死にたくない凡人の物語   作:はないちもんめ

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空白期は難しいな


2.4 8時じゃないけど!全員集合!

「あいつら絶対俺のこと殺すつもりだろ…」

 

雄太の退院から1ヶ月。今日も今日とて、雄太はアリアとロッテの常軌を逸した特訓を受けてから学校に登校した。普通の小学生にとって学校の授業などつまらないものでしかないだろうが、今の雄太にとっては睡眠と食事中以外の唯一心が安らげる至福の時間となっていた。雄太はその至福の時間を満喫すべく、座ると同時に机にうつ伏せになる。

 

「ふへー」

 

「今日も特訓を受けてから学校に来たの?お疲れ様」

 

「本当にお疲れだよ。今日にでも止めたいくらいに」

 

「ふふ。そんなこと言って。止めるつもりなんてない癖に」

 

「止めるつもり全開だよ。お前は俺のことを高く評価しすぎだフェイト」

 

そこにフェイトが寄ってきて俺に話しかける。フェイトは俺が入院してる間に学校に転入してきたらしい。フェイトは生まれと育った環境が少々特殊だし、本人の性格が積極的ではないので初めての学校生活に馴染むことができるのだろうかと心配していたのだが、上手くクラスの一員になることができたようだ。よく考えれば同じクラスにはなのはたちもいるし、原作ではフェイトがクラスに馴染めずに悩んでるなどの描写はなかったな。ということは、俺の心配は杞憂だったというわけか。

 

「どうしたの、ゆーた?」

 

どうやら俺が思考に耽っていることを心配したらしい。相変わらず優しい奴だ。

 

「うんにゃ。何でもねーよ。ちょっとぼーっとしてただけだ」

 

「そう?なら良いけど」

 

そう言ってフェイトは微笑む。うーむ、俺としてはやり易くて楽なのだが、この子こんなんで将来は大丈夫なのだろうか。将来ダメ男に騙されるような気がしてならない。まあ今は、唯の親馬鹿と化したS級魔導師がいるから、心配するとしたら騙した男の命の方なんだろうが。

 

「そうだ、ゆーた今日は暇?」

 

「今の俺にそんな日はねーよ」

 

毎日が地獄の訓練です。暇ってどういう意味だっけ?

 

「あ…あはは…な、なら今日は特訓以外の予定はある?」

 

「そんな予定を作る余裕があると思うか?」

 

「そ…そうだよね。ごめん」

 

可哀相なものを見る目で俺を見てくるフェイト。止めろ、そんな目で見るな。泣きたくなる。

 

「じゃ、じゃあさ、リーゼさんには私から今日のゆーたの特訓は中止にするように頼むから、今日ゆーたの家に行っても良い?」

 

「そりゃあ、俺としてはありがたい上に別に構わんが・・・何でだ?」

 

あの地獄を一日でも休めるのなら何でもいいが、そこまでしてフェイトが俺の家に来たがる意味が分からん。

 

「ゆーたは私の母さんに会ったことあるけど私はないからさ。一度会って挨拶をしておきたいって思って」

 

「分かったから、その言い方を止めろ。下手な誤解を生みかねん」

 

こいつ色々と危ないな・・・。俺が普通の小学生なら舞い上がっちゃうところだぜ。

 

「え?何で?」

 

「何でもだ。特に男にはそういうことを言うんじゃないぞ。いいな、絶対だぞ」

 

「う、うん。分かった」

 

ふう、危ない、危ない。こいつ何か放っとけないオーラが出てるんだよな。プレシアとの約束がなくても危なっかしいから側にいそうな気がするな俺。そーいや多少種類は違うが、なのはも似たようなオーラを出してるな。妹がいないのに兄のような心境だ。

 

「で、今日はゆーたの家に行って良いの?」

 

「別に良いぞ」

 

見られて困るものはないし。

 

「じゃあ、今日の授業が終わったらそのままゆーたと一緒に行くね」

 

「おー、いーぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後放課後

 

「いや、フェイトはともかく何でお前らもいるんだよ」

 

「にゃはは」

 

「別に良いじゃない、減るもんじゃないし」

 

「男の子の家に行ったことなかったから興味があって」

 

学校が終わったのでフェイトと一緒に家に帰ろうとすると、何故かなのはとアリサとすずかも付いてきた。何なのこいつら。別に楽しい所じゃないぞ。俺はチラリとフェイトの方を見ると

 

「ご…ごめんね。ゆーたの家に行くって言ったら、私たちも行きたいってなのは達が言うから」

 

断れなかったと。まあ、フェイトの性格上断るのは無理だろうな。俺が本気で断ったら多分こいつらなら来ないだろうが、そこまでして断る理由もないか。フェイトが来る以上、二人も四人も変わらんし。

 

「まあ、いいか。もてなしは、そんなに期待すんなよ」

 

俺の言葉にやったと喜ぶなのは達。そんなに喜ぶもんでもないだろうに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

「あら、おかえ…り。あらあら、まあまあ」

 

家に帰宅した俺を出迎えた母親は俺の後ろにいるフェイト達を見て、一瞬驚いた後ニヤニヤと俺の方を見出した。正直言いたいことは分かるが、反応するとからかわれるので無反応を装う。

 

「来たいって言うから友達連れてきたけど、まずい?」

 

「そんなことないわよ。さ、さ、上がって上がって」

 

「だってさ。上がれよ」

 

「「「「ありがとうございます。おじゃましまーす」」」」

 

俺と母親の言葉に家へと上がるなのは達。とりあえずリビングに案内しようと進んでいると二階からアリア(猫バージョン)が降りてきて俺の頭へと乗る。アリアとロッテは俺の特訓をする際に、いつもグレアム提督の所にまで戻るのは面倒ということで、かなりの頻度で俺の家に泊まっていく。ただ、人間の姿で泊まると問題が生じるため、猫の姿で暮らしているのだ。父さんと母さんも最初は戸惑ったが、アリアとロッテが全く面倒がかからない猫であると知ってからは、普通に家族の一員として受け入れている。

 

「わー、可愛い」

 

「あんた猫なんて飼ってたの?」

 

「別に飼ってる訳じゃねーよ。野良猫だ。ただ居心地がいいのか知らんが、良く俺の家に来るんだよ」

 

「特に雄太に懐いてるわよね。母さんの頭とかにはそんなに乗らないし」

 

懐いてるというより、乗り物代わりに使われてるだけなような気がします。まあ、アリアにはいつも迷惑をかけているし、これぐらいならお安い御用だが。俺は頭の上のアリアに向かって念話を送る。

 

『こーゆー訳で今日の特訓は休みにしてくれ』

 

『別に良いわよ。フェイトちゃんから聞いてたし。ただ明日の特訓が二倍になるだけだから安心して』

 

どうやら俺に明後日は来ないらしい。アリアからの愛が詰まりすぎな返答に俺は静かに涙する。

 

「な、なんであんた突然泣いてんのよ」

 

「ど、どーしたのゆーた君?」

 

突然泣き出した俺に引き気味で呟くアリサとすずか。アリアの正体を知っており、何となく喋っている内容が予測できるなのはとフェイトは苦笑いを浮かべている。俺は涙を拭き取ると意識を切り替えた。

 

「いや、何でもない。ただ明日という日が来るのが怖くなっただけだ」

 

「意味が分からないよ…」

 

どうやらすずかには意味が分からないらしい。俺の特訓のことを教えたら一発で分かるのだろうが、なのはの奴まだアリサとすずかに魔法のこと教えてないからな。俺としては隠すのが面倒臭いから、早く教えて欲しいのだが。原作だといつ教えるんだ?

 

「でも、こんなに雄太の友達が来るなんて珍しいわね。ああ、そうそう。雄太が帰る前に雄太の友達が来てたわよ。外で待たせてるのも悪いから上がって貰ったわ。今はリビングにいるわよ」

 

「マジで?誰?学校関係?」

 

「いや、もう一方の方」

 

ああ、魔法関係か。この言葉で分かるとは思うが、俺は両親には魔法のことをバラしている。隠す理由もないし。まあ、とにかく今はなのは達をリビングまで連れてくか。多分クロノとかだから、なのは達と鉢合わせしても問題ないだろ。俺がこんなことを考えているとアリアが念話で話しかけてきた。

 

『あんたも隅におけないわね〜』

 

『何が?』

 

心なしか頭の上のアリアはニヤニヤした顔をしている気がする。振り落とすぞ、この野郎。

 

『この子達がに決まってるでしょ。ねぇねぇ、どの子が本命なの?』

 

心の底から楽しそうに質問してくるアリア。女子高生か、こいつ。

 

『どの子も本命じゃねーよ。小学生だろーが、こいつらは。俺はロリコンじゃねぇ』

 

『あんたも小学生でしょうが、このマセガキ』

 

アリアは、てしてしと俺の頭を叩いてくる。そろそろアリアにくらいは本当のこと喋ろうかな。こういう時に面倒だし。そんなことを考えている間にリビングに着いたので、ドアノブに手をかける。

 

「すいませーん。待たせちゃいまし…て…」

 

そこにいたのは

 

「いやいや、こちらこそ、ごめんよ雄太君。早く着きすぎちゃったよ」

 

「あなたがゆーたさん?こんにちは」

 

ティーダ・ランスターとティアナ・ランスターのランスター兄妹だった。

 

 

 

 

 

 

 

いや、これは予想外過ぎだろ。

 

 




ちなみに、アリアとロッテは順番で雄太の家に行ってます。

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