死にたくない凡人の物語   作:はないちもんめ

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これジュエルシード編終わりだー


1.5 人任せと信頼は紙一重

結論から言うと俺たちは何とか全員助かった。

 

あの後、石柱を退けた俺たちはクロノ達が時の庭園まで転移してきた場所まで到達し、アースラに脱出することができた。

 

ただ、エイミィさん曰く、俺たちが脱出した1分後くらいに時の庭園は完全に崩壊したらしい。

 

何それ怖い。

 

まあ、結果として助かったから、それは良い。問題なのは

 

「あなたがやった行動が一歩間違えたら、どうなっていたかということを詳細に説明すると」

 

俺がリンディさんに三時間コースの説教を受けているということだ。

 

アースラに戻った後、全員怪我をしていたので検査と治療をして貰ったのだが、プレシアを除けば俺の状態が一番酷いらしい。

しかもプレシアの場合、酷いのは怪我というよりも病気のせいなので、実質今回の戦いで一番酷い怪我を負ったのは俺ということになる。

 

一番活躍していないのに、一番怪我が酷いとは全く笑えない。

 

しかも怪我をした内容が内容なので、そのことについてクロノにも散々怒られた後、リンディさんに呼ばれて更に怒られるという親子コンボが炸裂した。

 

この親子コンボによって、正座で聞いているので俺の足はもう限界です。

 

「まあ、今回はこれくらいにしておきましょう。状況が状況でしたからね」

 

そのリンディさんの言葉に、充分長かったよと喉まで出かかったが何とか口に出すことはなかった。

 

「あ、ありがとうございます。じゃあ、俺はこれで」

 

「待ちなさい、雄太君」

 

早くこの場から逃げようと思った俺を笑顔で留まらせるリンディさん。笑顔ってあんなに怖いんだな。初めて知ったよ。

 

「ふう。そんなに怯えなくても大したことないわ。プレシアさんが雄太君の持っているデバイスのメンテナンスと雄太君に合うようにカスタマイズしてくれるんだって」

 

「プレシアが?どうして?」

 

「本人によると「借りを返したいから」らしいわよ」

 

俺とするとそんなもん貸した覚えはないのだが、折角やってくれると言うんだからやって貰うか。別に断る理由もないし。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

俺はリンディさんに持っていたデバイスを渡した。その時ふと、このデバイスの名前を知らないことに気付く。

 

「リンディさん。悪いんですけど、このデバイス渡す時にプレシアにこのデバイスの名前聞いといて貰えませんか?」

 

「別に良いけど、デバイスに聞けば良いんじゃないの?」

 

「残念ながら、このデバイスの記憶がデリートされてるらしいんですよ」

 

そーなったら、もうプレシアに聞くほかない。

 

「分かったわ、聞いてみる」

 

「ありがとうございます、じゃあ、俺はこれで」

 

俺は今度こそ急いで部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鬼がいなくなったら魔王が待っていた」

 

「え?何の話?」

 

「いや、こっちの話」

 

部屋を出たらなのはとユーノが待っていた。一体何の用じゃい。

 

「説教なら勘弁してくれ。もう散々聞いたから」

 

「しょうがないよ。あんなことしたんだから」

 

「そうそう。ゆーた君が悪いよ」

 

どうやら、この艦に俺の味方はいないらしい。まあ、しかし説教じゃないなら良かったと胸を撫で下ろす。

 

「悪かったって。んで?何の用だよ?」

 

「ゆーた君、まだご飯食べてないでしょ?だから一緒に食べようと思って」

 

どうやら、この幼女と獣はたかが飯を一緒に食べるためだけに俺の説教を待っていたらしい。何と言えば良いやら。俺は頭を掻きながら

 

「お前ら暇かよ」

 

「あ!酷いその言い方!」

 

「まあ、あんがと。んじゃ、飯食べに行こうぜ」

 

うんと言いながら着いてくるなのは。何て扱い易い子なんだ。

 

「あ!そーだ。ゆーた君に聞きたかったんだけど」

 

「ん?なんだよ?」

 

「あの時プレシアさんに言ってた言葉ってどういう意味だったの?」

 

「あの時?」

 

「ほら。俺も全部失ったとか言ってたじゃない」

 

あの時か。あの時は思わず本音を話しちゃったんだよなー。さて、困ったなとなのはの方を見ると真剣な顔でこちらを見つめている。どーでもいい話の時はあしらい易いのに、こういう話の時に限って頑固になるやつだ。

 

「あー、あの話か。適当だよ、適当」

 

「適当なの!?」

 

「だって、あーでも言わなきゃ本当のプレシアを引っぱり出せないだろ?」

 

「ぶー。私心配してたのにー」

 

「はっは。騙される奴が悪いんだよ」

 

「騙す人が悪いに決まってるでしょ!」

 

俺は何とかなのはを誤魔化すことに成功し、なのはをあしらいつつ雑談を続ける。

 

『本当はどうなの、雄太』

 

しかし、あんな説明ではユーノは納得してくれないらしい。

 

『本当だっての。俺がそんなに信用できないのか?』

 

『うん』

 

即答である。何時の間に俺の信頼はここまで落ちた。

 

『いや、信じろよ。人は信じることができる動物だぞ』

 

『だって、雄太自分の内面とか優しさとか、そういうの隠そうとするじゃない。なのはとかの前だと特に』

 

どうやらこの淫獣は俺のことを誤解しているらしい。

 

『んなことないっての。俺ほど正直に生きてる人間はそうそういないぞ』

 

『それ自体が嘘じゃないか』

 

じとーっとなのはの頭の上から見てくるユーノ。感情に訴えてくるなのはと論理で訴えてくるユーノ。何て面倒臭いコンビなんだ。

 

『今回のは本当だって。そもそも、普通の小学生がどうやったら全部失うような経験をするようなことがあるんだよ?』

 

『…まあ、そうだけど』

 

『だろ?はいはい。これでこの話はおしまい』

 

そう言って強引に念話での会話を終わらす。まあ、まだ、じと目で見てきていることならユーノが納得していないのは一目瞭然だが。

 

「どうしたの、二人とも?」

 

そんな俺たちを流石に不審に思ったのか、キョトンとした顔で尋ねてくるなのは。まあ、別に説明するような会話じゃないな。

 

「なんでもねーよ。さ、さ、食堂に着いたし飯食べよーぜ」

 

 

 

 

 

 

 

それからしばらく経ったある日

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこうなった」

 

「どうしたの?ゆーた君」

 

「今更だけど、俺がここにいる必要なくね?」

 

「あるよ。だって、ゆーた君もフェイトちゃんと友達でしょ?それにフェイトちゃんに庇って貰ったお礼をしたいって言ってたじゃない」

 

「まあ、そーだけど」

 

今日はフェイトの裁判とかでアースラが本局に飛び立つ日だ。今まではフェイトは取り調べを受けていたので会うことはできなかったのだが、今日は特別に会うことができるらしい。まあ、ぶっちゃけ原作でなのはとフェイトが別れの挨拶をする場面だ。だと言うのに何故か俺はなのはと一緒にフェイトを待っている。正直言って行くつもりはなかったのだが、なのはに無理やり連れて来られた。全く面倒な。

 

「あ!フェイトちゃんが来たよ!」

 

「おー、そうだな」

 

そんなことを考えている間にフェイトが来た。おー、なのはの奴一目散にフェイトの所に走って行ったぞ。それを見るフェイトの顔も嬉しそうだ。…俺完全に邪魔者だな。

 

「あ、そーだ。フェイトちゃん!今日はゆーた君も一緒に来たんだよ」

 

フェイトに抱きついたりしたなのはが思い出したように俺のことを紹介する。この空気でフェイトと何を喋れというのか。

 

「よっ。フェイト元気そうで良かったな」

 

「うん。君のおかげでね。えっと君の名前は…」

 

そういえば自己紹介してなかったな

 

「そーいや、言ってなかったな。俺は長峰雄太。よろしく」

 

「あ、うん。フェイト・テスタロッサです。よろしくお願いします」

 

何だこれ。面接か。

 

「会ったら言おうと思ってたんだ。アルフの怪我を治してくれてありがとう」

 

「お礼を言われるほどのことはしてねーよ」

 

余談だが、プレシアとの戦闘後、アルフとの契約は解除された。何でも多重契約は長時間続けてると色々問題が出るらしい。こんなことなら一度でも良いからご主人様と呼んでくれと頼めば良かったと後で非常に後悔した。

 

「こっちこそ、ありがとな。あの時助けてくれて」

 

「私はとっさに体が動いちゃっただけだよ。それにゆーたも言ってたじゃない」

 

はて、俺は何を言ったっけ?

 

「男が女を助けるのに理由はいらないんでしょ?なら、女が男を助けるのも当然だよ」

 

こうやって人から自分のセリフを聞くと物凄く恥ずかしく感じるな。あの時はアースラと通信が繋がってたんだっけ…今度からテンション上げた時は恥ずかしいことを言わないようにしよう。

 

「そうか…まあ、友達は助け合うものだしな」

 

「友達?」

 

「え?何フェイトは俺のことを友達と思ってないの?」

 

若干ショックである。

 

「え⁉︎えっと、そんなことはないんだけど…ただ、何か…恥ずかしいって言うか…」

 

そう言って何やらモジモジするフェイト。何だこの可愛い生き物。

 

「時間だ。そろそろ良いか?」

 

この空気を切り裂いてクロノが横槍を入れてきた。もうそんなに時間が経ったのか。

 

「そっか。じゃあ、またなフェイト」

 

「じゃあね、フェイトちゃん」

 

「うん、待たね。なのは。ゆーた」

 

その言葉を最後にフェイトはアースラの中へと入り、アースラは飛び立った。

 

これでようやく終わったかと思ったが、よくよく考えればこれが始まりである。

 

この後闇の書事件が起こり、ティーダさんが死に、なのはが怪我をするなど事件のてんこ盛りだ。それが俺という存在の影響でどんな変化をするか。

 

考えたら頭が痛くなってきた。

 

(まあ、何とかなるか)

 

というより、そう考えないとやっていられない。

 

後、何とかなるという根拠も僅かながらある。それは

 

「んじゃ、帰るかなのは」

 

「うん」

 

多分このお姫様が何とかしてくれるだろうという信頼である。

 

 

 

 

 

 

 

 




闇の書編は多分投稿が遅れます

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