残念なヤツラだらけの幻想郷   作:KTquick

1 / 4
酒の勢いってすげぇ……
口調も変えようとしたけど、途中で女言葉になるのでやめた。

二次創作での美醜逆転増えませんかね?



蓮コラの検索はやめたほうがいいです。
本当にやめたほうがいいです。


一話

美咲巧(みさきたくみ)の二つ名はオークキングである。

普通いじめかと思うが、そうではない、彼はまさしくキングであり、オークだったのだ。

彼がアメフトに出会ったのは中学生のころである。昔から体躯が異常に発達し、中一という幼さながら彼の身長は180を軽く超えていた。性欲に素直だったその時代、彼はモテたいからスポーツをやろう、と考えたことからアメフトをはじめた。

伝説とも呼ばれるプレイヤーのはじめた理由が、とんでもなくしょうもないことはオフレコで頼みたい。

彼の思惑通りに行ったかと言えば、そうはならなかった。彼は大成したし、海外でも注目された。高校大学を経て、たくさんのチームに「入ってくれ」と要望を出されたこともある。

が、驚くほどモテなかった。

理由は簡単だ、ブサイクだからだ。

女性というのは、人気のある男に魅力を感じやすいと聞く――

が、ブサイクに希望はなかった。

それを悟ったのは、悲劇と言って差し支えないだろう、大学生という遅さだ。

灯台下暗しというやつである。ふいにいつもと違う行動をしてみると、答えは目の前にあることに気づく。別にヤケにもならなかったし、女性に対して憎悪もおこらなかった。

「あ、そうだったんだ……」

という諦めと虚脱感が、彼を襲った。

そして次に彼を襲ったのは、羞恥心だった。同じ大学のアメフトプレイヤーたちの努力。泥にまみれても這い上がろとする根性。

あれ、俺恐ろしく恥ずかしい奴じゃね?

と今更ながらに彼は思った。モテてぇ!だけの男が本気で上を目指すやつらと一緒にいる。こんなことを許されるものなのだろうか――?

かくして、彼はアメフトから去ることとなる。

多くの引き留める声があったが、なにも語らずに立ち去り、ごく普通に単位を取り、ごく普通の会社へと入社した。数年でかつての名声は灰のようにくずれ、あってないようなものへと変貌した。

 

「んお?」

 

秋葉原。海外でも有名なそこの駅から少し外れた場所に、彼の職場があった。

駅前には数多くの飯屋が立ち並び、当然彼もそこで食事をとる。意外と量が多くて、味もそこそこで、値段は安めなのだ。

昼休みの帰り道、彼はとある路地裏で止まった。

日本人ではない、鮮やかな金髪。

秋葉原は観光地としても有名だ。足を運べば中国人がキャリケースを引いて歩いているのを見かける。白人も黒人も、比率は中国系と比べると低いが、多く見かける。

だから、非常に困惑する様子を見せる彼女は、迷っている外国人なのだろうと思う。着ている服装も奇妙だ。ゆったりとしている服装にもかかわらず、その隠しきれない豊満な双丘を見て、巧は思わず目を逸らした。

そういえば、と彼はバッグへと手を入れ、一部のパンフレットを取り出した。

それには『秋葉原まっぷ』と書かれていた、営業で彼の会社のパンフレットを置いてもらおうと、近隣の店舗を回った時に、無料ながらにその精巧さやこだわりに目を奪われて取ってきたものだ。

といっても、持ち帰っても開きすらしなかったが。

彼は顔が悪いことは承知している、が――だからといって困っている人を無視するわけにもいかない。

勇気をもって、彼は女性へと歩いていった。

 

 

 

八雲紫はイケメンは好きだが、人間は嫌いである。

妖怪は基本化け物のような容姿をして、美男子が生まれるのは人間ばかりであるから、その思考は若干矛盾している。

食っちゃ寝をして、カップラーメンをいくら食べようとも太ることはなく、肌に吹き出物の一つすらできることはなく、それは紫が例外ではなく、異常な力――つまりは霊力や魔力、妖力といった異端の力を使うものたちすべてがそれに当てはまっていた。

つまりは生まれながらの妖怪は、ブサイクになることが決まっているのだ。

 

「そう考えると藍は悲惨ね、特出しすぎだもの」

「前後もなしにいきなりのお言葉ですが、確実に馬鹿にしましたよね?」

「顔で国を傾ける女ってすごいわよね?」

「大丈夫です紫様、あなたほどではありませんよ?あなたの顔は国どころか世界を――いや申し訳ありません。主にいうべき言葉ではありませんでした。顔面ラストジャッジメントなんて口が裂けても言えません」

「……顔面グロ画像」

「存在蓮コラ」

「水死体になってもブサイク」

「髪の毛一本でも男が逃げるブサイク」

 

という醜い言い合いのもと、残るのは鬱になった二人である。橙はその様子を呆れたように見ていた。

と、その時である。かたり、と家が揺れた。

 

「地震――?」

「待ってください、結界に異常を感知しました」

 

藍の言葉に、紫はすっと瞳を閉じた。

すぐに開くと、彼女は空間に亀裂を発生させ、そこへと足をかける。

 

「藍、霊夢に連絡してきなさい。結界の安定を急務とするように。その後中から原因を探ってきなさい。私は外から探ってみるわ」

「わかりました。……お気をつけて」

「紫様、気を付けていってくださいね!」

 

二人の言葉に、背を向けながら手を振ることで答えると、亀裂へと体を滑り込ませる。

結界の外へと出ると、遠くから喧騒が響き渡った。

 

「……?」

 

紫は結界付近に移動した、――はずだ。

というのに、結果は違っていた。都会の路地に降り立ってしまったのだ。

少しばかり焦りすぎたようだ、外を確認してから出るべきだった。

だが幸い、人の眼はなかったようだ。

周囲を確認し、防犯カメラの類がないことを確認していると、近づく影に気づいた。

異常の原因ではない。

力は一部たりとも感じられず、また隠している様子はない。

彼は何かを手にもって近づいている。少なくとも警戒はすべきだ――。

彼の顔をはっきりと見た瞬間。

紫は運命に出会ったと悟った――。

 

「ディスイッズマップ!ギブユー!」

「あ、ありがとうございます……」

 

拙い英語で彼はパンフレットを差し出してきた。

明晰な彼女はすぐに悟る。

あぁ、観光客と間違われているのだろう、と。

そしてなんと優しい男性だろうとも思った。顔面ナイアーラトテップな女を心配してくれるなどと。

 

「……日本語しゃべれるんですか」

 

恥ずかしそうに男は言った。

 

(び、美男子の顔を赤らめる姿――これであと1000年は生きられる)

「え、えぇがんばりましたもの」

「それはすごい!日本楽しんでいってくださいね」

 

これが旅行だとすれば、紫にとってこの瞬間生きている中で最高の旅行だと言えよう。

この素晴らしき人格者、もはや聖人かなにかだと思われる男を脳内に刻み付け、常人の及ばぬほどに速い回転で幾重にも汚しつくす。

なに無駄なことをしているのだろうか、私は――と賢者タイムと化した頭で若干鬱になった。

 

「それじゃ、私は会社があるので」

(くっ私は妖怪だもの、彼をどうこうしようが問題はない。それが妖怪であるべく姿でしょう!ベッドに縛り付けて、あんなことやこんなこと!)

「……えっと会社に戻りたいのですが……」

(幾千回、欲しいと思ってすぐに諦めてきた子供ができて……彼も父性が出てきて、私に愛情を感じて……うふふ……)

「あの……服から手を放してほしいのですが……えーっとあの!」

「あ、はいなんでしょうか」

「えぇと一人きりの外国はやっぱり怖いかもしれませんけど、頑張ってくださいとしか言えません。でも日本はいいところですよ!治安もいいですし!」

 

なにを言っているのかはわからないが、恐らくは心配されているのだろう。聖人ごときではない、彼はもはや神と呼ぶべきではないか。

と思ったが、妖怪の山にある神社の二柱の神と同等のような気がして訂正しようと試みる。良い案を探っていると、脳内に自分を呼ぶ声が響いていることに気づいた。

 

『紫様!』

『なにかしら藍、今イケメンとラブラブ新婚生活中なんだけど』

『あぁ……ブサイクが脳にまで……』

 

失礼な物言いには何も言わない。だって憐れな負け犬――負け狐に同情してやらねばならないのだから。

紫はふっと馬鹿にしたような笑いを浮かべる。

 

「えぇとすいません。服を……」

『紫様、異常は感じないですか?』

『そうね、いつもの感覚で移動したのに、降り立った場所が違ったわ』

『やはり……どうやら先ほどの地震は空間的なもののようで、ちょうど外と内を隔てる空間で起きたようです。それで異常が起こったようです。恐らくそこは……異世界ではないかと』

『異世界?だから私の顔を見ても人並みの情を向ける男性が現れたのかしら?美醜逆転とか?』

『そんな私たちに都合のいい世界なんてあるわけないでしょう』

 

ぴしゃり、と言われて特に怒りは感じなかった。

あぁまぁそうだよね、というのが脳内にある紫円卓会議全員の総意であった。

 

『とにかく空間が元に戻ろうと修正を開始しました。早く戻ってください!』

 

藍の鬼気迫る声が、危急さを感じさせる。後ろ髪を引かれる気持ちではあるが、後ろに立つ男性へと向き直る。

 

「あ、あぁよかった。もうすぐ昼休憩が終わっちゃいますので」

「私みたいなものに言われても嬉しくはないとおもいますが……あなたに会えてよかったですわ」

「は、はぁ……あの手を……」

「握手をする時間もありませんの、それじゃあさようなら」

「え、き、亀裂?って引っ張ってる!引っ張ってる!」

 

足元に亀裂を発生させ、落ちていく。

あぁ、夢のような時間はもう終わりだ、と胸の内でため息をつく。

 

「あああああ、なんだこれえええええええ!」

「え?どうして――」

 

もしかして私を追いかけて――?

紫の数千と歳を重ねようとも消えない、乙女回路が恋の物語のはじまりを感じさせ――

 

「服ゥ!放してぇ!」

「服――あっ」

 

なかった。失態を理解して、思わず手を放してしまった。

隙間から外は、少しばかり地面と距離が離れていたらしい、男性のみ地面へと落ちていき、2,3回バウンドをして地面へと倒れ伏せた。

顔から一瞬で血の気が引いていく。彼は動かない。

 

「ああああああいええええ!?」

 

恐らくは彼女の知己の仲である、白玉桜の主でさえも聞いたことのない叫びが紫の口から発せられる。

 

「……問題が終わって早々、問題を起こされるとは思わなかったわ」

 

霊夢の呆れた声色が、紫の背後で響いた。

 

「イケメンが死んだぁぁぁぁ!マイスイートエンジェルウゥゥ!」

「うっさい!」

 

霊夢が霊力を宿した幣を、叫び続ける紫の頭へと叩きつける。

地面へと墜落した紫は、激痛に転がりまわった後、痛む頭を押さえながら起き上がる。

 

「……我を取り戻させるだけなら、霊力を宿さなくてもよかった気がするのだけど」

「うるさいわね、こっちは問題が終わってお茶でも飲んで落ち着こうかと思っていたら、目の前で問題起こされたのよ。当事者であるアンタが退治されないのだけいいと思いなさい」

 

そういって霊夢は地面へと降り立ち、気絶する男へと近づいていく。

それを追って紫も男へと近づいていく。

 

「息は……あるわね、骨も折れてはいない。筋肉と脂肪が衝撃を吸収したってところかしら、不幸中の幸いね」

「イケメンでしょ?しかも優しいのよ?もはやこれは運命でしょ?」

「はいはい、とりあえず神社に運ぶわよ」

「ええ、そうね」

 

紫は裂け目を彼の下へと作り出し、神社の畳の上へとつなげる。

そのまま霊夢と紫も追っていき、靴を脱いで外へと放り出す。

 

「さて、布団に寝かせましょうか」

 

ぱぱっと用意を済ませて男の体を運んでいく、とその前にだ。上着くらいは脱がせるべきだろうと霊夢は考えた。

そう考えてみて、ふと手が止まる。

 

「上着脱がせるの?」

 

びくりと霊夢の肩が揺れた。

 

「脱がせばいいじゃない」

 

愉しそうな紫の声。

 

「……まっさきに脱がそうとすると思っていたんだけど」

「脱がせないなら脱がせるわよ?どこかに触っちゃうかもしれないけど、股間とか、胸とか」

「はぁ……脱がせるわよ」

 

性欲魔神へと変わり果てたヤツにやらせるべきではない。

そう思い、スーツの上着にあるボタンへと手をかける。

じんわりと肉感と呼吸音、ぷつりとボタンを外して上着へと手をかけると、隠れていた、首にかけられているホルダーに入った社員証が現れた。

『美咲巧』と真面目な表情をした小さな写真と共に印刷されたカードである。

霊夢はそれにちらりと視線を向けると、ぼそりと「美咲巧さん……ね」と呟いた。

そのまま巧の上半身を持ち上げて、するりと上着を脱がす。腕だけでは心もとないので、霊夢は全身に力を込めて抱き着くようにしてそれを行う。

ほんのりと霊夢の顔が赤く染まった。

 

「ふっふーん♪」

 

後ろでにやにやしている紫の鼻歌で、現実に引き戻されたのか、霊夢は眉を顰めた。

上着を抜き取り、ハンガーへとかけて部屋の隅へと吊るしておく。

その背後で紫がにやにやしながら煽るように周囲をぴょんぴょんと飛びまわっていた。

 

「ドキドキした?ドキドキしたでしょ、心臓が高鳴って、きゅんきゅんしたでしょ」

「うるさいわね、性欲妖怪」

「ふふーん、そんなこと言っちゃっていいのかしら?どうせ貴方も彼に性欲を

感じたんでしょ?嘘はダメよ?」

「……違うわよ」

「おうパンツ脱げよ、どうせびちゃび」

 

神社に殴打音と、畳が破壊される音が響いた。

 




なんか投稿すると重いし、パソコンフリーズする。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。