌そうな霊夢がいた。
そして巧が起きていることに気が付き、彼女は両手で髪型を整えると、ふぅと息をつき、さらりと髪をかき上げる。
少しばかり遅いと思います、と巧は思った。
「朝食にするわ。何か食べたいものがあるかしら」
「霊夢、どうしたんだ?いつもは『お前なんぞ土でも食ってやがれ』とか言っていたのに!?」
「言ってないわよ、失礼ね。木くずでも食べてなさい、よ」
「……どっちも食べ物じゃないんですが、それは」
寝起きだというのにスムーズに彼女は立ち上がると、巧の隣へと移動する。巧のツッコミはどうやら空気のようである。まぁたいして重要なことではないし、それはいい。
隣に座る霊夢からいい香りがして、巧の心臓が高鳴った。
「それで、何が食べたいの?」
「……えっと、あー……味噌汁?」
「毎日飲みたい感じ?」
「まぁ好きだし、毎日飲みたいかな……?」
そういうと、彼女は少し顔を赤らめた。
「と、とりあえず居間に行ってて、萃香に状況説明を頼めるかしら」
「えっとがんばらせていただきます……?」
呆然自失とする伊吹萃香をよそに、二人は立ち上がった。
霊夢は寝室から外に出て、巧は萃香へと近づく。
「あの……」
「霊夢――喪女の誓い――我ら二人、姓は違えども姉妹の契りを結びしからは、心を同じくして彼氏を作らず――いや作れないなぁ出会いがしらに種族関係なく悲鳴あげられるしなぁ……はっ、どうかしたのかな?」
「いえ、居間で説明をするので、行かないですか?」
「……わかった。これはもうじっくりと教えてくれないとね――」
「……信じられない」
説明を終えた後、萃香は眉を顰めていった。
「けど――真実の響きは伝わったね、というより状況証拠が真実だと指示しているからねぇ。私を見て不快そうにしないってだけで、言葉に真実味が乗せられる。それに霊夢と寝るなんて肥溜めに浸かって寝るようなもんさ」
「幻想郷の人ってなんか辛辣すぎません?」
教えたのは、自分がこの世界でいうブサイクが好きなことや、外来人であることだ。
帰りたがっていることは言わないでおく。
真実の中に嘘を混ぜるのが、賢い嘘のつき方だと上司が胸を張って言っていたのを、巧は思い出した。
……胸を張って言うことではない。
「で、お兄さん。どうするつもりだい?」
「どうするつもりって?」
「――帰りたいんだろう?」
巧は驚きで息が詰まる。萃香を見ると、ふっ……と見た目からは想像できないほど、ずっと大人びた笑みを見せた。
「鬼っていうのは、嫌われものさ。嘘はつかないが、人は浚うし、異常な力を持っているから妬みや憎しみは慣れてるんだよね。だからわかるのさ、相手がどれだけ心を隠しているか、裏でどれほどの欲望を抱えてるか、なんてね?」
「……ええと、伊吹さんでしたっけ?」
「萃香でいいよ」
「じゃあ萃香さん。その……帰る方法を知ってますか?」
「それについては何も言わない」
返答は良いものではなかった。
やはり自分で見つけるつもりで動くべきなのだろうか、と巧は考える。
その様子を見て、萃香はため息をついた。
「お兄さん。私はなんといったかなぁ?」
「え?何も言わないって――あれ、知ってるんですか?」
「言われてから気づいたようだね、それじゃあ幻想郷では生きてはいけなそうだねぇ」
「……ええと、ごめんなさい?」
萃香はククッと低く笑った。
「酒呑童子は知ってるかい?」
話が飛ぶ。掴めなさに巧は混乱しつつも、記憶から思い出せることを口に出す。
「えぇと鬼……?」
「愛を拒否したから醜い鬼へと変わってしまったり、八岐大蛇の子であったり、僧に人肉を与えた餓鬼であったりと、まぁ色々と所説ある鬼さ。ただ言えることは、その者は醜く変貌し、愛されぬ日々を送った」
「へぇそうなんですか?すごい鬼ぐらいしか知らなかったですけど……」
「長き人生の孤独というのはすごく辛い。幸せな家族、愛し合う夫婦、生きる日々だけ煮込まれ濃くなっていく、だけど年月による経験がそれを抑える。奪えども奪えども何も得られない。『お前は男には愛されない』なんてわかりきっていることだしねぇ。妖術でそれを覆い隠そうとも、わかってしまうのさ、ぽっかりと空いた、虚しい気持ちが。さて、鬼というのは嫌な性分を持っていてね?」
「……それで、どうするつもりかしら?」
両手にお盆を持って、霊夢が居間へと入ってくる。
萃香は驚く様子もなく続けた。
「これは忠告さ。渇望は年月では薄まらない。欲しいけど無理だと言って諦めるものではない。霊夢はわかっているははずだ。諦めていたのに、それが可能だと言われたときの気持ちは、その渇望は年月を経るたびに巨大になる、なんてことはねぇ」
「それで『幻想郷はそんなやつらだらけ』とでも続けるのかしら」
わかってるねぇと萃香はにへらと笑った。だから――ね?と言いながら、巧へと視線を移す。
「お兄さん。気を付けたほうがいい、甘美なお菓子のように、一口食べればもう一口、もう一口と欲望がでてくる、それは全てを食らうまで永遠と続く、いや終わらないかもしれないねぇ。その時は――帰れなくなってしまう」
「……ええと、ヤバいってことですか?」
萃香は頷く。唇をちろりと舐めて、足を組み替える。見た目は子供だというのに、妖艶さは紫と藍に比べても遜色ない。
「ああ奪いたい。ああ堪能したい。まるでその道で知らぬ者のいない料理人の料理のように、味すらわからないのに、期待が心を高ぶらせ、唾が止まらない。そんな鬼が目の前にいるのに、危機感のかけらのないお兄さんに、まだすこぅしだけ理性のある私からのお言葉ってところかなぁ?」
言い終えてから、萃香はケタケタと露わった。
さて目の前にいる、美咲巧はどう思っただろうかと萃香は笑いながらも観察すると、想像とは全く違っていた。
嬉しそうに、恥ずかしそうに笑っていたのだ。
「異形に暗に浚うぞと言われて、嬉しそうにするとは……変わっているねぇ」
アテが外れて、萃香は頬を掻きつつ苦笑を浮かべた。
そういわれてしまって、巧はさらに頬を赤らめる。
「いやなんていうか――さっきも言った通り美醜の価値観が違うので、俺にとってはかわいい娘(こ)が魅力的だと言ってくるようなものですからね」
すごいとは言われたことがある。
しかし、巧にとってアメフト以外を褒められるのははじめてのことだ。
学業は普通だから、たいしてほめられたことはない。
容姿なんて言わずもがな。
「か、かわいい……かい?」
「なんていうか美少女ですからね」
「び、びびび」
萃香の視線が泳ぐ。容姿を褒められたことなどない。されたとしても、相手を妖術で魅了したからだろう、だが彼は違う、妖力の気配などなく、術で操られていることもなく、本心であることがわかる。
本心は心に響く。感じたことのない響きに、萃香は狼狽した。
「いや、あ――う―――あ、ありがとう、なんて、はは……」
「萃香」
悪い笑みを浮かべた霊夢が、名を呼ぶ。
拗ねたように萃香は口を尖らし、半目で彼女を睨む。
「う……なんだよ」
「アンタの負けよ」
霊夢にはっきりと敗者であることを突き付けられ、萃香は紅潮した頬を隠すことなく大の字になって床へと倒れ込む。
「ッハハハっそうだねこりゃ負けた。というわけでお決まりの財宝の進呈ってところかな?」
霊夢と、どこかすっきりとした声色の萃香。
よくわからなくて、混乱している巧。蚊帳の外というか、この幻想郷の住民は言葉が足りなくて、昨日から首をかしげてばかりいる。
なんてことはない、この鬼は面白半分で脅していただけだが、純粋に忠告だと思っていた彼は知るよしもない。
「というわけでお兄さんの欲しい情報をあげよう。霊夢は朝食をよろしく。賞品を得られるのは勝者であるお兄さんだけだよ?」
「はいはい、わかったわよ」
霊夢はお盆に入っている朝食を、巧の前へと置いていく。
巧が礼を言うと、ほほ笑んで外へと去っていった。
綺麗な笑顔だったなぁとそれを見送っていると、服を引っ張られる。
その力が思いのほか強くて、ぐらりと体勢を崩して床に倒れ込む。
引っ張った正体であろう萃香を見ると、彼女の顔が間近に迫っていた。彼女は巧の耳元で囁く。
びくんと反応したが、昨日の藍のように見た目からは想像できない力で掴まれて動けない。
「外から幻想郷から転移してきたという人物は多くいる。彼女たちを探すと良い、真っ赤な館や、神様なんかがいい例だ。でもお兄さん、何度も言うように甘美なお菓子は逃げることを知られてはならないよ?」
そういうとふっと耳に息をふきかけた。
びくんと巧は反応して、思わず逃げる、高鳴る心臓を手で押さえながら。今度は逃げることができた。
いたずら成功とでも言わんばかりの笑顔を見せる萃香は、さらに加える。
「方法はお兄さん自身で考えてね?」
「う……はい、その――ありがとうございました」
霊夢が食事を運んできた――そこで話は区切った。
助けてくれる人が多くいて良かったと、巧は安堵する、これからの幻想郷生活も悪くはならないかもしれない。
笑みを浮かべる巧を眺めつつ、萃香は上半身を起き上がらせて、大きなひょうたんを手に取った。中に入っている酒をあおるように飲んでいく。
萃香は大きく息をつくと、誰にも聞こえない小さな声で言った。
「ほら信頼を寄せる。――信じていいのは今だっていったのにねぇ」
「え?なんか言いました?」
「言ったけど、何を言ったかは言わないさ」
得られない財宝は、届かないものは、いつだって魅力的にうつるもの。
酒呑童子――伊吹萃香の瞳には怪しい光が灯る。
それを見破ったのは、やはりこの少女、博麗霊夢である。
どっちにしろこうなる運命であろうことは、彼女は予期していた。だが、止めるつもりは一切ない。
伊吹萃香はどこにでもいて、どこにでも眼がある存在なのだから。
「さて、パチュリー今日も借りに来たわけだが」
「帰るのか、おとなしく探した後におとなしく帰るか、どちらかを選びなさい」
紅魔館、地下にある大図書館で魔法使い二名が対峙する。
片方は霧雨魔理沙。そしてもう片方はパチュリー・ノーレッジ、図書館の主である。
魔理沙は肩透かしを食らったように首を傾げる。
「なんだ、鏡でも見たのか?人生諦めたかのようなことを言いはじめるなんてな」
「抵抗を諦めただけよ。抵抗すれば後片付けが面倒だし、さっさと渡して帰ってもらうほうが本を読める時間もできるし、研究もはかどるのよ」
「まぁこちらとしても楽だし、すぐに神社に向かえるのは助かるが――今日は借りるだけじゃない、返しにもきたわけだ」
そういうと、魔理沙は帽子を取って、上下にふる。するとどうだろうか、中からおびただしい本が滝のように流れ落ちる。
それを見てパチュリーは目を丸くした。
「確かこれで全部のはずだが――」
「小悪魔、迎撃システムを起動しなさい!」
「は?」
「え?パチュリー様、いきなりどうかしたのですか?」
赤い髪の少女が本を抱えながら、驚いてパチュリーへと近づいていく。
「幻想郷が――滅びるわ」
「これは――う、奪われた本……しゅ、終末が来る――!!」
「幻想郷?肥溜め郷の間違いじゃないかしら、なんて思っていたけど、幻想郷を失うわけにはいかないわ……!」
「お前らの中での私の評価はよぉくわかった。でも私も変わるんだ!」
「どういう心変わりよ……」
訝しげなパチュリーに訊かれて、魔理沙はちょっと頬を赤らめた。
言い淀んだ後、恥ずかしさを隠すようにはにかみながら言う。
「その……嫁が泥棒みたいなことをするやつとか嫌かもしれないし……」
返って来たのはパチュリーが床に吐しゃ物をぶちまける音だった。
胃液と紅茶の混合物。基本食事が要らないように術を使う彼女は、趣向品として紅茶を飲んだり、お菓子を食べるぐらいしか胃に入れない。
あああブサイクの波動が脳を犯すぅぅぅ、と顔をゆがめて頭を掻きむしり、うめき声をあげるパチュリーに、小悪魔は必死で背中を擦る。
「体も弱く喘息もちのパチュリー様に、精神破壊をするなんて!鬼!悪魔!魔理沙!死なないでパチュリー様ぁ!!ベルフェゴール様を性奴隷にするって約束してくれたじゃないですかぁ!」
「あああ……初めて竹林の向こうへと行ったときにくらった、噂以上のカグヤゲロマゲドンよりかはまだマシだから、大丈夫よ……」
「……いくら私でも泣かないとは限らないんだぞ……?」
カグヤゲロマゲドン――その名は幻想郷で生きる者は誰もが知る、この世の全ての邪悪を鍋に放り込み、煮込んでできた何かである。もはや存在が絶望である。
効果は単純、見たら死ぬ。見ずとも一緒の空間にいると発狂する。
魔法使いとして英知を深め、老いることもなく、また簡単に死なずという人の領域を逸したパチュリーであっても、出会いがしらに悲鳴を上げて一週間ゲロまみれになりながらのたうち回り、ひと月壁と会話したという。
だからこそ永遠亭に住まう人は、ブサイクであろうとも称えられ、こう呼ばれる。
『絶対不滅精神猛者(アンブレイカーズ)』と――。
「わ、私が幸せになったとしても絶対に分けてやらないからな!」
「眠らずに夢を見るのは愉しそうね、小悪魔」
「見れば見るほど怖くなるんですよ、覚めるのが」
「じゃあ鏡を渡すのが優しさかしら。それとも見させ続けることかしら?」
「夢なら大図書館が吹き飛んでもいいような気がしてきたぜ」
魔理沙はこめかみをヒクつかせながらミニ八卦炉へと手を伸ばした。
次回は残念なメイドがメインです。
あぁ……なんか怖い……とてつもなく怖い……更新が怖い……
申し訳ない
ちょっと更新遅れます。
色々問題(パソコンが自動更新後、起動しない)や忙しいくもあるので、完全に滞っています。
なんかもう...本当に申し訳ないです