死にたくない凡人の物語   作:はないちもんめ

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投稿いくぞー


1.9 物語にはご都合主義の要素がつきものなんだよ

昨日の考え通り、とりあえず近所の図書館を当たってみることにした雄太。しかし図書館といっても近所に幾つかある上に、はやてがそこにいるタイミングで行かなければ意味がない。なので、本人としても、そんなに簡単に見つかるとは思っておらず、ニ週間くらいで会えれば良いかなと考えていた。

 

「そう思っていた時期が俺にもありました」

 

「あれ、ゆーた君?」

 

「すずかちゃん知り合いなん?」

 

すずかが一緒にいるのは意外だが、まさか、こんなに簡単に見つかるとは。捜索時間およそ一分。効率的にも程があるぞ。まあ、しかし運というものは天秤がしっかりとしているらしく幸運と悪運が等しくなるようになっているようだ。何で俺にそんなことが分かるのかって?簡単だよ。目の前の光景が俺に教えてくれている。簡単にはやてを見つけた代わりに、見つけたのは、はやてとすずかだけじゃない。未だ喋っていないもうもう一人がいる。

 

「……」

 

そう。会った時から俺を睨みつけている赤髪のエターナルロリータことヴィータちゃんです。

 

あぁ、そうですか、もう時期的にヴォルケンリッターはいるんですか、そうですか。

 

やベーよ、下手に魔力がある奴がはやての目の前に現れたから完全にヴィータちゃん警戒しちゃってるよ。大丈夫ですよー、俺魔力あるけど、弱いんで。…自分で言って悲しくなってきた。

 

「こんな所で会うなんて奇遇だね、ゆーた君。紹介するよ、この子は図書館で知り合った私の友達のはやてちゃん」

 

「初めましてー。八神はやてって言います。なあなあ、私もゆーた君って呼んでええ?私のこともはやてって呼んでくれて構わへんから」

 

「かまへんよー。一応名前を言うと長峰雄太言います。よろしゅうなー」

 

「ん?ゆーた君は関西出身なん?」

 

「そーやで」

 

「ゆーた君、関西出身どころか、関西に行ったこともないでしょ…」

 

「いや、何となくノリで」

 

「何や、ノリかー。それじゃ、しゃーないなー」

 

「だよなー」

 

はっはっはっと二人で笑いあうはやてと雄太。すずかはため息を吐きながら「やっぱりこの二人ってちょっと似てる…」とか呟いている。しかし、すずかがいてくれて助かった。これで俺がはやてと喋る理由ができた。

 

「ところで、ゆーた君とすずかちゃんはどういう関係なん?付き合ってるん?」

 

「ああ。5年後にその予定だ」

 

「学校のクラスメートで友達なの。はやてちゃん。ゆーた君は基本優しいけど、こーゆー人だからゆーた君の話は、話半分に聞いてね」

 

「うん。今の会話だけで何となく分かったわ」

 

会って早々俺のことが分かって貰えて何よりだ。さて、今日はどの辺りにまで踏み込むか。

 

雄太がそんなことを考えているとヴィータがはやてに声をかけた。

 

「はやて、そろそろ帰ろうぜ。シグナム達も腹減らしてるだろうし」

 

「あー、せやなー。そろそろ帰らなあかんな」

 

恐らく俺のことを警戒してヴィータは、はやてに早く帰るように促した。これを止めるのは不自然だし、今度会おうぜー的な流れを作れば今日はもう終わりで良いか。

 

雄太がそんなことを考えて、言葉を発する前に

 

「あ!そーや!すずかちゃんと雄太君もウチで一緒にご飯食べへん?」

 

「「え?」」 「はやて!?」

 

はやてが予想外な提案をしてきた。むう、どうしたものか。

 

「いやいや、すずかはともかく俺は今会ったばっかりだぞ?良いのか?」

 

「構へんよ。すずかちゃんの友達なら信用できるし、ゆーた君と喋るのオモロそうやしな」

 

そんな理由かい。まあ、俺としてもそこまで断る理由はないな。どっちにしろ、いつかはヴォルケンリッター全員に会わなきゃいけない訳だし。

 

「どーする、すずか?」

 

「折角だからお邪魔させて貰おうよ、ゆーた君」

 

どうやら、すずかは乗り気のようだ。なら決まりだな。

 

「んじゃ、俺もお邪魔させて貰うわ」

 

「お邪魔します。はやてちゃん」

 

「それじゃあ、決まりやな!いやー、メッチャ嬉しいわ。同年代の友達が家に来るなんて初めてやもん」

 

そーいえば、はやてはグレアム提督の策略で今までずっと独りきりで生活していたんだっけ…やめよう。罪悪感で苦しくなる。

 

その後、俺たちは他愛ない話をしながらはやての家に向かっていたのだが

 

『どういうつもりだ、テメェ』

 

俺たちと普通に喋りながら、俺に念話をするヴィータ。

 

『どうも何もはやてにご飯を誘われたから向かってるだけだけど?』

 

『ぬかせ。断ろうと思えば断れたろうが。私にあんだけ睨みつけられてるのを知っていながら、何で来やがったんだ?魔力を持ってるお前がよ』

 

ある程度予想はしていたが、敵対心全開である。

 

『ヴィータが言うように、俺は魔力はあるけど、戦闘能力は全然ないぞ。ヴィータクラスの実力者なら、俺が強いかどうかなんて見れば分かるだろ?』

 

『…確かに、全く強そうな感じはしないけどよ』

 

やったね!初めて同意を貰えたよ!…泣きたくなってきた。

 

『だろ?本当に俺は、はやてに何かをしようという気はこれっぽっちもねーよ。今日俺が誘いに乗ったのは、はやてに誘われたからってだけだよ。まあ、元々ヴィータ達には会おうとは思ってたけどな』

 

『私たちに?何の用だよ?』

 

『ヴィータ達ヴォルケンリッターが知らない闇の書の機能についての話だよ』

 

ビクリと会ってから初めて動揺した様子を見せるヴィータ。流石に予想の範囲外だったのだろう。

 

「ん?どしたん?ヴィータ?」

 

「どうしたの?ヴィータちゃん」

 

「い、いや何でもねーよ。はやて、すずか」

 

『何でてめーが闇の書のことを!?い、いや、それよりも私たちも知らない闇の書の機能だと!?』

 

『ああ、闇の書にはヴォルケンリッターすら知らない機能がある』

 

正確には知らないんじゃなくて、記憶を消されてるんだっけか?まあ、どっちでもいいか。

 

『・・・お前の話が本当だって信じる理由が何処にある?』

 

『そんなものはない!』

 

ヴィータが軽くズッコケた。そんなもんがあるわけなかろう。あったら、こんなに苦労しとらんわ。

 

『証拠もないのに、そんな話を信じられる訳ねーだろうが!!』

 

まあ、当然の反応だな。

 

『しょうがないだろが、ないものはないんだよ。ただ、話くらいは聞いといても損はないと思うぜ?もし俺の話が信じられるに値すると思うなら、信じればいいし、信じないなら話だけ聞いて無視すれば良いんだからよ』

 

どっちにしろヴィータ達にとって不利益はないのだと言うことを暗に込めて言う。

 

『・・・・・』

 

『まあ、直ぐに答えを出せとは言わないさ。もし少なくとも俺の話くらいは聞く気になったのなら、二日後の夕方の五時に俺たちが会った図書館の前で会おう』

 

来ないと俺としては困るわけだが。その時はその時考えよう。

 

『・・・分かった』

 

どうやらヴィータにとってもギリギリで許容範囲の提案になったようだ。とりあえず第一段階はクリアかと、胸を撫で下ろす。

 

「さっきから黙ってるけど、何かあったの?ゆーた君」

 

相変わらず、鋭いなすずかは。俺は適当に思いついた言い訳を答える。

 

「ん?ああ。腹減ったなーと思ってさ」

 

「ゆーた君、丁度腹減ったんか。なら、ええタイミングやな。もう私ん家やで。美味しいごはん作ったげるから待ててやー」

 

「へーい、楽しみにしてるわ」

 

その後、食べたはやての料理は本当に美味しかったことと初めて会ったシグナムが美人過ぎて見惚れてしまい、こんな美人と一緒に暮らしてるはやてが羨ましすぎて嫉妬したことは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、また学校でね。ゆーた君」

 

「おー、それじゃな」

 

はやての家での食事は何事もなく終わり、はやてとは家で別れて、すずかとも今別れる所だ。

 

「あ、ゆーた君!」

 

「ん?」

 

何かあるのだろうか?

 

「ゆーた君が何で悩んでるのかは知らないけど、私にできることがあったら何でも言ってね。私絶対に協力するから」

 

こいつ鋭過ぎだろ。いや、というよりも人のことを良く見てるのか。

 

「そりゃ、どーも。その時は頼らせて貰うわ」

 

「うん。待ってるね」

 

別に待たなくても良いのだがと思ったが、すずかの気持ちは素直にありがたかったので黙っていることにする。俺は何も言わずに、すずかに背を向け、手を上げるとそのまま帰路についた。

 

 

 

 

 

 

そうして雄太が家への帰り道を歩いていると目の前に一匹の猫が現れた。

 

(このタイミングで猫?)

 

雄太はその思考から、この猫の正体に仮説を立てる。こんだけ早く来るとは想定外だが、探していた相手が向こうから来てくれたのだから非常に助かる。

 

雄太はニッと自信満々を装って笑うと目の前の猫に話しかける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前らの父親に話がある。俺をグレアム提督に会わせろ猫姉妹」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




話の展開早すぎたかな?

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