死にたくない凡人の物語   作:はないちもんめ

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今回から三人称の視点にします。


1.2 久し振りに友人に会うと結構変わっている人っているよね

「本当にもう!ゆーた君は何を考えてるの!!」

 

ただいま絶賛なのはに怒られ中である雄太。

 

先ほど自分ごとプレシアを刺した雄太は、その場で倒れ、クロノの後ろから来ていたなのはに泣きながら抱き締められた。そして、なのはと一緒にいたユーノによって傷の治療をしてもらい現在に至る。

 

「ゆーた君!ちゃんと聞いてるの!?」

 

「はい。すいません」

 

しかし、あの状況では、あの方法しか無くね?と雄太が言えば更に怒られた。アホである。

 

「そもそも、一人で勝手に行動するから悪いんだよ。リンディさんも怒ってたよ。帰ったら、多分説教だよ」

 

「うえー」

 

勝手に行動した自らに非があるとは思っているので、雄太は嫌な顔をしたが黙っている。

 

「ゆーた君がいけないんだよ。勝手に行動した罰なの」

 

「だから、悪かったって。今度から気をつけるよ」

 

「本当に本当だよ?」

 

「ああ。本当に本当だよ」

 

疑い深い子だね。俺のことを信じなさいってのと雄太は思うが、自らが普段そんなに信じられるような行動していないことに気付く。

 

「ところでプレシアは、どーなった?」

 

雄太は話を変えることにした。

 

「あ、うん。クロノ君の魔法が当たって気を失っちゃったみたい。今はクロノ君とフェイトちゃんとアルフちゃんが見てるよ。

 

「そっか」

 

(なら事件は解決…なのか?)

 

確か原作だとプレシアはアリシアと一緒に虚数空間に落ちたはずなのだが、このままでは別の結末を迎えそうだ。

 

だがまあ、こんな結末なら問題ないか。あんな母親でも生きていればフェイトも嬉しいだろうし、雄太としてもこんな怪我をした意味があるなら嬉しいので、まあいいかと納得する。

 

「んじゃまあ、帰るか」

 

そう言って歩き出そうとした雄太をなのはが止める。

 

「ダメだよ、ゆーた君は怪我をしてるんだから!動いちゃダメ!」

 

「いや、動かなきゃ帰れないだろ」

 

「大丈夫だよ。はい」

 

「はい?」

 

「ちょっ⁉︎なのは⁉︎」

 

何を思ったのか、なのはは俺のことをおんぶしようとしているらしい。それを見たユーノが酷く慌てている。

 

おい、こっちを睨むな。俺は何も言ってないだろ。

 

「やだよ、ハズいじゃん」

 

「ハズくないよ。怪我をしてるんだから普通なの」

 

絶対に違うと思うが、こいつ言い出したら聞かんからな。まあ、いいかとこちらを睨んでいるユーノのことは思考から外し、なのはにおんぶして貰うことにした。

 

「分かったよ。んじゃ、頼むわ」

 

「うん」

 

よいしょと言ってなのはの背に負ぶさる。身体強化をしているのか、なのはは特に問題なく持ち上げる。確かに怪我には良いかもしれんが、普通はなのはと俺の立ち位置は逆だろ。しかも密着している、なのはから良い匂いがしてくるし。まあ今の、なのはにドキドキすることはないので、有り難くなのはの行為に甘えるか。

 

 

「…何をやっているんだ君は」

 

「おんぶして貰ってるんだよ。見れば分かるだろ」

 

呆れたように、こちらを見ながらやってくるクロノ。こういう時は、恥ずかしがったら負けなので平然と答える雄太。

 

「ところで、帰らないのか?」

 

「もちろん、戻るつもりだ。プレシアは倒したが、ここにいては危険だからな」

 

雄太としても大賛成だ。こんな所にいては命が幾つあっても足りない。しかし

 

「お、お母さん!」

 

フェイトの声がしたので、そちらを見てみるとクロノがかけたバインドを弾き飛ばし、プレシアが突然立ち上がった。

 

「あーあ、あいつの時に終わらしてとけば良かったのによ。俺はあいつらと違って優しくねーぞ」

 

クロノのバインドを弾き飛ばしたこともそうだが、先ほどとは全く違うプレシアの喋り方と雰囲気に戸惑う雄太達。事態の推移についていけず、プレシアを除く全員の思考が停止する中、プレシアだけは行動を開始する。

 

「ボーッとしてんじゃねぇよ」

 

瞬時に雷の鞭を発動させ、周りにいるフェイトとアルフを薙ぎ払う。

 

「くっ⁉︎」

 

「なんだってんだい、一体⁉︎」

 

「フェイトちゃん!アルフさん!大丈夫⁉︎」

 

「うん、何とかね」

 

「私も大丈夫だよ」

 

吹き飛ばされながらも、空中で体勢を整えて着地するフェイト達。しかし、誰一人何がプレシアに起こったのか分からず、その戸惑いから攻撃することもできずプレシアを見守る。その中でも、原作知識があるおかげで、この事態に一番困惑している雄太が震える声で質問する。

 

「お前は…一体何なんだ?」

 

「俺か?俺はプレシア・テスタロッサだよ。それ以外にねーだろ」

 

プレシアは当たり前のように言う。しかし、だとしたら、さっきと今とのプレシアの違いの説明が全くつかない。ほとんど別人のようだ。

 

(別人のように?)

 

雄太はプレシアの言葉から、ある可能性に思い至る。現実として見たことはないが、それなら今起こっていることに説明がつく。

 

「まさか…」

 

「二重人格?」

 

雄太が言おうとした言葉をユーノが引き継ぐ。この場の全員の視線がユーノに集中する。そしてプレシアは感心したようにユーノを見る。

 

「へぇ。結構頭の良い奴がいるじゃねーか」

 

「そこまでヒントがあればね。でも、さっきの君の言葉からすると、もしかして、さっき僕たちが戦ってたプレシアも」

 

「後明察。その通りだ」

 

パチパチと拍手をしてユーノを祝福するプレシア。ほとんど全員が「そう言うことか」と歯噛みする中、まだ事態を飲み込めていない、なのはが背負っている雄太に質問する。

 

「ね、ねぇ、ゆーた君。どういうことなの?」

 

「…どーやら、プレシアの中には三人以上の人格があるようだぜ?」

 

「そうだ。元々のプレシアの人格とさっきお前らが倒した奴と俺の三人だ。俺は出てくるのが面倒だし、元々のプレシアの人格は娘が死んだことの影響でほとんど死んでるんでな。基本的に出てるのはお前らがさっき倒した奴だ。ここ数年そこの偽モンが見てたのもそいつだぜ」

 

面倒臭いことになったと思っているのが伝わってくる雄太の言葉にプレシアは補足する。

 

(なるほどな。昔の優しかったとか言ってたのは本当のプレシアで、その人格が変わったから性格が変わってしまったと。原作では、あのプレシアの人格のまま虚数空間に落ちてしまったから、本当のプレシアの人格も目の前のこいつの人格も出てくることはなかったと)

 

雄太は今の状況に思わず舌打ちしてしまう。少しの行動で未来がここまで変わるとは全く予想できなかったのだ。

 

「あなたが母さんをあんな風にしたの?」

 

見るものが恐怖を覚えるほどの無表情でプレシアに尋ねるフェイト。しかし、プレシアは全く動じず、ニヤニヤしながら聞いている。

 

「いーや、違う。俺たちを生み出したのはプレシア本人だ」

 

「何を適当なことを、」

 

「多分こいつが言ってることは本当だぞ」

 

今のプレシアの言葉にフェイトは怒りを露わにしたが、雄太はその言葉に割って入る。

 

「ほー。戦闘力はゴミだが、頭はそこそこ回るじゃねーか」

 

「別に大したことは言ってねーよ。無から有は作られない。お前らを作れるとしたらプレシアしかいないだろ」

 

「そんな…」

 

「そうだな」

 

なのはは雄太の言葉に何か言おうとしたが、クロノが雄太に同意する。

 

「恐らくはこいつの言っていることは真実だろう。そして恐らくプレシアがこいつらを作る原因となったのがアリシアだ」

 

「アリシアが?どうして?」

 

話を聞いていたのか、アルフが割って入る。

 

「僕は専門科じゃないから、一概には言えないが、人が多重人格になるのには原因がある。それは怒りであったり」

 

クロノはアリシアに目を向けながら

 

「大切なものを失った悲しみであったり」

 

「大切なもの…」

 

「正解。正解。だいせーかい」

 

頭を掻きながらプレシアは言葉を紡ぐ。

 

「お前らが言ってたことでほとんど合ってるぜ。プレシアはアリシアを失った悲しみから自らを救うために俺たちを生み出したんだ。これ以上辛い現実を自分が見ないようにすることでな」

 

くっくっと笑いながらプレシアは喋る。しかしその態度にフェイトの怒りは益々ヒートアップしていく。

 

「お前なんかが母さんの声で喋るな…」

 

「何だよ、フェイト怒ってんのか?」

 

キッとフェイトはプレシアを睨みつけ

 

「その声で!私の!名前を!呼ぶな!」

 

今度こそ、フェイトがプレシアに飛びかかる。

 

それを見たプレシアは悪魔のようにニィと笑った。

 

 

 

 

 

 

 

「いいぜ。来いよ。これが本当の最終決戦だ」

 

 




本当は次くらいでジュエルシード編おわらしたかったんだけど、もうちょいかかりそう。

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