死にたくない凡人の物語   作:はないちもんめ

9 / 30
クロノのキャラが・・・


0.8 女のツンデレは可愛いけど、男のツンデレは面倒くさい

フェイトに会った日から数日後、クロノからアースラに来るように言われた俺はアースラの内部でクロノを待っていた。

 

「すまない、待たせたか?」

 

「気にすんな。そんなに待ってねーから」

 

クロノが少々遅れてやってきた。そんじゃ、本題に入ろうか

 

「そんで?何か用か?」

 

「実は少々分からないことがあってな。君に聞きたいことがあって呼んだんだ」

 

コホンと咳払いをしてクロノは続ける。

 

「昨日、海の中にジュエルシードがあるのを発見してな。恐らくそれが海鳴で持ち主がはっきりしていない最後のジュエルシードだ」

 

「ほーん。良かったじゃないか。で?」

 

「この後の展開について一応確認したい。黒幕がプレシア・テスタロッサだと言うのは分かった。プレシアがプロジェクトFというクローン化計画に関わっていたのも確認済みだ。君の言っていたことは、ほとんど実証されたとみて間違いないだろう」

 

「…いくら聞いても何も問題がないように感じるんだが?」

 

「大有りだ。考えてみろ。プレシアがジュエルシードを使ってアリシアを生き返らせることを目論んでいるとしたら、今フェイトが手に入れているジュエルシードでは足りない。少なくとも、現在フリーのジュエルシードは手に入れる必要がある」

 

「そうだろうな」

 

「…お前は最初の話を聞いていなかったのか?残りのジュエルシードは海に沈んでいるんだぞ」

 

「らしーな」

 

「海に沈んでいるジュエルシードをどうやってプレシアとフェイトは手に入れるつもりなんだ?ちなみに言っておくが、ジュエルシードがある場所の海深が深すぎて僕たち管理局員ですら取ることができないぞ」

 

「そりゃあ…どうやってだ?」

 

「だから、それを聞いているんだ」

 

頭を抱えながらクロノが質問する。てか…え?最後のジュエルシードってそんな場所にあんの?どーやって取るんだよ、そんなもん

 

「じゃあ、管理局が持っているジュエルシードを奪うつもり…とか?」

 

「無理だ。一度戦ったから分かるが彼女では僕たちどころか僕一人にすら勝てない。確かに強いし、潜在能力はとんでもないが、まだ子供だ。どう足掻いても、使い魔がいたところで僕たちからジュエルシードを奪おうとするのは自殺行為だ。そして彼女ほどの実力者がそんなことに気付かないはずがない」

 

だから、彼女が僕たちを襲うことはほとんどありえないとクロノは言う。

 

「…ってことはフェイトたちが取れるのは海の中の管理局ですら取れないジュエルシードしかないってことか?」

 

「さっきからずっと、そう言っているだろ」

 

…何その無理ゲー。どうやってフェイトはジュエルシードを取るんだよ。

 

今更だが、ちゃんと原作を見ておけばと後悔したが、後の祭りにも程がある。俺が覚えているこの後の展開は確か海でなのはとフェイトが共闘して、その後プレシアがジュエルシードを奪うために乱入してくることによってジュエルシードをを奪われてしまうということだけだ。海に沈んでいるジュエルシードをどうやってフェイトが手に入れるかについては全く覚えていない。思い出そうと、唸っているがきっかけさえも思い出せない。そんな俺の表情を見て悟ったのか、クロノは心配するなと言う。

 

「知らないのなら気に病むことはない。確かにお前が知っていることに越したことはないが、今迄教えてくれたことだけでも充分だ。どうやって、フェイトがジュエルシードをを手に入れるかは分からないが、結果としてフェイトがジュエルシードを手に入れるということが確かならば他に幾らでも方法はある。」

 

「と言うと?」

 

「過程が分からないのに結果は分かるんだぞ?これはとてつもないアドバンテージだ。僕たちには分からないが、ジュエルシードを手に入れる方法があるのなら、取って貰えば良い。プレシアがジュエルシードを手に入れるのは困るが、フェイトが持っている分には大した危険はない。フェイトがジュエルシードを手に入れたら、プレシアにそれが渡る前に奪えば良いだけだ」

 

フェイトがプレシアにジュエルシードを渡さないということはありえないし、海に現れると分かっているなら、海には行かずに遠くからフェイトがジュエルシードを手に入れるのを待てば良い、とクロノは続ける。

 

いや、ていうか

 

「何かそれ汚くね?」

 

「戦いに綺麗も汚いもない。戦い何て始めた瞬間から両方悪だ。悪ならば別にどんな方法を取ろうが、大した問題はない」

 

俺のツッコミに平然と返すクロノ。いや、お前は正義の味方だろ。しかし、極論ではあるがクロノの言う以外の方法を特に思いつく訳でもないし、方法に拘って守りたいものも守れなければ本末転倒であるのも分かっていたので黙っていた。

 

でも、ん?

 

「いや、それはマズイ」

 

「何が不味いんだ?」

 

「アースラが海に行かないのがマズイ。俺が知っている未来ではなのはとフェイトが海で何と戦うかは忘れたが、海で共闘することになっている。この艦が海に行かないと下手すればそのイベントが発生しなくなる可能性がある。そうなれば、俺が知っている未来が変わることもあり得る」

 

そしてそれは俺が持つ原作知識が役に立たなくなることを意味する。

 

「…確かにそれはマズイな。予定変更だ。少し遅いかもしれんが今すぐに出発だ。運が良いことになのはは今この艦のトレーニングルームに既にいる。悪いが、お前を降ろしている時間もおしい。面倒かもしれんがお前にも来て貰うぞ」

 

「あー、それは構わないけど」

 

どうやら、全て言わずとも俺が言いたいことはクロノには伝わったようだ。付いていくことに多少の不安はあるが、この艦にいれば安全だろうし、なのはとフェイトの戦闘のことを言わなかった俺にも非はある。

 

「後、そういうことは早く言え」

 

「…へーい」

 

…… どうやら、向こうも同じことを思っていたらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、海鳴上空にて

 

「何だこの天変地異は」

 

今俺の目の前で普通に生活していては、お目にかかれない光景が発生している。

 

「な、なんてことしてんの!あの子たち!」

 

俺の隣でエイミィさんの悲鳴じみた声が上がっている。どうやら魔法使いにとってもこの光景は凄まじいものらしい。

 

まあ、そりゃあ、そうだよなーと顔をモニターの方に向ける。そこには荒れ狂う海上を飛び回っているフェイトとアルフの姿。どうやら、ジュエルシードを取りにいくことはできないとみて、自分の魔法を海中に乱発することで故意にジュエルシードの暴走を引き起こし、ジュエルシードを海中から無理やり引っ張り上げたようだ。

そしてその代償として、暴走したジュエルシードによって竜巻のように立ち昇る水流が海から発生し、空からは幾筋もの雷が所狭しと生まれている。事情を知らなければこの世の終わりのような光景だな。

 

「随分と無茶をするものだな」

 

困ったものだと言わんばかりの表情を浮かべながら言うクロノ

 

「この状況で余裕がありますな」

 

「確かに多少驚きはしたが、予想外ということはない。さっき君には管理局には取ることはできないと言ったが、あれは厳密に言えば嘘だ。正確に言えば、周囲に被害を与えないで取ることはできないということになる。ジュエルシードに魔力を与えて暴走させれば確かに海中から引っ張り出すことは可能になるが、6個ものジュエルシードが暴走すれば何が起こるか想像もできない」

 

その結果がアレだとクロノはモニターを指して言う。

 

「自らを悪だとか言いながらお優しいこって」

 

「別にそんなつもりはない。だが、戦いにはルールがある。その一つが関係のないものを巻き込まないことだ。そのルールを破った時は結果がどうあれ、僕たちの負けだ。だから、やらなかった。それだけだ。分かったか?」

 

「ああ。お前が素直じゃないということは分かったよ」

 

何だと!とクロノが反論してくるが無視する。どうも、この世界はツンデレの割合が高い気がする。

 

「ちょっと!!この緊急事態に遊んでないでよ、ツンデレ男コンビ!!」

 

「「おい馬鹿やめろ、一緒にするな」」

 

「てゆーか、何でクロノ君もゆーた君もそんなにいつも通りなの!?」

 

エイミィさんの言いがかりに反応する俺とクロノに、いつの間にか傍に来ていたなのはがツッコミを入れる。

 

俺としてはこんな事態に俺ができることは何もないので、ただ静観しているだけなのだが。

 

「だってこんなのどうしようもないだろ?こーなったら、もう諦めて帰ろうか。帰って昨日録画しといたスマ〇マ見たい」

 

「帰らないよ!!ダメに決まってるでしょ!!クロノ君も何か言ってよ!!」

 

「僕としてはスマ〇マよりも、しゃべ〇りの方が」

 

「クロノ君!?」

 

どうやら、クロノもなのはを弄るのは楽しいらしい。いつもリンディさんやエイミィさんに弄られてばっかだもんなぁ

 

「もういいよ!こーなったら私が急いで現場に」

 

「行く必要はない。放っておけばあの子は自滅する」

 

「え?」

 

「自滅したところを叩いたほうが苦労は少なくて済む。その方が遙かに効率的だ」

 

「そんな・・・」

 

クロノの言葉に絶句するなのは。てか、クロノにはなのはが海上に行かなくちゃならんことは伝えたのに何を考えとるんじゃい。

 

「と言いたいところだが」

 

「ん?」

 

どうやら話は終わっていなかったらしい。

 

「今回は、そういう訳にはいかないみたいですね、艦長」

 

「ええ、そうね」

 

言いながらドアを開けて入ってくるリンディさん。

 

「えと・・・どういうことですか?」

 

「フェイトちゃんが生み出したあの竜巻と雷を見て。少しずつだけど大きくなりつつ海鳴の方に流れてる。このままじゃ海鳴の町に深刻な被害が生まれるわ」

 

そんな、と言うなのはに微笑みかけるリンディさん。

 

「安心して、なのはちゃん。私たちの前でそんな真似はさせないわ。さっきのクロノの言葉を借りれば、これはフェイトちゃんたちと私たちの戦いであって、海鳴の町やそこに住むものには関係のないことよ。私たちにはそれらを守る義務があるわ」

 

力強いリンディさんの言葉に感動するなのはとユーノ。いや、あなたさっきクロノがそのセリフを言ってた時この場にいなかったですよね?と思ったが、流石にこの空気の中では口にできなかった。

 

「というわけで、なのはちゃんとユーノ君は今すぐ現場に飛んで下さい。フェイトちゃんと共同して、この混乱を鎮めるためにジュエルシードを封印。その後、フェイトちゃんを拘束して下さい」

 

リンディさんのその言葉になのはは見る見る笑顔になり、頷いた。

 

「はい!行こう!ユーノ君!!」

 

「う、うん」

 

なのはは、直ぐにユーノの手を掴んで転送ポッドの所まで走る。その姿に思わず俺は声をかけた。

 

「なのは!ユーノ!」

 

名前を呼ばれるとは思っていなかったなのはとユーノは驚いて振り返る。

 

「「な、何?」ゆーた君」

 

しまった。声をかけたはいいが、何を言うか決めてない。考えた末に俺は

 

「行ってらっしゃい」

 

今から戦場に行く人にかける言葉ではない。もうちょっと気の利いたセリフがあるだろうと俺が内心照れていると

 

なのはとユーノは、一瞬ポカンとした後、笑い出した。そして満面の笑顔で俺に言う。

 

「「行ってきます」」

 

その言葉の後、なのはとユーノは戦場へと赴いた。

 

頑張れよヒーローと俺は思いつつ、俺はモニターへと目を向ける。

 

「心配するな。彼女たちならやりとげるさ。それにいざという時には僕が直ぐに出発するさ」

 

そんな俺にクロノが声をかける。

 

「別に心配なんかしてねーよ。それより何でさっきはあんなまわりくどい言い方をしたんだよ」

 

言外に最初からなのはとユーノを行かせるつもりだったろということを含ませて聞く。

 

「ん?さっきの言葉か?あれは一応通常僕たちが取る方法を言っただけだ。確かに竜巻と雷は大きくなっているが僕たちが本気を出せば止められないことはない。雄太の未来予知がなければ、確実にあの方法を取っていただろうしな」

 

平然とクロノは言っているが、お人よししかいないこの艦のクルーがフェイトの現状を知りながらフェイトが傷だらけになるのを黙って見ていられるとは思えなかったが、今はそれどころではないので別の話に変えた。

 

「あー、そーかい。んで?プレシアの対策は済んだのか?」

 

「ああ、問題ない。幾らS級魔導士でも来るのが分かっていれば防げるさ」

 

・・・何か失敗するフラグの匂いしかしないが、根拠はないので黙っていた。

 

「変なところで心配性だな」

 

「うるせーよ。お!見てみろよ。終わったみたいだぞ」

 

ジュエルシードの封印が完了し、なのはがフェイトに近寄っていく。

 

『友達になりたいんだ』

 

うーん、感動的シーンだ。しかし、俺が感動に浸る間もなく事態は動き出す。

 

アースラのモニターが警告を告げる真っ赤な画面に切り替わり、警報が鳴り響く。

 

「次元干渉!本艦及び戦闘区域に向けて魔力攻撃来ます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

親玉の登場である。

 

 

 

 

 

 

 

 




何かどんどん文字数が増えていってる

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。