死にたくない凡人の物語   作:はないちもんめ

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今回は短めです。


2.7 自分の心の中に雨が降ってるなら、傘をさせば良いじゃねーか

「全く…」

 

自らの腹からの出血を抑えるために当てた雄太の手は真っ赤に濡れていた。

 

「本当に…何で…こうなるかな」

 

出血量から考えても、雄太の状態はかなり危ないはずだが、足取りはしっかりとしており、ある方向へと向かっていた。

 

「一体どこで間違えちまったんだろうなぁ…教えてくれよ。

 

 

 

 

 

 

 

なあ…ティーダさん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今から3ヶ月程前

 

「結果を言います。長峰雄太の人殺しの罪は重いが、本人が未成年ということと状況を鑑みて、長峰雄太の行為を正当防衛とみなし、罪には問わないことにする」

 

「ありがとうございました」

 

雄太はティーダ・ランスターを殺害した容疑で取り調べを受けていたのだが、上で述べられたように、正当防衛が認められたので無罪放免とされた。雄太は取り調べが終わり、肩の荷が下りたのか、安心したようなため息を吐く。

 

「ゆーた君!」

 

「ゆーた!」

 

「雄太!」

 

自らの名前が呼ばれた方向に顔を向けてみれば、そこには良く見知った面々の顔があった。

 

「よう、どーした?」

 

「どーしたじゃないよ!何でこんな大変な事態なのにそんなに落ち着いてるの!?」

 

「慌てたってしょうがないだろ。慌てて俺がやったことが全て無しにできるなら、いくらでも慌ててやるけどな」

 

「それは…そうだけど」

 

なのはは雄太の言葉を否定したかったのだが、上手い言葉が出て来ずに悩んでいた。そんな俺となのはの会話を聞いて、フェイトは呆れたような顔をした。

 

「ゆーたの言い分は分かるけど、もうちょっと変化があっても良いと思うんだけど」

 

「悪いが、俺はマイペースを心掛けてる人間なんだ」

 

首をすくめて答える雄太に、なのはとフェイトは目を見合わせて困ったように笑う。そんな空気の中黙って聞いていたユーノはなのはとフェイトが聞くことを敢えて避けていたことを聞く。

 

「雄太ちょっと聞きたいんだけど」

 

「なんだよ?」

 

「ティーダさんを殺したっていうのは本当なの?」

 

なのはとフェイトは自分たちも聞きたかったが、聞けなかったことをユーノがあっさりと聞いたことに驚きの表情を浮かべ、それを隠せずにユーノと雄太とを交互に見るが、雄太は動じずに言い返した。

 

「ああ。本当だ」

 

「…嘘じゃないんだね?」

 

「ああ。ティーダ・ランスターは俺が殺した。間違いない」

 

「そっか」

 

ユーノは雄太をじっと見つめていたが、雄太の言葉を受けてユーノはそっと視線を下に落とした。この会話を聞いていたなのはとフェイトは、この空気の中で何を言って良いのか分からずに狼狽えていた。

 

そんな状況にため息を吐きつつ、雄太は提案する。

 

「まあ、とにかく帰ろうぜ。ずっとここにいてもしょうがねーよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして現在に戻る。

 

「俺の…選択は…間違ってたのかな。ティーダさん」

 

もう答えをくれない人に雄太は再び問いかける。しかし、その問いに答えを返すモノがいた。

 

『マスター』

 

「なんだよ?レブール。お前が…喋る何て珍しいじゃねーか」

 

『私はマスターを信じています』

 

レブールの言ったことに一瞬ポカンとしてしまった雄太だが、言っている言葉の意味が分かると腹の傷が痛むのも無視して、吹き出してしまった。

 

「いてて!はは…レブール…嬉しいこと言ってくれるじゃん」

 

後ろ向きになっていた雄太の思考に少しの明るさが戻った。

 

「そうだよな…俺は選んじまったんだ。そのことに今更グジグジ言ったってしょうがねーよな」

 

雄太は自らの頬を叩くことで自らに喝を入れる。

 

「それに…ティーダさんに聞くとか…何やってんだか。もういない人が答えてくれる訳もなかろーに」

 

しかし、だからこそ

 

「デバイスが信じてくれてんだ…本人が信じなくてどーするよ。ああ、やってやるよ。てめーで蒔いた種だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絶対に…これ以上のバッドエンドなんかに…しねーぞ」

 

 




ちょっと暗くなっちゃったかな

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