地主である母は元聖グロ出身で、今は日本戦車道連盟の一員としてその影響力を振りまいている。父はといえば普通のサラリーマンなのだが、実に情熱的で、常に母を支えている。たぶん、父がいなければ今の母もいないだろう。
――そして、自分には姉がいる。
自分が戦車道を歩み始めたのも、全ては姉がきっかけだった。姉は常に優雅で、華麗で、時には本質を突くような言葉を投げかける。戦車道を歩もうとも、美しさを保つために、絶対に紅茶をこぼしたりはしない。
そんな姉が、とても格好良かった。心の底から尊敬していた。妹でいられて、とても幸せだった。
――姉は強いだけじゃない。
仕事柄、両親はよく不在になる。家族から愛され、育ってきたからこそ、寂しさや孤独感を覚えてしまうこともよくあった。
そんな自分のことを、姉は決して見逃しはしない。
「今日もお疲れ様。一緒に、ティータイムを開きましょう」
そう言って、姉は優しく微笑みながら温かい紅茶を作ってくれる。この紅茶が、ダージリンティーが、自分は大好きだった。
ずっと、この関係が続けば良いのに。
気付けば、姉ももう高校三年生だった。青春真っ盛りで恋愛全盛期、それでも自分は「いやいやまさかね」と楽観視していたのだが、
……お姉様に、彼氏が、出来て「いた」らしい。
「なるほど、君が茶山君か。会えて嬉しいよ!」
もう夕方なのに、どうしたのかと歩み寄ってみれば――父と母と、姉と男が、だだっ広い応接間のソファに腰かけ、ご対面していた。
ああ、遂に来たのか。本当に、彼氏が出来たんだ。
自分は「いい?」と母に聞き、そのまま母の隣にそっと座る。
茶山の顔を拝見してみたが、のんびりとしていて、逆に頼りなさげな印象を抱く。真っ先に、「何故惚れた?」と、妹ながらに考えてしまった。
しかしドッキリでも何でもないらしく、姉は常に茶山から離れようとはしない。たかが応接間へ案内されたぐらいで、ガチガチになっている茶山から。
「そうかそうか、君が……いやあ、僕と同じ気配がするね」
「どうも、どうも」
茶山が、にへらと愛想笑いを浮かばせる。それを見て安堵しているのだろう、姉がくすりと微笑んでいるのだった。
「話は、娘から聞かせていただいています。心の底から、幸せにしてくださったようで」
「そんな……話盛ってない? ダージリン」
姉が、首を横に振るう。きっぱりと。
「茶山さんは、私の心身を満たしてくれました。言葉で、食べ物で」
母と父が、興味深く「ほうほうそれで」と頷く。
「聖グロには、あまり和食を食べてはならない、という暗黙のルールがあるのはご存知でしょう?」
父と母が、こくりと同意する。
「ある日、私はどうしても和食が食べたくなって……その時に茶山さんと出会い、色々と手助けしてくださいました」
「ほう」
「それから、食べ歩きに付き添っていって――」
そして、惚気長話が当然のように開始された。父も母も色恋沙汰に興味があるから、姉の一挙一動に注目しきっている。
一方、自分は――仕方なく耳だけを貸していた。敬愛する姉の話でなかったら、「失礼します」とか言って途中退場していただろう。
「――ということがありました」
「……ふむ」
「私にとっての男性とは茶山さんであり、茶山さん以外と添い遂げるつもりはありません」
父と母ときたら、実に良い表情できゃあきゃあと反応している。そこから「私の若い頃は」だの「あの頃を思い出すなあ」だの「花束で結ばれるんだねえ」だのと、両親にも火がついてしまったようだ。
ため息をつく。
「どうしたんだい?」
見られてしまっていたらしい。茶山と目が合い、淑女らしくにこりと微笑む。
「いえ、何でもありませんよ」
「そうかい? 何だかその、気分が良くないのかな、と」
のんびりとしてはいるが、鈍感ではないらしい。ふうんと、心の中で頷く。
「ああ、紹介しますわ。私の妹で、中学三年生。戦車道履修者ですわ」
「へえ……ダージリンと似てて、とても可愛い妹だね」
正直、ダージリンという名前にはあまり馴染みが無い。お姉様はあくまでお姉様だった。
「ありがとうございます。私もいつか、お姉様のような立派な戦車乗りになろうと考えています」
「へえ、いいねいいね。応援するよ」
たぶん、本心から口にしているのだと思う。素で、明るい表情を浮かばせているのだと思う。
けれど何処か気にくわないのは――やっぱり、不毛な嫉妬のせいなのだろう。姉の一番の理解者は、自分であったはずなのに。
「……あの」
「何かしら?」
姉に声をかける。
「本当に、この人が婚約者なんですか?」
「そうよ」
何の躊躇もなく、何の迷いもなく、姉は即答した。
――自分よりも大切な存在が、今、目の前にいる。
「もちろん、自分の意志で決めたわ。この人に、どこまでもついていくって」
「そう、ですか」
嘆息。
姉は女性だ、立派な淑女だ。容姿端麗で、気品に溢れている。
だからこそ、恋の一つもするだろう。一途に想い続けるだろう――こんなことぐらい、中学三年の脳ミソでも理解しているのに。
「――あの」
茶山の声。自分は、あえて緩慢な動きで茶山と目を合わせる。
「どこか、気分でも悪いのかな?」
茶山が、心底心配そうに自分を見つめてくる。何だか嘘をついているような気持ちになって、目を逸らしてしまった。
姉が、「ああ」と声を漏らし、
「いえ、そうではありません。少し、ね」
ちらりと、それでいて強い視線を浴びる。姉には、自分の思惑などバレてしまっているらしい。
「そうなの? でもなあ……」
父も母も、「大丈夫か?」と声をかけてくる。自分は、問題ないとばかりに首を振るう。
「少し、緊張してしまっただけです。ごめんなさい」
「そうかい? 気分が悪くなったら、無理しないで休んでね」
気を遣われてしまった、にこりと笑われた。
たぶん、姉は「正しい人」の事を好きになったのだろう。茶山なら、姉を幸せにしてくれるはずだ。
それでもまだ受け入れられないのは、自分が姉のことを尊敬しているからだ。姉は強くて、美しくて、麗しくて、導けて、「頑張って私を追い越してね」と、頭を撫でてくれて――ただの、ふてくされだった。
「さて。そろそろ時間ですし、夕飯を作りますわ」
父と母が、「何!?」と驚愕する。自分も「はい?」と素っ頓狂な声を上げた。
「花嫁修業の一環、と思ってくださいませ」
父が「いやいやしかし」とうろたえ、母が「まあまあまあ」と喜ぶ。自分は、何とも言えない。
「今日はオムライスでも」
「あ、じゃあ僕も手伝うよ」
茶山が、ソファから起立しようとして、
「殿方は、ここでお待ちを」
姉から、手で抑えられる。実に良い笑顔だった。
「といっても、一人ではまだまだ……家政婦に、少し手伝ってもらいましょう」
姉が、駆け足でキッチンまで向かっていく。
父と茶山と自分があっけにとられる中、母だけは「変わったわねえ、あの子」と微笑ましくコメントする。
その後は、見事なオムライスが四皿分用意された。姉曰く「まだまだ初心者」とのことだが、それを鵜呑みにするならば、姉は料理の才能があるらしかった。
――才能が開花されたきっかけなんて、とっくの昔から分かっている。目の前で、「はい、あーん」をされている男のせいだろう。
口では「やめて欲しい」と言っているくせに、その顔ときたら実に明るい。そこは姉も分かっているらしく、「まあまあ」と受け流していた。
「いいねえ」
「いいわねえ」
父と母が、我が子を見守るように微笑んでいる。自分は――納得はしつつも、まだ受け入れ難かった。
どうしても、時間が必要らしい。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
その後、茶山が「空いてる部屋は何処ですか? そこで眠ります」と提案し、姉が「えっ?」と悲しげな表情を浮かばせた。
――そうか、そこまで進展してたのか。
父も母も「遠慮せずに」と押し切り、後はそのまま、茶山は姉に連行されていってしまった。
ため息をつく。
姉はお嬢様であり、茶山は普通の大学生だ。だのに、順調なカップルっぷりを見せつけてくれている。正直疲れた。
自分が通う女子校では、頻繁に「恋したいなぁ」という声が聞こえてくる。そのたびに「いつか、出来ますよ」とか適当なことを言うのだが――多分、恋愛というものは、突如として襲い掛かってくるのだと思う。
だって、これまでの姉は、一言も恋愛なんて口にしていなかったはずだから。
―――
姉の話によると、彼と出会って120日目が経過するらしい。なるほど、ラブコメするには順調な日数だ。
そうして朝っぱらから、姉と茶山は何処かへ行ってしまった――と思いきや、午後三時には帰宅してきた。何をしに行ったのかと聞いてみれば、
「食べ歩きをしに行ったのよ」
そのまま、姉と茶山が隣同士でソファに腰かける。
ああ。そういえば、それがきっかけで付き合ったとかどうとか。
食べ歩きで、どうやってロマンスまで運んだのやら――適当に推測してみたが、これっぽっちも掴めなかった。
応接間のソファに居座りながら、姉と茶山をちらりと眺める。話題はやっぱり食べ物中心で、今日食べたもの、今日最高だったもの、今日甘かったもの、明日は何を食べようかなどなど、本当に食ってばっかりだったらしい。
一人でティータイムを過ごしたにも関わらず、何だか腹が減ってきた。思うと、地元の料理店って何があったっけ。
「あら」
姉は、人の視線をつかみ取るのが上手い。バレないように様子見しても、決まって声をかけられる。
「どうしたの? 何か、用事?」
「え、いや、その」
茶山が、遠慮しないで、と言いたげに微笑む。
――本当、嫌なところが見当たらない男だ。
「……地元の名物って、なんでしたっけ」
茶山が「ああ」と嬉しそうに声を上げ、
「中華が多いかな。もしかして興味がある?」
何だか恥ずかしくなって、適当に視線を逸らす。そんな自分に対し、姉が「へえ」と前置きし、
「食べてみたくなった?」
「そ、そうとは言ってませんけど」
「あらそう? 残念ねえ」
自分の返答をきっかけに、姉と茶山はまたしても食べ歩き談議へ戻る。
別に誘っているわけでもなくて、本当に食べ歩きが好きなのだろう。茶山は終始笑顔だし、姉に至っては雑誌まで取り出している。次はここへ行こう、ここが評判らしいですわ、スイーツもいいね――
腹をさする。先ほどまでは皆無だった食欲が、急に唸り声を出し始めた。そういえば、中華料理なんて最近口にしていないな――
「ねえ」
再び、姉から声をかけられる。体全体がびくりと動いた。
「な、なんですか?」
「一つ、提案があるのだけれど」
嫌な予感がする。一応、身構えておく。
「明日、三人で食べ歩きしない?」
ほらね。
自分は、ざーとらしくため息をついた。
「デートのお邪魔になるのでは」
「まあまあ、たまにはこういうのも良いじゃない」
茶山も、肯定的に頷く。
「いいんですか? お姉様とは、恋人同士なんでしょう?」
「まあ、そうだけどね」
茶山が、頭の後ろに手を当て、
「でも、僕は、ダージリンの家族とも仲良くしていきたい」
自分の思考が、少し止まった。
「ダージリンのことは愛してる。それで、ダージリンの家族も、君の事も、好きになっていきたいんだ。仲良くしていきたい」
たぶん、素で言っているのだと思う。
姉は、笑顔で「ありがとう」と礼を言っている。茶山は、「当たり前のことを口にしただけだよ」と謙遜している。
――何が当たり前だ。自分は、茶山に嫉妬していたんだぞ。
「……そうですか。あなたは、本当に、お姉様のことが好きなんですね」
「え? ああ、うん」
そして、当たり前のように頷くのだ。
愛しきっているからこそ、恥など覚えない。身分違いなんて、愛というパワーがあれば何とかなると思い込んでいる。
そんな風に、茶山は笑っていた。
――呼吸する。
何となく、茶山のことをもっと知りたくなった。これも、一種の安心感によるものなのかもしれない。
「……茶山さん」
「はい?」
「――よろしければ、明日、食べ歩きについていっても構いませんか」
「え、いいよいいよ」
即答だった。
「良かったわね」
姉が、全部お見通しだとばかりに微笑んでいる。
思う。
この二人、釣り合ってるんだなあと。
―――
姉が茶山と出会い、今日で121日目になるらしい。そんな二人は、食べ歩きを行う為に、昼に外出した――今日は、自分も同行している。
地元とはかれこれ十五年の付き合いになるが、実は、地元に対する知識はあまり無かったりもする。
育ちの良さのせいか、遠出することもしないし、派手に遊んだりもしない。なので、少しでも離れようものなら確実に道に迷うだろう。
当然、どんな店が潜んでいるのかとか、どこがグルメスポットなのか、そんな知識はもぬけの空だ。料理店へ訪問する機会なんて、せいぜい家族サービスの時ぐらいだった。
それは、姉も同じだったはずである。姉は、グルメ趣味なんてなかったはずなのに。
「この店の麻婆豆腐は、地元民から愛されているらしいですわ」
「ほうほう、麻婆豆腐……」
緑色のベレー帽をかぶった姉が、実に嬉しそうに店を指さす。茶山も興味津々なのか、早速とばかりに入店した。
本当、変わったんだ。
寂しいようで、けれど納得しなければいけない。だって姉は、楽しそうなんだぞ。
自分の腕を抱く。
朝だろうと昼だろうと、空全体が白に覆われている。道路は雪に濡れて黒くなっていて、そこかしこに雪だまりの残骸が残っている。赤タイルの歩道も、何処か暗くて冴えない。ニュースによると、地元のどこかで車がスリップ事故を起こしたんだっけ。
空気もすっかり冷たくなった。吸えば体が強張り、吐けば白く尾を引く。今年は風邪をひいてしまうのだろうか、去年は無病のまま乗り切ったのだが。
――さて、店に入ろう。姉が、手招きしている。
難なく席に着き、店員からメニュー表を受け取る。様々なメニューが写真とともに掲載されているが、とりあえずは「普通の麻婆豆腐でいいか」と判断した。
店内のイメージカラーは赤であるらしく、床も赤、壁も赤、天井も赤、照明は暖色と、実にストレートな中華料理店だった。中華料理店の知識はほとんどないのだけれど。
壁には龍の絵画が飾られていて、こちらをぎらりと睨みつけている。何だか対抗心が芽生えたので、ガン見してやることにした。
「中々、いい雰囲気だね」
「そうですわね。麻婆豆腐……楽しみですわ」
聖グロでは、中華料理も推奨されてはいないのだろうか。今でこそ「まあいいか」と思っているが、後になって腹が空くかもしれない。
「妹さんも、気に入ってくれるといいのだけれど」
「いえ、そうお気遣いなく」
知っている。姉と茶山が、「ここが合うかな?」だの「いえ、妹の好みは……」だのと、雑誌を片手に、綿密に計画を立てていたのを。
たぶん、二人きりなら適当に店を選んでいたのだろう。話を聞く感じでは、きっとそうだ。
呼吸を漏らす。
茶山は、本気で家族と向き合おうとしている。自分に好かれようと、手を尽くしてくれている。そんな茶山に対し、姉も協力を惜しまない。
両想いってこういうことなんだなあと、何となく実感する。背が少し伸びた。
「茶山さんの、料理に対する観察眼は本物よ」
姉が、自画自賛するかのように誇らしく微笑んでいる。茶山が喜べば姉も喜ぶ、姉が楽しければ茶山も楽しい、そういう人生を歩んできたのだろう。
「期待します、麻婆豆腐に」
「よかった」
茶山が、にこりと微笑む。やっぱりどこか頼りないが、少なくとも血の気は感じられない。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
店員が近寄ってくる。ふう、と息を吐き、
「『この店おすすめの麻婆豆腐』、お願いします」
「私も、それで」
「僕も」
店員が、「かしこまりました」と受け答えし、そのまま厨房へ進軍していく。
久しぶりの中華料理だ。しっかりと評価してやろう。
「お待たせいたしました、当店おすすめの麻婆豆腐です」
自分と姉、茶山の分の三皿が、「ごとり」と置かれた。
まず、皿のサイズが実にボリューミーである。いわゆるミート皿という奴で、直径25cmくらいはあるだろう。姉も茶山も「でかい……」と口にし、自分は沈黙することしか出来なかった。
しかもこの皿、平べったくないのである。いわゆるボウル、ボウル状なのだ――ここまでくると、何が何でも満足させてやろうという執念すら感じられる。
次に中身だが、サイズと比例して豆腐の数が、肉の量が多く、スープがこれでもかってくらい紅い。出来立てということで、まるで火口のように湯気が立ち上っている。
今は真昼間だが、これを食べたら夕飯はいらないんじゃないだろうか。
しかし、自分の口元は完全に緩みきっている。姉も、茶山も、目が獰猛に輝いていた。
「では」
姉が手を合わせる、茶山もそれに続く。自分は「ああ」と気づき、同じくして両手を一つにし、
「いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
最初は、あえてそっと箸を動かす。食事に緊張なんか似合わないはずなのに、つい圧力を感じてしまう。
火そのものの匂いが、鼻孔を刺激する。視界を阻害する湯気が、かえって食欲を誘う。箸で豆腐をひとつまみし、慎重に口まで運んでいき――食べた。
「うまっ……」
瞬間、何だか恥ずかしくなって、姉と茶山の顔を覗う。
姉も「ん~~」と味わっていて、茶山に至っては何度も何度も箸を動かしていた。
「……ふう」
何だかほっとする。自分は決して浮いてはいないのだと、同じ感情を共有しているのだと、心の底から安堵してしまった。
「どう?」
姉が、微笑みながら感想を聞いてくる。最初から、答えを知っているくせに。
「……おいしい、です」
「それは、良かった」
安心したのは、自分だけではないらしい。茶山もまた、自分のことのように喜んでいた。
「この店、いいですね。リピーターになろうかな」
「良い判断ね」
姉が豆腐を頬張り、熱そうに目を閉じる。何て楽しそうに食事をするのだろう。
「あ、食べきれなくなったらいつでも言ってね」
「はい」
ここまでデカいとは思わなかったのだろう、茶山が苦笑する。しかし小食というわけでもない、何とか頑張るつもりだ。
「それにしても……」
豆腐を頬張り、かみ砕く。
「おいしい」
姉が、まったくその通りだとばかりに頷く。
「これが食べ歩きの楽しさよ。計画を立てたり、時にはあてもなく歩いたりして、気が向いた時に何かを食べる。これぞ自由、という気がするわね」
「確かに」
同意する。これを親しい者同士で行おうものなら、更にご飯が美味しく感じられるはずだ。
食べ歩きには、ほぼマナーが存在しない。決められた食べ物も与えられない。自分の意志で、「これだ」と思って食べてみれば、自由と達成感と充実感と味がもれなくついてくる――なるほど、姉もハマるわけだ。
今回はガイドつきだったから、次からはフリーで動いてみようか。その方が、疑似的な旅も感じられるだろう。
「……楽しかったですか? 茶山さんとの食べ歩きは」
「ええ」
姉が、何の躊躇もなく返事する。
「最初は話し相手として、次第に友達として、恋人として――楽しいに決まってるじゃない」
「そうですか」
今度、友達も誘ってみようか。最初は「何言ってるの」とか言われそうだが、美味いものには敵うまい。
「――しかし、本当に良かったよ」
茶山の箸が止まる。
「はい?」
茶山と目が合う。
「……いい顔で、ご飯を食べてくれて」
「え」
そんなに顔を崩していただろうか。誤魔化す為に、水を飲む。
「ほら、妹さん、最初は無表情気味だったから。――何ていうのかな。いきなり現れた僕に対して、不安を抱いているのかなって……だから、何とかしたくってさ」
麻婆豆腐に、視線を落とす。
流石は年上だ。そういう予感も出来て、何とかしようと考えられる。そういうところも含め、姉は茶山のことが好きになったのだろう。
「まあ、最初は正直、そう思っていました」
麻婆豆腐で体が熱くなったせいだろう、少しばかり気が強くなっていた。
「お姉様に理想の人なんて、見つかって欲しいような、そうでなかったような……フクザツだったんです」
麻婆豆腐を食う、血液が熱くなる。
「で、あなたを見た時、正直に言いますと頼りなさそうというか、ナイトっぽくないというのか」
言え言え、どんどん言え。クルセイダーの如く突っ込め。
「……でも、お姉様はあなたを信頼しきっている。『あの』お姉様がですよ?」
姉は、特に異論を挟まない。妹だからこそ、そういうところも見てきたのだ。
「そしてあなたは――私なんかと仲良くしたいって、何とかしたいって、本気でそう言ってくれている」
茶山は否定しない、恥ずかしそうに笑うだけだ。
「……姉のことを、愛していますか?」
「うん」
やっぱり、即答だった。
――そうか。出会うべくして出会ったとは、こういうことを言うのか。
「少しだけですが、あなたの事を認めます。ただし、お姉様を困らせないように」
「気を付けるよ」
年下にああだこうだと言われても、茶山は自分と目を合わせたままで返事をする。
大学生である以上、こうした事態も予想していたのだろう。そして、受け入れもするのだろう――頑張れば何とかなると、そう信じて。
――少しだけ、罪悪感めいた感情を覚える。だから、
「その……今日は、ありがとうございました。麻婆豆腐、凄く美味しいです」
「そうか。良かった、良かった」
姉も、笑顔で応えてくれた。
――姉は、自分の気持ちを尊重してくれたのだと思う。頭ごなしに「認めろ」と命じるのではなく、自分の意志で交際を認めて欲しいと、茶山のことを好きになって欲しいと、そう願ったのだと思う。
「仲良く」というのは、つまりはそういうことだ。
その時、姉が水を飲み、
「こんな格言を知ってる?」
はっと、視線が姉に向けられる。来た、姉の格言が来た。
はっと、他の視線が感じられる。来た、茶山も注目した。
「え……えと」
二つの視線が突き刺さり、姉の顔が真っ赤になる。だが、ここで目を逸らす奴は何処にもいない。
だって、自分も茶山も、姉のファンなのだから。
「……弱い者ほど相手を許すことができない。許すということは強さの証だ」
たぶん、茶山も目から熱光線を発したと思う。姉は「うう……」と弱りながらも、
「インドの指導者、マハトマ・ガンジーの言葉よ」
それきり、姉は麻婆豆腐を食べることに逃げてしまった。
ふと、茶山と目が合う。
互いに、苦笑した。
あれほどあったはずの麻婆豆腐も、話が乗ればあっという間になくなってしまうものらしい。これもまた、食べ歩きの魅力なのだろう。
姉は満足そうにお腹をさすり、茶山は「ふぃー」と安堵している。自分は、空になった食器を見て何故か笑っていた。
なるほど――これは、楽しい。
「皆さん、食べ終えました?」
茶山と自分は、縦に首を振るう。
「そう。では、」
まずは姉が、次に茶山が手を合わせる。少し遅れて、自分も両手を一つにした。
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
―――
姉と茶山が付き添って、今日で122日目になる。どうも深夜に雪が降ったらしく、庭は数センチクラスの雪だまりに占領されていた。
朝早くから家政婦が家を飛び出し、除雪スコップを武器に雪だまりを排除していく。大雪が降るたびに「私たちもロードヒーティングを設けようかしら」と検討するのだが、電気代を拝見し、見なかったことにするのも毎年恒例だ。
だだっ広い応接間から、だだっ広い庭を眺め、自分はため息をつく。この前、家政婦達が除雪したばかりだというのに――
そこで、姉と茶山が「おはようございます」と挨拶をする。父と母が「おはよう」と返し、茶山がそのまま外を眺め、
「ダージリン」
姉がこくりと頷き、ばたばたと家の中を走る。一体何事かと思えば、二人はコートを羽織り、
「お父様、お母様」
父と母が、「あ、はい」と返事するしかなかった。
「ちょっと戦ってきますね」
姉がにこりと笑い、茶山が小さく頭を下げる。何を――最初に予想したのは、自分だった。
「もしかして」
窓越しから、散々な庭を視界に入れる。
海のような雪原に対し、必死になって抗う家政婦達の姿が目に映る。それぞれが悪戦苦闘を強いられている最中、玄関のドアが開かれ、姉と茶山が転がり込むように加勢する。
家政婦達の動きが止まり、その一人が姉に近づく。恐らくは、「お戻りください」と告げているのだろう。
だが、姉は「まあまあ」と笑顔で受け流し、茶山も握りこぶしを作っている――こうなった姉は、テコでも動かない。観念した家政婦は、二人分の除雪スコップをすぐに用意してくれた。
まるで得意武器を手にしたかのように、姉と茶山は除雪スコップを両手で握りしめる。互いに目を合わせ、にこりと笑顔を交わした。
何処で経験値を積んだのか、姉は慣れた動きで雪を放り投げる。指定個所である雪山に、雪の残骸がゴールインした。
茶山の方も、実に楽しそうな表情をしながら、雪をシュートする。家政婦が頭を下げるものの、茶山は手で「まあまあ」と応える。
父も、母も、自分も、ただただ固まっていた。だって姉が、家政婦に混ざって肉体労働を。
茶山と姉は、ここでも決して離れようとはしなかった。なるべく近い距離で除雪作業を行い、軽やかな動きでスコップを宙に舞わせる。家政婦が拍手をするも、姉は「まあまあ」と笑顔で流すだけ。茶山も苦笑していた。
――姉と茶山が、仕切り直しとばかりに、互いの除雪スコップをこつんとぶつけあう。
姉が、体全体を使って雪を放り投げる。その顔は、戦車道のものと何ら変わらない。
茶山が、慣れた動作で雪をぶん投げる。その顔は、姉の表情と決して変わりがない。
その時、姉と茶山の視線が重なった。
姉が前髪を手で拭い――茶山に対して、「私に向けてくれた」笑顔を浮かばせていた。この瞬間が、この場面が、とても楽しくて嬉しいかのように。
茶山も、喜色満面の笑みで姉とコンタクトをとっている。ついでに、姉の肩にかかっていた雪を手で払っていた。
二人からしてみれば、除雪作業ですら、かけがえの無い時間なのだろう。それは誠意をもって語り合う為に、家を守り抜く為に、家族の為に、殿方を引き立たせる為に、男気を見せる為に――全て、二人なりの愛の表現だった。
「……そっか」
姉は、背が伸び切ってしまったらしい。二人だけの空間、というものを手に入れてしまったらしい。
苦労すらも、愛に替えてしまうその姿は――もう、認めるしかないじゃないか。認めたくも、なるじゃないか。
「よかったね、お姉様」
うん、と頷く。その場で、腕をぶんぶんと回す。
「お父様、お母様」
振り向き、真っ直ぐに両親を見つめる。
「ちょっと、私も手伝ってきます」
父と母が、再びあっけにとられるものの――にこりと、表情が変わった。
「そうか。じゃあ、僕もリーマン根性を見せなくちゃなあ」
「なら、私も手伝うわ」
「ええ、母さん大丈夫?」
母が、不敵そうに微笑み、
「私は日本戦車道連盟の一員よ? 体力には自信があるわ」
関係あるのだろうか。まあいいや。
自分も、にやりと笑い、
「なら私は、クルセイダー魂を見せてさしあげます」
握り拳を作る。後はそのまま、自分の部屋までダッシュで向かい、上着を回収するだけ。
お姉様とお義兄様を支えるのも、妹の役目だ。
―――
朝っぱらから除雪作業に励んでいたはずなのに、気づけばもう真昼間だ。
だだっ広い庭を何とかするのは、決して簡単なことではない。だが、庭が広ければ広いほど、家も比例してデカくなる。そして、デカい分だけ金を持っているものだ。
たくさんの家政婦達が、加勢した姉と茶山が、父と母が、そして自分が、人海戦術をもってして雪だまりを徹底的に追い込んでやった。冬の帝国は、今となっては衰退の一途を辿っている。
むなしいものだ。
激闘を繰り広げた後は、ティータイムと相場で決まっている。一同は応接間のソファに座り、「はー」と安堵した。
いくつかのスイーツを口にし、温かい紅茶を飲む。それで生き返ったのだろう、父が茶山に笑いかける。
「ありがとう、茶山君。君の男気、見せてもらったよ」
「いえ、家を守るのは当然のことです」
そして、茶山は当たり前のように返すのだ。本当、姉のことしか見えていないのだと思う。
「あなたこそ、娘に相応しい人です。――改めてお願いを申し上げます。どうか娘と婚約を、この家を継いではいただけないでしょうか?」
「はい。両親にも、話は通しておきました」
そして、茶山が頭を深々と下げる。
「こんな自分ではありますが。どうか、よろしくお願い致します」
姉も、小さく頭を下げる。父と母は、嬉しそうに笑ったままだ。
自分は――どんな顔をしているのだろう。
「――あなたも、茶山さんのことを、幸せにしてあげるように」
「はい、お母様」
姉が、茶山の背中に手を回す。心の底から、乙女のように微笑んでいた。
「お姉様」
「なに?」
「……幸せに、なれたんだね」
姉が、笑顔で「ええ」と返事をする。
「あなたも、私達のことを祝福してくれて、ありがとう」
「えっ」
「今、とてもいい笑顔をしているじゃない」
そうか。そんな顔、してたんだ。
この空気に、この瞬間に、この空間に、とてつもない幸福感を覚えていたんだ。
「茶山さん」
「何だい?」
茶山は、決して猛々しくはない。けれど姉の幸せの為なら、それに連なる何かを守る為なら、この男は何だってする、してしまう。
「お姉様のことを、よろしくお願いします」
そんな人、認めるしかないじゃない。
「はい。任せてください」
やっぱり即答だった。
ちくしょー。
―――
夜中になって、なんとなく姉と話がしたくなった。認めはしたものの、どうしても寂しさは拭えなかったから。
姉を自分の部屋へ連れ出す際、あらかじめ茶山に断りを入れておいたのだが、
「いいよいいよ、ゆっくり話しておいで」
これだもの。
ありがとうございますと、頭を下げた。
「――お姉様」
「うん」
話題があるわけでもなく、話を促されることも無い。自分はベッドの上へ腰かけ、姉も椅子に座る。
本当、色々あったと思う。姉の彼氏が訪問してきて、流れで食べ歩きをして、初めて除雪作業を行った――正直なところ、夢中になってみると結構楽しかった。
見上げる。真っ白い天井が視界に入る。
姉が帰省して以来、初めて二人きりになる。前までは当然の場面であったはずなのに、今となっては、それは茶山のものになってしまった。
こういう変化もひっくるめて、これが恋なのかと痛感する。やがては、自分も同じ道を辿るのかもしれない。
「……お姉様」
「うん」
「お姉様は、茶山さんのことが好き?」
「ええ、愛してるわ」
前までは嫉妬の対象だったそれも、今となっては安堵すら覚える。
愛する姉に、居場所が出来たのだと。愛する姉に、心の支えが出来たんだって。
「今ならわかります。どうしてお姉様が、茶山さんの事を好きになったのか」
「そう。それは、良かった」
優しい声だった。
すっと、姉と目を合わせる。
「お姉様」
「うん」
「その……私よりも、茶山さんのことが好きですか?」
姉がそっと、首を左右に振るう。
「私は、あなたの事が一番好き」
まばたきをする。
「茶山さんの事は……誰よりも愛してる」
ああ――
そうか。やっぱり姉は、私の姉でいてくれるらしい。
「お姉様……その、ごめんなさい。茶山さんに、あんな態度をとってしまって」
姉が、再び首を横に振った。
「いえ、予想はしてたわ。しょうがないわよね、恋愛ってそういうものよ」
にこりと笑われる。
「だからこそ嬉しいの。あなたが、茶山さんを認めてくれたことが」
「……あそこまでされては、そうするしかありませんし」
照れくさくなって、視線をぷいと逸らしてしまう。
姉は、含み笑いをこぼし、
「そう。――また今度、三人で食べ歩きをしましょう」
「……はい」
あの麻婆豆腐の味は、きっと忘れはしないだろう。姉と茶山が、自分の為に考えてくれた、あの味を。
――姉を見る。
姉の目は、とても輝いている。これから先も、愛と希望を期待しているような、そんな瞳をしていた。
「……綺麗になりましたね、お姉様」
「そう?」
くすりと、姉が微笑む。
「茶山さん、いい人ですよね。私が認めるくらいですし、きっとモテるんじゃあ、」
「ありえませんわ」
きっぱりと言い切られた。
「そんなこと、断じて、ありえませんわ」
「え、それってモテないってこと?」
「そっ! そんなことは、ありませんけれどっ」
ぷっと笑ってしまう。焦る姉なんて、大分見ていなかったから。
「と、とにかく! 茶山さんは私だけの男性です。おわかり? わかった?」
「はあい」
からかうように返事をする、姉は「もうっ」とふてくされた。
――こんなに可愛い人だったっけ、自分の姉は。
「……お姉様」
「なによぉ」
まだ頬を膨らませている。こんな姉、初めて見た。
……そう。初めて見た。
「さっきはごめんなさい。……えっと、こっちに、来てくれますか?」
姉が、「うん?」と呟きつつ、自分の隣に腰かける。今年に入って、姉と最も近づいた瞬間だった。
しばらく見ないうちに、姉の背が高くなった気がする。いつの間にか、前よりも肌が綺麗になった気がする。やっぱり、瞳が輝いて見えるような気がする。
幼かった自分の事を、見守ってくれた姉は、もうここにはいない。恋をして、女性になった「ダージリン」が、私の隣に座っている。
姉は、自分のことを「一番好き」だと言ってくれた。同時に、茶山のことを「誰よりも愛してる」と告げた。
受け入れるように、静かに笑う。
寂しいなあ、でも幸せになって欲しいなあ――だから、
「あっ」
縋るように、姉を抱きしめた。
「旅立つ」前に、少しだけ甘えさせて欲しい。
「……うん」
姉は、私の背中を抱いてくれた。姉は、私の頭を撫でてくれた。
思い出す。私が、戦車道を歩み始めた頃を。
あの時は操縦がへったくそで、すぐに被弾しては白旗を上げていた。一度だけじゃない、二度も三度も四度も。
周囲は「初心者なのだから」とか、「次頑張ればいい」とか、そんな風に私を励ました。けれど偉大な姉と比べてしまい、姉の前でつい「私は戦車道に向いていません。ごめんなさい、ばかな妹で」と、ヤケクソになってしまった。
ああ、怒られるのかな。優雅でないと、美しくないと、指摘されるのかな。
私はうつむいたままで、姉の顔を見ることが出来なかった――姉が近づいてきて、ぐっと身構えて、
抱きしめられた。
「大丈夫、そんなことはないわ」
とても優しい声だった。
「私も、最初は失敗ばっかり。あなたと同じ道を歩んできたのよ」
私を落ち着かせるために、私の背中をさすってくれた。
「でもね、失敗すればするほど、人は成長するの。紅茶をこぼす量だって、減っていったわ」
雑談をしているかのように、姉は明るく話す。
「大丈夫。投げ出さない限り、あなたはいつか、立派な戦車乗りになれるわ」
たぶん、姉は笑っている。
「だって、私の、自慢の妹だもの」
姉は、こんな私のことを信じてくれている。
「知ってるわよ。あなたは、決して怯まず、速度を恐れない戦い方をしているって」
姉が――私の頭を撫でた。温かくて、暖かすぎて、涙が出た。
「その強みを昇華させれば、あなたは疾風になれる、なれるわ。――頑張って、私を追い越してね」
その日、自分は姉と二人きりで眠った。
―――
ダージリンと食べ歩きを計画して、もう134日目。冬休みなんてあっという間に過ぎ去って、ダージリンも学園艦へ戻っていった。
本当、濃厚な冬休みだったと思う。ダージリンが実家に訪問してきて、ダージリンの両親から婚約を認められ、ダージリンの妹という食べ歩き仲間が出来て――しばらくは、冬休みはいらなかった。
さて、今日も大学だ。しっかり生きよう。
その時、ポケットに入れておいた携帯が震える。すぐさま引っこ抜いてみれば、「新着メール:ダージリン」の文字が。
画面をスライドさせた。
『おはようございます。本土はまだ寒いようですね、風邪には気を付けてください。
冬休み、とてもとても楽しかったです。妹も、メールで『今度はピザが食べたいです』とか計画して……機会があれば、三人で寄ってみましょう。
――再び離れ離れになってしまいましたが、私は幸せに生きています。それも、婚約が認められたからでしょう。
あと少しで、私も聖グロを卒業します。その後は、戦車道に強いとされる女子大へ通うつもりです――私は必ず、プロになってみせます』
指を、上下にスライドさせる。
『たぶん、くじけたり落ち込んだりすることもあるでしょう。なるべく頑張りますが、ダメそうになった時は……一緒に、食べ歩きをしていただけませんか?
私はそれだけで、幸せな気持ちになれます。ですから茶山さんも、くじけそうになった時は、いつでも私を呼んでください。お役に立てるのであれば、光栄です。
それでは、春休み中の出会いに期待します。あまり、心臓に悪いことはしないでくださいね。
あなただけの、ダージリンより』
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございました。
これで、ダージリンの自宅編は完結です。次は春休み編ですが、こちらも短く終わると思います。
大学編ですが、もはや「壁」が無い以上、パパッと進行するかもしれません。すぐにエピローグへ突入し、3007日間が経過するでしょう。
ご指摘、ご感想、いつでもお待ちしています。