「フェイトちゃんが元気そうで良かったね、ゆーた君」
「まーな」
今俺となのはとユーノは、なのはの部屋でフェイトからのビデオレターを見ている。この後に、すずかの家でお茶会をすることになっているので、その前に一緒にフェイトのビデオレターを見ようという話になったのだ。(すずかのことを名前で呼んでいるのは、アリサとなのはを名前で呼んでいるのだから自分も名前で呼んでほしいと頼まれたからだ。ちなみに、その時に俺のことも名前で呼ぶようになった)
「もー、何でゆーた君は、そーやって冷たい態度を取るの?」
「別に冷たかないだろ?普通だよ、普通」
むしろなのはが喜び過ぎだと思う。あー、でも俺が原作知識からフェイトが元気なのを知ってるからってのもあるのかねぇ。
「この後、すずかの家に行くんだろ?見終わったことだし、もう行こうぜ」
「あ、うん。そうだね。ゆーた君は先に玄関で待ってて。私ちょっと準備してくるから」
はいよと言って俺は玄関に向かう。女は準備が長いからちょっと時間かかりそうだな
「雄太君、こんにちは。もう行くのかい?」
「あ、士郎さん、こんにちは。はい。もう出かける所です」
玄関でなのはとユーノを待っている俺に士郎さんが声をかけてきた。うーん、やっぱり凄いイケメンだ。
「なのはを待っているんだろう?ごめんな、雄太君」
「別に大したことないですよ。男は女を待つもんでしょう」
俺のその言葉の何が可笑しかったのか、士郎さんが笑う。
「何ですか?」
「ふふ、いや、すまない。雄太君みたいな友達がいれば、なのはも安心だと思ってね」
「はあ、さいですか」
今の俺の言葉の何処にそんなもんを感じたのだろうか。
「なのはをよろしくな、雄太君。あの子は頑張り屋だし、悪いことをやるような子でもない。だけど、少々無茶をするし、辛いことを辛いと言うのが非常に苦手な子でもある。なのはの父親として、お願いするよ。できる限りで良いからなのはの側にいてあげてくれ」
士郎さんの真剣な顔と声で発せられた願いの重さに俺は思わず顔を逸らす。こんなダメ人間に頼むこととしては、少々荷が重すぎる。
俺は、ぽりぽりと頭を掻きながら
「買い被り過ぎですよ、士郎さん。俺なんかに頼むのは人選ミスです。もっと他に頼むのに相応しい人は幾らでもいますよ」
フェイトとかアリサとかすずかとかユーノとか。
「ただまあ、士郎さんに頼まれなくても側にはいますよ。友達なんでね」
守ることはできないけどと思いながら言う。むしろ俺が守って貰う側だ。何時から男がヒロインになった。
しかし、士郎さんにとっては良かったのか満足そうに笑いながら言う。
「ありがとう。それで充分だよ。多分なのはにとっては雄太君が側にいてくれることが一番嬉しいことだからね」
「だから、買い被り過ぎですよ」
俺と士郎さんがそんな会話をしているとなのはが降りてくる。やっと準備が終わったか
「お待たせ、ゆーた君。あれ?お父さんと何を喋ってるの?」
「何、雄太君になのはのことを頼んだんだよ」
「俺は了承した覚えはありませんがね」
「頼むって何を頼んだの?」
本気で分からないという顔で、頭を傾けるなのは。こーゆーところが心配される理由なんだがなあ。
やれやれといった顔で周りを見ると、苦笑いの士郎さんとユーノの顔が目に入る。どうやら、このお姫様以外の思っていることは一致しているらしい。
「ま。今のお前には分からんだろう」
「今のなのはには、まだ早いかな」
俺と士郎さんの言葉に、うんうんと頷くことで同意するユーノ。それが面白くないのかぷくーっと頬を膨らませるなのは。
「酷い!私だけ仲間外れにして!」
「まあまあ、落ち着け。すずかの家に行くんだろ?早く行こうぜ。俺は先に行くぞー」
「そーやって何時も誤魔化そうとしてって、本当に先に行くの!?ちょ、ちょっと待ってよ、ゆーた君!お、お父さん行ってきまーす!」
「ああ、行ってらっしゃい」
なのはは、そうして先にいった雄太を追いかけて行った。
その後ろ姿をぼんやりと眺める士郎に声をかける者がいた。
「なのはは随分と友達に恵まれているな」
「恭也か」
「父さんもそう思ってるんだろ?」
「ああ」
士郎は雄太との会話を思い浮かべる。
『士郎さんに頼まれなくても側にはいますよ。友達なんでね』
「ちょっと素直じゃない子みたいだけどね」
苦笑いを浮かべながら士郎は続ける。
「あの子なら何があっても本当の意味でなのはの味方でいてくれると思うんだよ」
士郎さんと恭也さん初登場